辛い経験はかけがえのない財産にもなる【関茂樹さん Part4】

2017.01.09公開 2017.06.18更新
 
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シルバーリボン活動を続けるために

固定電話がある、常駐スタッフがいる、そんな安定的なシルバーリボンの活動拠点を設置し、それを持続させていくには、経費をまかなえるだけの収入が必要になります。

 

その収入源をどうするかを考えて、自分たちの活動内容に近しい事業を展開することにしました。ちなみにこの展開は、恩師でもある東洋大学ライフデザイン学部の稲沢教授のご助言から始まりました。

 

事業内容は精神障がいの方を対象とした障害福祉サービス。新たな活動・事業拠点はもともと拠点としていた豊島区を第一候補にしましたが、隣の練馬区のほうが補助金等の優遇があり、人脈もあったため、練馬区で事業計画を進めていくことになりました。

 

しかし、練馬区は補助金等が優遇される反面、事業所の建築基準を練馬区独自で設けていて。区役所の障害者施策推進課は開設に協力的でしたが、建築課の認可がなかなか下りない。というよりも、厳格な建築課の基準を満たすような適合物件がなかなか見つかりませんでした。

 

そのようなことから、物件探しにも結構な時間を費やすこととなりました。当時私は福島で生活していましたので、仕事が休みの週末に、物件探しをするために上京するという期間が8か月以上続きました。

 

 

勘違いされた「シルバー」の意味

ようやく厳しい基準を満たす物件が見つかり、申込時の審査も通り、いざ契約を取り交わす直前でした。仲介していた不動産屋が何やら申し訳なさそうに電話をしてきて。話を聞くと、我々の事業内容を大家さんが高齢者のデイサービスだと勘違いしていたようで、障がい福祉サービスだと近隣に迷惑がかかるからとの理由で契約することができないとの内容でした。

 

どうやら大家さんは、私たちの活動の「シルバーリボン」の「シルバー」を、高齢者の「シルバー」だと思い込んでいたようです。

 

福島と東京をどれ程往復したか。長い時間をかけて、ようやく見つけた適合物件なのに… 事業開始時期も決まっていたので、練馬区での事業展開は諦めるしかありませんでした。身をもって”スティグマ”や”施設コンフリクト”の存在に直面しましたが、同時にシルバーリボン運動を展開する意義も再認識できました。

 

平成27年の4月に事業所開設を予定しており、そこで働くスタッフも、元々の仕事から転職して来てくれることになっていましたので、事業開始時期をずるずる引き延ばす訳にはいきませんでした。

 

そのような状況下のもと、新たな候補地として持ち上がったのが、私の地元の横浜でした。

 

横浜の中でも特に泉区というところは、福祉施設が多く集まり、障がい福祉サービス事業所も地域に溶け込んでいるようでした。

 

福祉サービスを展開しやすい土壌があって、なおかつ事業所として活用できそうな”箱”もたくさんありそうなことから、活動・事業拠点は横浜市泉区に決めました。

 

 

横浜で新たなスタートが始まる

その頃の私は、生活拠点が福島にあり、横浜で事業を始めることになっても、生活拠点を変えるつもりはありませんでした。

 

しかしシルバーリボン運動を日本で始められた杤久保さんが、「事業が始まったら想定外のことはたくさん生じる。その時自分の手で迅速に対処することができない場所にいるのは厳しいだろう」と真剣に話してくれました。

 

自分も同じようなことを考えていましたが、いろいろな事業に携わってこられた杤久保さんにそう言われたことで、生活拠点を横浜に移す決心がつきました。

 

その後、紆余曲折ありながらも、無事予定としていた平成27年の4月、横浜市泉区に障がい福祉サービス(就労継続支援B型)事業所を開設させることができました。

 

固定電話がある、常駐スタッフがいる、安定的な活動・事業拠点を設けるようになってからは、企業やメディアとの関わりが増えたような気がします。安定的な活動・事業拠点を設けたことによって、活動に対する信頼度が上がったのかもしれません。

 

