生きる意味がなくて自傷行為も。「諦め」が自分を受け入れる一歩目に

モラハラ彼氏と自傷行為

当時、付き合っていた彼氏は、会社での問題について私の味方をしてくれていました。

 

「会社を辞めたら、俺の家でゆっくりして良いよ」と言ってくれて、一人暮らしの彼の家で過ごすことが増えたのですが、日常的に怒鳴られるようになったんです。

 

「食事の味付けが薄い」「できなかった理由を説明しろ」とすごく怒鳴られて。正座で1時間説教されたりということもありました。

 

共通の友達から「あんたの彼氏モラルハラスメントだと思う」と言われてネットなどで調べて、完全にこれだなと思いました。

 

「何でそんなにイライラしているの?」と聞いたら、「これが本当の俺であって、豹変したわけではない」と言われて、ますますやばい人だなと。

 

でもなぜか、その彼氏とはすぐには別れることができませんでした。

 

心療内科に引き続き通っていましたが、彼氏が仕事に行っている間に、家中の鎮痛剤を飲んだり、リストカットをしたりするようになって、処方された薬を一気に飲んでしまったこともありました。

 

それで、「処方した薬を一気に飲む患者さんはうちでは診られない」と病院で言われてしまい、入院施設もある大きい精神病院を紹介されて、そちらに通うことになりました。

 

はじめに通っていた病院では、「境界性パーソナリティ障害」だと言われました。

 

「境界性パーソナリティ障害って何だろう」と思って、調べてみると、すごく難しい障害だということが分かり、「きちんと治さなければ」と本を買ったりしていました。

 

調べていくと、見捨てられ不安や自傷行為と書いてあったので、「ああ、私はこういう症状が出てくるんだろうな」と思い込んでしまって、症状がどんどんひどくなってしまいました。

 

紹介された大病院でも、「あなたは境界性パーソナリティ障害だと思います」と言われましたが、

 

「あなたの症状はすごく軽いので、こんなところに来るような人じゃない」

「ここに来なくてもいいようにしてあげたい」

 

と言われました。

 

その言葉を聞いて「理解されていない」と感じてしまい、私は自分の辛さを分かってほしくて、傷を深くしてみたり、違うところを切ってみたりと自傷行為が止められずにいました。

 

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誰かに相談する方がハードルが高い

境界性パーソナリティ障害の診断を受けた後、mixiの日記に書いて、人に自分が辛い状況にあることを伝え始めました。

 

もしかしたら、ドン引きしていた友達もいたかもしれませんし、自分の辛さをmixiで人に伝えることへの抵抗感もありました。

 

そのため、書き方をよく考えたり、暗い内容の日記には、タイトルの頭に※マークをつけて、「これは暗い内容なので気を付けてください」と書いたりしていました。

 

自分の辛いことを誰かに言いたいと思っていましたが、彼氏や母親に直接言うと、その人が全部受け止めなければならなくなりますよね。

 

なので、直接誰かに言う勇気を持てず、インターネットで不特定多数の人に言う方が気が楽でした。

 

今でも、「SNSでそんなに自分の病気のことをオープンにできてすごいですね」と言われますが、私にとっては誰か1人に相談したり、悩みを聞いてもらう方がすごくハードルが高いんです。

 

それだったら、「もしかしたら誰かが聞いてくれるかもしれない」というスタンスで書いた方が、自分も傷つかないかなと思って。

 

実際、私が悩みや辛い状況のことを書くと、「大丈夫?」「明日も生きるんだよ」と励ましをしてくれる人がほとんどで、悪いことを言ってくる人はいませんでした。

 

でも、そういうコメントをもらっても、私の気持ちは「うーん、そうか」という感じで、「そうだね、ありがとう」といつも素っ気ない返信をしていました。それしか言いようがなかったんです。

 

でも、変な反応をする人はいなかったので、吐き出す場所ができたのはすごく助けられましたね。本当、好き勝手に言っていただけでしたが。

 

前述した、モラハラの彼氏との同棲生活は半年くらいで終わりました。

 

さんざん怒鳴られたあげく、「愛を感じない」と言われて、最後は割とスパッと捨てられました。

 

彼氏としては、私の体調がだんだん良くなって、バイトでもする気になるかと思っていたようでした。

 

ただ、一向に体調は良くならず、家でだらだらしているようにしか見えなかったようで、「家事もまともにできないし、俺のために何かしようという気もない」と言われました。

 

今思うと、障害に対しての理解がなかったんでしょうね。

 

