【LGBT】職場のダイバーシティ、どう取り組んだらいい?当事者視点でクロストーク

2020.08.12公開 2020.08.19更新

カミングアウトのきっかけ

近藤
今では性的マイノリティであることをオープンにされていますが、家族・友人に限らず、伝えるに至った理由や伝えたことでの変化について教えていただけますか。
鈴木さん
自分のことを隠し続けることに居心地の悪さを感じていましたし、我慢するのも限界でした。

 

このままでは自分が壊れてしまうと思いました。

近藤
それほど追い込まれてしまうものなんですね。
鈴木さん
それから、信頼すべき周囲の人に対して、

 

「知ってもらえたらもっとよい関係になれるのではないか」

 

といった期待から、本当の自分のことを知って欲しい思いもありました。

近藤
実際にオープンしてからの変化は?
鈴木さん
まず、自分を隠すことに使っていたエネルギーを仕事や余暇に使えるようになったことがあります。

 

見えない壁がなくなったため、今までよりスムーズにコミュニケーションが取れるようになり、私の場合、仕事のパフォーマンスが確実に上がったと感じています。

近藤
素晴らしいですね。
鈴木さん
自分が自己開示したことにより、相手も自己開示してくれることがあります。

 

もちろん、まだまだうまくいかないこともありますが。

近藤
一筋縄ではいかないですよね。

 

荻野さんはいかがでしょうか?

荻野さん
高校時代、「自分が本気で好きになるのは同性かもしれない」と感じ始めたのが最初でした。

 

社会の「一般的」から外れてしまう怖さと、それでも止められない好きになる気持ち…。

 

そんな自分が許せなくて、とても苦しい経験をしました。

近藤
なるほど…。
荻野さん
大学時代もまだ周囲のLGBTQ理解が進んでおらず、私自身も知識がなかったため、「自分はいったい何者なのか?」を常に自問自答する毎日でした。
近藤
自分はいったい何者なのか…
荻野さん
結局、私は男性にはなれないから男性とは違うし(手術してまで身体的性別を男性に変えたいとは思いませんでした)。

 

かといって、女性かと言われても何かちょっと違うなと。

近藤
性のことだけに周囲に打ち明けにくいですね…。
荻野さん
当たり障りなく、ごまかしながら生きていましたね。

 

それでも、他者から求められた在り方ではなく、何にも属さない私、枠にはまらない私を自分で知覚した時に、やっと自身と向き合うことができました。

 

と同時に、「本当の私自身を家族や友人にも知ってほしい」と。

 

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近藤
実際に打ち明けた周囲の方の反応は?
荻野さん
幸いにも、私の話に耳を傾けて聞いてくれる友人に恵まれていたので、今も昔も交友関係で本当の私を伝えて、困ったことはありません。
近藤
素晴らしいですね。
荻野さん
ただ、家族には長いこと本当の私を打ち明けられていなかったので、お互いに歯がゆい思いをしてきたし、させてきたなと思っています。
近藤
身近な存在だけに、難しい問題ですね。
荻野さん
今はゆっくりと理解してもらえるようにスローペースで対話もできています。

 

雪解けのように少しずつわだかまりは溶けてきているのかなと。

 

これも一つの家族のかたちですからね。

近藤
打ち明けてからのご自身の中での変化は?
荻野さん
とにかく生きることが、すっと軽くなりました。

 

「自分らしさ」を出して生きることがなんて楽しいことなのだろうか、と毎日が充実しています。

近藤
カミングアウトした人の話だけ聞くと、「カミングアウトしたほうがいいじゃん」って思いますが、そんなに単純でもないですよね?
鈴木さん
私も3年くらい前までは、「みんな、カミングアウトしたほうがいいよ」と心の中で思っていました。

 

それは、自分が上手くカミングアウトを出来て、周囲の理解も得られ、生きやすくなったと感じていたから。

 

でも、カミングアウトできるけど、あえてしない人もいることを知り、「みんな、カミングアウトしちゃえばいいのに」とは思わなくなりましたね。

近藤
なるほど。
鈴木さん
それから、「学校の子供とLGBT」をテーマに研修をした際にある人から、

 

「しげ先生はLGBTをカミングアウトしてうまくいったかもしれない。けれど、子供が安心して嘘をつける環境を作ることも大事じゃない?

