ネフローゼ症候群とフルタイム勤務の両立、そして人生を謳歌するための心がけ

ネフローゼ症候群で4回入院

近藤
入院生活のこともお伺いしたいのですが。
加藤さん
目的や治療法などは異なりますが、入院は合計で4回経験しています。

 

まとまった時間で体と心を休めるので、入院は嫌いじゃないんです。

近藤
なるほど。治療に専念できる環境だからこその安心感があるのでしょうか。
加藤さん
もちろん、治療の終わりが見えずに気が滅入ることはあります。

 

けれど、「いつまでもこんなことを考えていてもしょうがない」と思うようになりました。

 

早めに気がつけば、すごく苦しいとか痛いわけではないですし、病気しながら仕事をするほうが苦しい思いをすることが多いですし。

近藤
どのような入院生活だったのでしょうか?
加藤さん
1度目のきっかけは初発時の入院で期間が2ヶ月ほど。

 

腎機能がかなり落ちていたため、食事制限が辛かったです。

近藤
食事制限、かなり厳しいんですね。
加藤さん
塩分は1日3gに抑えられていましたし、タンパク質もカロリーもコントロールされていました。

 

それまで体育会でかなり大食いしていた自分にとっては空腹が一番のストレスでした。

 

先生にわがままをいって途中から食事量を増やしてもらいましたが。笑

近藤
入院中の食事って数少ない楽しみだったりしますもんね。
加藤さん
あと、当時はむくみが酷かったため、利尿剤も使っていました。

 

すると、半日で1kgぐらいのペースでみるみる体重が落ちていき、入院時80kgあった体重が2週間ほどで60kgまで落ちました。

DSC00710 (1)寛解直前の様子

 

近藤
体重の増え方だけでなく減り方も急激ですね。
加藤さん
今までの食事量の1/3以下になり、応援団の仲間にもお見舞いに来てもらったりして、1〜2週間で調子がよくなりました。
近藤
退院のタイミングは?
加藤さん
入院から10日ほどで寛解には至ったのですが、ステロイドが免疫を落とす薬のため、退院はおろかしばらく病棟を出ることもできませんでした。
近藤
体調がよくなったからといって、すぐに退院というわけではないんですね。
加藤さん
ステロイド60mgから始まったのですが、35mgあたりで院内や病院付近の散歩が許可され、30mgのタイミングでようやく退院になりました。
近藤
2度目の入院は?
加藤さん
腎生検で1週間ほどでした。
近藤
腎生検?
加藤さん
ネフローゼ症候群には4つの型があって、その型のうちどれかを診断するために腎臓の組織を抜き取るための検査で入院しました。
加藤さん
当時、「微小変化型」という診断でしたが、再発を繰り返していたためこの検査を行い、「巣状糸球体硬化症」であることが発覚しました。

 

普通は初発時にこの検査を行うものなのですが、当時腸炎を併発しており、検査できる状態でなかったために未検査のままの状態だったんです。

近藤
ふむふむ。
加藤さん
毎日尿検査があって、腎臓に針をさす検査のため、絶対安静が前提。

 

特に検査直後の24時間は、尿道にカテーテルを通し、寝返りも打てない状態を強いられたので辛かったです。

近藤
かなり不自由があったんですね。3度目以降の入院は再発がきっかけでしょうか?
加藤さん
そうですね。3回目は再発により、パルス療法のため2週間ほど入院をしました。
近藤
パルス療法?
加藤さん
通常は1日に数十ミリ飲んでいるステロイドを、一度に500mgほどの量を一気に点滴で注入し、腎臓にショックを与えて症状を抑える療法です。
近藤
言葉で聞くとちょっと怖いですね…
加藤さん
ステロイドの副作用が通常よりもかなり大きく、免疫も弱まるため入院が必要でした。

 

自分の場合は不眠の症状がキツく、夜は30分ごとに目が覚めてしまい、日中はずっと眠かった記憶があります。

 

寛解し、蓄尿検査で完全に蛋白尿が見られなくなった翌々日くらいに退院となりました。

近藤
4度目の入院は?
加藤さん
4度目の入院も再発で、今度はパルス療法とLDLアフェレーシスの併用で期間は2週間ほどでした。
近藤
LDLアフェレーシス…?
加藤さん
LDLアフェレーシスは、両腕に針を通して血液を循環させ、血中のLDLコレステロールを除去することで症状を抑える療法です。
近藤
新しい治療法も試されたということですね。
加藤さん
ステロイドに頼る治療で効果が薄くなってきていることから、再発を抑えるために併用してこの治療も受けることになりました。

