「今なら両親にありがとうと言える」【鎌田悠香子さんPart3】

2017.03.05公開 2017.04.22更新
 
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就職先は直感で決めた

友人、家族…自分は実は周りの人たちにすごく恵まれていたことに気付いて、「こんなに恵まれているんだったら人生なんとかなるだろう」と思い始めました。

 

そう思えるようになった背景として、「留年してもなんとかなった」という経験が大きいですね。

 

だから就職先を探すときも、「一般のエントリーシートを書くような就活をしない方法」をとろうと思いました。

 

みんなと同じ方法で戦ってしまうと、自分がまた疲れちゃうと思ったんです。

 

就職サイトから、自分が行きたい所を選んで「ちょっと応募してみよう」というような気軽な感じで。そうしたらそこがたまたま採用してくれたんです。

 

 

友人の自殺。自殺予防に関心

社会人として働いているなかで、友人が1人亡くなってしまったんです。自殺でした。

 

すごくショックでしたし、そうなる前に私にも何かできたんじゃないかって思う所もあって。

 

それでブライダルの仕事をしながらも、「自殺予防のために何かできることはないかな」と模索し始めました。それが2015年の夏でした。

 

実家のある秋田県には、自殺対策で有名な「蜘蛛の糸」という団体があります。まずはそこに話を聞きに行こうということで、お盆に帰省しがてらお話を聞かせてもらいました。

 

2時間ぐらいいろいろとお話しして、「東京にもいろんな団体さんがいるよ」と紹介してくれて。そこで現実的に「自殺予防の活動、やってみようかな」と思い始めたんです。

 

 

従弟の自殺にも直面し、糸が切れる

そんな最中に、今度は従弟が亡くなったんです。友人と同じ、自殺でした。

 

また身近な人が自殺でなくなったという事実はとてもショックで、そこから自分の意識がまったく変わってしまいました。

 

当時、ブライダル業界で働いていたのですが、「従弟や友人はお祝いすることがもうできないんだ」っていう気持ちが大きくなってきて、接客もままならなくなってしまったんです。

 

気持ちはどんどん落ち込んでしまい、ついに会社に行くのがしんどくなりました。

 

もともとあんまり雰囲気が合ってない会社だったので、もうプツっと糸が切れてしまって、「ちょっと会社を辞めて立ち止まって考えよう」と決めたんです。

 

 

どの自殺も止められた

私は、親戚や友人の3人を自殺で亡くしているんですが、3人とも止められたんじゃないかと後悔しているんです。

 

3人とも「誰にも相談できなかった」「孤立してしまった」「親も気付かなかった」という状態でした。

 

もし、周りの人に気付く能力だったり、聴いてあげる能力があれば、防げたんじゃないかなと思っているんです。

 

私が現在、所属しているNPO法人Light Ring.はまさにそういった自殺予防の観点から、「身近な人を支えることができる人を増やす」という活動を行っています。

 

 

NPO法人Light Ring.での活動

NPO法人Light Ring.で、私は基本的に週一回日曜日に活動しています。

 

NPO法人Light Ring.の特徴は、悩んでいる本人ではなく、周りにいる家族や恋人、友人をサポートしているという点です。

 

「どう支えたら良いのか」とか「どういう距離の取り方が良いのか」といったことを考えたり、傾聴の練習や支え手さんたちが集まる機会を作ったりもしています。

 

支え方に悩んでいる人って、実は味方がいない人が多いんです。そうすると、支える側の人がだんだんと疲弊してきてしまうんです。

 

でも、そのことを相談できる人は少ない。だから、支え方に悩んでいる人が情報交換をする場所が必要になってくるんです。

 

 

支える側の人をサポート

NPO法人Light Ring.には「聴くトモ」というボランティアがいますが、その「聴くトモ」はもともと支え方に悩んでいた人たちです。

 

そういった方が、Light Ring.を見つけてくれて、「聴くトモ養成講座」に合格した人が「聴くトモ」になれるという流れです。

 

「聴くトモ養成講座」の合格者は、Light Ring.が開催する会のファシリテーターをして、オブザーバーとして傾聴の練習を見ながら、参加者にアドバイスをしたりする活動をしています。

 

「聴くトモ」は大体10名前後いて、メインで活動しているのが5~6名。皆さんボランティアです。20代からお母さん世代までさまざまです。

 

「子どもとのコミュニケーションの取り方が分からない」と悩むお母さん

 

お母さんがうつ病になってしまって、「支えたいけどどうしたら良いか分からない」という20代のお子さん

 

いろんな各世代の方たちが来ますが、みんなに共通するのは「誰かを支えたい」ということです。

 

あとは福祉職の人も参加しています。デイケアや介護、発達障害などのホームで働いている人たちが、スキルを勉強するために参加してくれます。

 

 

聴くトモさんの想いの強さ

聴くトモさん自身がもともと同じ状況にいて、辛かった経験が分かるから、そういった人たちを「支えたい」という気持ちが強いんだと思います。

 

「専門家じゃないからこそ寄り添えるものもある」という風に言ってくれていて。

 

お金ではなくて本心から支え手さんたちをサポートしたい、という思いにはいつも感服させられています。

 

 

Light Ring.のような場をもっと普及させたい

私としては、もっとLight Ring.のような場を広めていきたいんです。人を支えるのが当たり前になる社会になったら良いなと思っています。

 

精神的な病は支え方が分からないので、家族でも支えるのが難しいことがあります。

 

悩んでいる方は「どうせ、私なんか死ねば良いと思ってるでしょ」なんて心無い言葉を吐いてしまいます。そうなると、「支えたい」と思ってもしんどくなりますよね。

 