 

って言われて、気付かされたところもあって。

近藤
と言いますと?
鈴木さん
「安心して嘘をつける」ことは「安心して本当のことも言える」のと表裏一体だと。

 

実際、僕はビクビクしながら、性のことを嘘ついていた時期もあり、それがだんだんストレスになっていたんですね。

 

その言葉を言われて以来、みんながカミングアウトしたほうがいいという気持ちが全面に出ることはなくなりました。

 

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近藤
カミングアウトするしないの前に、心理的安全性のある環境が大事だと。
鈴木さん
そうですね。

 

あくまで「僕」はカミングアウトして良かっただけで、それがみんなに当てはまるわけではないので。

 

職場で性的マイノリティのことを伝えていない理由

近藤
「いまの職場で自身が性的マイノリティであることを伝えているか」に対して、約8割の人が「伝えていない」と回答しています。

 

一方で、性的マイノリティであることを理由に、働く上で困っていることへの質問で「困っていることはない」と回答した人は約6割ほどいます。

 

これらの数字に関して、どのようにお考えになりますか?

荻野さん
8割の数字は「たしかにそうだよなぁ」と思います。
鈴木さん
伝えていない人の中にも、

 

・困っていないから伝えていない人

・困っているから伝えていない人

・不利な状況になりそうで伝えていない人

 

など様々。カミングアウトせず、自分のスキルやキャリアでなんとか乗り越えてきた人もいます。

 

いずれにしても伝えていないことを個人の力量や責任に転嫁するのはまずいかなと。

荻野さん
伝えることによって不利益になる懸念(アウティング等)が多いから伝えていない方も少なくないと思います。

 

実際に困っていないから伝えていないわけでもないと思います。

近藤
大事な視点ですよね。
鈴木さん
かつて私がそうだったように、伝える必要がないと考えている人も、実は伝えられない状況が慢性化していることもあります。

 

それで自覚なく、本当は生きづらいはずの状態にも鈍感になって、自衛のために「困ってない」と思ってしまっている人もいるかもしれません。

 

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荻野さん
気持ち悪いと言われても気にしない考えも、あえて鈍感になっていたのかもしれない…。

 

「そう思った方が楽だから困ってない」と思い込んでいたのかなと感じてしまいます。

鈴木さん
そうですね。

 

常に困っている状態が続いて、毎回困っているとしんどくなるので、痛みや困りごとに対して「これ、困っていないことにしよう」と言ってたことがあります。

 

でも当時のことを思い出すとやっぱり困っていて、今でもつらくなります。

近藤
偏見があるわけじゃなくても、言いづらい雰囲気はありますもんね。
鈴木さん
LGBTって見えづらい一方で、理解を示してくれるアライの人たちも見えづらい。それがカミングアウトを妨げている部分もあります。
※アライ(Ally):セクシュアルマイノリティ当事者への理解・支援を表明する人たちのこと
近藤
たしかに…。

 

どうしたらいいんでしょうか?

鈴木さん
例えば、レインボーの旗をオフィスに置くなどして、カミングアウトをしても大丈夫な雰囲気づくりを可視化する動きがよく聞かれますよね。
近藤
荻野さんの会社の入り口にもたしか…
荻野さん
ありますね!

 

あとは、PCにレインボーシールを貼ったり、社員証にレインボーのバッジをつけたりしていますが、「私もほしい」と言われることも増え、広がりを感じています。

鈴木さん
職員室の先生も机にレインボーのシールを置いたり、PCに貼ったりしていますね。

 

わざわざ僕に見せてくれることも増えました。笑

近藤
着実に輪が広がっていますね。

 

100%全員がアライになるのも難しい現実があると思いますが、どう折り合いつけていらっしゃいますか?

荻野さん
相手がどう思うかは相手次第で、強制はできません。

 

「共感できない」から始めて、どこがもやっとするのかを対話しながら、まずは知ってもらうことが大切だと思っています。

近藤
知らないからこその不安もありますよね。
鈴木さん
共感ありきにしない視点も個人的には大事にしています。

 

100%共感してくれたら嬉しいことなのかもしれないですけど、その人がどう感じるかといった価値観まではコントロールできないし、しない。

 

共感できなくても共存はできると思っています。

 

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近藤
「共感できなくても共存はできる」

 

なるほど…。

鈴木さん
相手の感じ方や価値観まではコントロールはしないしできないけど、やっていいこととダメなことはあります。

 

