「1億人いれば1億通りの性のあり方がある」【井上鈴佳さんPart2】

2017.07.14公開
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性の違和感とLGBTの自覚

実は、付き合っていた彼は小学校の頃からいたんです。6~7人ぐらい。でもひたすら男の子から逃げてました。

 

男の子が近寄ってきたら、「何か違う」みたいな違和感があって。近寄らせないようにしたり、キスされそうになったらダッシュして逃げたり。

 

そんなことをずっと繰り返しながら、「なんだろうこれは」と自分でも分からなかったんです。

 

高校まで、保健の授業で男女の人の身体のことを習って、大学では更に養護教諭養成課程だったこともあって、教える立場として知識を積み重ねていたはずでした。

 

しかし、同性愛などのLGBTのことは当時は習わなかったし、未だにLGBTという言葉は教科書にはなかったりもします。

 

その結果として、同性のことが好きになるなんていうことは、自分の考えの中になかったんですね。

 

教科書どおりじゃない人だっているはずなのに、それにずっと気付かずにいました。

 

 

カミングアウトの話

LGBTに対して、個人的にはポジティブな方に捉えてくれる人が多いと感じています。

 

それこそ、私の出身が大阪ということもあってか、「面白い」といって受け入れてくれる人もいます(笑)

 

私の友人でトランスジェンダーのユウマ君も、お兄ちゃんに初めてカミングアウトした時、「めっちゃええやん」と言われたそうなんです。

 

でも、最終的には「言ってくれてありがとう」「おとん、おかんに言ってる?」と聞いてくれたらしくて。

 

それでも、お父さんやお母さんに対するカミングアウトには時間は大分かかるとは思います。

 

私の場合は、両親ともすぐに認めてくれたんですが、ユウマ君の場合、お父さんがユウマ君を誰かに紹介する際、「うちの娘です」ではなく「うちの息子です」と言ってくれるまでに7年かかったそうです。

 

それぐらいやっぱり時間はかかるものなのかなと思います。

 

 

「なんとなく分かってたよ」

私がカミングアウトした時は、パートナーと一緒に正座して言ったんですけど、母親は「なんとなく分かってたよ」という風に言ってくれました。

 

父親は「すぐには理解できないけど、これから勉強していこうと思ってる」という風に言ってくれて、隣でパートナーは号泣でした。

 

LGBTの当事者として好きな人との子供が産めないというのは辛いですが、友達がいっぱいできて生き甲斐ができた感じがしています。

 

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学校でLGBTを教える意味

それで社会人2年目に、「男の人が好きだ」という男の子に出会ったことから、同じ性別の人を好きになる人もいることに気付き、LGBTと言う言葉も知りました。

 

と同時に、その男の子のことが自分のことのように感じられて、カチっとブロックが組み合わさったような感覚があったのが自分の性に対するきっかけでした。

 

LGBTの当事者は実際、10人に1人ぐらいいてもおかしくないと言われていて、カミングアウトしている人だけでも13人に1人はいます。

 

その子たちが悩んで、苦しんで、自尊感情が低くなって、自殺までしてしまうような現状もあります。

 

ですので、教育段階でもLGBTのことをきちんと教えておくことで、その子たちの命を救えるんじゃないか、と思ったのが、今の活動の原点になっていますね。

 

 

「死んでしまいたい」

保健室で生徒の話を聞いてる時に、「死んでしまいたい」とかリストカットといった話がものすごく多くて、それが結構衝撃的でした。

 

それに加えて、最初の学校に勤めていた時に、同じ養護教諭養成課程を卒業した子が癌で亡くなってしまったんです。

 

どちらも、自分の中でかなりショックで、「救える命があるんだったら救いたい」という気持ちになりました。

 

また、LGBTのトランスジェンダーの子は「自殺したい」と思ったことがある子が7割くらい、未遂までしているのが14%もいる、という数字を見たことがありました。

 

楽しいことも、嬉しいこともいっぱいあるだろうに、自殺のことしか考えられなくなってしまうという状況を教育で何とかしたいと思いました。

 

 

私がLGBT当事者として話すこと

教員の免許を持っているということで、保健室だけじゃなくて、全ての生徒・児童を対象に、私がLGBTの当事者だということを話すことで、自尊感情をもっと高めたり、それぞれの生活の質を良くしたりするお手伝いができればと思っています。

 

学校を退職した後の半年間では、東京の勉強会に参加したり、LGBTの当事者の友達をいっぱい作りました。

 

この半年では、「自殺したい」と思っている人や、現在進行形で何かしらの闇の部分を抱えている人が結構多いと感じることが多くて、「教育でなんとかしたい」という想いがさらに強くなった期間でもありました。

 

また、教頭先生の教え子ですごく元気だった男子生徒が、社会人になって、同性の上司を好きになってしまったことを理由に自殺をしてしまったという話を伺うことがあったんです。

 

「あの子もLGBTの授業をちゃんと受けてたら、自殺なんかしなくて済んだのかな」

 

という話を聞いた時に、まだまだ教育でやるべきことはあると思いましたね。

 

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出張授業での生徒の反応

約半年間の準備期間を経て、現在はLGBTに関して出張授業をさせてもらっています。

 

私が授業でお話しする前に、LGBTに関してDVD学習をしてもらうんです。その後、DVDの感想を発表したりして、当事者の私と会うというような流れです。

 

実際、授業をやってみると反応がものすごく良いんですよ。

 

DVDを観た感想では、「可哀相」「しんどそう」「辛そう」というといったことがいっぱい出てきます。

 

