「傷つけるのも人だけど、癒すのも人」【野中麻衣子さんPart2】

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教員からソフトウェア会社へ転職

教員を辞めた後、教育系のソフトウエアの仕事をしていました。

 

仕事がマッチしていなかったことはないと思いますが、集中力を維持するのが大変でしたね。

 

人間関係の気付きという面では、教員時代のほうが多くありましたが、この会社では実際にスキルを身につける機会をいただけたと思っています。

 

ここでの経験が役に立って、現在運営している当事者会『つむぎ』のホームページは私が作りました。

 

システム系の会社で働いていたころ、前編でご紹介した自分の症状に対する服薬の認可が下りました。

 

この頃、仕事はできても勉強ができないことが多くて、死にたい気持ちになったり、強い不安感がよみがえってきていました。

 

このままでは同じことを繰り返してしまうと思っていたときに、認可が下りたので、「よし、いまだ」と服薬を始めました。

 

 

服薬で良かったこと悪かったこと

服薬を始めたおかげで、勉強はとても集中できるようになりました。

 

服薬ができていなかったら、今でも資格は取れてないと思いますし、仕事と勉強の両立なんて私にはできなかったと思います。

 

薬を飲むと、今までできなかったことがさくさく進んで、逆に今までの辛さは何だったんだろう、と思ったりもしました。もっと早く薬を飲みたかった…。

 

でも、副作用がきつかったので、結局、今は飲んでいません。

 

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精神保健福祉士と社会福祉士の資格取得

精神保健福祉士については、就労継続B型の施設を手伝っているときに知って、教員時代の終盤から精神保健福祉士の学校に通っていました。

 

社会福祉士の実習を含めて3カ所に行きましたが、ある実習先で、障害に対する偏見を持たれて嫌な思いもしました。

 

動機を聞かれたときに、発達障害のことをカミングアウトしたら評価を下げられたりしたんです。

 

「支援を受けないと、精神保健福祉士になるのはきついんじゃないの?」と言われたりもしました。

 

でもそれで偏見を持たれてしまったので、社会福祉士の実習では、精神保健福祉士としての専門性を高めたい、という理由で通しました。

 

 

本人の強みを大切にする支援

今の会社ではIPS(インディビジュアル・プレイスメント・アンド・サポート)という支援方法をしています。

 

個別的就労支援プログラムで、「本人の強みを大切にしよう」という支援方法です。

 

この支援方法に一番感銘を受けたのが、障害の重さに関係なく、本人が就労を希望したら支援を開始する点です。

 

ひと昔の精神保健の在り方は、きつい訓練にも耐えて、マイナス面も指摘されながら補正してやっと仕事ができる、という感じでした。

 

でも、ここでは強みを伸ばすことが目的になっています。

 

もちろん、課題を乗り越えるというのは大事ですが、もっとポジティブに捉えられる支援方法を実施しています。

 

 

みんなに同じ支援をしても仕方がない

他にも、就労そのものがリカバリーの重要な要素だという考えにとても惹かれました。

 

私自身、体調がよくなったり、いろいろなことを学んだりして、仕事があったから精神的に落ち着くことができたと感じていたんです。

 

「仕事があるから生活のリズムを整えよう」という意識も生まれましたね。

 

もう1つ、共感したポイントは、実際に仕事に就いてから就労支援をするという部分です。

 

私は3職種を経験しましたが、仕事によって困るポイントは違いました。

 

「みんなに同じ支援をしても仕方がないのでは」と感じていたので、個別に合わせた支援が必要だという考えにもすごく共感できました。

 

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発達障害をオープンにして働く

就労移行支援のヒューライフという会社の学習会で、社長と出会ったことがきっかけで、ピアスタッフとして働くことになりました。

 

自分が発達障害であるということは全部オープンにして働いています。

 

ヒューライフの社長には、当事者会「つむぎ」の運営で困ったときに相談したり、そのつながりで当事者会にも参加してくださったこともあったんです。

 

それくらいの付き合いがあったので、障害のことは全部言うしかないと思って伝えました。

 

今までオープン就労をしたことなかったこともあり、自分の障害をオープンにすることがいかに難しいか、ということも今は感じています。

 

 

ピアスタッフとしての大変さ

ピアスタッフをしていて気になることはたくさんありました。

 

自己紹介をしたら、「ほかのところでフルタイムで働くのはきつかったから、ここに来たんですか?」といきなり言われたり。

 

あとは利用者さん私も当事者だから、関係が横になってしまって、対抗心を燃やされたりすることもありました。

 

でも、ピアスタッフとして良かったことも色々あります。

 

まず、利用者さんから、障害や障害への偏見の話をされたときに、クローズでやっていたら「分かります」とは言えません。

 

そういう言葉を出せるのは、ピアスタッフだからこそできる部分なので、その点はオープンでやっていて良かったと感じます。

 

下手に理屈を並べるよりも同じ目線に立てるので、利用者さんがすんなり受け入れてくれたりしますね。

 

他にも、当事者スタッフがいるから安心できると言われたこともありますし、『つむぎ』などの当事者活動を堂々とできるようにもなりました。

 

 

ピアスタッフはただの雑用係?

