「人の数だけ性も多様」LGBT当事者の養護教諭としてLGBTを学校で教える意味

2017.07.10公開 2020.06.07更新

生徒の悩みで一番多いのは「家庭」のこと

大学を卒業後、最初に入った学校が2000人ぐらい、次の学校は3000人と大規模が学校に赴任しました。

 

最初に赴任した学校は中高一貫校で、保健室にベッドが8床もあって、一つひとつのベッドがカーテンで区切られるようになっていました。

 

保健室には、私以外にもう一人の先生が必ずいてくださって、他の子の様子を見てくれていたので、生徒一人ひとりの話をしっかり聞くことができました。

 

次に赴任した3000名規模の学校では、最初の学校とは方針の全く違いました。

 

基本的に、「保健室に来ても教室に返すスタンス」だったので、5分10分ですぐに教室に返す感じでした。

 

「3000人を相手にしてるから仕方がない」と割り切らなきゃいけないんですが、「この子の話はしっかり聞いてあげたいな。」という時もありました。

 

個人的にはやっぱり、落ち着いている所でゆっくり話を聞くほうが性に合っていたのかなと思います。

 

実際に保健室に相談をしに来る子は、毎日学校に来てる子もいますし、その日によって調子が良くなったり悪くなったりするような子もいます。

 

校門前でしゃがみこんでしまって、「今日はちょっと無理だから」と車でそのままお家に帰宅することもあれば、「ちょっと頑張って保健室までは歩いてみようかな」ということがあったり。

 

教室の前になると耐えきれなくて、吐き気がして、保健室に逃げ帰ってくる子もいました。

 

保健室に来る生徒は、本当に多種多様です。

 

相談として一番多かった悩みは、「お家のこと」が多かったと思います。

 

こちらとしては、とにかく傾聴の姿勢ですね。

 

保健の先生は家庭にまでは入れないので、もし暴力を振るわれている子だったら、警察や児童相談所と連携をとって、一時的に保護してもらうように連絡することまで介入していました。

 

学校に勤めた後は、LGBTのことを話すために、しっかり勉強しなければなかなかったので、今の活動を本格的にスタートするための勉強期間に入りました。

 

性の違和感とLGBTのカミングアウト

実は、付き合っていた彼は小学校の頃からいたんです。6~7人ぐらい。でもひたすら男の子から逃げてました。

 

男の子が近寄ってきたら、「何か違う」みたいな違和感があって。近寄らせないようにしたり、キスされそうになったらダッシュして逃げたり。

 

そんなことをずっと繰り返しながら、「なんだろうこれは」と自分でも分からなかったんです。

 

高校まで、保健の授業で男女の人の身体のことを習って、大学では更に養護教諭養成課程だったこともあって、教える立場として知識を積み重ねていたはずでした。

 

しかし、同性愛などのLGBTのことは当時は習わなかったし、未だにLGBTという言葉は教科書にはなかったりもします。

 

その結果として、同性のことが好きになるなんていうことは、自分の考えの中になかったんですね。

 

教科書どおりじゃない人だっているはずなのに、それにずっと気付かずにいました。

 

LGBTに対して、個人的にはポジティブな方に捉えてくれる人が多いと感じています。

 

それこそ、私の出身が大阪ということもあってか、「面白い」といって受け入れてくれる人もいます(笑)

 

私の友人でトランスジェンダーのユウマ君も、お兄ちゃんに初めてカミングアウトした時、「めっちゃええやん」と言われたそうなんです。

 

でも、最終的には「言ってくれてありがとう」「おとん、おかんに言ってる?」と聞いてくれたらしくて。

 

それでも、お父さんやお母さんに対するカミングアウトには時間は大分かかるとは思います。

 

私の場合は、両親ともすぐに認めてくれたんですが、ユウマ君の場合、お父さんがユウマ君を誰かに紹介する際、「うちの娘です」ではなく「うちの息子です」と言ってくれるまでに7年かかったそうです。

 

それぐらいやっぱり時間はかかるものなのかなと思います。

 

私がカミングアウトした時は、パートナーと一緒に正座して言ったんですけど、母親は「なんとなく分かってたよ」と言ってくれました。

 

父親は「すぐには理解できないけど、これから勉強していこうと思ってる」と言ってくれて、隣でパートナーは号泣でした。

 

