「もう何も気をつけないようにしてる」親の精神疾患に子どもたちが思うこと

2019.09.04公開 2019.11.17更新

家族の病気を知ってどう思った?気持ちの葛藤はあった?

林田さん
皆さん、少女のときにご家族の病気を打ち明けられて…。
一同
少女!!(笑)
林田さん
えっ、あれ、単語のチョイス間違ったかも…?

 

ご家族が病気だと知ったとき、皆さんどう思ったのかお聞きしたくて。はなのさん、どうですか?

はなのさん
小学6年生のときに、父が精神疾患だと聞かされたときは…。夜中に電話がかかってきて、母がバタバタしていた記憶があります。父がいなくなってしまったみたいで、みんなで探していたのかな、たぶん。

 

父は、川で死のうとしていたらしくて。でも死ねなくて、フラフラしているところを、誰かが見つけてくれたみたいです。

林田さん
そんなことが…。
はなのさん
小学生のときは、父の病気を受け入れるって感じでもなかったんですよね。よく分からなくて、母が買ってきたメンタル系の本を読んで、「こんな病気があるんだな~」って思っていたくらい。

 

はっきり覚えているのは、再発のときで…。4年前にうつ病が再発したときは、母から「お父さんがまたうつ病になった」って電話があったんです。

 

過去にうつ病になって、回復してからもう10年くらい経っていたから、どこかで「お父さんはもう大丈夫」って思っていたんですよね。うつ病が再発して、「あ、大丈夫ってないんだ」って感じでした。

林田さん
わぁ…なるほど…。
はなのさん
父は、自分のことを病気だとは認めていないらしくて。症状がよくなっても、治ったと思って勝手に薬を飲むのを止めちゃうんです。だから、完治って感じではなかったのかなって。
くまの
あぁ…薬を飲まなくなっちゃうの分かる…。

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くまの「飲まなくなっちゃうんですよね…」

はなのさん
本人も思うところはあるんだろうけど、私は「早く病気だって認めちゃえよ」って思ってしまう。周りは、もう病気だって理解して、父には接しているから…。

 

10年経って再発して、正直「この10年でどうにかできなかったのかな」とも思いましたね。父にも、それは自分にも。

 

父が再発したのが、自分のせいなのかなと思ったこともあるし。

林田さん
自分のせいって、どうしてですか?
はなのさん
父のうつ病が再発したとき、その翌月に、私の転職が決まっていたんです。その転職に、父も母も反対していて。

 

その反対を押し切って転職を決めたから、もしかして、再発に影響したのかなって…。

林田さん
「自分のせいかも」って思ってしまうのは、つらいですね…。

 

くまのさんは、ご家族が病気だと知ったとき、どう思いましたか?

くまの
母に対しては、「なんか変だな?」と思ったことはあったけど、病気だとは思っていなくて。

 

夜中に病院の人が来て、母を連れて行ったらしいんですけど、物音とかも全然気がつかなかったんです。朝起きて、祖母に「お母さん入院したから」って言われても、「えっ?」って感じでしたね。

 

いまいち実感がなくて…。たぶん、母が統合失調症になったってことを、受け入れられていなかったんだと思います。

林田さん
どうやって、受け入れていったんですか?
くまの
母が入院してすぐ、祖父母が家を売ってしまって。「一緒に引っ越すからな」って祖父に言われたんですけど、母と祖父の仲が悪かったのもあって、もう祖父と一緒に住みたくなかったんですよ。

 

地元の友達と離れたくもなかったから、父にお金を援助してもらって、一人暮らしを始めたんです。一人暮らしを初めて、やっと、病気を受け入れる時間をもらえた感じでした。

林田さん
ご家族と離れたからこそ、お母さまの病気を受け入れられたんですね。
くまの
母と一緒にいたら、病気の症状を理解できないイライラが勝って、関係が悪くなっていたと思います。

 

一人暮らしのときは、友達がみんな遊びに来てくれて、しばらく楽しいだけの時間を過ごして…。ちょっとずつ友達に母のことを話せるようになりました。

 

一度、友達の前ですっごく泣いてしまったときがあって。「お母さんいなくなっちゃったじゃん!わーん!」みたいな(笑)

林田さん
わあああ…。
くまの
大号泣でしたね。でも、泣いて初めて、「お母さんがいなくなって悲しいんだな」と思うことができました。泣くことで、母の病気を受け入れられたんだと思います。

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林田さん
ミルコさんは、いかがですか?お父さまが病気だと知ったとき。
ミルコさん
18歳で、父の病気のことを母に告げられたときは、母は私に言うつもりはなかったと思うんです。母が我慢できなくなって、勢いで言っちゃった!って感じでした。
林田さん
勢い、というと…?
ミルコさん
そのとき、私が大学受験中で、「もっと勉強に集中しなさい!」って口論になってしまって。その勢いで、「私がどれだけ頑張ってきたか分かる!?お父さん病気なんだよ!」って言われたんです。

 

「勉強ちゃんとしないなら、家族の面倒とか、やってもらうから!!」って感じのトーンでしたね。

林田さん
激しいですね…!

