ゆめが丘DCとの出会いのきっかけや、現在の取り組みとは?【永井千尋さん 後編】

2017.01.11公開 2017.03.05更新
 
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今回は、横浜市の就労継続支援B型事業所 「ゆめが丘DC」で働いている永井千尋さんにお話を伺いました。

 

病院時代のご経験から、次のステップを具体的に描きはじめた永井さん。後編では、社会福祉士、精神保健福祉士でもある永井さんが福祉の道に入られてからのこと、仕事のやりがいや今後のビジョンなどについて伺っています。

 

 

ゆめが丘DCと出会う前

病院を退職して、次に働く施設を探していたところ、知的障がい者の更生施設、入所型の施設の職員募集があったので応募してみることにしました。

 

未経験なので不安もありましたが、ヘルパーの資格をとるときにお世話になった先生がいざとなったら自分のところにおいでと言ってくれていたので、まずは挑戦してみよう、と。そうしたら、運よく拾っていただけて、その知的障がい者施設で働くことになりました。

 

右も左も分からない状態でしたし、最初は利用者さんの視線が怖いと感じることもあって、「しんどいな」と思うことはありました。

 

でも不思議と「辞めたい」って思うことはなかったですね。体力的にもきつかったですし、先輩も怖かったんですが、本気で辞めようとは考えませんでした。

 

 

毎日が新鮮。仕事の面白さを実感

最初は覚えることもたくさんあって大変な上に、配属されたの場所は、介護度が一番高い方たちのグループで。毎日が本当に大変でしたね。

 

例えば自閉症の方で、ニコニコ・ケタケタ笑って楽しそうに見えるのに、先輩は「○○さん今怒ってるね」と言ったり。

 

私が「○○さん、どこどこに行ってくださいね」と言っても全然向かってくれないけど、先輩が言うとちゃんと移動していて。どうしてだろう?と聞くと、行く方向を指さしで示して伝えることが必要なのだと教えてもらったり。

 

言葉だけでは理解が難しいので、ジェスチャーや何かを見せて示すことによって、こちらが言いたいことが伝わるのだ、ということを教えてもらいました。

 

私は福祉の学校に行っておらず、そういう専門的な部分を全く知らなかったので、毎日がとても新鮮でしたね。分からないことを知ることが出来る、この職場での仕事は面白いんだ、と思いました。

 

利用者の方にもだんだん愛着が湧いてきて。私より年上の方なので、こういう言い方も失礼ですが、みなさんとてもかわいらしいんですよ。

 

とても人懐っこい。私が研修で数日施設に来れないと、「永井さんが帰って来る日をカレンダーに○付けて待っていたよ」と言われたこともあって。そんなこと言ってもらったら、うれしいですよね。

 

 

就労支援の難しさと向き合う

最初に配属されたところに3~4年くらいいて、その後、人事異動で就労支援の施設で2年くらい勤めました。就労支援は入所施設とはまた違った大変さがありましたね。

 

入所施設では、ご家族もある程度、施設側にお任せします、というようなスタンスの方も多かったのですが、就労の場合は通所で通って来られるので、あまりご家庭での領域には踏み込めない部分があります。

 

ご本人から相談を受けたり、私たちも何となくご家庭での問題に気づいたりもしますが、どこまで踏み込んでいいのかは、常に微妙なところでした。そういうジレンマはいつも感じていましたね。

 

そこの就労支援施設で働いて2年目を過ぎたあたりで、東日本大震災が起きました。福島ですから被害も大きくて。もともとスタッフ3人でやっていたのですが、1人先輩が辞めてしまって2人になって。

 

大変でしたが、結束力は逆に強まったので何とか乗り越えられました。

 

 

グループホームで生活支援

その後、退職をすることになったときに、自分はやっぱり生活支援がやりたいな、と思うようになりました。

 

それでグループホームで働くことになります。グループホームでは生活支援員という立場で雇っていただいて。利用者の方の相談に乗ったり、お金の管理や生活面での総合的な部分を対応させていただくという仕事です。

 