かつてアウティングされた経験に限らず、職場にもハラスメントまがいの発言はまだまだありますが、パワハラ防止法など制度面から人の意識もどんどん変わっていくのではないでしょうか。

近藤
期待したいですね。
鈴木さん
LGBTなどの取り組みが進んでいると言われる北欧でも、差別や偏見と共存しながら物事を前に進めていると聞いたことがあります。

 

100%の共感をゴールにしないで、色んな感じ方・考え方の違いと共存していくことが大事かと思います。

近藤
共感するしないも含めての多様性ですもんね。
荻野さん
多様であればあるほど大変ですよね。
鈴木さん
多様性って大変です。笑

 

でも、カオスで混沌な状態でも物事を前に進めることもできるし、多様であることが大事だと多くの人が気づき始めていると感じています。

 

カミングアウトされた側の不安

近藤
「性的マイノリティである」と伝えられたとき、どのように接すればよいか不安、そもそも見当もつかないなどの声も多いようです。

 

実際、どう接してもらうことが良かったでしょうか?

鈴木さん
私は、率直にびっくりしたり驚いてもらったことは良かったと感じます。

 

・自分が感じたことを率直にアイメッセージで伝える

・わからないことは質問する

 

というのがポイントかもしれません。

近藤
シンプルにそこが大切ですよね。
鈴木さん
「私は今までシゲ先生がゲイだと気づかなかったよ」
「私の周りには今までいなかった」
「私はすごく驚いたよ」

 

といったアイ・メッセージは私を傷つけることはないですし、驚いてもらって私は大丈夫です。

 

近藤
アイ・メッセージがポイントですね。
鈴木さん
ある同僚から「シゲ先生にはなんとなく見えないベールや壁を感じていたけど、その理由がわかった」と言われたときには、ちょっと嬉しい気持ちにもなりました。

 

上司にカミングアウトしたときは、「わからないことがあるから、教えて欲しい」と言われて、自分が尊重されているとも感じました。

 

「オランダのように同性婚が実現するといいね」とも言ってくれて嬉しかったのを覚えています。

近藤
いいですね〜!
鈴木さん
あと正直、相手が驚くのをむしろ楽しんでいた時期もあります(少し乱暴だったと反省しています…)。

 

本当のところで付き合える人か、一緒にいい仕事ができる人かどうかを見極めていたのかもしれないですね。

近藤
見極めるために…。なるほど。
鈴木さん
話を戻しますと、

 

何か大切なことを同僚に話すときに、どんな反応をしてほしいですか?どんなふうに接して欲しいですか?

 

そこにヒントがあると思います。

 

戸惑っても大丈夫だし、驚いても大丈夫だし、黙らなくて大丈夫です。笑

近藤
ありがとうございます。

 

荻野さんはいかがでしょうか?

荻野さん
私も、「変だよ」「気持ち悪い」と直接言われたことはないですが、率直に反応してくれていいと思っています。

 

興味を持って聞いてくれる人にはありがたい気持ちです。

近藤
なるほど。
荻野さん
単純に、一個人として興味を持って聞いてくれると嬉しいですし、安心もできると思います。

 

何も特別扱いしてほしくてカミングアウトしているわけではないので。

近藤
特別扱いではなく、まず「知ってほしい」と。
荻野さん
そうですね。

 

一人の人間として「知ってほしい」「興味を持ってほしい」と思う気持ちが根本にあります。

 

私の場合は、カミングアウトというよりは「対話」に近いかもしれませんね。

 

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近藤
伝えられた側の「不安」「分からない」には、そもそも知る機会がなかったことも大きそうですね。
荻野さん
「知らない」から分からない、相手を傷つけてしまうかもしれない、だから不安になる。それはそうですよね。

 

初対面の人と話すときに緊張する気持ちと同じだと思います。

 

知らないからこそ「聞く」ことが一番大事かなと。

鈴木さん
「どんなふうに接したらいい?」
「どんな言葉をつかったらいい?」
「もし私が嫌なことを言ったら、指摘して欲しい」

 

と伝えてみてはどうでしょうか?