 

苦痛が伴う治療ではありませんが、1回あたりの所要時間が2〜4時間と時間がかかるのが大変なところです。

 

アフェレーシス治療の途中ではありましたが、会社のこともあったため、残りの治療は通院で受けることにして退院しました。

 

ネフローゼ症候群と食事のこと

近藤
現在の生活でも、食事面で気をつけていることはありますか?
加藤さん
一番気を付けているのは塩分です。6g/日を目安として指示されているため、基本は収まるよう食事を調整しています。
近藤
「塩分控えめ」ってやっぱり大事なんですね。
加藤さん
そうですね。

 

ただし、厳守としすぎると逆にストレスになってしまうので、友達との食事会などのイベントがある際はそこまで気にせずに食べています。

近藤
塩分以外は?
加藤さん
再発した時には、タンパク質やカリウムの制限も加わるので食事の調整が難しいですね。
近藤
なるほど…
加藤さん
ステロイドの影響で糖尿病のリスクも高いため、糖分も取りすぎないように気を付けています。

 

あとは禁酒ですね。医者からは1杯くらいなら許可されていますが、健康を考え自主的に止めています。

近藤
お酒好きでもすぐに止められたんですか?
加藤さん
初めはすぐに止められなかったですね。

 

仕事の山場を超えたり、飲み会に参加したとき「1杯だけ」と言って2杯3杯と…。笑

近藤
なんとく想像できそうです。笑
加藤さん
これもあまり無理せず、できるだけ禁酒しようという意識を続けていくと、会社の人も気遣ってくれたりして、飲み会の席でも自然と断れるようになりました。

 

治療と仕事の両立は?

近藤
治療と仕事の両立で実際されていることについても教えてください。
加藤さん
まず自分にとって幸いだったのが、発病が内定後だったため就職活動へは影響しなかったことです。

 

会社の人事へは入社当日に病気のことを伝え、工場実習での立ち仕事を外してもらうなどの配慮をしてもらいました。

近藤
人事にはどのように伝えたのでしょうか?
加藤さん
重い病気を頑張って隠そうというより、一度入院していたことと、研修で出される弁当の塩分量を知る必要があることを伝えました。
近藤
あくまで業務上、困るかもしれない範囲でということですね。
加藤さん
そうですね。その後、病気が関係あるか確証はないですが、人事部に配属され、環境調整も柔軟に対応してもらっています。
近藤
環境調整といいますと?
加藤さん
配属時は採用チームでしたが、遠方への出張や立ち仕事が多いことから体への負担も大きく、異動希望を伝えるとすぐにデスクワーク中心の評価チームに異動させてもらうことができました。
近藤
たしかに柔軟ですね!
加藤さん
残業制限も当初は45h/月までだったところ、20h/月になり、今では残業も休日出勤も禁止にしてもらっています。

 

出張も県内出張以外は禁止になりました。

近藤
す、すごい…
加藤さん
他にも、重量物が持てないので力仕事はしないように配慮してもらっています。

 

体調を崩すことも多く、また通院日が平日のため休みを取らないといけないことも多いのですが、業務担当を変わってもらうなど、柔軟に対応いただいています。

近藤
そのような配慮事項ってどのように決めているのでしょうか?
加藤さん
就業上の制限については産業医と上司との三者で話し合って決定します。

 

具体的な業務内容・業務量については日々の上司との相談の中でコントロールしてもらっていますね。

 

決まった配慮事項についてはチームミーティングで共有してもらっています。

近藤
なるほど。業務の引き継ぎはどうやっていますか?
加藤さん
進捗をエクセルで共有するようにしています。

 

なかなか他人に理解してもらいにくい病気ではありますが、必要なタイミングで必要なことを的確に伝えることで必要な対応をとってもらっていますし、また伝えやすい環境下にあると感じています。

 