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ミルコさんの告知話に、どよめく3人。

ミルコさん
母も、本当に言うつもりがなかったんだと思います。感情のぶつかり合いで、ぽろっと出てしまった感じ。

 

ただ、そのときは父の症状もほぼよくなっていて。正直、「巻き込まれなくてよかったな」という気持ちはありました。

林田さん
お父さまが双極性障害と診断されたのは、そこからしばらく経ってから?
ミルコさん
そうです。私が大学を卒業して、社会人1年目のときでした。家に帰ったら、仕事に行っているはずの父がいて。母に「お父さん再発した」と言われたんです。

 

「これは、とうとう自分の出番が来たかもしれないな」と思いましたね。

 

「3ヶ月くらいしたら元に戻れると思うから、ちょっとの間よろしくね」と父に言われたんですけど、そこから7ヶ月くらい自宅療養をして…。一度職場復帰したものの、すぐにまた休職になってしまったんです。

林田さん
なるほど…。ミルコさんは、ずっとお父さまと同居だったんですよね。
ミルコさん
はい。間近で父のことを見ていて、単純に、「これはやばいぞ」と思いましたね。双極性障害って、気持ちが上がったと思ったらドーンと下がって、全然同じ人に見えないんです。

 

人格が違うように見えて、「これは、ザ・病気だ!」と思いました。自分とは遠く離れた、異様な病気のように感じてしまったんです。

林田さん
その気持ちは、どこかで変わりましたか?
ミルコさん
自分自身が、精神的に危ない時期があって…。そこで、精神疾患に対してのイメージは変わったと思います。

 

父が職場復帰できないことで、老後の貯えも食いつぶしてしまうかもしれないと思って。「私が生活費を稼がなくちゃ!」と、ある時期に転職をしたんです。

 

睡眠が4時間くらいの日が、数ヶ月続いて…。休みたいけど休めないときに、不可抗力で働けなくなれば、休めるかも!と思ってしまったんです。じゃあ、車にひかれたらいいのかも!って。

林田さん
それは、限界だったんですね…。
ミルコさん
ある日、出社しようと靴を履こうとしたときに、靴の履き方が分からなくなったんです。びっくりしましたね。

 

カウンセリングに通ったら緩和したんですけど、その経験から、メンタルのことって遠い世界の話じゃないんだなと思って。誰にでも起こりうることなんですよね。

 

そこから、父の治療にも関わっていこうと思うようになりました。

 

家族のサポートで、気をつけている点はある?

林田さん
ご家族の病気の症状が出ているときに、気をつけていることってありますか?言わないようにしていることとか、逆に、こうやって話しかけるようにしているとか。
はなのさん
つい言ってしまって、後悔したことなんですけど…。うつ病の症状が出ていたときに、父が電話をかけてきてくれたことがあって。

 

そのときに、つい「がんばってね」って言っちゃったんです。がんばってって言われることが一番嫌なはずなのに、しまった!と思いましたね。

林田さん
ぽろっと出てしまうことも、ありますよね…。
はなのさん
あとは、そのとき父が働いていた会社って、勤続10年くらいで。10年って、すごいじゃないですか。だから、「10年も働いたんだから、いいじゃん~」って言ってしまったんです。

 

そしたら、「みんなはまだ働いているのに、俺は10年しか働けなかった…」って落ち込んでしまって…。ものすごく反省しました。

 

下手に励まさないほうが、お互いのためにもなるんだなと学びましたね。

林田さん
そうですよね、よかれと思って言ったことが、相手のプレッシャーになることもありますもんね…。

 

ミルコさんは、なにか気をつけていることってありますか?

