いろんな人が世の中にいることをポジティブに伝えたい【鈴木茂義さん Part4】

2017.01.31公開 2017.05.18更新
 
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ゲイのカミングアウトを通じて、どんな反応があろうとも、「自分は変わらない」という気づきを得た鈴木さん。

 

最終章では、LGBTをはじめとするマイノリティ性への取り組みや、これからの展望や実現したいことについて伺いました。

 

 

いろんな人が世の中いる

子どもたちが生きやすくなる世の中をつくるためには、「多様性を受け入れる」というのが一つだと思うんです。それともう一つは、「世の中には色んな人がいる」ということをポジティブに伝えていくこと。

 

私は、自分が結局、正規採用の教員をやっているうちに、子どもたちにその問題提起ができなかったんですね、怖くて。

 

特に、去年あたりは、ちょうど卒業学年の6年生を担任していて、「実は先生はゲイで悩んでいたんだ」というのを伝えた上で、マイノリティを抱えた人たちが世の中にいるということを教えたかったんです。

 

 

マイノリティ性を伝える難しさ

私の実体験を通して伝えることで、子どもたち自身の生き方とか在り方を考えるきっかけにしたかったんですけど、子どもに対してカミングアウトするということは、学校の中では影響が大きすぎると感じました。

 

そして、子どもの後ろにいる保護者たちにも、とても大きい影響を与えるだろうと。そう考えると、カミングアウトをした上でのそういう授業というのが、私はできませんでした。

 

授業は自分で考えて、自分で止めました。ただ、今振り返ると授業をやったほうがよかったなと思っています。

 

そのときの私は、自分がカミングアウトした上でやらなきゃと思っていたんですが、今考えると、カミングアウトしなくても、そういう授業はいくらでもできたんですよね。

 

当時の私は、授業がしたいというよりも、自分のことを分かって欲しいという思いの方が強かったのかもしれません。

 

 

知ってもらうことで動きやすくなる

今、一緒に特別支援学級で仕事をしている人が、私を入れて6人いるんですけど、そのうち5人には自分のことを伝えてあります。この前、スクールカウンセラーの方にも伝えました。

 

私は、前の学校に勤務しているときから、何かちょっとつらいなと思ったときには、早めにカウンセラーの人に相談していたんです。

 

それは自分自身の心の安定を図るためで、すごくつらくなってから相談するよりも、少しつらいうちに相談したほうがいいなというのは経験で分かっていましたので。

 

スクールカウンセラーの人は味方だなという、いいイメージしかなかったので、今の職場のカウンセラーの先生にも何かあれば早めに伝えます。

 

そういうバックボーンも分かった上でのほうが、職場でもお互いに良い仕事ができると思っています。

 

 

相手のありのままをよく見る

発達障がいの子どもたちをみていて気を付けていることは、まず、決めつけないで接するようにするということ。

 

自分で勝手に思い込むと、相手の話を丁寧に聞いたりするところがおろそかになるので、まずはその子どもや保護者のありのままをよく見るようにしています。あとは話を徹底的に聞くことですね。

 

先生が生徒の話を聞くときって、どうしてもトップダウンになりがちですよね。今の先生は、もうそれでは通用しないです。むしろ、「どれだけしゃべらない先生か」というのが、先生の質を決めるのではないでしょうか。

 

どれだけ待てるか、どれだけ聞けるか。

 

多分、それは私が、自分が小学生のときにそういう先生に出会いたかったという願望なんでしょうね。

 

 

カミングアウトフォトプロジェクト

2015年4月ぐらいから始まった、カミングアウトフォトプロジェクトというものにも参加しました。NPO法人が主催しているプロジェクトです。

 

今まで1,000人ぐらいの人の写真がアップされているんですけど、学校の先生がいなかったんです。だから私の番かな、と何となく(笑)

 