 

答えは相手の中にあることが多いです。

荻野さん
完璧なコミュニケーションを目指す必要はないですよね。

 

思うままに聞いてもらっていいと思っています。

 

正直、それが悪気のない差別的表現だったとしてもいいかなって。

近藤
でもそういう言葉を受け取る側としてはしんどくないですか?
荻野さん
何か言われて嫌だったら、傷ついたって言えばいいし、次につなげていくことのほうを大事にしたいと思っています。
鈴木さん
困ってすぐに言葉が見つからないときは「あぁ、そうなんだ」と一回キャッチする。

 

一旦、ニュートラルに受け止めるので便利ですよ。笑

 

企業などの法人での取り組み事例

近藤
人事評価や配置転換、異動等で不利な扱いを受ける可能性がある理由で、性的マイノリティであることを伝えられていない一面もあるようです。

 

お勤め先、またはご存知の企業で取り組みのいい事例があれば教えてください。

鈴木さん
私が勤務している自治体の公立小学校・中学校では、全ての教職員に対して性的マイノリティの研修が行われました。

 

他自治体から異動してきた教職員に対しても、毎年フォローアップの研修があります。

近藤
かなり熱心…。
鈴木さん
賛否両論ありますが、企業でも性的マイノリティとその支援者(ALLYアライ)の社内グループを立ち上げ、理解啓発に取り組んでいるところもかなり増えてきましたね。

 

社内の取り組みを評価する「work with Pride」のような評価制度もあります。

近藤
色々な取り組みが出てきていますね。

 

一方、家族手当や慶弔休暇制度について、事実婚のカップルへ適用されていないケースは大企業でも多いようですが…。

荻野さん
当社では、同性パートナーシップ婚をした社員にも異性同士の法律婚と同等の福利厚生を受けられる「同性パートナーシップ婚制度」を導入しています。

 

取得条件が整っていれば、慶弔休暇、休業、転勤の際の手当てなどの福利厚生を受けられるので安心して働くことができています。

 

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近藤
さすが!
荻野さん
自治体の証明書や公証役場の書類だけでなく、戸籍抄本+住民票(世帯同一のもの)でも制度を利用できるようになると選択肢が増えると思います。
鈴木さん
同性カップルに男女の結婚と同等の福利厚生を用意しているところは増えてきていますよね。

 

先日は、KDDIで同性パートナーを家族として認めるだけでなく、その子どもも家族として扱う「ファミリーシップ申請」を開始したと報道がありました。

荻野さん
KDDIさんの「ファミリーシップ申請」は、委託社員も含め、同性パートナーの子を社内制度上「家族」として扱うことで話題になっていたなと思います。
鈴木さん
100歩くらい先を進んでて、僕らでもイメージしづらかったくらい。笑

 

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近藤
そんなに。笑
鈴木さん
同性カップルの存在は社会全体としても見え始めてるけど、さらに子供のことまで考えられていますからね。

 

拡大解釈したら事実婚なども対象になるかもしれません。

荻野さん
あとは、ライフネット生命保険さんも社内外でのLGBTの取り組みに力を入れているなと感じますね。

 

特に、同性パートナーを死亡受取金に指定できるサービスを開始したことは非常に素晴らしい取り組みだと思います。

近藤
先進的な事例がどんどん出てきてますね。
鈴木さん
最近のトレンドとして、LGBTだけではなく色んなダイバーシティを包摂しながら取り組んでいるようにも感じます。
近藤
と言うと?
鈴木さん
例えば、シングルマザー、副業など、それぞれのマイノリティのコミュニティがありますが、NPOなども組織横断的に支援の輪を広げているなと。
荻野さん
今まで企業内だけだったコミュニティも、社外のコミュニティとつながり合うことも増えていきそうですね。
近藤
なるほど。
鈴木さん
スターバックスも、性自認・性的指向の多様性だけでなく、障害者雇用も積極的ですし、最近では手話が共通言語となる国内初のスターバックスのお店も国立市にできましたよね。

 

ダイバーシティとインクルージョンの取り組みが進んでいくと、「それの何が問題なの?」となってくるようです。

荻野さん
理想に近い…

 

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鈴木さん
所属する組織が多様性を尊重しているからこそ、そもそもカミングアウトする必要がない人もいるくらい。
荻野さん
前向きな意味でカミングアウトしないんですね。
鈴木さん
実際、社内制度のある企業で働く友人は、カミングアウトせずとも何も困らないと言っていました。

 

制度もあるし理解啓発もある。

 

店員やお客さまの中にも同じような境遇の人がいるかもしれませんよね。

 

性的マイノリティに関する取組を進める上での課題

近藤
企業の取り組みがなかなか進まない背景として以下が挙げられています。

 

①当事者のニーズや意見を把握することが難しい
②どのような取組を実施すればよいのかわからない

 

これらを解決する上で、どのように取り組んでいくのがいいんでしょうか?

