ゲイを告白して父が怒り狂った理由とは?【鈴木茂義さん Part3】

2017.01.30公開 2017.05.18更新
 
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ゲイであることを勇気を出してカミングアウトした鈴木さん。周囲からの反応に勇気づけられる一方で、どうしても受け入れてくれない人の存在もありました。

 

 

ゲイの告白と父の嫌悪感

ゲイの告白をして、良いことばかりなわけではありませんでした。

 

ゲイの告白をして、一番嫌悪感を示したのは、両親…特に父でした。すごく驚いて、がっかりして、なかなかすぐには受け入れられないという感じでした。

 

母は、何となく気付いてたと言っていました。「何で?」と聞いたら、「座り方が女っぽいから」って言ったんです。自分では全くそんな意識なかったんですけどね。

 

その時は、母は「あなたを男子校に行かせたから、そうなってしまったんだ」と自分を責めていました。「全然、違うよ」と言っても理解はしてもらえませんでしたね。

 

 

父が怒り狂った理由

両親にゲイを告白したときは32歳でした。32年間、普通に子どもを見てきて、いきなりゲイですって言われても、「ああ、そうですか」っていうふうには、当然ならないでしょう。

 

父親は「二度と家に帰ってくるな」「情けない」「実家の周りを歩くな」と。父親は本当に怒り狂って、ひと通り怒った後は、今度は悲しみがやってきて。「もう自殺してやる」と言っていました。

 

その時、「そんなに怒ったり、落ち込むということは、よっぽど私にやってほしかったことがあるんだね」と聞いたんです。すると父親は、「長男の孫を抱きたかった」と。

 

「それは申し訳ないけど、できない。でも、旅行に連れていったり、おいしいものを食べさせたりすることはできるから、それで勘弁してくれないかな」と言ったら、「そんなものはいらねえ」と言って、自分の寝室に上がっていってしまいました。

 

父親にとっては青天の霹靂。そういう態度になるのも仕方がないのだと思います。

 

 

受け止められないこともある

もう一つのマイナスなフィードバックは、学校の先生になってから、勉強会のメンバーで男4人で飲んでいたときでした。

 

そのメンバーはとても仲が良く、先輩、後輩含めて4人だったので、飲んでいるときにゲイであることをカミングアウトしたんです。そしたら話題を全く違う方向に変えられて。

 

「僕、ゲイなんだ」「あ、そうなんだ。…でね~」みたいな感じで(笑)

 

カミングアウトしたことに対して、嫌なことを言われたとかは全くありませんが、不自然なほど全くそのことについて触れられなかったので、「ああ、これは受け止めきれなかったんだな」と思って、私もそれ以上、深追いはしませんでした。

 

 

「言わなきゃ良かった」という人もいる

私の周りにも、同じような境遇の方はいます。カミングアウトするのはすごく勇気がいることですが、案外言えば割と分かってくれるものだったりするんですよ。

 

ただ、私も、周りのゲイの人の話を聞いていても、リスクがあまりにもあるから、カミングアウトしないという人がほとんどです。

 

頑張ってカミングアウトしたけれども、やっぱり言わなければよかったという人もいるんです。私の場合ははなぜかうまくいっていますが。

 

 

「あなたが変わるわけじゃない」

カミングアウトする内容は、その人それぞれで全然ストーリーが違うので、私がほかの人のことを語ることはできません。

 

でも、私がいつも周りの人に言われているのは、「ゲイであろうがなかろうが、私自身がどういう人かを知っている」ということでした。

 

どんなふうに仕事をしていて、どんなふうに生きているかを知ってくれていて、みんなそこの部分を見ているから、「ゲイであることを知ったところで、何も変わることはない」と。

 

カミングアウトすると、やっぱり最初はびっくりするけれども、「だから、それが何?」って言ってくれる人が必ずいます。

 

あなたが変わるわけじゃないから、そのままでいいんじゃないっていう風に、大体、みんな同じことを言ってくれます。そのたび、僕は自信をつけていくわけです。「また言ってもらえた、よかったな」って。

 

 

悪いことをしているわけじゃないのに…

ただ、結婚適齢期になってくると、「結婚しないの?」「彼女いないの?」と聞かれることがあります。

 