LGBTの当事者として好きな人との子供が産めないのは辛いですが、友達がいっぱいできて生き甲斐ができた感じがしています。

 

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学校でLGBTを教える意味

それで社会人2年目に、「男の人が好きだ」という男の子に出会ったことから、同じ性別の人を好きになる人もいることに気付き、LGBTと言う言葉も知りました。

 

と同時に、その男の子のことが自分のことのように感じられて、カチっとブロックが組み合わさったような感覚があったのが自分の性に対するきっかけでした。

 

LGBTの当事者は実際、10人に1人ぐらいいてもおかしくないと言われていて、カミングアウトしている人だけでも13人に1人はいます。

 

その子たちが悩んで、苦しんで、自尊感情が低くなって、自殺までしてしまうような現状もあります。

 

ですので、教育段階でもLGBTのことをきちんと教えておくことで、その子たちの命を救えるんじゃないか、と思ったのが、今の活動の原点になっていますね。

 

保健室で生徒の話を聞いてる時に、「死んでしまいたい」とかリストカットといった話がものすごく多くて、それが結構衝撃的でした。

 

それに加えて、最初の学校に勤めていた時に、同じ養護教諭養成課程を卒業した子が癌で亡くなってしまったんです。

 

どちらも、自分の中でかなりショックで、「救える命があるんだったら救いたい」気持ちになりました。

 

また、LGBTのトランスジェンダーの子は「自殺したい」と思ったことがある子が7割くらい、未遂までしているのが14%もいるという数字を見たことがありました。

 

楽しいことも、嬉しいこともいっぱいあるだろうに、自殺のことしか考えられなくなってしまう状況を教育で何とかしたいと思いました。

 

教員の免許を持っているので、保健室だけじゃなくて、全ての生徒・児童を対象に、私がLGBTの当事者だと話すことで、自尊感情をもっと高めたり、それぞれの生活の質を良くしたりするお手伝いができればと思っています。

 

学校を退職した後の半年間では、東京の勉強会に参加したり、LGBTの当事者の友達をいっぱい作りました。

 

この半年では、「自殺したい」と思っている人や、現在進行形で何かしらの闇の部分を抱えている人が結構多いと感じることが多くて、「教育でなんとかしたい想い」がさらに強くなった期間でもありました。

 

また、教頭先生の教え子ですごく元気だった男子生徒が、社会人になって、同性の上司を好きになってしまったことを理由に自殺をしてしまった話を伺うことがあったんです。

 

「あの子もLGBTの授業をちゃんと受けてたら、自殺なんかしなくて済んだのかな」

 

という話を聞いた時に、まだまだ教育でやるべきことはあると思いましたね。

 

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出張授業での生徒の反応

約半年間の準備期間を経て、現在はLGBTに関して出張授業をさせてもらっています。

 

私が授業でお話しする前に、LGBTに関してDVD学習をしてもらうんです。その後、DVDの感想を発表したりして、当事者の私と会う流れです。

 

実際、授業をやってみると反応がものすごく良いんですよ。

 

DVDを観た感想では、「可哀相」「しんどそう」「辛そう」といったことがいっぱい出てきます。

 

「LGBT当事者の人には困りごとやしんどいことがいっぱいある」ことを勉強してから私と会うので、

 

「あれ?普通にニコニコしてるお姉さん来た」

「LGBTって全員困ってたり、しんどいんじゃないの?」

 

と、生徒は少し戸惑ったり拍子抜けする感じで、私のほうを見てくるんです。

 

LGBTのことを一通り紹介しながら、「LGBT当事者であっても楽しく生きられるよ」と伝えようと心がけています。

 

そうすると、

 

「あれ?LGBTの人ってものすごい悩んでるんじゃなかったの?」 

「うそ!DVDで観たのと全然違う」

 

といった反応を見せてくれる生徒さんがほとんどです。

 

LGBTの味方(アライ)になってほしい

授業の半分ぐらいは質疑応答にしています。

 

「今日は間違えてオカマとか言っちゃっても、この教室だけだから、何でも聞いてくれて良いよ」と言うと、本当に子どもたちからいろんな素直な質問が飛んでくるんです。

 

