「つながっていれば、なんとかなる」【黒川常治さん Part4】

2017.02.19公開 2017.05.07更新
 
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サラリーマンになりたい

世田谷区や調布市でもピアスタッフの活動をするようになり、ピアスタッフとして1週間過ごすっていうのが、その後の生活のパターンになりました。

 

そこでは精神疾患の方の就労啓発にも携わるようにもなったんですね。その頃、まだ精神障害者の方が勤めることは大変なことでしたが、実際に働いてる数少ない方をお呼びして、経験談を聞くということをやっていました。

 

関わっていく中で、いろんな地域の頑張ってる当事者を拝見して、「自分もサラリーマンになりたい」という思いを持ち始めました。

 

それまで、ピアスタッフは1年更新の契約社員だったので、「すみません、来年は就職したいと思っています」と話して、1年間は就職活動をさせてもらいました。

 

ちょうど、3.11が起きた年の1月に某有名企業の特例子会社から内定をもらいました。配属された部署では、私と同僚1人と上司1人の3人で、当事者は僕だけで、あと2人は健常者でした。

 

 

「勉強してもだめなんだよ。障害者なんだから」

仕事自体は順調だったんです。仕事もとてもやりがいがあって、WordやExcelあたりを駆使して仕事したり、後輩の管理職的な役割もさせてもらうようになりました。

 

後輩が入って来たのは良いんですけど、ビジネスマナーがなかなか守れてなくて。

 

「ビジネスマナーが何のためにあるか」というあたりも分かってもらいたいなと思って、勉強会を開いたりして頑張ってはいました。

 

そんな中で、調子を崩しちゃった人が出てきたんです。その途端に社長がストップをかけて、「これ以上やるな」というような感じで。

 

さらにその時、社長が「勉強してもだめなんだよ、障害者なんだから」みたいことを言っちゃったんですよ。特例子会社の社長がですよ。

 

それが僕にとってはものすごいショックで。

 

「特例子会社の社長がそんなこと言うの?」「特例子会社もまだまだだったか」のような感覚に陥りました。

 

 

気持ちが螺旋を描いて落ちていった

それまで、僕のうつは「仮面うつ病」と言われていたんですが、その言葉を聞いたら、本当のうつになってしまって。

 

ネガティブなことしか考えられなくなって、気持ちが自分の中で螺旋を描いて落ちていくんですね。

 

筋肉も硬直するようになったり、ドクターストップがかかり、1ヶ月休職して、退職するという決断に至りました。

 

会社の業務中の病気だったので、退職後は傷病手当金を1年半もらって、それと障害年金で暮らすっていうことができました。

 

「とりあえず休もう」

「お金をいただける間は休もう」

「ちょっと考えられるようになってから考えよう」と。

 

本当にぼーっと暮らすしかなかったですね。

 

今度は、旅行行ったりとかすることができず、ただ寝るというような時間でした。

 

 

巣立ち会との出会い

ただ、啓発活動だけは続けていました。その頃は、心の健康はもっと大事なものだし、日本は法整備をやらなきゃいけないということで、「こころの健康政策構想会議」というものが活動していた時期でもありました。

 

その会議では、当事者、家族、支援者、医者、専門職が垣根を越えて集まっていて、色んな人と出会ったんですね。

 

講演などした時も評判が良くて、みなさんすごく感謝してくださって。

 

体はまだ重くて、運動量はなかなか増えなかったんですけど、講演活動などで外に出る機会を増やしていた時に、今いる「巣立ち会」の理事長と出会ったんです。

 

 

「ピアスタッフとして来ない?」

その頃の僕は、「傷病手当金が終わった時にどうしよう」と心配になりつつも、「でもまだ働けないな」と思って、生活保護を受けるようになりました。

 

生活保護を受け始めて、少しずつ自分のできることを模索してた時に、うちの理事長から「今まで会議では会っていたけども、個人的に話をしたことがなかったから」とお食事に誘われて。

 

その席で「うちにピアスタッフとして来ない?」と言われたのが2015年の8月でした。それで、今働いている「巣立ち会」で働くことが決まりました。

 

 

巣立ち会の活動内容

巣立ち会では、東京都の調布市と三鷹市で8か所のグループホームを持ちながら、4か所の日中活動の場を運営しています。

 

作業内容は内職的なものが多く、柔軟剤のシートを封入するというような内職作業から、DMの封入作業、街角に貼ってある政治家のポスターの裏のテープを貼ったりなどです。

 

その他にアパートやマンション、公園の清掃などもありますね。どの作業も仲間と一緒に行います。

 

それ以外にも、長期入院されている方の所に行ったり、閉鎖病棟に入院されている方の外出に同行して、少しずつ地域に慣れてもらうようなことを行っています。

 

 

ピアスタッフとしての役割

私たちピアスタッフは「潤滑油」のような役目です。

 

支援者が「当事者の感覚ってどういうものなのかな?」と当事者の方から聞きたいことが出てくることがあります。そういった時の気付きとなる一面という感じですかね。

 

支援する側も1人でいるよりは、2人のほうが良いということだと思うんです。「ピアスタッフだからこれをやる」という押し付けではなく、本当に自分らしいスタンスでケアをしているという感じですね。

 

個人の可能性って、誰も否定することはできないし、自分まで否定したらもったいないなって思っていて。

 

チャンスは本当にいつやってくるか分からないし、自分に対してもそうですけど、僕が支援をするとしても、その相手の可能性や未来を絶対諦めないっていうスタンスを大切にしています。

 

何がその方にできるかどうかは分からないけれども、その方の未来を勝手に諦めちゃうことだけはしたくないというか、「個性の大切さ」を今すごく感じながら働いてますね。

 

 

つながっていれば、なんとかなる

みなさんには、「つながることを怖がらないで欲しい」ということと、「つながっていれば、なんとかなる」ということをお伝えしたいです。

 

そこから色々なものが動き始めるので、もし1人でウェブサイトを見ている方がいれば、どこかとつながって欲しいし、誰かとつながっていて欲しいと思います。

 

「ポジティブになれ」とは言わないんですけど、悩み続けるんじゃなくて、それを誰かに聞いてもらえることで、本当に良いきっかけになることだってあります。

 

だからこそ、まずはつながって欲しいんです。

 

僕自身は、巣立ち会でピアスタッフをやっていて、そのピアスタッフを自分なりに全うしようと思っています。

 

また、精神疾患の方の身体的健康など、解決されるべきことがメンタルヘルスの領域には山積しているんですね。

 

そういったことに対しても、当事者として発信し、問題提起をできるように、これからも活動を続けていきたいなと思っています。

 

 

(黒川常治さんインタビュー完)

 

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PHOTO by 齋藤郁絵

 

 

黒川常治さんのインタビュー

【Part1】巣立ち会ピアスタッフになるまでの原点

【Part2】終電に間に合うはずもない仕事と心身の異変

【Part3】うつ病と診断。家族に呆れられ、家を出る

【Part4】「つながっていれば、なんとかなる」

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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