障害者手帳を持っていると就職に有利ですか?【LITALICOワークスPart2】

前回に引き続き、「就労移行支援のこと、よく分からない…」という方を対象に、就労移行支援を行っているLITALICOワークスさんの中の人に教えていただきました。

 

>>【LITALICOワークス】インタビュー全4回まとめ【就労移行・障害者雇用】

 

 

今回、お話いただいた人

 

吉村紘樹さん(LITALICOワークス ヒューマンリソースグループ マネージャー)

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恒吉麻実子さん(LITALICOワークス ヒューマンリソースグループ 社会福祉士)

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「そもそも、就労移行支援事業って?」(後編)

就労移行支援事業では具体的に何をするんですか?

恒吉さん:利用者の皆さんには、決められた予定の中で、「ビジネスマナー」「自己分析」「コミュニケーション」「自分の障害を理解するためのプログラム」など、授業形式のようなプログラムを行っていただいています。

 

「事務作業に就きたい」という利用者さんなら、「どれぐらい集中できるのか」ということを知るためにも、パソコン操作を覚えるためのプログラムを受けていただいたりします。プログラムの数でいうと、LITALICOワークスでは、現場レベルで個別に作っているものを含め、100を超えます。

 

また、「作業訓練」というものもあります。これは、袋詰めやピッキングなどの作業を通じて、実際の業務に使うスキルを日々行いながら、自分の得意・不得意を理解していきます。

 

事業所によっては「模擬会社」みたいなものを作って、「このプロジェクトを何人で、いつまでに終わらせましょう」という形でやることもあるんです。現場のスタッフが利用者さんへの理解を深めていく中で、たくさんの工夫が生まれています。

 

ほかには、「職場体験実習」というものもあります。実際の企業さんに、1日、2日から2週間ぐらいの期間で職場体験に行くんです。

 

そこでは、自分の体力や作業スキルなどを試してみる他に、「どういうところがストレスになりそうか」ということを実体験を通して知ることができるので、自信にもなるし、自己理解にもつなげることができます。

 

 

「何をやりたいのか全く分からない」という場合は?

恒吉さん:「アセスメント」と呼ばれるのですが、まずは「これまでにどんなことに興味があったか」「今までどんなことをやってきたか」といった周辺情報から伺っていきます。

 

そこから、この人だったら、きっと◯◯に夢中になるんじゃないかなと予想をして、「じゃあ、◯◯を体験してみよう」という感じで体験してもらいます。アセスメントを通じて糸口を探っていく作業は、一番楽しいかもしれません。

 

吉村さん:「どんな仕事をしたいのか」「どんなことをやりたいのか」という答えは、利用者さんご本人だって分からないことが多いので、アセスメントで無理に答えを見つけようとしないようにしています。

 

私たちも、利用者さんから情報を収集しながら、「こちらから答えを出す」ではなく、「一緒に考える」「答えを利用者さんから引き出す」ということを大切にしています。

 

恒吉さん:逆に、「これがやりたいです」って言ってくれる人もいるんですが、「本当にそうなのかな」という観点も忘れないようにしています。

 

「これがやりたい」と言われて、「その言葉通りに、支援を進めていって良いか」というと、そうでもないこともありますので。

 

 

就労移行支援事業の利用料っていくらですか?

吉村さん前年の収入に応じて、今年使う福祉サービスの利用料が決まっていきます。

 

もし、前年に収入が基準より少なければ0円で、年収おおよそ600万円以下の人だと毎月9,300円が上限です。それ以上の年収の人だと、毎月3万7,200円までは利用料がかかるという形です。(※注:2017年1月現在)

 

LITALICOワークスの場合、9割くらいの方は、0円でご利用されていますね。

 

 

就職までのサポート内容

利用者さんが就職するまでにはどんなサポートがあるんですか?

恒吉さん:就職活動が本格化してくると、履歴書の書き方に始まり、面接で「自分のことをどう伝えるか」や、「自分に配慮して欲しい点は何なのか」などを、これまでの活動を振り返りながら、スタッフと一緒に整理をして、一緒に企業にお伝えするということを主に行っています。

 

また、職場体験実習に同行して一緒に振り返りをしたり、一緒にハローワークに行ったりしながら、就職活動をサポートすることもあります。

 

 

ハローワークにも一緒に行くんですね

恒吉さん:はい。ハローワークの求人票って初めて見る人にとっては、分かりづらい所もあると思います。なので、一緒にハローワークに行って、求人を検索したり、ハローワークの方と一緒に相談することもあります。

 

あとは、私たちが企業に行って、「障がい者雇用の取り組みは進んでいますか?」という形で営業みたいな活動もしています。

 

例えば、ある利用者さんが就職を希望している業界の企業を訪問してみると、「実は、障がい者雇用したいと思ってたんだけど、どうして良いか分かんなくて困ってたんだよね」みたいな話になったりします。

 

 

ニーズに合った会社を探してくれる?