利用者さんとお話をしていると、結構悩みだとか不安が多いのですが、それでもたまに楽しかったお話をしてもらえると、私も本当にうれしいですね。

 

「今日はいい話が聞けたな」って。「今日は職場でこんな新しい仕事をさせてもらったんだと」という報告を受けると、「私たちの知らない場所で認められているんだな」とうれしくなります。

 

 

もっと福祉を知りたい

実はこのころ、他の地域の福祉ってどんなのなんだろう、ということにとても興味が湧いてきて。施設で働きながら通信制の大学に通っていたんです。社会福祉士の資格をとるために。

 

そこで勉強していくうちに、今まで知らなかった制度や支援方法のことも知ることができて、地域によって異なる制度が多いということにも興味津々でした。

 

ほかの地域の福祉も見てみたいな、と思うようになったのですが、母や姉のことを考えると家を出てまで仕事をする勇気が出なくて。家族の壁を壊す勇気がどうしてもなかったんです。

 

でも、社会福祉の勉強をしていく過程でたくさんの方とお話をして、「せっかくここまで勉強したんだから、これで終わってしまうのはもったいない」と思うようになりました。

 

 

ゆめが丘DCとの出会い

そんなときに、ゆめが丘DCのお話を頂いたんです。

 

代表とは前職の法人で一緒だったので、代表が何か別の事業をされるらしいというのは知っていました。実際、支援の現場の責任者として来てくれないか、という打診をいただいたとき、すごく行きたかったんですが、どうしても家族のことが引っかかって。

 

全部正直にお話して一度はお断りしました。

 

でも、やっぱりこのままじゃいけない、このまま家族の壁から逃げていたら私には新たに学ぶことももうないんじゃないか、そう思ったら急に焦ってきて。一度はお断りしたんですが、もう一度お願いしに行きました。

 

 

利用者ゼロからのスタート

家族のことは、最初はやっぱり気がかりでした。でも自分で決めた以上、吹っ切って仕事に熱中しようと思っているうちに、こちらの仕事も忙しくなり、もう迷いは消えていきました。

 

ゆめが丘DCは立ち上げから関わっていますので、それはもう大変でしたね。最初は利用者さんがいませんので、「新しい事業所を立ち上げた」ことを広めていかなければいけません。

 

病院のケースワーカーさんや相談支援事業所さん、区役所の福祉担当者などを訪ねました。営業ですね。

 

利用者さんは徐々に増えていって、今は40人以上の方が登録されています。定員は20名ですが、月~金まで毎日来所する方は少なくて、週に2~3回とか週1回、午前午後のどちらかだけという方もいるので、平均で1日に15~16人が利用しているという感じです。

 

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ゆめが丘DCの活動内容

ゆめが丘DCは、「物作り」というところに焦点を当てています。利用者のみなさんの感性を生かしていただいて、何か自分で作るということが主な活動内容となります。

 

裁縫の作業やフラワーアレンジメント、自分の手先を使って、自分のデザインで作っていくところには、利用者のみなさんも、一番興味を持たれているように感じています。

 

福祉サービスの一環ですので、障がいを持った方というのが前提ではあるんですけれども、一般の就職が今の時点では難しいという方や、一般就労までのステップが必要な方にもご利用していただいています。

 

ゆめが丘DCへ通っていただいて、その先の目標に向けた準備をしていただくというようなイメージです。

 

 

「浜印」と「浜花」

ゆめが丘DCの開所準備をしている時に、どんな作業をやっていくかという話になりました。

 

うちの代表がたまたま福島県の畳屋さんの近くを歩いていたら、畳の縁(へり)で作った小物が置いてあるのを見かけたんです。それで、ちょっと見に行って話を聞いてこないかっていう話になって。

 

私も作業を一緒に行うスタッフなので、実際に見に行って話を聞かせてもらいました。そしたら、「こんなことができたら、面白そう」というお話をたくさん聞かせてもらえたんです。

 

実際の縁(へり)を見せていただくと、すごく可愛いのとか、すごくかっこいいのとかがいっぱいあって。ドット柄やチェック柄、花柄もあるんです。それで、畳の縁を活用した作業をゆめが丘DCの作業に取り入れようっていう流れになりました。

