「生きてることが100点」父の虐待、ゲイ、うつの苦しさから解き放たれて

2017.08.21公開 2020.06.13更新

OUT IN JAPANで大きく変わった自分

そしたら、Facebookで知らない人からメッセージが届いたんです。

 

その当時はゲイって言葉を知ってるぐらいでLGBTという言葉も知らなかったし、Facebook上ではLGBTの友達もいないはずでした。

 

LGBTの繋がりがないにも関わらず、OUT IN JAPANに参加した人から「同窓会でお世話になりました、ありがとうございます」ってお礼のメールが来て。

 

最初は、「同窓会?」「LGBTとかOUT IN JAPANって何?」と思っていたんですけど、メッセージを送ってくれた人の写真やプロフィールを見ると良い人そうだったんですね。ちょっと格好良くて(笑)

 

相手もクリスチャンだったこともあり、色々と話をしていくうちに、LGBTを知り、OUT IN JAPANで写真を撮ってもらえることを知りました。

 

撮ってもらった自分の写真を見た時、みんなも驚くほどキラキラしていて。「その写真を遺影にしたい」「それでカミングアウトして自殺しても本望だな」と思いました(笑)

 

OUT IN JAPANは倍率も結構高いと聞いていましたが、撮影に呼んでもらえて、そこで初めて、コーディネートしてくれる人にこの蝶ネクタイの小さいものをつけてもらいました。

 

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OUT IN JAPANでの森田和弥さんの写真はこちら

 

OUT IN JAPANでは、ただカミングアウトしたと言うよりも、本当の自分を見つけられたり、思い出せたことがとても良い経験になったと思います。

 

OUT IN JAPANを境に、雰囲気も人相もガラッと変わりました。

 

それまでは、迷彩柄とか、茶色とかグレーとか黒のような、やたら目立たない色の服しか着ていませんでした。

 

髪の毛も隠すような髪型をしていて、今とは全然違う雰囲気だったので、会ったら分からないかもしれないです。

 

うつ病は、いろんな方法で良くなっていく中で、最終的には病気の薬とかではなくて、栄養を摂ったりして、一生懸命頑張っている自分の身体が癒えると良くなる。

 

やっぱり、自分の心の在り方が重要なので、自分のことを好きじゃないのにうつを治そうとするのは難しいと思うんです。

 

だから、自分が好きな服を着ることも自分にとっては大切な治療といった意識がありました。

 

自分は、LGBTいう言葉を昨年初めて聞きました。

 

レズという言葉が差別用語になるとか、一方で、同性愛が普通だった時代では「オカマ」は差別用語ではなかったことも知りました。

 

例えば戦国時代は、武将のところに若い綺麗な男の子がいると、「気位が高い人だ」と言われていたりして、ステータスのような感じだったらしいです。

 

そういった学校では教えていないことをたくさん知って、LGBTについて勉強してみようと思って調べたら情報がどんどん出てきましたね。

 

実は、ペンギンとかイルカとか、動物の中にも同性愛は存在しているんです。

 

動物は男女共にパートナーを求めて争いますが、同性愛の子たちがいると、調和がとれると聞いたことがあります。

 

人間界でも、例えば美輪明宏さんやマツコ・デラックスさんって毒舌ですけど、だれに対しても愛があるんですよね。

 

美輪さんの例が分かりやすいんですけど、イケメンの人が、すごい美人の人がいるのに美輪さんのところにたくさん来るんですって。

 

「なんで美人の方のところに行かないんですか」と美輪さんが聞いたら、「美人は見ている分にはいいけど話すとつまらなかったりする。あなたのところにいると本当に楽しいんです」と言われた、と。

 

最初はLGBTと聞いて、そもそもゲイって、いじめの対象になったり、本当に自分を隠してお芝居して生きなきゃいけない暗いイメージでした。

 

そんなイメージだったのが、堂々と生きている人たちを見た時に、学ぶことのほうが多くて。

 

自分自身、普通に生きていたら見れなかったものに触れることで視野が広がったことで、最初は全く触りたくなかったゲイという自分の一面がそうではなくなった感覚ありますね。

 

最初はゲイって卑猥というか変態的なイメージがすごく強くて、「嫌だな」って思ってたんです。

 

でも、ゲイの語源を調べてみると、「明るくて陽気である」といった意味があって、思っていたイメージと全然違いました。

 

それを知った時に、人間らしさの部分でゲイの特質が実はすごく必要だったりするのかなとも感じました。

 

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LGBTとメンタルの問題

それでもやっぱり、セクシャルマイノリティへの偏見を感じることは多いですね。

 

当事者である自分ですら、「ゲイってみんな気持ち悪いのかもしれない」といった偏見もありました。

 

メディアによる印象は特に強いと思います。少し前になりますが、とんねるずの保毛尾田保毛男とかただの変態ですよね。

 

すごく安っぽい知識ですけど、当事者でなければ、あれを見ても疑問に思わないと思うんですよ。

 

