「命を捨てる勇気を声を上げる勇気に」【村上裕さんPart3】

2017.03.18公開 2017.05.03更新
 
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カウンセラーとして開業

独立開業型のカウンセラーとして仕事を始めたんですけれど、いきなりお客さんが来るわけではなかったので、ダブルワークをしながら始めました。

 

幸運だったのは、私が高校や大学でビジネスについて勉強していたことが本当に大きかったと思います。

 

いいサービスを提供していれば売れるわけではなく、そのサービスを必要としている人のところに届かなければ意味がない、という考え方がビジネスにありますけれど、それをきちんと実践できたということが大きかったと思います。

 

あとは、セクシュアルマイノリティー当事者が、安心してカウンセリングを受けられる場所が限られていたことも大きいかもしれません。

 

インターネットという開かれた場所で、ゲイでありカウンセラーであるということを公表している人が私ぐらいしかいなかったので、割と全国からすぐにご依頼は入るようになってきました。

 

▼村上裕さんの著書『孤独な世界の歩き方』はこちら▼

 

 

 

記憶に残っているカウンセリング

大きなエピソードとしては二つですかね。

 

一つは、家業として農業をしている方のエピソードです。ご実家が農家ということもあり、農業系の大学を出ていて、一人っ子なんです。そして、ゲイなんです。

 

その方は、いわば家を継ぐ人なわけですよね。農家を継ぐか、家業を廃業するかというところで、親御さんとしては継いでほしいという期待もある。

 

ただ、継ぐとなると、お嫁さんをもらわないといけないんですね。

 

その方としても、家業を継ぎたいし、農業もしたい。でも、そのためには女性と結婚をし、子どもをもうけなければいけない。

 

「ゲイである」ということも、その方にとっては大事なことだったので、どう折り合いをつけていいのかというところで、非常にすごく苦しんでおられたんですよね。

 

その方と接する中で、すごく感じたのは、セクシャルマイノリティーは、確かに性の少数者ですけれど、恋愛だけが私たちの課題ではないということです。

 

性的志向や性自認に関するマイノリティーなので、性や恋愛に苦痛があるんだと多くの方はよく思われるんですが、それだけではなくて、家族関係もそうだし、仕事や人間関係、生き方全般的に課題であるということを、改めて実感した機会になりました。

 

二つ目のエピソードは、お子さんから「ゲイである」とカミングアウトをされたお母さんとのときです。

 

そのお子さんがあるとき自殺未遂をされて、その結果、ゲイであることをカミングアウトされたというお母さんでした。

 

「自分の育て方が間違ったんじゃないか」とか、「家族に相談していいか分からない」というように、子どもがゲイであるということをカミングアウトされたことによって、お母さんが孤立化してしまったんですよね。

 

友人や親戚、ご近所にも相談なんかできない…。でも、自分の子どものことなので力になりたいし、できることを探したんだけれど、どこにも行き場がないんですよね。

 

そのお母さんが話してくださったときに、LGBTの心理支援というのは、何も当事者だけではなくて、当事者を取り巻く方々全てに及ぶことなのだなというふうに感じました。

 

カミングアウトをした当事者は、味方を得るので楽になるし、前向きになれることが多い一方で、カミングアウトを受けた人は、その瞬間からマイノリティーになるんですよね。

 

そういうことに気付かせてくださったのが、お母さんのそのお話でした。

 

 

カウンセラーとして大事にしている価値観

まず、「孤独と孤立は違う」ということです。

 

孤独であるということと、集団の中で独りぼっちになるというのは、似ているようで違うということを伝えたいです。

 

二つ目は、「違うものは違うでいい」ということです。

 

無理に同じになる必要はないし、違いがあるから、マイノリティーやマジョリティーのような概念があるわけで。

 

それらは決して悪ではないので、違うものは違うままで、違うもの同士が互いに共存することが大切だと思います。

 

 

未来へ向けたビジョン

これまで、当事者や周辺家族の心理支援、マイノリティーの支援をしたい方へのコンサルティング、企業や学校での研修、LGBTの心理を背景とした心理学講座をやってきた上で、今、取り組んでいるのが「人材育成」なんですね。

 

私がカウンセラーとして、一人でできることはとても小さいので、LGBTQI、それぞれの当事者のカウンセラーを育てたり、カウンセラーと出会うことで、チームをつくりたいなと思っています。

 

その中には、LGBTの家族という当事者のカウンセラーもいてほしいですし、既婚のLGBT当事者のカウンセラーもいてほしいと思います。そういった、あらゆる当事者のカウンセラーでチームをつくりたいなと思っています。

 

あとは、少し話が変わりますが、ここ何回かのオリンピックでは、LGBT当事者のアスリートたちがオリンピックという舞台でカミングアウトをするということが行われています。

 

実際、セクシャリティーを開示できるくらいの安全な環境というものは、人のパフォーマンスを上げると言われています。

 

ですので、そういったマイノリティーのメンタルサポートチームとして、東京オリンピックにかかわれることも目指しています。

 

 

読者へのメッセージ

自分が望む人生を生き始めるのに、遅過ぎるということは決してないと思います。

 

この記事を読んでくださっている方が何歳であっても、いつからでも自分らしい人生は始めることができるので、諦めないでほしいと思いますし、命を捨てないでほしいと思います。

 

命を捨てる勇気があるなら、ぜひその勇気を、声を上げることに使ってほしいと思います。

 

命を諦めたり、人生を終わらせる…。それくらいの力があるのなら、誰でもいいので、たった一言「助けて」という、その言葉を発信する勇気に変えてほしいと思っています。

 

 

(村上裕さんインタビュー完)

 

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PHOTO by 齋藤郁絵

 

▼村上裕さんの著書『孤独な世界の歩き方』はこちら▼

 

 

 

村上裕さん全インタビュー

【Part1】ゲイ、いじめ、母子家庭、二丁目との出会い

【Part2】ゲイのカウンセラーとして生きる決意

【Part3】「命を捨てる勇気を声を上げる勇気に」

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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