 

その畳屋さんが、福島県の浜通りにある海沿いの畳屋さんで。横浜で開所するということになって、ブランド名に「浜」は絶対使いたいってなったんですね。

 

そしたら、次の開所に向けてのミーティングの時に、代表が「浜印」というロゴを早速作って来ていました。「もう出来たよ」みたいな感じで(笑)

 

「浜花」は、フラワーアレンジメントのブランド名で、事業所の最寄りのゆめが丘駅に置いていただいていたりしています。

 

フラワーアレンジメントはスムーズに作業を進められる方が増えてきたので、布を切って色を染めて、花自体を作るっていうところからやっていきたいなと思っています。

 

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ゆめが丘DCの魅力

当施設は自由に通所のペースを決められるところが特徴です。精神疾患を抱えている方は体調や気持ちの変化が生じやすいところもありますので、毎日の通所は負担と感じる方もいらっしゃいます。

 

ある利用者さんから、「週に3回の通所でもいいですか?」というお話をいただいたこともあって、自由に通所の回数を決められるようにしました。

 

そうしたら、ほかにも同じように利用する方がたくさんいて、自由な利用法ってこんなにニーズが高いんだなと気付きました。時間帯も日数も、無理をすることなくステップアップを目指せますからね。

 

 

あえて大変な作業も

ただ、就労支援という観点では譲れない部分もあります。私たちは希望する利用者さんが一般就労できるまでサポートしていきたいんです。

 

そのためには、好きなことを自由にやっているだけではダメですよね。だからあえて大変な作業も組み込んでいます。

 

例えば、点字の用紙をリサイクルした物作りです。これは事前の準備も検品もとても大変な作業なので、みなさん苦手意識が強いんですよね。

 

利用者さんは基本好きな作業を選択出来るのですが、点字の作業だけは必ず取り組まなければならない作業としています。

 

 

意見はどんどん取り入れる

利用者さんの作品は事業所のホームページから購入できます。

 

意識の高い方は、自分の作品が売れたかどうかをいつもチェックしていて、売れるととても喜びますし、売れないと、「あそこがいけなかったから売れないんだな」と自分で改善点を模索する方もいるんですよ。

 

そういう意見は危険がない限りどんどん反映していきたいと思っています。利用者さんにとっても居心地の良い施設になれれば良いですね。

 

 

小さな勇気が人生が変わる

ゆめが丘DCに関しては、ありがたいことに見学者の方が多くいらっしゃいます。私自身、見学対応のために出勤してるんじゃないかと思うぐらいです。

 

そこから利用に繋がる方もたくさんいるのですが、とりあえず見てみる、見てどうするかは、その後考えるぐらいの気持ちで、見学に来てもらえると良いのかななんていう気はしますね。

 

福祉の施設に行ってみたいと思っても、区役所に行って、申請しなきゃいけないとか、病院のワーカーさんに相談するだとか、なかなか足を運びづらいし、面倒だなと思っている方もいるんじゃないかと思います。

 

でも、意外とそんなに怖い所でも、狭い所でもないですし、一歩ちょっと勇気を出してみてほしいなと思っています。

 

実際、私もこれまで、勇気を出して施設に通うことでどんどん良い方向に向かわれた方たちをたくさん見てきました。

 

まずは気軽に顔を出してみて下さい。そこからまた何かがつながるかもしれませんし、新しい一歩になるかもしれません。もちろん私たちも、みなさんが気軽に立ち寄れる空間を作っていきたいと思っています。

 

ぜひ、お店に行くような感覚でちょっと顔を出してもらえたら嬉しいですね。

 

 (永井千尋さんインタビュー完)

PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

永井さんのインタビュー

【Part1】母子家庭だからと言われたくなくて。進学を諦めて進んだ道とは?

【Part2】ゆめが丘DCとの出会いのきっかけや、現在の取り組みとは?

 

 

永井さんが取り組む活動

就労継続支援B型事業所 「ゆめが丘DC」

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インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

 

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