「なんか死にたい」と自殺行為を繰り返す

その後、実家に帰って、とりあえず働こうと次の会社に入りましたが半年で辞めてしまいました。

 

社長と2人のウェブ制作会社だったのですが、無断欠勤をするようになってしまって。

 

最初の頃は、休む時は頑張って連絡していました。ところが、だんだんと電話やメールが怖くなり、社長から連絡が来ても取れないことが続くようになり、話し合いをして辞めることになりました。

 

体調の波がいい時にしか働けない状態だったので、今振り返ると、もう少し休んでいてもよかったと思うのですが、その時は「働かないといけない」と思っていました。

 

病院を転々として、お薬もいろいろ変わりましたが、どれも効いている感じが全然しませんでした。

 

病気は治らないし、毎日つらいし、仕事もできないし、彼氏にも捨てられ、いろいろ滅茶苦茶になり、楽しいことが全然ないように感じて、当時は死ぬことばかり考えていました。

 

生きる意味がないんじゃないかなって。

 

心療内科に行き始めた頃や診断名がついた時は、メンタルを病んでいることが嫌で仕方なかったです。

 

ただ、どうあがいてもどうにもならない面を受け入れるというか、ある意味ちょっと諦めているところはあります。

 

「生きる」と思えるようになったのは、本当にここ数年です。

 

それまでは「なんか死にたい」と思って、自傷行為と自殺未遂を繰り返していましたが、結局死ねないんですよね。

 

「これだったら、もう翌朝目が覚めないだろう」と思うぐらいの薬の量を飲んでみても、体が生きてしまうんですよ。

 

体が生きようとしていて、リストカットをする時もすごく怖くて汗をかくんですね。

 

自分の心はこんなにつらくて、もう死んでしまいたいと思っているけど、体は生きようとしているんだな、と。

 

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キャリアウーマンだった母の姿を見て、働くことはすごく大事なんだと幼い頃から思っていました。

 

だからなのか、自分の病気と向き合って生き続けようと思うと同時に、「働かなきゃ、働かなきゃ」「お母さんみたいにバリバリ働く女性になりたい」という思いもずっとありました。

 

もちろん、働くことは大事なんですけど、私は必要以上にそう思っていたところがあったと思います。

 

今思うと、お母さんみたいになりたいというよりも「刷り込み」に近い感じだったのかもしれません。

 

「私はもう働けない?」

転職して入った会社をすぐ辞めた後も、ウェブ業界の会社を転々としていました。

 

体調が万全ではなかったので、勤務開始日になって「すみません。どうしてだか分からないんですけど、行けません。」と、断りの連絡をしたこともありました。

 

その時はさすがに、「私はもう働けないか、ウェブの仕事はできないかもしれない」と思って、その思いをTwitterにずっと書きなぐっていたりしました。

 

昔からの知人から「一旦、ウェブから離れてみたほうがいいんじゃないか」と言われた時、たまたま駅前の花屋さんのアルバイト募集のポスターを見つけました。

 

花屋で働こうなんて思ったことはなかったんですけど、ブーケを作ったり、色の組み合わせを考えて、一つのものを作ることが出来るのが、自分のやりたいことに近いと思って、花屋でアルバイトを始めました。

 

バイトのシフトは、週3で1日5時間から始めたのですが、それがめちゃくちゃきつかったんです。

 

バスで10分の花屋という場所に週3日行くだけでもきつくて、「こんなに体力も気力もないんだ」と思って、自分にびっくりしました。

 

もちろん慣れない仕事ですし、教えてもらうことが多くて大変だというのもありましたが、そこで自分の状態をやっと自覚しました。

 

最初は行くのも大変だったし、ずる休みをしたこともありましたが、花屋は2年半続けることができたんです。

 

全くやったことのない仕事だったので、みんなに一から教えてもらって、ちょっとずつできることを増やしていきました。

 

花の種類も全然知りませんでしたが、「毎日、1種類ずつ覚えていけばいいよ」と言われて、写真を撮って花の名前をメモすることをやり始めたら、だんだん楽しめるようになりました。

 

何かに追われるような仕事ではないですし、自然に触れられて癒やされていました。仕事中は重たい桶を運んで水を換えたりして、体を動かす時間も増えました。

 

ほかにも、「どうやったらお花がきれいに見えるか」「どうやったら買ってもらえるかな」とディスプレイを考えるのが楽しかったですね。

 

あとは、「ますぶちさん、絵を描くのが上手でしょう」と、POPの制作をよく任せてもらいました。

 

キャラクターを描いたりすると、「ますぶちさんがPOPを描くとかわいくていいね」と言われたりして嬉しかったですね。

 