鈴木さん
多くの当事者が頑張って隠していますから、そりゃ課題は出にくいでしょうね…。
荻野さん
結局、「制度をつかう=カミングアウト」だと抵抗感ありますよね。

 

「申請したくても、上長をメールのccに入れなきゃいけない」ってカミングアウト強制じゃんとか。笑

鈴木さん
「卵が先か、ニワトリが先か」ではありませんが、先行事例を参考に社内制度を先に整えてしまうことで、利用する人が出てくることもあると思います。

 

声をあげる当事者の存在を待つことなく、できることから取り組みを進めることが大事だと思います。

荻野さん
ニーズに合わせるより、取り組みを先行することでニーズがついてくる感じですよね。
鈴木さん
「うちは当事者の声が聞けないからやっていない」
「制度、作ってみたけど誰も使わないからやっぱり意味なかった」

 

といった悩みはよく聞きます。

 

でも制度があることで、励まされてる当事者もいます。

 

制度を使っている数だけで測らなくてもいいのではないかとも感じています。

荻野さん
お守りみたいにもなるし。
鈴木さん
とは言え、使えないのはもったいないといった意見もごもっとも。

 

LGBTに限らず、間口の広い制度のほうが不公平感もないし良いのかなと思います。

 

今あるものを見直して、その解釈とか適用範囲を広げてみることから取り組んでみてほしいですね。

近藤
たしかに、「これだったら、そんなに形を変えなくてもできるんじゃない?」といったものが出てきそう。
鈴木さん
過渡期とは言え、ダイバーシティやインクルージョンの取り組み自体がスタンダードになってきているので、逆に取り組みをやらないと「?」となりつつありますし。

 

2020年6月1日から、パワハラ防止法が施行されました(中小企業は2022年4月1日から)が、今後のポイントになると思います。

荻野さん
最近では、三重県が都道府県で初めてアウティング禁止を条例に盛り込む方針も固めましたよね。

 

これらが多様性を認め合い、共存していける社会の形成へのきっかけとして結び付いてくれれば喜ばしいです。

 

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近藤
これからはじめる企業、まず何から始めばいいでしょうか?
鈴木さん
まずは、PRIDE指標で「できてるできてない」「これはすぐにできそうだな」を知ることからでも良いかもしれませんね。
近藤
指標を使って現状把握から、ですね。
鈴木さん
そうですね。職場の中で、

 

「男性だから、女性だから」
「異性愛者だから、同性愛者だから」
「結婚しているから、独身だから」
「子どもがいるから、いないから」

 

で居心地の悪さを感じないよう、社内の制度と空気感を整えて、定期的にブラッシュアップしていくことが「向き合う」ことなのかもしれませんね。

 

「かえって、特別な対応をしない方が良い」

近藤
「かえって、特別な対応をしない方が良い」といった意見も少なくありませんが、どのように受け止めていますか?
荻野さん
コミュニケーション上では「特別な対応」はしてほしくないと思います。

 

前述した通り、カミングアウトすることは一人の人間として「知ってほしい」「興味を持ってほしい」「認めてほしい」と思う気持ちが根本にあると思っているので。

鈴木さん
その一方で、性的マイノリティの人はこれまで、そうではない人が会社や社会の中で享受してきたものすら享受できていない現状があります。

 

例えば、婚姻の平等。それを実現することは特別な対応ではなく、マイナスのスタート地点をゼロにするだけのこと。

 

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近藤
たしかに。
鈴木さん
持てなかった選択肢が与えられた上で、それを使うか使わないかはそれぞれが判断できることが大切だと思っています。
荻野さん
「ここまでしないと同じ土俵にすら立てないのか…」といった状況が少しでも減っていってほしいですね。
鈴木さん
特別支援教育の現場で、「全ての子供に特別支援教育ができるといいよね」って話をよくしますが、

 

「いっそ、全員を特別扱いする制度を作っちゃえばいいのに」と思うこともあります。

 

こういうと、「いつも理想ばっかり」って言われちゃうんですが。笑

 

人権は優しさや思いやりだけじゃない

近藤
最近では「SOGI」といった言葉も出てきています。

 

多様性と向き合っていく企業・働く人に必要なこととはどんなことでしょうか?

