「焦らなくていいよ」を言う側・言われる側の本音。焦りに“良い悪い”はある?

2019.09.20公開 2020.05.07更新

当事者側と家族側で感じる「焦り」は違う?

近藤
ご家族から、当事者の方にお金の話題を振ることもあるんですか?
くまの
いや、あんまり言えないですね…。症状が出ているときは特に、お金のことで焦らせてしまって、さらに悪化しても嫌だなと思うので。

 

本人も、働けないことに対してすごく負い目があると思うんですよ。申し訳なさが伝わってくることも多いし。

 

それに追い打ちをかけてしまうかもしれないことを、言う勇気が私にないんですよね。

近藤
焦りが、本人からにじみ出てる感じなんですね。
くまの
そうなんですよ。

 

父も母も、病気になった原因として仕事がとても影響していると思うんです。だから、仕事に戻すことに対して、明るく背中を押せないというか…。

 

ただ、さっきの林田さんの話を聞いて、「いくら稼がなくてはいけない」ではなく、「どんな仕事がしてみたい?」で考えることができれば、もっと話しやすくなるのかなと思いました。

林田さん
わー、うんうん。
近藤
ご本人が働けない状態のとき、くまのさんとしても、焦りを感じられているんですか?
くまの
ある、かなぁ…。生活費の焦りもあるけど、それより、本人が仕事をしていないことに対して、負い目を感じていることに焦るかも。

 

療養中の方って、体力が回復してきても、遊ばなくないですか…?私の母がそうなんですけど、自分の好きなことをしなくなっちゃうというか。

竹内さん
あぁ、確かにそうかも。罪悪感があるから、遊べない…。
林田さん
うん…。人の金でなにしてんだって思われるかもって、思っちゃう。
くまの
やっぱりそうなんですね…!もちろん、その気持ちもすっごく分かるんです。母からも、働いていないのに遊びに行くのは悪いし…って気持ちがビシバシ伝わってくるから。

 

でも、私からすると、遊んでいないほうが大丈夫かな?と思ってしまうんです。なんか、かわいそうに見えちゃうんですよね。そう見えてしまうことも、こっちは苦しいというか…。

林田さん
えー!そうなんですか!
くまの
“働いてほしい”って、もちろん生活費を稼いでほしい気持ちも入ってはいるんですけど、“働いて好きに遊んでほしい”って気持ちも強いんです。

 

罪悪感なく、遊んだり、好きなものを食べたり、買い物をしてくれることで、こっちも「あぁよかったな」と思えるから。

林田さん
遊びに行ってくれたほうがうれしいって、家族が思ってくれているって考えが、そもそもなかったです…。

 

「療養中なのに、遊びには行けるんだ」と思われている気もしたから。だから、くまのさんみたいに思っている人もいるんだということが、ちょっと衝撃!

くまの
やっぱり、遊びに行くのは罪悪感が大きいですか?
林田さん
はい…。がんばって治療してます!ってアピールをしておかないと、家に居づらいなぁとも思いますね。
くまの
そうなんだ…。

 

家族側と当事者側で、考えのズレがある家庭ってめちゃくちゃ多いのかなって思いました。私も、ここまで母に本音を話したことはないかも。きっと、伝わっていないこともたくさんある気がします。

林田さん
実際の家族だと、やっぱり聞けないこともありますもんね。

 

「私が出かけることを、嫌だと思ってる?」って、聞きにくい…。

近藤
竹内さんのところは、お互いに本音を伝えてますか?
竹内さん
私が、夫に対してすべて言うんですよね。

 

「前はこのことに対してこう思っていたけど、今はこう感じる。こんな風に変わってきた」と全部聞いてもらって、夫にフィードバックしてもらうんです。

 

自分の中だけで考えていると、答えが出ないんですよね。ぐるぐる考えが回ってしまうというか。だから、夫の意見を聞くことで、うまく答えにたどり着くことが多いです。

林田さん
すごくいいパートナーですね…!
近藤
パートナーの意見が自分のと全然違うと、比較して落ち込んだり、喧嘩になったりしないですか?
竹内さん
喧嘩にまではならないですね…。夫の意見を聞くときも、「私はこう思うんだけど、あなたはどう思う?」って聞き方なんです。

 