恒吉さん:求人が出ていない仕事でも、ニーズに合わせて求人を開拓することはあります。

 

実際に会社が見つかれば、そこの企業に就職を希望する利用者さんも一緒に来てもらって、実習をさせていただくケースもあります。

 

「自分がその環境に合うかどうか」という心配がある利用者さんが、実習を通じて仕事内容や職場環境なんかを実際に体験してみるんです。

 

そういったことをしていると、実は「障害者雇用ってどんな感じだろう」と不安に思っていた企業側の理解も深まっていく側面もあるんです。

 

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就職した後のサポートってありますか?

恒吉さん:はい。もちろん、企業に入っても職場に慣れるまでに時間がかかったり、企業側と就職したご本人の双方で対処できないことが出てくることもあります。

 

就職したご本人が、なかなか会社には言えないんだけど、「これどうなのかな」って思っていることって出てくるものですよね。

 

そんな時は、「定着支援」という活動の中で、私たちがその企業に訪問するなどして、一緒にご相談をさせていただきながら、状況を整えていくこともあります。

 

 

定着支援の期間は決まっているんですか?

吉村さん法令上は「6ヶ月以上」ということになっています。定着支援の上限期間については定めがないので、極端な話、定着支援を行い続けることは可能です。ただ、それをずっと続けることを良いとは思っていません。

 

基本的には、ご本人様が勤めている環境に変化がない限りは、その方と企業様が双方で調整できるようにしていくというのが理想ですね。

 

「ナチュラルサポート」と専門用語では言うんですけれど、私たちは企業が「ナチュラルサポート」をできる状態を目指して、コンサルテーションみたいな意味合いで支援していくイメージです。

 

企業側の悩みとしては、「怒っても良いんですか」「飲み会誘って良いんですか」といったものも多くありますね。そういう素朴な悩みや疑問に対しても、対応方法をお伝えしたりしています。

 

 

障害者手帳と就職について

障害者手帳を持っていると就職に有利ですか?

吉村さん:実際のご利用される方は、障害者手帳を持っている人ばっかりではないです。ご本人が診断を受けていても「手帳を取らない」という選択をして就職を目指す方もいらっしゃるんですよ。

 

社会人になってから急に障害者になっても、なかなか許容できない部分もあると思います。

 

「法定雇用率」という、企業がどれだけ障害のある人を雇用するかのルールでは、「手帳を持ってるかどうか」が障害者の定義なんですけど、私たちのほうから、手帳を持つメリット、持たないメリットについて、事例など色々話したうえで、手帳を取るか取らないかの自己決定をしていただいています。

 

「自分がどう生きたいか」で、手帳を取る取らないの判断をすれば良いかなと基本的には考えていますし、「障がい者雇用だから就職しやすい」みたいなコミュニケーションを絶対に取らないで欲しいって思っています。

 

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手帳持ってなくても、就労移行支援事業所の利用料は変わらないですし、主治医の診断書・意見書をもらうなど、手帳を持ってなくても利用する方法はあります。

 

例えば、「20年間、自分は健常者だ」って思って生きてきて、急に「障害者」っていうラベルをポンと張られることを許容することは難しいと感じる人は多いと思います。

 

障害者に偏見を持っていなくても、単純に許容できるかできないかという問題だったり、その人に手帳が必要なのかという判断も重要になっていきます。

 

 

中立的なスタンスだと利用者の方も安心できますよね

吉村さん:そうですね。もし「手帳を返還したいです」と言われたら、「どうぞ」みたいな感じでもありますし。

 

恒吉さんご自身が経験して、感じ取る機会を奪いたくないという思いがあります。だからこそ、手帳を取るか取らないかについても、タイミングによっては「手帳を取らずにチャレンジしたい」って思いを持つことは当たり前だと思うんです。

 

それなら私たちも、「じゃあ、万全の対策をしてチャレンジしてみよう」となるだけです。「手帳を取るか取らないか」という選択の機会がもう1回来ることがあれば、「チャレンジしてみてどうだったか」を踏まえて、またそのときの状況で決められれば良いなと思っています。

 

吉村さん手帳の返却をするとか、手帳を取らないといった「選択」をできることが、ポジティブな世界観だなと思っています。障がい者というラベルを貼られたとしても、そのラベルを「使う、使わない」という選択ができるという点は、ポジティブに考えることもできるなと思ったりはしますね。

 

恒吉さん:ある意味、交通手形みたいな感じですよね。

 

吉村さん:「手帳を持ちたくないけど、いったん手帳を取って、就職して仕事のペースを慣らしていきたい」とか「転職する時に、障害者というラベルを外して就職したって全然良いでしょ」みたいな。

 

それぞれの意志を踏まえての選択ですので、私たちはそれらが「良い選択」になるように伴走し続けていきたいですね。

 

 

そのほかの記事はこちら

【Part1】りたりこさん、就労移行支援事業のこと教えてください

【Part3】障害者の就職事情はどうなっていますか?

【Part4】福祉業界をリードするリタリコさんの弱点ありますか?

 

 

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>>【LITALICOワークス】インタビュー全4回まとめ【就労移行・障害者雇用】

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  • 本記事は2017年2月8日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。