うつと希死念慮…家族ができる3つのこととは?心の専門家が解説

2016.12.07公開 2019.05.16更新

心が疲れている時に必要なこと

希死念慮は心が疲れているほど感じやすく、「死にたい」と思うということは休息が必要ということです。

 

そこでうつや希死念慮を感じている人の家族は、できるだけその人を休ませてあげることが大切です。

 

うつや希死念慮を感じている人は、「うまくできない自分」について悩んでいます。

 

そんな中で家族に叱咤激励されてしまうと、先ほども述べた通り「こんなこともできない自分は死んだほうがマシ」と考えてしまいます。

 

このような考えになってしまうのは、心が疲れてエネルギーを使い果たした状態だからです。

 

当人でなくてもできるような仕事は、家族が代理で行ったり、日程が変更できる予定は延期したりして、当人が休める環境を作ってあげましょう。

 

希死念慮を感じている人は時に、「休むと迷惑をかけるのでは」「自分がやらなければ」と休息を拒む場合があります。

 

そこは、家族の方がしっかりと当人に「自分は死にたいほど疲れている」状態であることを自覚させ、エネルギーが回復するまで待ってもらうことが大切です。

 

 

焦らせないために心がけたいこと

うつや希死念慮を感じている人は、早く通常通りに働こうと焦ってしまい、症状が悪化する場合があります。

 

家族の方は当人の様子を注意深く見て、当人が焦っているときにはブレーキをかけてあげてください。

 

だんだん症状が良くなってきたと感じられる回復期こそ、この役割が重要です。

 

よくなったからといって、以前と同じように働こうとしても、病み上がりの状態ですからうまくできず、理想と現実がずれてしまうことがあります。

 

そうすると、うまくできないことに焦り、再び希死念慮が出てきてしまうのです。

 

そうならないように、まずはゆっくりと元の生活に慣らしていくことが必要です。

 

あまり高い水準は求めず、焦りすぎていると感じたら家族の方がブレーキをかけて調整してください。

 

「できて当然」ではなく「できなくて元々」という考え方が重要。

 

また回復期に差し掛かると、軽い不調が続いたり、良くなったり悪くなったりと波のある状態になったりします。

 

実は、この時期が家族にとっても本人にとっても特に苦しい時期です。

 

というのも、良くなっているのがわかる分、本人は遅れを取り戻そうと焦るし、家族も「できそうでできない」状況にイライラして叱咤激励してしまいたくなるのです。

 

しかし、本人には焦りをコントロールできるほどの心の余裕はまだありません。

 

ここが家族の頑張りどころです。

 

家族の皆さんは自分たちと本人の焦りのブレーキになることを心掛ける必要があります。

 

 

さいごに

うつや希死念慮を感じている人に対して家族ができることをまとめると、

・同じ目線に立って苦しみを理解する

・十分に休息が取れる環境を作る

・焦りを抑えるブレーキになる

の3つです。

 

うつや希死念慮を感じている人は生きることをとてもつらく感じています。

 

一番身近な存在である家族がそっと寄り添い、温かく見守ることがとても大切です。

 

焦らずゆっくり、協力して疲れた心を癒していきましょう。

 

 

【執筆】

須賀 香穂里

神奈川大学人間科学部・人間科学科所属

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【監修】杉山崇

臨床心理士 神奈川大学人間科学部 教授

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2016年12月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。