人間関係もかなり違いました。

 

それまで経験していた会社の人たちとは、仕事のことしか話さなかったので、仕事での姿しか知りませんでした。

 

でも、花屋ではお客さんが来ない時に、「今、いくつなの?」「彼氏いるの?」「どういう生活しているの?」と聞かれたり「最近うちの娘はこんなことがあって」とパートさんが話しかけてくれたり。

 

お客さんにも顔と名前を覚えてもらったり、差し入れをもらったりという交流もあって、これまでの仕事とは大きく違いました。

 

「人と働いているんだな」という感じがしましたね。

 

ウェブ業界に再チャレンジ

花屋のアルバイトの傍ら、イラストの仕事も時々やらせてもらっていました。

 

Twitterで「イラストレーターになりたい」「ウェブ制作に戻りたい」とずっと言っていたら、本当にお仕事をくれる人が時々いて、お仕事をやらせてもらっていると、やっぱり楽しくて。

 

花屋の仕事も週5勤務に増やせるくらいに、気力や体力も戻ってきて、お薬を飲まなくても元気に生活できていたので、ウェブ業界に戻りたいなと思って、花屋の仕事を辞めました。

 

花屋を辞めて、ウェブ制作の会社に転職しましたが、やっぱり1週間ももちませんでした(笑)

 

花屋の居心地の良さを経験していたので、転職した会社で居心地よく働けるようになるまでが想像つかなかったんです。

 

どこかの組織に入りたいと思う時もありましたが、やっぱり組織に属することがあまり向いてないのかなと。電車通勤などを含め、いろいろ無理なことが多過ぎたんでしょうね。

 

花屋のアルバイトの頃から、個人でやっていたイラストの活動が今に繋がって、フリーランスとして活動をしています。

 

フリーのイラストレーターになりたいとは前々から思ってはいました。

 

ただ、デザイナーの思考が分かるイラストレーターになりたくて、フリーになる前にデザイナーの経験を積みたかったんですが、予定が狂ってしまいました(笑)

 

フリーになりたくてなった部分と、ならざるを得なくてなった部分があるので、そのならざるを得なかった部分のことを考えると、ちょっとつらい気持ちになることもあります。

 

でも、今は結果オーライだと思えるようになってきています。

 

誰かになろうとしなくてもいい

まだ、うまく思えない時もあるんですが、誰かになろうとしなくてもいいと思えるようになりたいですね。

 

「あの人みたいに可愛くなりたい」とか、比べる対象っていくらでもありますよね。

 

私にとっての一番大きな存在は母で、「母のように働きたい」「母のように活躍したい」「母のように社会に貢献したい」とか思うんです。

 

昔は、誰かになろうとか、いい子になろうとか、すごく抑えつけていたような気がするんですけど、うまくいかないことばかりで。

 

自分でできることをするしかない、という境地に至ってきました。

 

ある意味、諦めも必要というか、どこかで自分で自分にOKを出せるといいなと。

 

そんな諦めが、自分を受け入れていく形に変わっていったり、ちょっとでも前向きなきっかけになるといいなと思っています。

 

私の活動のキャッチコピーもそうですが、もう少し「なめらかな世界」だといいですよね。

 

私みたいな当事者がいる世界と、健康な人たちがいる世界との間には壁があって、うまく分かり合えなかったりすると思うんですが、当事者が無理なく楽に生きられるといいなと思います。

 

気分が落ち込んでいる時や辛い時に、かわいいものを見たり、音楽を聞いたりすることで、人の気分は変わると思っていて、私のイラストもそのきっかけになれればと思っています。

 

私のイラストを目にした人がほっとしてくれたり、和んでくれたりして、気が紛れていい方向に行ったらいいな、と思っています。

 

精神疾患についてや、当事者の情報もいっぱい出てきていると思いますが、他の当事者と自分を比べなくてもいいと思うんです。

 

もし自分が困っていたり、つらい気持ちがあったら、気軽に病院に行ってほしいですし、カウンセリングを受けたり、人に相談したりしてほしいです。

 

できることなら、専門家の判断を仰いでみてもいいと思います。

 

月並みですが、自分のことを大切にしてほしいです。健康もある意味、才能なんですよ。

 

でも、心身の健康を損なってしまっていることに、罪の意識は感じなくていいんです。

 

風邪をひくのと同じように誰にでもあることだと思うので、悩んだときはSOSを頑張って出してみてほしいです。

 

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近藤雄太郎

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  • 本記事は2017年8月11日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。