ネフローゼ症候群で仕事を続けるために

近藤
ネフローゼと向き合いながら仕事を続ける上で、大切にしている心がけはありますか?
加藤さん
良くも悪くも真面目な性格だと思っているので、仕事に気負いすぎないことは常に心がけています。

 

「仕事を頑張って続けないと」と思うことでいつの間にか大きなプレッシャーとなり、知らないうちに自分を苦しめていることもあります。

近藤
頑張りすぎないためのブレーキは大事ですよね。
加藤さん
仕事での成長はとても大事なことだと思っていますが、あまり考えすぎず、仕事の中でも「気を抜く瞬間」をできるだけ作るようにしています。
近藤
サボりたくなる気持ち、分かります!
加藤さん
(サボっているわけではなく、お茶を汲みにいく時に同僚と談笑したり、近くの席の先輩と雑談したりという時間を大事にしているということです)
近藤
m(_ _)m
加藤さん
念の為、誤解なきように。笑

 

あとは当然のことかもしれませんが、体調が悪いと感じたら早めに申し出ることも心がけています。

近藤
急に休んでしまうと周りの同僚もしんどくなってしまいますもんね。
加藤さん
そうですね。

 

兆候と感じられるような症状が見られたら、上司に出来るだけ早めのタイミングでそのことを伝え、対策を検討してもらうようにしています。

近藤
職場の人と良いコミュニケーションが取れているかが大事ですね。
加藤さん
今は周りに迷惑や負担をかけてばかりの毎日ですが、少しずつその恩返しをしていきたいと思っています。
近藤
今後やってみたいことなどありますか?
加藤さん
せっかく人事部にいるので、ゆくゆくは障害者雇用や障害者の就業支援・健康支援、啓発活動等に携われたらと思っています。
近藤
ご家族との関わり、関係にどのような変化がありましたか?
加藤さん
祖母、両親、自分の4人暮らしで、家族にはよく理解してもらっていて、食事から日常の行動まで気を遣ってくれています。

 

働いているため一定のお金は入れていますが、まだまだ家族に甘えてしまっている部分は多いとも感じています。

近藤
特に助けられた家族の支えって何でしたか?
加藤さん
特に有難かったことは、学生時代、入院していた時に片道2時間の愛知⇄京都間を何度も往復して世話をしてくれたこと、体調を崩し気味な時に会社までの送迎をしてくれたことがパッと思い浮かびます。
近藤
ご家族なしに難しいですよね。
加藤さん
日常の大半を過ごす家族の理解は職場の理解以上に難病患者にとって重要だと思います。

 

その点について言えば、かなり自分は恵まれている立場だと思いますし、しっかりと病気の状態をよくしていくことで、その恩返しができればいいですね。

 

SNSの活用の仕方

近藤
SNSを使ってネフローゼ症候群のことを情報収集しているんでしょうか?
加藤さん
Twitterは最初の入院初日に開設しました。

 

ただ、情報収集というより、これから愚痴が増えるだろうなと思って始めた感じです。

近藤
実際にSNSを活用してみていかがですか?
加藤さん
同病の人とつながれて、ステロイドの副作用の話や減薬のペース、食事の工夫などを知れたことは良かったですね。

 

と同時に、同病とは言え、症状は人によって違うなと感じました。

近藤
病名だけで一括りにできない面はありますよね。
加藤さん
そうですね。なので、SNSで色々な情報は入ってきますが、まずは病院の先生に言われたことをやることが基本。

 

ただ、先生によって若干スタンスも違うので、何が正しいのか自分で考える上で、SNSの同病の方の投稿も参考にしています。

近藤
自分で考えるための参考程度に、SNSの情報に触れる意識は大事ですね。
加藤さん
自分は治りにくい方だと感じていますが、SNS上ではどんどん薬を減らして活動している同病の人もいます。

 

ネフローゼという病気をそこまで重く受け止めていないような投稿も含めて、自分で考える上で良い材料にしています。

 

ネフローゼ症候群 完治への思い

近藤
ネフローゼの完治への思いや、現在どのようにネフローゼを捉えて日々向き合っていますでしょうか?
加藤さん
診断当初はまだ薬の反応が良いとされる「微小変化型」と診断されていたこともあり、今よりも楽観的に捉えていた部分があったと思います。
近藤
比較的症状は軽いほうだと。
加藤さん
そうですね。

 