中には、支える立場が苦になって、自分自身もうつ病になってしまう人もいるんです。でも支え方が分かれば、そういう負の連鎖を食い止められると思うんです。

 

だからこそ、支える側をサポートすることで、みんなが健康的で楽しく生きていける社会を作っていきたいと考えています。

 

 

活動の場をどんどん広げたい

Light Ring.には、

 

「パニック障害で悩んでたけど、今は本当に元気になってバリバリ仕事しています」

「当時はしんどかったけど、支え方というのが分かった」

「自分のことも大事にしながら彼女をずっと支えることができたよ」

 

というようなメールが届けられています。こういった声に触れるたびに、これからも一人でも多くの人を助けるために、今の活動を広げていきたいと思うのです。

 

直近では、都内で自殺率が一番高い新宿区においてサポーターさんを増やそうと準備を進めています。

 

 

SOSの出し方を教えたい

あとは、子どもたちに対してもSOSの出し方を教えたいです。苦しんでいることを周りに伝えるのが当たり前の世の中にしたいです。

 

「大人に本音って言えないよね」と思っている若い子って多いんですよ。

 

「拒絶されるし、(本人にとっては)重大なことだと受け止めてもらえない…」

「親は話聞いてくれないし…」

「友達に相談しても、堂々巡りで終わっちゃうんだよね…」

 

というような意見をよく聞きます。実際、私も同じでしたし、そういった問題を改善したいと強く思っています。

 

そのためにも、SOSの出し方だったり、「親がだめなら先生や周りの大人に助けを求める方法もあるんだ」と伝えていきたいですね。

 

 

自分の気持ちを素直に感じてみて

今、精神疾患で悩んでいる人に伝えたいのは、「自分の気持ちを素直に感じてみて」ということです。

 

しんどい時期っていうのは、自分に意識が向いてるようで向いてない状態だと思います。

 

好きなものや嫌いなものが全く分からなくなっていませんか?

 

食べたいものもなくて「別になんでも良いや」と思ったり、怒っているのか、辛いのか、楽しいのか、つまらないのか…そんな感情も分からなくなっていませんか?

 

まずは自分に目を向けて、一旦、自分の感覚を取り戻してみてください。私にとってはそれがとても意味のあることでした。

 

例えば、「何が食べたいんだろう」って実際お腹に手を当てながら聞いてみるんです。

 

スーパーで食材の前に立って、「これじゃない」「今はトマトが食べたい…トマトか」といったように。

 

そうやって内面に目を向けるようにしたら、感覚が少しずつ戻ってきました。生きている実感が戻ってくるというか、安定してくるんですよね。

 

それから定期的に感情を吐き出すっていうのがとても大事だと思います。

 

 

世界は動き、自分は生きている

精神的な病を抱えてしまう人って、真面目な人が多いと思うんですよね。

 

「こう言ったら、ああ返されるかな」とか、自分の中でシチュエーションを先に考えてしまうことが多い。

 

でも、それは相手が決めることなので、本能のままに生きてみることも大切だと思います。

 

余裕ができてくると「今日は空がきれいだ」「雲が動いている」とか、そういう所にも目が向けられるようになって、「世界って動いてるんだな」「ってことは自分も生きてるんだ」と思えるようになりますよ。

 

 

今なら両親に「ありがとう」と言える

私も自分の内面に目を向けることで、辛い経験を乗り越えられました。今では両親に「ありがとう」という気持ちなんです。

 

私の場合、当時の親は精神的な支えにはなっていませんでしたが、逆に物理的な支援をしてくました。

 

「お金の心配がないように」「ひもじい思いをしないように」と物理的に援助をしてくれていたんです。

 

それはすごくありがたいと思っていて、それがなかったらきっと壁を乗り越えられなかったでしょう。私は親の援助のおかげで貧困に陥らずに、自分に集中する時間が持てました。

 

苦しみながらも、自分だけに集中して持てたので、割と洞窟からの抜けが早かったかなっていう風に思っています。それができない子も中にはいるわけで、本当にその点では感謝をしています。

 

いろんな思いはあったけれど、私と親の考えがお互い食い違っていただけ。だから今は「ありがとう」って言いたいです。面と向かってはなかなか言えないのですけどね。

 

 

鎌田さんからのメッセージ

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私は自分自身が、出来る人間、頼られる人間にならなければ価値がないと思っていました。

 

でもある時、自分はそこそこのうっかり者で、ぼんやり者であると気づかされました。

 

うっかりだし、ぼんやりだし、割とダメダメだけど、あたたかい周囲に助けられている。

 

たまには、自分も周りの人の力になれている。

 

という自分を受け容れることができたとき、

 

ようやく、等身大の自分になれた気がします。

 

 

私は以前、躁うつ病と診断されましたが、今は通院などしていません。

 

本当に自分が躁うつ病なのかどうか、分かりません。

 

でも今は、自分が心地良いと思えるペースで生きています。

 

それでいいのだ、と思えるようになりました。

 

 

現代には、様々な生きづらさがあると感じています。

 

たくさんの情報が飛び交い、やらなければいけないことも多く、

 

便利にはなっていくけれど、目まぐるしい日々のなかで、

 

立ち止まる時間をつくり、

 

ゆっくりとやわらかく、自分自身に問いかける時間を

 

大切にしていただけたらなぁと思っています。

 

(鎌田悠香子さんインタビュー完)

 

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PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

鎌田悠香子さんのインタビュー

【Part1】生きてる意味が分からなかった中高生時代

【Part2】遺書を書き、致死量の薬を飲んだ過去

【Part3】「今なら両親にありがとうと言える」

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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