「誰かになろうとしなくていいと思いたい」【ますぶちみなこさん Part3】

2017.08.15公開
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「なんか死にたい」と自殺行為を繰り返す

心療内科に行き始めた頃や診断名がついた時は、メンタルを病んでいることが嫌で仕方なかったです。

 

ただ、どうあがいてもどうにもならない面を受け入れるというか、ある意味ちょっと諦めているところはあります。

 

「 生きる」と思えるようになったのは、本当にここ数年です。

 

それまでは「なんか死にたい」と思って、自傷行為と自殺未遂を繰り返していましたが、結局死ねないんですよね。

 

「これだったら、もう翌朝目が覚めないだろう」と思うぐらいの薬の量を飲んでみても。

 

 

心がつらくても体は生きようとしていた

体が生きてしまうんですよ。

 

体が生きようとしていて、リストカットをする時もすごく怖くて汗をかくんですね。それを見た時に、「体は生きたいと思っているんだな」と思って。

 

自分の心はこんなにつらくて、もう死んでしまいたいと思っているけど、体は生きようとしているんだな、と。

 

そういったことがあったので、自分の病気と向き合って生き続けようと思うと同時に、「働かなきゃ、働かなきゃ」という思いもずっとありました。

 

 

「働かなきゃ」の背景にあるもの

キャリアウーマンだった母の姿を見て、働くことはすごく大事なんだと、幼い頃から思っていました。

 

もちろん、働くことは大事なんですけど、多分、私は必要以上にそう思っていたところがあったと思います。

 

父が1つの職場で長く働ける人ではなかったこともあり、その分、母は仕事を頑張らなきゃいけない状況でした。

 

でも、その母のおかげで、それなりに裕福な生活というか、幼い頃から好きな物を買ってもらっていたので、それらは「お母さんが働いていたからこそ」と思っていて。

 

だからこそ、お母さんみたいにバリバリ働く女性になりたいという思いが幼い頃からありました。

 

今思うと、お母さんみたいになりたいという夢、というよりも刷り込みに近い感じだったのかもしれません。

 

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「私はもう働けない?」

それで、転職して入った会社をすぐ辞めた後も、仕事を探してはウェブ業界の会社を転々としていました。

 

ただ、体調が万全ではなかったので、勤務開始日になって、「すみません。どうしてだか分からないんですけど、行けません。」と、断りの連絡をしたこともありました。

 

その時さすがに、「私はもう働けないか、ウェブの仕事はできないかもしれない」と思って、その思いをTwitterにずっと書きなぐっていたりしました。

 

ウェブ関係の仕事しかできないと思っていた時、昔から知っている人が、「一旦、ウェブから離れてみたほうがいいんじゃないか」ということを言ってくれたんです。

 

それで次は、ウェブ以外の仕事をやってみようと思うようになりました。

 

 

たまたま見かけたアルバイト募集

たまたま駅前を歩いていた時、駅前の花屋さんのアルバイト募集のポスターを見つけました。

 

花屋で働こうなんて思ったことはなかったんですけど、ブーケを作ったり、色の組み合わせを考えて、一つのものを作ることが出来るのが、自分のやりたいことに近いと思って、花屋でアルバイトを始めました。

 

バイトのシフトは、週3で1日5時間から始めたのですが、それがめちゃくちゃきつかったんです。

 

バスで10分の花屋という場所に週3日行くだけでもきつくて、「こんなに体力も気力もないんだ」と思って、自分にびっくりしました。

 

もちろん慣れない仕事ですし、教えてもらうことが多くて大変だというのもありましたが、そこで自分の状態をやっと自覚しました。

 

 

2年半続いた花屋のアルバイト

最初は行くのも大変だったし、ずる休みをしたこともありましたが、花屋は2年半続けることができたんです。

 

全くやったことのない仕事だったので、みんなに一から教えてもらって、ちょっとずつできることを増やしていきました。

 

花の種類も全然知りませんでしたが、「毎日、1種類ずつ覚えていけばいいよ」と言われて、写真を撮って花の名前をメモすることをやり始めたら、だんだん楽しめるようになりました。

 

何かに追われるような仕事ではないですし、自然に触れられて癒やされていました。仕事中は重たい桶を運んで水を換えたりして、体を動かす時間も増えました。

 

ほかにも、「どうやったらお花がきれいに見えるか」「どうやったら買ってもらえるかな」とディスプレイを考えるのが楽しかったですね。

 

 

「人と働いているんだな」

あとは、「ますぶちさん、絵を描くのが上手でしょう」と、POPの制作をよく任せてもらいました。

 

キャラクターを描いたりすると、「ますぶちさんがPOPを描くとかわいくていいね」と言われたりして嬉しかったですね。

 

人間関係もかなり違いましたね。

 

それまで経験していた会社の人たちとは、仕事のことしか話さなかったので、仕事での姿しか知りませんでした。

 