ミルコさん
私は、今はもうなにも気をつけないようにしてるんです。

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林田さん
えっ、どういうことですか?
ミルコさん
1年くらい前に、父の症状が悪化したときは、社内でのメールがきっかけだったんです。

 

そのとき、父は携帯の電池が切れていて、会社のパソコンで母にメールを送ったみたいで。それを社内の人に、私用のメールは控えるように言われたらしいんですね。まぁ、当たり前のことじゃないですか。

 

そしたら、それがきっかけで、一気に落ちて。

林田さん
会社の方の一言が、きっかけになったんですね…。
ミルコさん
そうです。でも、いつもならそれくらいじゃ落ちなかったんですよ。

 

そのとき、私がどれだけ気にしても、落ちるときは落ちるんだと思って。避けようがないんですよね。だったら、気にしても意味がないと思ったんです。

 

非人道的な言葉を言わない限りは、もういいやって割り切るようにしました。

林田さん
なるほど…。くまのさんは、いかがですか?
くまの
母が統合失調症だと受け入れていなかったときは、母が言うことに対して「そんなわけないじゃん!」って言ってしまうこともあったんです。母は被害妄想が強かったので、「あの人に通帳を狙われている」と疑心暗鬼になることもあったので…。

 

今は、母の言うことを頭から否定せずに、まずは認めるようにしています。

林田さん
どんな風に、お母さまの言うことを受け止めているんですか?
くまの
「通帳を狙われている!」って言われたら、「そうなんだ~それはまじでやばい!」って。

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林田さん
やばいって、上手な返しですね(笑)
くまの
やばいは、いろいろと万能だと思います…。

 

母も、敵視している人を本当に排除してほしいっていうより、自分の気持ちを聞いてほしい気持ちがあるんだと思うんです。しっかり話を聞くと、納得してくれることも多いので。

 

母の言うことが支離滅裂でも、世間一般的な考えて「いやそれはおかしいよ、間違ってるよ」とは言わないようにしています。それを言うことで、症状が悪化してしまうこともあったから。

 

“家族”としてのサポート、どんなことが大変だった?

林田さん
ご家族として、お母さまやお父さまをサポートするとき、どんなことが大変でしたか?
ミルコさん
自分が本当につらかったのは、「この生活はいつまで続くんだろう」って、無限地獄のように感じたことですかね…。

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ミルコさん
ブースに入って仕事をする職場だったので、隠れて泣いていました。家で泣けないから、職場で泣くしかないんですよね。

 

「どうしてこんな境遇なんだろう」って、思ったこともありました。

林田さん
ご自身も、精神的にきついですよね…。
ミルコさん
家に感情を持ち込むと、もっと状況が悪くなるって分かっていたんです。だから、感情的になっているときは家の周りをぐるぐる歩いたりしてました、当時は。
林田さん
つらい…。
くまの
でも、職場は職場で、働かなきゃいけないですよね…?だけど家では泣けなくて、ストレス発散場所はどこに?
ミルコさん
ストレス発散場所は、なかったですね…。気持ちが休まっているときでも、ハッとしちゃうんです。「自分だけ休んでていいのかな?」って。

 

母は家で大変そうだし、父だって苦しんでるし…。私は仕事を頑張る形で家族を支えてるんだ、と自分を肯定してるけど、それ自体が逃げなんじゃないか?とも思ったり。

はなのさん
自分も、一緒に苦しまなきゃいけないって思っちゃうんですか?
ミルコさん
そうです。なにか楽しんでいると、「あっ、やばい、楽しんじゃった」って思うんですよね。後ろめたさが、常にあったんです。
林田さん
その気持ちを吐き出すのって、もう、どうしたらいいんですかね!?
ミルコさん
私は、ノートにすべて書き出してました。人に言っても、経験していないと分かってもらえないじゃないですか。「大変なんだね」って同情されたいわけではなかったから、すべて文字にしてました。

 

日々の葛藤とか、こんなことが苦しいとか、毎日。

林田さん
なるほど…。気持ちを、ノートに吐き出していたんですね。

 

くまのさんとはなのさんは、先が見えない不安をどうやって解消してますか?

くまの
正直、考えても分からないから、考えない!って部分はあります。

 

統合失調症のことを調べると、「治る」って書いてある記事と、「治らない」って書いてある記事と、両極端で。結局、先のことなんて分からないんですよね。

 

だったら、とりあえず「治る」って思っとこうかなって。

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くまの
あとは、母の人生って、私の人生ではないから。母が病気になって、これからどうしようって思ったこともあったし、ものすごく不安になることもあるけど…。

 

私がいくら悩んでも、できないことって絶対にあるし。母のために生きることもできないし、ずっと支えて守ることもできないから。

 

だったら、考えてもしょうがないなって割り切るようになって、いろいろと気持ちが楽になりました。

林田さん
ご家族の人生と、ご自分の人生を切り離して考えているんですね。

 

はなのさんは、いかがですか?

はなのさん
自分がつらいときは、信用している友達に吐き出すことが多いです。「またお父さんが病気になっちゃってさ、もう信じられない」って、素直に言っちゃう。

 

人に言うことで、なんとか発散している感じですね。

林田さん
誰かに聞いてもらうって、やっぱり効果があるんですね!

