メンタルを癒やす自宅での過ごし方を臨床心理士に聞きました

2020.04.20公開 2024.01.22更新

メンタルがつらいときの対処法

近藤
ネガティブな感情が出てきたときにどう対処すればよいでしょうか?
三瓶さん
ネガティブな感情が出てくるのは、危険や不快なものから自分を遠ざけようと「自己防衛反応」がしっかり働いているとも言えます。

 

そこでまずは、一生懸命この状況に対処しようとしている自分のことをいたわってあげてください。

近藤
なるほど。でも「自分をいたわる」というのは?
三瓶さん
手軽に出来ることとして、

 

「このような状況なのだから、いつもよりも落ち込んだり、不安や心配、イライラを感じやすくなるのは自然なことなのだ」

 

と自分に言ってあげてみることもひとつです。

近藤
・・・・・・。
三瓶さん
どうかしました??
近藤
今ちょっと、試しにやってみていました。
三瓶さん
そうだったんですね。笑

 

どうでしたか?

近藤
なんとなくですが、案外「自分はよくやっている」という感覚はあったのでいいかもしれません。
三瓶さん
どうしても不安や心配になったり、考えすぎてしまうときは、心配な内容を紙に書き出したり、メモをしたりして自分の外に出しましょう。
近藤
頭の中で悶々とするくらいなら、書き出して自分の外に出すのもアリですね。
三瓶さん
自分の中でグルグル考えているとネガティブな感情に支配されて、合理的な解決策が見えにくくなります。

 

メモなどの目に見える形で外に出してあげると、どう対処すれば良いか整理しやすくもなります。

近藤
「書くことでスッキリした!」という声はたしかによく聞きます。
三瓶さん
あともう一つ。

 

アルコール、カフェイン、ニコチン(タバコ)などの刺激物質を摂ることは控えめにしましょう。

近藤
いかにも健康ではないものではありますが…笑
三瓶さん
そうですね。笑

 

特に自粛のストレスで過剰に摂ってしまうと、刺激物質自体が精神的に作用するなどして、十分な眠りや休息が取りにくくなる可能性があるんです。

近藤
何ごとも「ほどほどに」が自粛生活を乗り切るためのポイントかもしれませんね。

 

テレビやSNSとの健康的な接し方

近藤
良いメンタル状態を維持していく上で、テレビやSNSとうまく付き合うために最低限意識したいことってなんでしょうか?
三瓶さん
ポイントはシンプルに2つです。

 

・時間を決める(見過ぎない)
・つらくなったら離れる

近藤
あまり深く考えすぎずに、これさえ意識しておくだけで大分ストレスフリーになりそうですね。
三瓶さん
特に、テレビを長い間つけながらコロナウイルスの情報を収集していると、視覚と聴覚で注意喚起をするので、不安や緊張状態が引き起こされやすいのではないかと思います。
近藤
なるほど…。
三瓶さん
SNSもたくさんの情報を含んでいるので、ネガティブな情報に長い間晒されると、不安や緊張が高まるのも当然のことです。
近藤
分かっていても、ついつい見ちゃうんですよね。笑
三瓶さん
つらくなったら、一旦離れて距離をとること。

 

そして、つらくならないためには、漫然と見るのではなく時間を決める。

 

見終わったら、一息ついて温かいものを飲んで気持ちを落ち着けたり、外を見て気持ちをリフレッシュさせるのもいいと思います。

近藤
コロナ収束後のためにも、よりSNSやテレビとの上手な付き合い方は身につけたいと思います。

 

人とのつながりを保つために

近藤
SNSやテレビに限らず、家族や親戚、友人など身近な人とのコミュニケーションで気を付けておくべきことはありますか?
三瓶さん
友人、大切な人、信頼できる人とのつながりを持つことは、社会的距離が必要とされるいまだからこそ大事なことです。

 

しかし、その一方でコミュニケーションがうまくいかず、ストレスを感じる方もいらっしゃると思います。例えば…

・話をしてもわかってもらえない

 

・相手が話してばかりで話を聞いてもらえない

 

・相手と意見が合わないので話していてもリラックスできない

 

・相手がイライラしたり攻撃的になっていて、話しているとつらくなってしまう、などです。

近藤
これまでチリツモで溜まってきた問題が、この非常時で修復できない亀裂になってしまうこともありそうです。
三瓶さん
そうならないためにもまず、他の人からの影響を受けすぎてしまうという場合は、相手と自分との境界線をしっかりと持つことを意識します。

 