でも、花屋ではお客さんが来ない時に、「今、いくつなの?」「彼氏いるの?」「どういう生活しているの?」と聞かれたり「最近うちの娘はこんなことがあって」とパートさんが話しかけてくれたり。

 

お客さんにも顔と名前を覚えてもらったり、差し入れをもらったりという交流もあって、これまでの仕事とは大きく違いました。

 

人と働いているんだな、という感じがしましたね。

 

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花屋を退職。ウェブ業界に再チャレンジ

花屋のアルバイトの傍ら、イラストの仕事も時々やらせてもらっていました。

 

Twitterで「イラストレーターになりたい」「ウェブ制作に戻りたい」とずっと言っていたら、本当にお仕事をくれる人が時々いて、お仕事をやらせてもらっていると、やっぱり楽しくて。

 

花屋の仕事も週5勤務に増やせるくらいに、気力や体力も戻ってきて、お薬を飲まなくても元気に生活できていたので、ウェブ業界に戻りたいなと思って、花屋の仕事を辞めました。

 

花屋を辞めて、ウェブ制作の会社に転職しましたが、1週間ももちませんでした(笑)

 

花屋の居心地の良さを経験していたので、転職した会社で居心地よく働けるようになるまでが想像つかなかったんです。

 

3日くらいで「合わないな」と思って、スパッと決断しました。

 

 

組織ではなくフリーランスの立場で

花屋のアルバイトの頃から、個人でやっていたイラストの活動が今に繋がって、フリーランスとして活動をしています。

 

どこかの組織に入りたいと思う時もありましたが、やっぱり組織に属することがあまり向いてないのかなと。電車通勤などを含め、いろいろ無理なことが多過ぎたんでしょうね。

 

フリーのイラストレーターになりたいとは前々からずっと思ってはいました。

 

ただ、デザイナーの思考が分かるイラストレーターになりたくて、フリーになる前にデザイナーの経験を積みたかったんです。

 

デザイナー経験を経て、満を持して独立してイラストレーター、という流れにしたかったんですが、予定が狂ってしまいました(笑)

 

フリーになりたくてなった部分と、ならざるを得なくてなった部分があるので、そのならざるを得なかった部分のことを考えると、ちょっとつらい気持ちになることもあります。

 

でも、今は結果オーライだと思えるようになってきています。

 

 

誰かになろうとしなくてもいい

まだ、うまく思えない時もあるんですが、誰かになろうとしなくてもいいと思えるようになりたいですね。

 

「あの人みたいに可愛くなりたい」とか、比べる対象っていくらでもありますよね。

 

私にとっての一番大きな存在は母で、「母のように働きたい」とか「母のように活躍したい」「母のように社会に貢献したい」とか思うんです。

 

昔は、誰かになろうとか、いい子になろうとか、すごく抑えつけていたような気がするんですけど、うまくいかないことばかりで。

 

自分でできることをするしかない、という境地に至ってきました。

 

ある意味、諦めも必要というか、どこかで自分で自分にOKを出せるといいですね。

 

そんな諦めが、自分を受け入れていく形に変わっていったり、ちょっとでも前向きな感じになるといいなと思っています。

 

 

当事者が無理なく生きられる社会を

私の活動のキャッチコピーもそうですが、もう少し「なめらかな世界」だといいですね。

 

メンタルヘルスの話で言うと、私みたいな当事者がいる世界と、健康な人たちがいる世界との間には壁があって、うまく分かり合えなかったりすると思うんですが、当事者が無理なく楽に生きられるといいなと思います。

 

気分が落ち込んでいる時や辛い時に、かわいいものを見たり、音楽を聞いたりすることで、人の気分は変わると思っていて、私のイラストもそのきっかけになれればと思っています。

 

私のイラストを目にした人がほっとしてくれたり、和んでくれたりして、気が紛れていい方向に行ったらいいな、と思っています。

 

 

健康を損なっても罪の意識はいらない

精神疾患についてや、当事者の情報もいっぱい出てきていると思いますが、他の当事者と自分を比べなくてもいいと思うんです。

 

もし自分が困っていたり、つらい気持ちがあったら、気軽に病院に行ってほしいですし、カウンセリングを受けたり、人に相談したりしてほしいです。

 

できることなら、専門家の判断を仰いでみてもいいと思います。

 

月並みですが、自分のことを大切にしてほしいです。健康もある意味才能なんですよ。

 

でも、心身の健康を損なってしまっていることに、罪の意識は感じなくていいんです。

 

風邪をひくのと同じように誰にでもあることだと思うので、悩んだときはSOSを頑張って出してみてほしいです。

 

【ますぶちみなこさんインタビュー完】

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ますぶちみなこさん全インタビュー

【Part1】心の病と向き合うフリーのイラストレーター

【Part2】治らない病気、仕事もできない…生きる意味って?

【Part3】「誰かになろうとしなくていいと思いたい」

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

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