 

くまのさんは、ご家族のサポートで大変だったことってありますか?

くまの
大変だったというより、憤りとか、悲しかったことなんですけど…。

 

私、地元の友達のことが本当に好きで。母が病気になったときに支えてくれたのは友達だったし、その子たちのお母さんにもとてもよくしてもらっていたから。

林田さん
うんうん。
くまの
ある日、地元の飲み会があるときに、駅に着いた瞬間に姉から電話がかかってきて。

 

電話で、「どうしてお母さんからの電話に出ないの?警察に保護されて、これから入院になったよ」って言われたんです。

林田さん
えっ!
くまの
確かに、母から2回くらい電話があったみたいなんですけど、本当に気がつかなくて。母は、私が電話に出ないことで、私が誘拐されたと思い込んでしまったみたいなんです。

 

「娘を返せー!」って叫び続けているところを警察に保護されて、そのまま入院しなくてはいけなくなって…。姉は子どもが産まれたばかりだったから、私が入院手続きに行かなくてはいけなかったんです。

 

でも、そのとき、私は飲み会に行くところなのに!?って思ってしまって…。

林田さん
そうですよね…。
くまの
母を優先させなくてはいけないとは思いつつ、姉が当たり前のように「今から入院手続きお願いね」って言うのも嫌で。

 

たかが飲み会だけど、自分が楽しみにしていたことを、無条件に諦めなくてはいけないのかって、すごく憤ってしまったんです。

ミルコさん
うわぁ、分かります…。
くまの
なんか、世間的にも「家族なんだから、そりゃあ飲み会より入院手続きに行かないと駄目だろ」って思われている感じもして。誰かに言われたわけではないけど、なんか、空気感が…。
林田さん
ご家族は、そういう空気感にも悩んでいらっしゃるんですね…。

 

はなのさんは、「これがきつかったなー!」と思ったことってありますか?

はなのさん
私は、父の病気の影響で、自分の結婚が1年伸びたんです。
林田さん
結婚が!それはどうして…?
はなのさん
今の夫が、「お父さんに挨拶してからじゃないと結婚できない」って人で。でも、父の症状がよくなかったので、私の結婚を伝えることでどうなるのか不安だったんです。だから、なかなか切り出せずに…。

 

結婚を予定していた時期から、1年くらい伸びてしまったんです。結果的には、父には言わずに入籍して、最近結婚したことを伝えました。

林田さん
結婚を伝えることで、お父さまの症状が悪化するか心配だったんですね。
はなのさん
そうですね。私からすると、父の病気によって自分の人生が左右されてしまったことがつらかったです。自分が結婚を希望する時期を、諦めざるを得なかったから。

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はなのさん
あとは、私の叔父、つまり父の兄が、「病気なんて俺がなんとかしてやる!」って人で…。叔父の干渉が、すごくきつかったですね。
林田さん
干渉って、どんなことを…?
はなのさん
母は、「先生の言うことを聞いて、ちゃんと治療していくしかないよね」って考えなんです。ただ、そこに叔父がすごく口を出してきて…。

 

父の徘徊が止まらなかったり、刃物を持ち出すようになったとき、入院を決めたのも母なんです。でも、なかなかよくならなくて。見かねた叔父が、「もう退院させる!」って、本当に父を退院させてしまったんです。

林田さん
えぇ、勝手にそんなことを…。
はなのさん
叔父からすると、母や私は“冷たい”らしいんですよ。

 

母も仕事をしていたので、父のお見舞いに毎日行くことも難しくて。私も仕事をしているから、たまにしか会いに行けなかったんです。

 

それに対して、叔父は「家族なのに冷たすぎる!」って腹が立つみたいで。

くまの
ものすごく干渉してくる親戚、分かる…。
ミルコさん
いや本当に、めちゃくちゃ分かる…。

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はなのさんの話に、共感の嵐でした。

林田さん
親戚や、家族内での対立って、あるあるなんですか?
ミルコさん
ありますあります!私の周りもそうでした。

 

でも、そうやって騒ぐ人って、実際の家族がどれだけ苦労しているのか知らないんですよね。知らないからこそ、置いてけぼりの気持ちになって、「まだなんかできるんじゃないか?」って騒ぐんだと思うんです。家族は、そんなことやりつくしているのに。

林田さん
とっても冷静な分析だ…。
ミルコさん
うちの祖母もそうで、「私の息子が病気になるわけない!」って考えで、母に対してもきつく当たる人なんです。「病院に行っても治らないのに、まだ通院するなんてどういう神経なの!」って。
林田さん
えー!それは、ちょっとおかしいですね。

 

くまのさんも、介入してくる親戚っていました?