心理学では「バウンダリー」を保つと言います。

近藤
自分は自分。ひとはひと。ということですね。
三瓶さん
同様に、他人の気持ちは他の人自身がどうにかすべきものなので、その人が怒ったり不安になったりしていても、

 

「ああ、怒っているんだな」
「この人は不安なんだ」

 

と思えばいいだけで、あなたがそれを引き受ける必要はないということも知っておいてほしいです。

近藤
しっかり境界線を意識することで楽になるかもしれませんね。
三瓶さん
そうですね。

 

あと、自分の伝えたいことがうまく伝わらないという場合には、DESC法と呼ばれる方法を使って伝える方法もあります。

近藤
DESC法?
三瓶さん
DESC法とは「状況」「気持ち」「提案」「選択肢」を使って自分の伝えたいことを伝える方法です。

 

以下に例を挙げてみますね。

(状況)「いま、コロナの影響で外に出られない生活が続いているよね」

 

(自分または相手の気持ち)「私もイライラしたり神経質になったりするから、あなたもそうなのかもしれないと感じているんだ」

 

(提案)「私も気をつけるから、もう少し言い方を穏やかにしてくれないかな」

 

(選択肢)「そうすれば、この非常時にももっと協力し合えると思うんだ。」

 

(選択肢)「もしくは、『イライラしている』って教えてくれたら、あなたの気持ちがわかって安心するのだけれど、どうかな。」

近藤
これだと、自分の言いたいことや相手に望むことが伝わりやすく、相手も理解しやすくなりそうです。
三瓶さん
そうですね。

 

ときには自分一人の時間を持つ方がホッとする、ということもあると思いますので、リラックスできる時間を持ってほしいですね。

 

日々のルーティーンをどう保つ?

近藤
良いメンタルを維持するために、以前のルーティーンは維持したほうが良いでしょうか?
三瓶さん
無理はしなくていいですが、以前のルーティーンになるべく近い生活を送ることを心がけるのはとても良いですね。
近藤
ただ、この外出自粛生活で以前のルーティーンが維持できなくなっている人も多いと思いますが…
三瓶さん
もちろん、以前のように外出しなくなったとしても、

 

・洗顔、⻭磨き、入浴
・身支度を整える
・規則的で十分な睡眠
・規則的な食事をとる

 

など、外出自粛の生活でもリズムを作ることはでき、生活が整いやすくなります。

近藤
できなくなったことより、できていることに目を向けてそれをしっかり維持するという感じでしょうか。
三瓶さん
そうですね。

 

あとは可能であれば、自宅でできる運動、好きなことや娯楽も十分取り入れてくださいね。

近藤
ルーティーンに縛られてしまってはしんどいですしね。
三瓶さん
以前のルーティーンはあくまで参考にしつつ、今の状況に合わせたルーティーンを改めて作っていくと良いと思います。
近藤
何かオススメのルーティーンってありますか?
三瓶さん
新しいルーティーンを作る際にお勧めしたいのは、朝起きたら朝の光をしっかり取り入れることです。

 

生活リズムが整い、夜のスムーズな眠りにつながります。

近藤
朝日、しっかり浴びるようにします!
三瓶さん
明るい光は睡眠に影響を与えるので、反対に夜は強い光を浴びないことも大切です。

 

眠る前には部屋の明かりなども暗めに調整して、スマホやPC、テレビなど光の出るものは控えることで眠りやすくなります。

近藤
睡眠のリズムを崩さないためにも意識してみます。
三瓶さん
日中の活動では、達成感を感じること、楽しさを感じる活動を盛り込み、それを達成することを目標にしてみるのも良いと思います。
近藤
小さなことでも、できたものに✔(チェック)をして増やしていくの、一見地味ですがたしかに達成感あります。
三瓶さん
カレンダーやスケジュール帳を活用するのもいいですね。

 

「行動活性化」と呼ばれる方法なのですが、プラスの感情が得られると同時に、自分で自分の生活をコントロールできている感覚も得られます。

 

頑張りすぎ、考えすぎで疲れたら

近藤
頑張りすぎ、考えすぎで疲れてしまったとき、

 

「そんなに頑張らなくてもOK」
「そんなに考えすぎなくてOK」

 

というマインドを持つためにはどうしたらいいでしょうか?