だから、夫の意見は夫のものとして聞いて、自分と違う意見なら取り入れないだけ。自分とは違う意見を聞けるだけでも、参考になることが多いんです。

近藤
お互いの信頼関係があるっていうのも、大きいのかもしれないですね。
竹内さん
そうですね、それは大きいかもしれないです。
林田さん
私、まだどこかで“普通の人”にならなきゃって気持ちがあるんですけど…。そういうの、ご家族側でも思ったりするんですか?「早く普通の人になってよ!」って。
くまの
えー!普通の人になってよ…は別に、思わないかも。
林田さん
思わないんだ…。

 

私にとっての普通の人って、国民の三大義務を果たしているかどうかなんですね。教育と、勤労と、納税。だから、それがクリアできていないと罪悪感があるんです。

くまの
そうなんだ…。たぶんですけど、当事者側の焦りと、家族側の焦りって、同じじゃない気もするんですよね。

 

林田さんが言っている三大義務とか、竹内さんが望んでいた理想像とか、私から母と父に望んだことはないです。

竹内さん
え!そうなんだ、思うこともないですか?
くまの
ないかなぁ…。私が父と母に望むのって、まずはしっかりご飯を食べて、寝て、遊んで、回復してほしいってところなんですよね。それがおろそかになっている状態で、働いて!納税して!とは思わない。

 

回復してきたら、じゃあプラスアルファで、自分になにができるのか考えてほしい。

林田さん
なるほど…!
くまの
言ってしまえば、ご飯も食べられない状態で、眠らずに求人誌を読んでくれても、全然嬉しくない…(笑)

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林田さん「ちゃんと寝ます…(笑)」

林田さん
うわぁ、耳が痛いー!まずは食べます、寝ます…はい…。
 

「焦らないで大丈夫」って言われてどう思う?

近藤
実際、「焦らないで大丈夫だよ」って言われたことありますか?
竹内さん
夫にはよく言われてましたね。「焦らなくていいんじゃない?」とか。その言葉自体は、私は嬉しいですね。とっても安心します。

 

なぜなら、私がものすごく焦っているから。

近藤
あぁ、なるほど…。
竹内さん
環境が焦らなくてはいけない状況だと、「もっと焦らなきゃ!がんばらなきゃ!」と思ってしまうんです。だから、焦らないでいい状況で生活ができることは、とてもありがたいですね。

 

ただ、「焦らなくていいよ」という言葉を、100%で受け取ってしまうのは避けたいとも思っています。

近藤
え、それはどうして?
竹内さん
その言葉の通りにすると、本当に動けなくなってしまうんです。

 

それに、やっぱり自分の中に焦りはあるので、その気持ちを「焦らなくていいんだ!」と無理に変えようとすると、それはそれでストレスというか…。

近藤
「焦らなくていい」の言葉は嬉しいけど、その通りに焦らないでいることはストレスってことですかね…。それ、どうしたら楽になりますか?
竹内さん
自分が焦っていることを、まずは認めてあげるほうがいいのかなと思います。その上で、なにに焦っているのか考える。焦っている理由を自分が理解していないと、頭の中でぐるぐるしちゃうだけなんじゃないかなって。

 

自分が自分に納得しないと、人に「焦らないでいいよ」と言われても、なかなか腑に落ちないこともあると思うから。

近藤
林田さんも、「焦らなくていいよ」と言われたことってありますか?
林田さん
ありますね。母によく言われます。
近藤
実際に言われて、どうですか?
林田さん
私は、言われて嬉しいですよ。焦って行動しなくてもいいと思えると、自分の本当にやりたいことが見えてくるときがあるんです。

 

焦る気持ちから「行動しなくてはいけない!」と思っているのか、本当に自分が「これやってみたい!」と思っているのか。焦りを取り除いてもらうことで、そこがはっきりしたことがありました。

 

誰かに止められてもやりたいことって、あるじゃないですか。

近藤
自分のやりたいことの、確認作業にも繋がるんですね。
林田さん
そうですそうです!

 

Remeでインターンをしたいと決めたとき、そうだったんですよ。

近藤
え!そうだったの!?
林田さん
そうですよ(笑)

 

今は週に何回か来させてもらってますけど、「インターンに行こうと思うんだ」と周りに言ったとき、結構反対されたんです。「そんなに焦らなくていいじゃない?」「もうちょっとゆっくりしてもいいじゃない?」って。

 

そんな言葉を受けても、私はインターンしたいと思ったんですよね。自分のやりたいことが、周りから止められることではっきりしたんだと思います。

近藤
そんなことが!そうだったんですね…。

 

…ありがとうございます。

林田さん
いえいえ!(笑)

 

むしろこちらこそ、ありがとうございます!