今後はピアスタッフ同士が話す場というか、ピアスタッフ同士がピアサポートできる場を作っていきたいです。

 

例えば、ほかの団体にいらっしゃるピアスタッフとの交流を通じて、「こんなときどうしてる?」ということや、困りごととして感じていることなどを共有してみたいですね。

 

個人的に感じていることですが、ピアスタッフの雇用の場とキャリアアップの機会創出も必要です。

 

これは「つむぎ」の理念にも挙げていますが、障害者雇用には諸々の問題があります。

 

そして、障害者雇用の問題とピアスタッフの問題はつながるところがあるんです。

 

ピアスタッフの雇用創出の場やキャリアアップを考えることは、障害者雇用のそれを考えることにもつながるというのが私の思いです。

 

実際に、障害者雇用で働いている友人も、最近は就職はしやすくなってきたものの、「会社に入ってから、やりがいがある仕事を与えられない」と言っていました。

 

仕事すら与えられない、電話も取らせてもらえない、社内ニート状態…。

 

ピアスタッフも雑用係になっていることが多いという現実もあるようです。

 

そういうことを避けるために、ピアスタッフの雇用の充実を考え、それが障害者雇用の充実を考えることにもつながるのではないかと感じています。

 

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障害に対する「受容」と「甘え」

これは、どちらかというと当事者の方向けになりますが、障害の「受容」と障害の「甘え」は違うということを感じています。

 

障害の受容というのは、障害を受け入れつつ自助努力なども行って、前向きに捉えていくことだと思うんです。

 

でも、甘えが出てしまうと、障害のせいにして可能性を放棄する、努力をしなくなってしまいます。

 

配慮するほうにも負担というのは必ずかかっていますので、当事者側にも出来る範囲での努力は必要だと思っています。

 

 

「合理的配慮」と「特別扱い」

もうひとつ、ピアスタッフとしてよく考えることとして、合理的配慮と特別扱いの違いがあります。

 

合理的配慮は、なるべくほかの健常者の方と一緒のレベルで働けるようにする配慮です。

 

例えば、もっと仕事が頑張れるようにする配慮は、合理的配慮だと思うんです。

 

一方、特別扱いというのは、「障害があるから仕方ないね」といった対応で、これは望ましくない対応だと思います。

 

正直、権利ばかり主張する当事者にも出会ったことがあります。

 

でも、障害を理由に甘えすぎてしまうと、結局、必要な配慮も得られないんじゃないかというのが私の考えです。

 

 

苦しみがあったから気付いたこと

ポジティブな面で伝えたいことは、困難や苦しみは決して無駄じゃなくて、困難や苦しみがあるから学んだり気が付いたりすることもあるということを伝えたいです。

 

私自身、苦しいことや辛いことがあったからこそ、人生や命のありがたさに気付きました。

 

あとは、病気や障害により新たな道が開けたり、新たな役割が見出せる場合もあるということです。

 

当事者会に参加することで、普段出会わないような人たちと出会えたりするんです。全く違う業種の人とお話しすることもあります。

 

私が『つむぎ』のような活動や、ピアスタッフをできているのも障害があったからこそですよね。

 

 

「正しい理解」ではなく「相互理解」

現在、運営している当事者会の特徴なのですが、次のような理念を掲げて運営しています。

 

・私たちは、自分が初めて当事者会に参加したときの、受け入れられた、という安心感を継承します。

 

・私たちは、発達障害当事者および企業人、支援者が共同できる社会を目指し、相互理解を促進します。

 

・私たちは、発達障害当事者の雇用の場とキャリアアップの機会の創出ができるよう努めます。

 

2番目が一番苦労してつくったんですが、最初は、≪相互理解≫ではなくて≪正しい理解≫という言い方をしていました。

 

でも、≪正しい理解≫よりも、当事者と企業人、支援者が隣りに座って当たり前、隣りにいて一緒に働いていることが当たり前の、共同できる社会を目指したいという話になり、≪相互理解≫になりました。

 

必ずしも正しさではなく、いろんなプレーヤー同士が理解し合うということに重点を置きたいという思いはこれからも大切にしていきたいです。

 

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傷のなめ合いではない「居場所」

『つむぎ』では、講演会なども年2~3回のペースで行おうと取り組んでいます。

 

講演会での情報発信以外にも、スタッフだけではなくてほかの方にも聞いていただける機会を作りたいと思っています。

 

発表者も当事者ですので、リカバリーの機会にもなります。

 

「居場所」という機能を維持しつつも、傷のなめ合いだけではなくて、より建設的なことに取り組んでいこう、というのが当事者会「つむぎ」の特徴です。

 

 

 

今後は自己の成長や人生のリカバリーにつながるような会に発展させていきたいですね。

 

 

受け入れられることの大切さ

当事者会に参加した方からは「参加してよかった」「勉強になった」という声をいただきました。

 

「今後も続けてください」と言っていただけたときはやっぱり嬉しいですね。

 

産業カウンセラーの方に傾聴講座をやっていただいたときは、「逆にこういう機会を与えてくださって本当に感謝しています」と言われ、とても嬉しかったです。

 

私も初めて当事者会に参加するときはとても勇気がいりましたが、参加して受け入れられる経験をして今があります。

 

「つむぎ」ではその安心感を継承していますし、初めての人でも安心できるようにこちらも努力をしているので、ぜひ安心して来てほしいです。

 

 

傷つけるのも人。癒やすのも人

・困難から学ぶこともあるということ

 

・傷つけるのも人だけど、それを癒すのも人ということ

 

この二つを大切にしています。

 

つらい思いや苦しい思いをしてきたのも、人に傷つけられたからでしたが、それを癒してくれたのもやっぱり人でした。

 

そのことは常に頭に置いておきたいです。

 

絶対に忘れたくないですし、みんなにも忘れてほしくないと思っています。

 

【野中麻衣子さんインタビュー完】

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野中麻衣子さん全インタビュー

【Part1】不注意による苦しみ…私が発達障害と確信するまで

【Part2】「傷つけるのも人だけど、癒やすのも人」

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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