例えば、「トランスジェンダーの人って、身体と心が違うってどんな感じなんですか?」という質問には、

 

「私のお友達でトランスジェンダーの人が、『ぬいぐるみを着てるような感じ』とお話をしてくれました」と答えます。

 

そうすると、トランスジェンダーの意味がよく分かっていなかった子どもたちも、「そんな感じなんだ」と理解まで落とし込めるんです。

 

あとは、「オカマ」とか「ホモ」とか「レズ」とかその人が傷つくような言葉は言わないこと。

 

そして、もし友だちが自分の性の悩みを打ち明けてくれたら、

 

「大切なことを教えてくれてありがとう」

「困っていることはない?」

「誰に話してるの?誰にだったら話しても良い?」

 

この3つのことを必ず伝えて欲しいと伝えています。

 

「この3つの問いかけをしてくれたり、LGBTの味方になってくれる人のことを『アライ』って呼ぶんだよ」と話をして、アライのシールを授業の最後に配るんです。

 

このシールは、私の友だちで大事なアライでもある人に協力してもらった、とても大切なシールです。

 

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LGBTの授業をさせてもらった後には必ず、「授業後、何でも相談しに来てください」といった時間を取っています。

 

そうすると、今のところ100%の確率で「実は私もそうなんですけど、おかしくないですよね」と相談に来てくれる子が1人はいます。

 

そうした時は、担任の先生には「そういう子がいましたよ」とだけ伝えます。もう周りにアライがいっぱいできてるので。

 

「教えてくれてありがとう」

「困ってることない?」

「話して良い人、だめな人は?」

 

この3つを守ってくれるアライが周りに山のようにいることは、当事者にとっても大きい存在だろうなと思います。

 

「アライのシールを翌日から意気揚々と名札に付けて登校してくれてるんです」

 

と、担任の先生から伺ったり、子どもさんから話を聞いた保護者の方から、

 

「私にもアライとして何かできることがないか考えてみることにしました」

 

といったご感想を頂いたりもしました。

 

「大切なお話を聞かせていただいて、ありがとうございました」

 

と、熱心なお母様から学校に電話があって、担任の先生が私に伝えてくれたりするので、「保護者の方にも伝わってるいるんだ」と嬉しくなる瞬間ですね。

 

1億人いれば1億通りの性のあり方がある

LGBTについて教育現場で知る機会がほぼない現状の中で、保健の教科書ではまだ「異性のことを必ず好きになります」といった文章があるんです。

 

その部分が変わらない限り、当事者の悩みはまだまだ残っていくんじゃないのかな、と思っています。

 

今、先生に教職員研修でお伝えすることと、子どもたちに伝えることを同時進行でさせてもらっています。

 

ですので、全国の学校を対象に、先生の中の知識が不足している部分を解消していくのと同時に、子どもたちにも同時にアプローチをかけていきたいですね。

 

LGBTは単に性の問題ではなく、命に関わる問題だとまずは認識していただきたいと思っています。

 

LGBTで悩む子どものうち、自殺願望がある子が7割、自殺未遂14%っていう事実を踏まえた上で、LGBTに取り組むかどうかっていうことをまずは考えていただきたいです。

 

子どもたちの命に関わる問題で、もしかしたら教え子がLGBTのことで困って悩んで命を落としてしまうかもしれないことを考えてほしいです。

 

子どもたちは本当にアンテナをよく張って、「この先生に相談して大丈夫かどうか」と見ています。そういう子がいることを理解したうえで、言葉遣いや普段の行動を意識していただけるといいですね。

 

若い人には「成長したら世界は変わって見えてくる」ことを伝えたいですね。

 

今の時点で人生真っ暗ではなくて、楽しいこととか嬉しいこともたくさん出てくると思います。

 

辛いことがあっても、人生を終わらせる選択肢ではなくて、悲しいことがあった分だけ、次は楽しいことがあると思ってもらえたら嬉しいです

 

もう少し、年齢が上の方は、LGBTの存在をなかったものにするのではなく、まずは知ってもらいたいです。

 

性はグラデーションなので、一人ひとり個性があって、一人ひとりが違っていて、1億人いれば1億通りの性のあり方があることを頭の片隅にでも置いておいていただければ有難いです。

 

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2017年7月10日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。