近藤
「焦らなくていいよ」と言ってくれる人がいることで、なにかあったときに戻れる場所がある安心感も生まれやすいですよね。
林田さん
そうですね。焦らなくていいと言ってくれるってことは、焦ってがんばっている私じゃなくても、受け止めてくれているのかなと思うので。だめだったら、まぁそれでいいじゃんと言ってくれている感じがします。
近藤
なるほど…。

 

くまのさん、ご家族側から今までの話を聞いて、どうですか?

くまの
私、「焦らなくていい」が嬉しいんだなって、ちょっと意外な気持ちでした。
近藤
へー!それはどうして?
くまの
いや、私もつい言っちゃうんですよ。母や父に、「焦らなくていいからね」「無理しなくていいからね」って。

 

でも、裏を返せば、実際に本人が焦らなかったとき、私が金銭的にすべてフォローしてあげられるわけでもないし。無責任なことを言ってるような気もしていたんですよね。

 

だから、言われた側も「無責任なこと言うなよ!」って思ってるかなぁって…。

竹内さん
もちろん、その人の状況にもよるとは思うんだけど…。私も、焦らなくていいと言われて反発してしまったこともあったから。

 

でも、そこまで内面のことを考慮して言葉をかけるって、無理だと思うんです。周りの人もしんどくなっちゃうし。だから、あまり深く考えなくてもいい気もします。

林田さん
周りが金銭的にすべてをサポートしてくれないことを、当事者も分かっていると思うんですよね。だから、そこまで背負わなくてもいい気がします。

 

根底に相手のことを心配する気持ちがあれば、それは伝わると思うから。

くまの
そうなんだ…。「焦らなくていいよ」が嬉しくないときもありますか?
竹内さん
自分の反発が強いときは、嫌かも…?

 

そんなこと言ってもさぁ!って思っちゃうから。実際に、メンタルが不調になりたてのころは、そんなこと言っても分かんないでしょ!と思うこともありました。

近藤
相手の言葉を受け取る余裕がないときは、反発してしまうときもありそうですね。
竹内さん
あとは、他人に言われるのはイラッとするかも!家族や友人じゃなくて、ほぼ関わりがない人に言われると、なにが分かるの…?ってなる。

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竹内さん「なにも知らないじゃん!って思う…」

林田さん
確かに!それはちょっと嫌だ(笑)

 

私は、やる気が出ているときに言われるのはテンションが下がるかなぁ…。求人誌をめくっているときに「焦らなくていいよ!」と言われると、じゃあ生活費どうするの!?ってなります。

近藤
やる気を折ってしまう「焦らなくていいよ」もあるんですね…。

 

くまのさんは、焦らなくていいよの裏側にある気持ちって、家族に伝えてますか?金銭的に援助はできない、とか。

くまの
いや、実際の家族には、言えてなくて…。

 

将来的に、お金のことってどう考えてる?って、聞きたい気持ちはあります。でも、聞いたことで自分を追い詰めて、症状が悪化するのが怖くて。

 

母や父が苦しんでいる姿って、子どもとしては見たくないんですよね。だから、いつも楽しい話ばかりしちゃっているかも。

近藤
その辺って、竹内さんどうですか?ご家族の気持ちの裏側を知りつつ、「焦らなくていいよ」と言われるのって。
竹内さん
裏側の気持ちはありつつ、それでもそう言ってくれるのは、私は嬉しいですけどね。自分が存在してもいい、居場所にもなると思う。

 

その言葉がないと、自分が動き出せないこともあると思います。

林田さん
お金のこととか、将来のこととか、家族が背負うものでもないですよね。本来、自分が背負わなくてはいけないものだから。

 

だから、単純に心配する気持ちから「焦らなくていいよ」と言ってくれるのは、私も嬉しいです。

 

そもそも「焦る」ことは駄目なことなの?

近藤
“焦る”だけ聞くと、やっぱりネガティブなイメージがありますよね。でも、竹内さんが焦ることで行動できたように、そんなに悪いことなのかなとも思っていて。

 

焦るって、駄目なことなんですかね?