自分はいろんな人にカミングアウトできていて、割とポジティブにオープンにできているので、そういう学校の先生がいてもいいだろうと思いまして。

 

LGBTの問題を語ると、必ず「学校時代つらかった」「学生時代つらかった」という話がいろいろな人から出てくるので、これは自分がやるしかないと、ある種、使命のようなものが湧き出てきたんです。

 

もう一つは、このイベントに参加することである意味、社会的なカミングアウトになります。

 

そうなったら、また自分の今まで隠してきた部分がありのままになるための、また大きなものが抜けるんじゃないかと。それで、決意しました。

 

 

時代の後押し

渋谷区の同性パートナーシップ条例の制定は、かなりセンセーショナルな出来事でした。

 

あれをきっかけに、世田谷区やほかの市区町村にも広がりを見せているので、おそらく、2020年のオリンピックまでは、この勢いは止まらないと思います。

 

でも、よく知らないものってやっぱり怖いじゃないですか。例えば、電車とかで隣りに座った人も、よく知らないと怖いんですけど、その人を知ろうとすることから、理解が始まるのかなと思っています。

 

 

100%理解する必要はない

いじめの問題も同じで、自分との違いを認められないことから始まると思うんです。その違いを認められないのは、違いを感じることができていないからかもしれません。

 

「僕は君のことを違うと思っているんだけども、君のことを教えて」という風になれば、その人が怖い存在でなくなっていくのではないでしょうか。

 

「あなたの100%は理解できないけれども、40%だけは理解できたよ。でも、まだ60%は理解できてないよ」と、理解できてないということを正直に伝えることも大事ですよね。

 

「あなたのことを10%も分からなかったけど、あなたと話をしたら40%までは分かったよ」という感じで、話をしたことによる理解の伸びが、だんだん時間をかけて増えていけばいいのかなと思います。

 

 

学校現場から、より良い社会を

これからは、学校現場を通して、より良い社会を実現していきたいです。

 

より良い社会をつくっていくのは、一人一人の個人なので、その個人の力を伸ばして、その個人が豊かに成長するところを通して、豊かな社会に貢献できればいいですね。

 

私は今、生きることがだいぶ楽になりました。もう隠すことはほとんどありません。ただ、ありのままの自分を探す作業をしていくと、まだいろいろと出てくるんですよ。

 

自分のことに関しては、ある程度もう真っさらで大丈夫かなとは思ったんですけど、今度は家族の問題が出てきたり。むいても、むいても、なかなか核心にたどり着かないところがある。

 

だから、死ぬまで勉強ということなのかなという気もしています。

 

 

ありのままに生きていいんだよ

今、悩んでいる人に伝えたいのは、「ありのままに生きていいいんだよ」ということです。自分のこともたくさん語っていいよ、と。僕はずっと、自分以外じゃないものになろうとしていたので。

 

要するに、ゲイである自分を受け止められなくて、受け入れられなくて、小学校のときから装っていたので、それをやめつつある今のほうが、豊かに生きられているなという感じがします。

 

誰の中にもマイノリティ性って少なからずあると思うんです。だから、そのことをしまっておくのも選択肢としてはありますが、それを語ることによって変わることもあることを知って欲しい。

 

話すのは怖いけど、話した先にはまた何かが広がるんです。

 

結局、繰り返しになりますが、子どもに対しても、親に対しても、LGBTの人に対しても、そうじゃない人に対しても、言いたいことは同じです。

 

「ありのままに生きていいよ」

「自分のことはいっぱい語っていいよ」

 

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(鈴木茂義さんインタビュー完)

 

PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

鈴木さんのインタビュー

【Part1】LGBTと教育に向き合う小学校の先生の性への葛藤とは?

【Part2】ゲイをカミングアウト…その時の率直な思いや周囲の反応とは?

【Part3】ゲイを告白して激怒された話と素朴な想い

【Part4】いろんな人が世の中にいることをポジティブに伝えたい

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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