制限しながらも時には旅行に行ったり、飲み会に積極的に参加したり。遠方への出張も多くありました。そんな中で、再発してしまったとしても「しょうがない」くらいに捉えていました。

近藤
なるほど。
加藤さん
しかしながら、診断が変わって再発を繰り返していく中で、このままだとあっという間に腎不全に陥ってしまうという危機感を強めるようになり、焦りが生まれてきていました。
近藤
再発を繰り返して、一向によくならないんですもんね。
加藤さん
この病気について主治医からは「完治はない」と言われています。

 

自分が目指しているのは「寛解」の状態を維持し、「薬をゼロ」に抑えることです。

近藤
「完治」ではなく「寛解」?
加藤さん
当初は焦りもありましたし、薬を早くゼロにしたい思いが強かったです。

 

ただ最近では「どうしたら早く治るか」ではなく、「しっかり治療していこう」と変わってきています。

近藤
ある種の「諦め」があるのでしょうか?
加藤さん
病気が日常になっていく中で、

 

無理という諦め→まだ治したい→すぐには治らない

 

→でも治したい→焦ってもいいことがない→気長に向き合うことが近道

 

という感じで心境の変化があったと思います。

近藤
一足飛びに「気長に向き合おう」とはなかなか思いづらいですよね。
加藤さん
難病と呼ばれる病気になったのは辛いことです。

 

でも、時間が経つに連れて感じることは、周りの人の温かさや他の難病患者さんとの繋がりなど、難病にならなければ感じられなかった・得られなかったことも多いということです。

 

一概にネガティブに捉えるものでもないと思っていますし、気長にこの病気と向き合っていきたいと思っています。

近藤
決してネガティブな面だけではないと。
加藤さん
そうですね。初期の自分の行動を後悔しているかというと、それも少し違います。

 

向き合っていく中で病気の形が見えてくるものだと思っているので、「無駄ではない再発」と位置付けています。

近藤
再発とは言え、前進していると。
加藤さん
再発しても過度に自分を追い詰めることのない、無理のない範囲で制限を課しています。

 

そうすることで、少しずつ、良い状態に近づいていくものと信じて行動しています。

近藤
良くなると信じて取り組むことが心の支えにもなりそうです。
加藤さん
何がよくて何が悪いのか見えない中で。普通に生活できているだけで感謝なんです。

 

仕事などと一緒で、この病気が生活の一部になっちゃってるので。

 

同病の方へのメッセージ

近藤
最後に、ご自身の経験から伝えたいことがありましたらお願いします。
加藤さん
ネフローゼ症候群はまだまだわからないことも多く、不安なことも多いと思います。

 

でも、すぐに命を落としてしまうような病気ではありませんし、寛解していれば日常生活への支障も少ない病気だと言えると思います。

 

人によって症状の進行具合や再発してしまう程度、治療法も大きく異なってくる病気だとは思いますが、まずは自分の限界をしっかりと認識することが大事だと思います。

近藤
限界を知ることで、過度に神経質にならずに日常生活を楽しめますよね。
加藤さん
はい。そして、ネフローゼ症候群は患者会もあります。

 

再発してしまうことはもちろん辛いことです。ですが、「再発で一つ自分の制限がわかった」というように前向きに捉えていく姿勢も大事だと思います。

近藤
なかなか難しいことではありますが大事ですよね。
加藤さん
前向きに捉えるようになるためにも、まずは自分の周囲の相談できる人を見つけること。

 

それが難しければ患者会等を通して、同じ悩みを持つ人と悩みについて共有してみるだけでもグッと心の持ちようが楽になると思います。(少なくとも自分はそうでした。)

近藤
ぜひ一歩踏み出してほしいですね。

 

加藤さんにはどのような相談相手がいましたか?

加藤さん
私の場合は、同病ではないけど難病で働いている人、話を聞いてくれる会社の同僚、Twitter、地元の青年団などがありました。
近藤
相談相手は、必ずしも同病の人とは限らないですね。
加藤さん
そうですね。

 

難病の捉え方は人それぞれですが、これからの長い人生、どうせなら不安を抱えたままよりも、少しでも前向きに謳歌できると良いなあと思っています。

近藤
加藤さん、お話ありがとうございました!
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近藤雄太郎

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  • 本記事は2020年5月25日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。

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