何も教員に限らないとは思いますが、私はそういう発言に、ずっと嘘をつき続けているのがとてもつらかったです。

 

社会人になってからパートナーできたときも、そのパートナーのことを女性に置き換えて話をしなければいけませんでした。

 

別に悪いことをしているわけじゃないのに、本当のことが言えないというところが、社会人で先生になってからの悩みでしたね。

 

 

自分のマイノリティを子どもたちに活かす

最初の勤務先は小学校でした。私は、専門は特別支援なんですけれども、勤務先は14年間、ずっと小学校だったんです。

 

でも、小学校の中には発達障がいを抱えた子が、6.5%ぐらい今いると言われているので、大学の知識はとても役に立ちました。私自身のマイノリティ性を仕事に活かすことができましたしね。

 

私の生きづらさの入り口は、たまたまLGBTでしたが、教員をやっていると、子どもも保護者もいろんな困り感を抱えていて、なかなかそれを素直に困っていると言えないまま、うまくやろうと生活しているのがよく見えてくるんです。

 

隠しているマイナスな部分や、こんなことを言ったらいけないなという部分を、もう少しカジュアルに人に語れるようになると、もうちょっと生活しやすくなるんだと思います。

 

そこにハードルを感じる子どもや保護者と、そして自分自身も含めて、もう少し語れる機会があればいいなというのを、いつも感じています。

 

 

味方の存在に気づくことは難しい

カミングアウトできないのは、やはり勇気の問題でしょう。自分のことを語るのって、すごく勇気がいることですよね。

 

誰だって、こんなことを言ったら、周りの人に引かれるんじゃないかとか、こんなことを言ったら、周りの人に責められるんじゃないだろうかと不安になります。

 

気軽に相談できるような、この人は聞いてくれるだろうなという人が、なかなか身近に見つけられないということにも原因があると思います。

 

自分には味方がいるということに、なかなか気づけないことが多いなとこの仕事をしていて感じます。

 

保護者から相談を受けるときが結構ありますが、どの方も必ず「こんなことを相談していいか迷っているんですけど」って、枕ことばが付くんですよ。

 

先生たちとしては、どんな悩みでもウェルカムで受け止める準備はできているのですが、話す人たちは、こんなことを言っていいのかなという不安が消えないようなのです。

 

 

事後対応では遅いから

例えば、何か友達からいじめられてしまったとか、ほかの保護者とけんかしてしまったとか、何か事件が起こってからの事後対応か、もうどうしようもなくなってから、相談に仕方なく来るというパターンが一番多いです。

 

ただ、事後対応だと、どうしても時間や手間が解決までにかかります。

 

なるべく問題が大きくなる前に、ちょっと気になったことをいつも相談してくださいと言っているのですが、少し気になることがあるくらいではなかなか相談に来てくれないんですよね。

 

先生のほうは、「この子、何かありそうだな」ってやっぱり気付くので、先にこちらから話してくれそうな雰囲気とか、話題を提供して、相手の困り感を引き出すというふうにもしたりします。

 

予防的な対応のほうが、教員としてもやっぱりやりやすいんです。

 

僕の場合は先に、「いや、僕もいろいろあるんですよ」と言うようにしています。そうすると相手も話してくれるんですよ。

 

予防的に対処する上でも、こちらからの自己開示がまずは必要なのではないかと思います。

 

 

***********************

 

カミングアウトを通じて、どんな反応があろうとも、「自分は変わらない」という気づきを得た鈴木さん。様々な生きづらさやマイノリティ性を抱える学校の生徒や保護者との接し方にも実体験に基づく信念がありました。

 

次回の最終章では、LGBTをはじめとするマイノリティ性への取り組みや、これからの展望や実現したいことについて伺いました。

 

続きは、第4章へ

PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

鈴木さんのインタビュー

【Part1】LGBTと教育に向き合う小学校の先生の性への葛藤とは?

【Part2】ゲイをカミングアウト…その時の率直な思いや周囲の反応とは?

【Part3】ゲイを告白して激怒された話と素朴な想い

【Part4】いろんな人が世の中にいることをポジティブに伝えたい

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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