くまの
私の祖父も、そうでしたね。あれくらいの年代の人って、いまだに精神疾患を気の持ちようだと思っている人がいる気がします。

 

「お母さんは、どうして部屋から出てこないんだ?」とか、「お前がしっかり話してあげないと」とか、いろいろ言ってきたり。病気だと理解していないから、話せば解決すると思っているんですよね。

ミルコさん
年配の方は、なかなか理解してくれないですよね。「気持ちの問題だ-!」って言うけど、「だから、その気持ちが病気になってるの!」って思います。

 

“自分”のために、意識していることはある?

林田さん
ご家族のサポートをするうえで、自分のコンディションも保っていかなくてはいけないじゃないですか。そのために、なにか意識していることってありますか?
はなのさん
やっぱり友達に言うとか、あえて考えないようにするとか。

 

相手のことだから、考えても答えはないじゃないですか。つらさに巻き込まれて、自分の気持ちが下がってしまうのも困るから。仕事に集中したり、他のことに意識を向けると楽になることはありました。

林田さん
なるほど…。ここまでは、サポートしないようにしているってラインはありますか?線引きのような。
はなのさん
私は、一緒に住まないことですね。私の性格上、近づきすぎると自分がつられて駄目になってしまうから。

 

あとは、できればこれから先、国の支援も受けていきたいなと思っています。父が働けないと、金銭的に母は苦しいと思うから。

林田さん
くまのさんのところは、生活保護を受けているんでしたっけ?
くまの
そうです、母が。ものすごく助かってます。私もそこまで稼いでいるわけではないから、誰かの生活を支えることはできないし。

 

私も、生活保護もそうですけど、救護施設の方とか、友達とか、姉とか、頼れるところはフル活用したいと思っています。

 

自分だけで、いろいろと抱え込まないように。

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林田さん
そうですよね…。頼れるところは、頼ったほうがいいですよね。
くまの
あとは、できないことはできないって、割り切ること。

 

お母さんが精神疾患じゃなくて、例えばガンでも、骨折でも、風邪でも、できないことはあるから。それを「どうしてできないんだろう…」って思っても意味がないから、もう割り切ってます。

 

昔は、夜寝ているときに、「今お母さんが自殺してたらどうしよう…」って不安になることもあったんです。自殺未遂も起こしていたから。

ミルコさん
わ、思う!すごく思います!
くまの
あ、やっぱり!?思いますよね!

 

でも、毎日死なないように監視できるわけじゃないから…。できないものはできない!私はしっかり眠ろう!と割り切って、今は過ごしています。

林田さん
割り切るの、大切ですね!ミルコさんは、いかがですか?
ミルコさん
金銭的な援助は、今はしないようにしています。

 

昔は、「私がすべて生活費をまかなう!」と決めた時期もあったんですけど…。それをすることで、父の働きたい気持ちとか、やる気とかを、すべて削いでしまうんだと感じて。

 

全面的に支えてあげるんじゃなくて、こぼれ落ちそうなときに、ほいっとキャッチできるようなサポートをしたいなと思っています。

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ミルコさん
今は一人暮らしをしているんですけど、週末は実家に帰っているんです。ただ、父に会いに行っても、症状がひどいときはなにもできないんですよね。

 

そういうときは、なにもしないんです。できることがないときは、なにもしない。父のためにも、自分のためにも、それがいいんじゃないかなと思っています。

林田さん
無理に言葉をかけても、悪化することもありますもんね…。

 

今回、ご家族側のお話を伺えて、私もとっても参考になりました!そこまで考えて、私たち家族に接してくれているんだなぁと…。

 

今日はお集まりいただいて、ありがとうございました!記念撮影、しましょう!

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(左から)はなのさん、くまの、ミルコさん、進行役の林田さん。気が付いたら終了時間になっていたくらい、短く感じた2時間でした。皆さま、ご参加ありがとうございました!

「家族だから」と100%の力で相手を支えようとすれば、自分のメンタルも弱ってしまいます。今回の座談会で、自分の心も大切にすることを改めて意識していきたいと感じました。

 

ミルコさんとはなのさんのご家族が、そしてもちろんお二人も、安定した生活を送れますように。自分にできることをしていけば、きっとそれで充分なのではないでしょうか。

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こっそり、第2弾の予告です。話が盛り上がりすぎて、急遽続編が決まりました。次回の議題を書き出したホワイトボードがこちら。次回の座談会で、できる限りお話しします。乞うご期待!

 

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くまのなな

ライター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年9月4日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。