※ソジ(SOGI):Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字で、セクシュアルマイノリティに限定した表現ではなく、誰にでもある一人ひとりの個性、特性として捉えられる概念
鈴木さん
性自認と性的指向が「自分ごと」と感じられることがポイントかもしれません。

 

つまり誰もが当事者であるんですよね。

荻野さん
同じ組織内で多様な人材が共存しながら活躍できるようにするために、相手のことを知る、知るために聞く。

 

そういった「対話」のきっかけとして、SOGIという新しい言葉をぜひ活用してもらえたら嬉しいですね。

鈴木さん
ここまでLGBT当事者として話をしてきましたが、実は若いときに「自分は男の先生でよかったなあ」と感じることがありました。
近藤
それはどんなことがきっかけで?
鈴木さん
今考えるととてもとても恥ずかしいのですが、男女平等について何も知らなかったし、「男性である特権」に全く気付いていなかったのです。
近藤
男性である特権?
鈴木さん
例えば、

 

「男の先生ってなんだか保護者に優しく接してもらえるなあ」
「若い女性の先生に対して、たまに厳しい保護者がいるなあ」

 

と感じることがあったのですが、女性の働きにくさやその構造を全く理解していませんでした。

近藤
ふむふむ。
鈴木さん
自分がゲイで、困ったことばかり目を向けていたんですが、ゲイである以前に、男性であるだけで享受している特権があるかもしれないと。

 

そんな自分のSOGIを通じて、世の中の構造に触れていったら、「自分は男性で、もしかしたら女性の足を踏んできたのかも」と気付かされたんです。

 

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近藤
普段はなかなかそこまで気がつけなかったりしますよね。
鈴木さん
同性愛者・異性愛者かの前に、男性であるか女性であるかもすごく大事な問題。

 

でも、それって勉強するチャンスがないので、そう気づけてラッキーだったかもしれません。

近藤
たしかに男女格差の問題も日本ではまだまだ大きいですよね。
鈴木さん
人を差別するつもりがないと思っていたはずが、実は隠れたアンコンシャスバイアス(自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ。無意識の偏見)があるかもしれません。

 

そのためにも、個人の問題だけではなく、社会構造や制度を疑ってみることも大事だなと。

近藤
なるほど。
鈴木さん
いつも子供達に言ってることですが…

 

「私もあなたを傷つけないから、あなたも私を傷つけないで」と。

 

それを統治するのは優しさや思いやりではなく、社会構造や制度だったりもします。

近藤
たしかに…。
鈴木さん
「人権って優しさだよ」って19年教えてきたんですが…。笑

 

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荻野さん
間違ってはいないですよね。笑
鈴木さん
小学校でも、「一緒に遊ぼうよ」ですぐ仲直りできることも結構あります。

 

「あれ、お前ら仲悪かったんじゃないの?」って。笑

 

そういった多様性とか人権って思いやりだけじゃなく、「構造」も重要なキーワード

近藤
社会構造や制度によって、個人が何に優しくなれるかも変わってくるのかもしれませんね。
鈴木さん
優しさとか心の問題だけでとらえるのではなく、制度・法律といった構造でSOGIを捉え直す必要もありそうです。

 

法律で認められているかどうかも大切な問題です。

荻野さん
LGBTQという言葉が必要なくなるくらい、共存し合える社会に変わっていくといいですよね。
鈴木さん
必ずしも100%共感ありきではなく、ゴールを共有して共存することは可能だと思っています。

 

自分が豊かになることも大切だけど、隣の人が豊かなら、それもまた自分の豊かさにつながっていくのではないでしょうか。

近藤
鈴木さん、荻野さん、今日はありがとうございました!

 

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鈴木茂義さん(写真左):公立小学校非常勤講師。自治体の相談員。専門は特別支援教育、教育相談、教育カウンセリングなど。14年間の正規小学校教諭として勤務を経て現職|鈴木さんの詳しい情報、研修・講演のご依頼はこちら
荻野佳織さん(写真右):LGBT当事者であることをオープンにした上でパーソルチャレンジ株式会社で勤務する傍ら、社内のアライ活動にも参画している|パーソルグループのセクシャルマイノリティの取り組みはこちら

 

【引用】

厚生労働省 令和元年度 厚生労働省委託事業 職場におけるダイバーシティ推進事業報告書

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2020年8月12日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。

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