ゲイを気持ち悪いと思っている人にカミングアウトをしても「ゲイって気持ち悪い」となってしまうので、セクシャルマイノリティの人が生きづらさにも直結してきます。

 

セクシャルマイノリティの当事者の知り合いは、大体1度はうつになったり、パニック障害などの精神疾患を抱えていたりします。

 

「親は絶対分かってるって思ってても、カミングアウトできない」って言っていたり。

 

そんな気持ちだから、すごくおどおどしてるっていうか、自信がないように見えるんです。全にうつになっていなくても、気持ちの不安定を常に持っている子は多いですね。

 

社会がLGBTに注目し始めたことはいいことだと思います。

 

ただ、LGBTのくくりだけではなくて、それぞれ違いがあって同じ人間だとクローズアップしない限り、「この人はゲイの人」「この人がはレズビアン」とさらに分けようとしたりして、誤解されていくような気もしています。

 

 

人に言えない弱さや悩みは誰だってある

人の悩みはセクシャルマイノリティの悩みだけじゃなくて、誰だって「人には言えない弱さ」みたいなものがあると思うんです。

 

そうやって考えると、悩んでいる点でも、世間一般の人とそんなに変わらないことが分かると思うんです。なので、こういった形でオープンに話したいと思っています。

 

ただ、ゲイだとカミングアウトすると、「そんなこと言わなくて良いんじゃない?」って言う人もいるんですよね。

 

「わざわざ自分の個人的なことを言わなくても良いんじゃない」と言われる方がいるんですけど、自分からすると、普通なことなんです。

 

みなさん「結婚しないの?」って普通に聞くじゃないですか。

 

でも、同性愛者だと、パートナーがいても結婚できなかったり、彼氏なのに彼女って嘘つかなきゃいけなかったりしているから、結婚の質問ってすごく心に飛び込んでくる言葉なんですね。

 

そんな面倒くさいことがあるから、ゲイだと伝えることで、結婚の話題について触れられないようにしているのですが、「そんなこと言わなくても良い」と言われてしまうことは結構あります。

 

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OUT IN JAPANでLGBTのイメージが覆る

OUT IN JAPANに参加した時に、自分の思っていたLGBTの人のイメージが良い意味で覆りました。

 

セクシャルマイノリティであることが「人間的にちょっと普通よりも上かもしれない」って思えたんです。

 

多分、そこに来てた人たちはカミングアウトもしてるし、紆余曲折があって乗り越えてきたから、良い部分が見えてるだけだったのかもしれないんですけど。

 

目の輝きが違ってびっくりしました。

 

OUT IN JAPANで知り合った人には、女性から男性の身体になった人もいました。

 

ただ、自分の場合、身体の性別を変えたいと強くは思わなかったです。身体の性別を変えることで、親からもらった身体に傷をつけるように思えてしまって。

 

それでも、LGBTという言葉が上手く世の中に広まって、性のグラデーションへの理解が深まれば、そういった葛藤もそんなに多くなくなるのかもと感じています。

 

それこそ、LGBTがいい意味で広まっていなかったら、自分もこのようにしてカミングアウトできなかったと思うんですよね。

 

セクシャルマイノリティの先人たちが社会に理解を求める活動を続けてこられた。もしかしたら散々叩かれたのかもしれません。

 

そうやって長い時間をかけて、ようやくLGBTが社会的に認知されてきた。

 

その次は、LGBTのカテゴライズに囚われず、私たち一人ひとりの違いってどこにあるんだろうと考えてみてほしいです。

 

人って、1回「こう」と思うと、その意識って抜けないんですよね。一番最初に会ったゲイの人の印象が一番強かったりして。

 

だからこそ、「ゲイだから」「同性愛者だから」と、うつになっていく人がいるとしたら「そんなふうに思わなくても、僕みたいな人もいるよ」と伝えたいと思っています。

 

 

生きてることを100点とする

「人って何でも100点を付けたがる」という言葉を聞いたことがあります。

 

その言葉を自分が聞いた時、自分で自分に厳しくしてしまっているだけで、セクシャルマイノリティであろうが、うつであろうが、「完全に良くならなければいけないなんて思わなくていいんだ」と気付きました。

 

それをクリスチャン的に言うと「自分を愛する」

 

もっと分かりやすいのは、お仕事をしているとか、主婦である自分を評価した時に100点じゃなくても、うつになって休養している自分が0点でも15点だと思っても、そもそも生きてることを100点とする。

 

人生って追い風しかないんですって。大切なのは、その風に向かって心をどちらかに向けるかだけ。

 

私たちって、宝くじよりもすごい確率で生まれてきてるんです。

 

食事だって、野菜や動物などいろんな犠牲の上に成り立ってるじゃないですか。人って必ず何かに依存して生きていて、だからこそ、どんな人でも1人ではないと思っています。

 

自分が存在していること、それ自体が実はすごく満たされていることのかもしれない。

 

そんなふうに思えると、幸せは本当にやってくるような気がします。

 

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2017年8月21日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。