「LGBT当事者の人には困りごとやしんどいことがいっぱいある」ということを勉強してから私と会うので、

 

「あれ?普通にニコニコしてるお姉さん来た」

「LGBTって全員困ってたり、しんどいんじゃないの?」

 

と、生徒は少し戸惑うというか拍子抜けする感じで、私のほうを見てくるんです。

 

LGBTのことを一通り紹介しながら、「LGBT当事者であっても楽しく生きられるよ」ということを伝えようと心がけています。

 

そうすると、

 

「あれ?LGBTの人ってものすごい悩んでるんじゃなかったの?」 

「うそ!DVDで観たのと全然違う」

 

といった反応を見せてくれる生徒さんがほとんどです。

 

 

LGBTの味方(アライ)になってほしい

授業の半分ぐらいは質疑応答にしています。

 

「今日は間違えてオカマとか言っちゃっても、この教室だけだから、何でも聞いてくれて良いよ」と言うと、本当に子どもたちからいろんな素直な質問が飛んでくるんです。

 

 

例えば、「トランスジェンダーの人って、身体と心が違うってどんな感じなんですか?」という質問には、

 

「私のお友達でトランスジェンダーの人が、『ぬいぐるみを着てるような感じ』というお話をしてくれました」と答えます。

 

そうすると、トランスジェンダーの意味がよく分かっていなかった子どもたちも、「そんな感じなんだ」と理解まで落とし込めるんです。

 

あとは、「オカマ」とか「ホモ」とか「レズ」とかその人が傷つくような言葉は言わないということ。

 

そして、もし友だちが自分の性の悩みを打ち明けてくれたら、

 

「大切なことを教えてくれてありがとう」

「困っていることはない?」

「誰に話してるの?誰にだったら話しても良い?」

 

という、3つのことを必ず伝えて欲しいと伝えています。

 

「この3つの問いかけをしてくれたり、LGBTの味方になってくれる人のことを『アライ』って呼ぶんだよ」という話をして、アライのシールを授業の最後に配るんです。

 

このシールは、私の友だちで大事なアライでもある人に協力してもらった、とても大切なシールです。

 

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「実は私もそうなんですけど…」

あと、LGBTの授業をさせてもらった後には必ず、「授業後、何でも相談しに来てください」という時間を取っています。

 

そうすると、今のところ100%の確率で「実は私もそうなんですけど、おかしくないですよね」という相談に来てくれる子が1人はいます。

 

そうした時は、担任の先生には「そういう子がいましたよ」とだけ伝えます。もう周りにアライがいっぱいできてるので。

 

「ありがとう」

「困ってることない?」

「話して良い人、だめな人は?」

 

この3つを守ってくれるアライが周りに山のようにいるというのは、当事者にとっても大きい存在だろうなと思います。

 

 

保護者の方にも伝わっている嬉しさ

「アライのシールを翌日から意気揚々と名札に付けて登校してくれてるんです」

 

と、担任の先生から伺ったり、子どもさんから話を聞いた保護者の方から、

 

「私にもアライとして何かできることがないか考えてみることにしました」

 

というご感想を頂いたりもしました。

 

「大切なお話を聞かせていただいて、ありがとうございました」

 

と、熱心なお母様から学校に電話があって、担任の先生が私に伝えてくれたりするので、「保護者の方にも伝わってるいるんだ」と嬉しくなる瞬間ですね。

 

 

これからの取組み

LGBTについて教育現場で知る機会がほぼない現状の中で、保健の教科書ではまだ「異性のことを必ず好きになります」というような文章があるんです。

 

その部分が変わらない限り、当事者の悩みはまだまだ残っていくんじゃないのかな、と思っています。

 

今、先生に教職員研修でお伝えすることと、子どもたちに伝えることを同時進行でさせてもらっています。

 

ですので、全国の学校を対象に、先生の中の知識が不足している部分を解消していくのと同時に、子どもたちにも同時にアプローチをかけていきたいですね。

 

 

現場の先生たちへ伝えたいこと

LGBTは単に性の問題ということではなく、命に関わる問題だということをまずは認識していただきたいと思っています。

 

LGBTで悩む子どものうち、自殺願望がある子が7割、自殺未遂14%っていう事実を踏まえた上で、LGBTに取り組むかどうかっていうことをまずは考えていただきたいです。

 

子どもたちの命に関わる問題で、もしかしたら教え子がLGBTのことで困って悩んで命を落としてしまうかもしれないということを考えてほしいです。

 

子どもたちは本当にアンテナをよく張って、「この先生に相談して大丈夫かどうか」と見ています。そういう子がいるということを理解したうえで、言葉遣いや普段の行動を意識していただけるといいですね。

 

 

 

LGBTで悩んでいる人へ

若い人には「成長したら世界は変わって見えてくる」ということを伝えたいですね。

 

今の時点で人生真っ暗というわけではなくて、楽しいこととか嬉しいこともたくさん出てくると思います。

 

辛いことがあっても、人生を終わらせるという選択肢ではなくて、悲しいことがあった分だけ、次は楽しいことがあると思ってもらえたら嬉しいです

 

もう少し、年齢が上の方は、LGBTの存在をなかったものにするのではなく、まずは知ってもらいたいです。

 

性はグラデーションなので、一人ひとり個性があって、一人ひとりが違っていて、1億人いれば1億通りの性のあり方があるということを、頭の片隅にでも置いておいていただければ有難いです。

 

(井上鈴佳さんインタビュー完)

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井上鈴佳さん全インタビュー

【Part1】全国でLGBTの出張授業を行うレズビアンの保健室の先生

【Part2】1億人いれば1億通りの性のあり方がある

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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