竹内さん
私は、焦りの根源が分かっていればいいと思います。
近藤
焦りの根源?
竹内さん
私の場合は、普通はこれくらい働いて、これくらい稼ぐんだ!というぼんやりした理想像を勝手に作って、それと自分を比較してすごく焦っていたんです。

 

焦っていたときって、理想像を作っていることにも気がついていなかったんですよね。だから、どうして焦っているのかも分からなくて。焦っている自分がデフォルト設定みたいな。

近藤
理由が分からないのに焦ってしまうのは苦しいですね…。
竹内さん
でも、例えば「お金がない!」と焦って、「じゃあバイトしなきゃな」って、健全な焦りじゃないですか?その焦りがあるから、行動できるというか。

 

焦る対象が分かっていれば、焦ること自体は駄目なことではないのかなぁって。

近藤
確かに。焦りの原因と、じゃあどうすればいいのかっていう次のステップがあれば、目標設定ができるいい焦りになるのかもしれないですね。
竹内さん
あとは、自分に合った目標設定も大切だと思います。

 

私が作った理想像に到達する人も、きっといると思うんですよ。でも、私にはできなかった。週5日間、8時間働くという社会が作った常識に、無理に自分を当てはめようとしていたんですよね。

 

今は、その常識で働いていない人だって、たくさんいることを知っているから。別にいいやって思えるようになりました。理想像に対する焦りも、いらない焦りだったなと思います。

くまの
輪郭がぼんやりした中身のない焦りと、課題を見つけて解決策を探るのって、全然違いますもんね。焦りの原因を探るのって、めちゃくちゃ大切なのかも。
竹内さん
中身がない焦りって、どこまでも焦って、沈んでいく感じなんですよね。終わりがない。すごく苦しいと思います。
近藤
林田さんは、自分にとっていい焦りはありますか?
林田さん
私、とても腰が重いタイプなんです。考えばかり先行して、なかなか動けない。

 

そんなとき、焦りがガソリンになって行動できるときはけっこうありますよ。

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近藤
おぉ!それはいい焦りだ。
林田さん
いや!でも、これは使い方を間違えると自滅するんです。

 

自分にとってあまりにも高い目標に対して行動して、失敗してしまうと、失敗体験が積みあがってしまうんですよね。結果的に、自己肯定感も下がっちゃう。

近藤
なるほど…。どうやって焦りをコントロールすればいいと思います?
林田さん
まずは、目標設定をします。自分ができそうだなと思うくらいの。

 

それで、実際に目標にするのは、その目標の半分以下のところからにするんです。

近藤
半分以下!
林田さん
自分が「ここまではいけるかな」と思うラインって、越えられないことが多いんですよ。高い目標を立てて、それをクリアできないと逆効果だから。

 

スモールステップを意識して、小さなことからやるようにしています。

近藤
例えば、どんな感じで?
林田さん
こうやって外に出ることも、「週3くらいは余裕だろ~」と思っていたんです。でも、それはきっと無理だと自分を抑えて、ポケモンGOからスタートしました(笑)
竹内さん
おぉ!それいい!
林田さん
ポケモンGOで夜に出られるようになったら、次は日中に外に出るようにして、次は在宅でRemeのお手伝いをさせてもらって、次は週2回くらいオフィスに来させてもらうようにして…。ちょっとずつ、活動範囲を広げていくイメージです。

 

ガソリンとして、本当に少しずつ焦りを使う感じ。

くまの
少しずつ焦りを使うって、いいですね!焦りのコントロールだ。
林田さん
本当は、どーんと焦りのままに行動したくなるんですけどね(笑)

 

それで何回も失敗しているので、我慢してます。

近藤
スモールステップって、ちょっとずつ目標をこなしていく感じなんですよね。着実に成果は出ているけど、本来の目標はまだ先にあるわけじゃないですか。

 

そのことに対して、焦りって生まれないんですか?

林田さん
焦ることもありますよ!でも、焦りって「やらなくてはいけないのに、できていない!」という気持ちから生まれると思うんです。

 

だから、小さな目標でも着実にこなしていくことで、「とはいえ前には進んでるしな~」と思えるんです。なにもしないより、変な焦りも生まれにくいと思います。

近藤
着実に積みあがっている事実に、目を向ける感じ?
林田さん
そうですそうです。計画を立てているときが一番焦りますね。

 

歩き出してしまえば、意外と平気。

近藤
へぇ、そうなんだ…。本当に参考になることばかりでした。焦りと、うまく付き合っていきたいですね。

 

今回も、お集まりいただきありがとうございました!

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(左から)くまの、竹内さん、林田さん。ご参加ありがとうございました!

Remeで初めての、当事者側と、家族側が混ざっての座談会。お互いに「そんなことを思っていたのか!」の発見がたくさんありました。

 

ネガティブなイメージのある“焦り”も、焦っている理由と解決策を冷静に考えることができれば、自分を動かす原動力になる場合もありそうですね。自分がどうして焦っているのか、一度立ち止まって考えてみてもいいのかもしれません。

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くまのなな

ライター

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年9月20日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。

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