三瓶さん
この誰も経験したことがない状況で「頑張ろう、頑張ろう」としてきた、とても頑張り屋さんなのだと感じます。

 

一生懸命、自分や周りの状況を良くしようと考えていらっしゃる、そんな姿が伝わってきます。

近藤
責任感が強かったり、完璧主義の人もいるかもしれませんね。
三瓶さん
もし大切な人が、頑張りすぎて疲れてしまっていたら、なんと声をかけますか?
近藤
「ありがとう」
「よくやってくれているよ」
「無理しなくて大丈夫だよ」

 

とかでしょうか。

三瓶さん
そうですよね。そういった思いやりの言葉を自分自身にかけてあげるイメージです。

 

「セルフ・コンパッション」という方法です。

近藤
なるほど!
三瓶さん
難しい場合は、とても優しい大きな存在(アニメのキャラクター、尊敬している人、神様でも何でも良いです)なら、今の自分を見て何と言ってくれるだろうか、と考えてみてもいいです。
近藤
なるほど。「◯◯さんなら、なんて言ってくれるか」を想像するやり方もいいですね。

 

環境変化への適応が苦手な人へ

近藤
環境変化への適応が苦手な人にとって、特に現在は難しい状況かと思います。

 

今を乗り切るためにできること・やらないほうがいいことを最後に改めてお願いします。

三瓶さん
まずできることとして、

 

・十分に眠ること
・規則的でバランスの良い食事をとること
・適度に体を動かすこと

 

などの基本的なことを大事におこなうことが挙げられます。体が整うと、精神的にも整ってきます。

近藤
毎日の生活にある「基本」をしっかりこなすことがまずは大切、ということですね。

 

メンタル的に問題が生じたときに手軽にできる対処法も教えていただけますか?

三瓶さん
もし気持ちが落ち着かなくなったり、パニックになりそうになったら、周囲をゆっくり見回して見えるものを5つ、確認してみましょう。

 

これは「オリエンティング」と呼ばれる方法です。

近藤
周囲をゆっくり見回して見えるものを5つ…ですか?
三瓶さん
自分の身の回りをしっかり見て、今自分のいる場所と自分の身の安全を確認する、という意味があります。

 

草食動物が周りに危険な肉食動物がいないか確認するような感じです。

近藤
なるほど!
三瓶さん
同じように「グラウンディング」といって、地面がしっかり自分を支えていること、座っていれば椅子の座面がしっかり自分を支えていることに意識を向ける方法もあります。
近藤
色々あるんですねぇ。
三瓶さん
また、自分の感覚や呼吸にただ意識を向けてみる「マインドフルネス」という方法もあります。

 

自分が落ち着くフレーズがあれば、それを唱えてみるのもいいですね。

>>1日15分!マインドフルネスのやり方・簡単呼吸法とは?臨床心理士が解説

 

近藤
マインドフルネスはとてもよく聞きますよね。
三瓶さん
考え方の工夫としては、できなくなったことやできていないことに目を向けるのではなく、今日できたことや、今の状況でもできていることを探してみるといいと思います。
近藤
在宅勤務や外出自粛でできることが少なくなってきていますが、小さなことでもいいのでしょうか?
三瓶さん
もちろんですよ。

 

・今日は掃除ができた
・本を読むことができた
・友達に連絡することができた

 

など小さなことで構いません。

 

何もなかったら、「今日も1日、よく生きた」ということも十分素晴らしいことです。自分を十分褒めてあげてください。

近藤
自分を肯定する癖がつきそうですよね。
三瓶さん
繰り返しになりますが、自分がコントロールできないことや、不安・心配なことについて考え続けることは避けたほうがいいです。

 

また、アルコールやカフェイン、ニコチン(タバコ)などを摂りすぎることも注意してくださいね。

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近藤
三瓶さん、詳しく教えてくださり、ありがとうございました!

>>三瓶真理子さんの詳しい情報はこちら

 

【参照】

感染症流行期にこころの健康を保つために(日本赤十字社)
新型コロナウイルス流行時のこころのケア(IASC)
もしも「距離を保つ」ことを求められたなら:あなた自身の安全のために(日本心理学会)
人はなぜ被害者を責めるのか?(公正世界仮説がもたらすもの)(日本心理学会 心理学ミュージアム)
The COVID-19 Wellness and Coping Toolkit(Psychology Today)
Domestic Violence When You Can’t Leave Home(Psychology Today)
・平木典子(1993).アサーション・トレーニング (株)日本・精神技術研究所

 

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>>【カウンセリングの効果】8つの疑問に論文を用いて臨床心理士に答えてもらいました

>>認知の歪みの10項目とは?傾向と対策を事例で臨床心理士が解説

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  • 本記事は2020年4月20日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。