また、障がい福祉サービスを展開することで、否が応でも関係機関と連携を図る機会が増えますので、ネットワークもそれまで以上に広がっていきました。そのようなことから、活動・事業拠点の確立は、大きな意義があったと思っています。

 

 

シルバーリボン運動を、より意義のあるものに

シルバーリボン運動は、「精神疾患への理解を深め、当事者やご家族の負担の軽減につなげ、当事者が回復しやすくなるような社会の実現をめざす」という理念のもとに活動しています。

 

元々、私がこの運動に携わるようになったのは、自分の実体験を何かに役立てたいと思ったからで、幸い私はそれなりの年月はかかりながらも、病気から回復することができました。

 

「精神疾患は誰が罹患しても不思議ではない。しかし、時間はかかれど回復することができる」

 

自分が苦しんできたことと同じように今苦しんでいる人に、シルバーリボン運動を通じて勇気や活力などがもたらされることになれば嬉しいですし、実際にそのような意義のある活動にしていきたいと強く思っています。

 

 

自分の十代の経験を、子どもたちの支援に活かして

シルバーリボン運動の展開や就労継続支援B型事業所の運営以外にも、私は自立援助ホームという施設を運営しています。

 

さまざまな事情から家庭で生活できない子どもたちに安心できる生活拠点を提供し、生活する上で必要となる生活の術を培ってもらい、後の自立につなげていく。簡単に言うとそんな施設です。

 

家庭で生活することができない社会的養護分野の子どもたちは、学習支援や就労支援が必要となりますし、施設を出てからのアフターケアもとても重要です。

 

施設へ入所するに至るまで、厳しく凄惨な生活を余儀なくされてきた子どももいます。しかし、それぞれの子どもが、それぞれに良いものを持っている。日々の子どもたちとのかかわりの中で、それを実感しています。

 

270

自立援助ホームNEXT 外観

 

352

自立援助ホームNEXT 個人部屋

 

322

自立援助ホームNEXT リビング

 

 

向き合おうとする姿勢こそ

この施設を運営するきっかけの一つとして、暴走族だった自分の十代の経験がありました。

 

暴走族仲間の中には、社会的養護施設の出身者もいましたし、複雑な家庭環境で育った者もいました。また、薬物やアルコール依存症の人も見てきました。

 

そのような自らの経験があったことから、社会的養護分野での見識を広げることができましたし、非行という観点からは当事者性に近いものもあったので、社会的養護分野に対する抵抗感などはありませんでした。

 

子どもたちとの関わりの中で大切にしていることは、向き合おうとする姿勢です。心と心とを向き合わせることです。

 

時にぶつかったり、すれ違ったりすることもありますが、それでも向き合おうとする姿勢をなくしてはならないと思います。向き合おうとする姿勢が、信頼関係の構築に大きくかかわってくると思います。これは何も社会的養護分野に限った話ではないと思いますが。

 

 

辛い経験は決してマイナスだけではない

今まさに辛い状況に陥っている人はたくさんいるでしょう。でも、それって必ずしもマイナスなことだけではないと思います。

 

辛い経験をしたからこそ、得られるものや活かせることがありますし、その分、視野や世界観も広がっていくのではないでしょうか。

 

私もそうでした。「何で自分だけ」と嘆いてた時期もありました。しかしその経験があったからこそ、病気になったからこそ、今の自分があると思います。その分深みある人生を送れていると思います。

 

十代の頃の自分からしたら、今の自分の生き方を、微塵も想像できませんでした。辛い経験や目を背けたくなるような過去も、今となればかけがえのない財産となりました。

 

人生って本当に分からないものですが、自分次第でいかようになるのかもしれません。

 

(関茂樹さんインタビュー完)

216

 

PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

関さんのインタビュー

【Part1】暴走族から精神保健福祉士になるまで

【Part2】自分の指を切り落としたたった一つの理由とは?

【Part3】悩んでいる人の助けになれる仕事を

【Part4】辛い経験はかけがえのない財産にもなる

 

 

関さんが取り組む活動

シルバーリボン活動

シルバーリボン公式啓発グッズ

自立援助ホームNEXT

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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