「発達障害は生まれつきだから仕方がない。俺は俺だ」【稲葉政徳さんPart3】

43歳で大学院に入学。専門学校の教員に

43歳の頃に、今度は大学院に入学して、勉強しながら44歳で京都の専門学校の教員になりました。

 

45歳で担任を任されたときは、「よし、良いクラスを作るぞ」と、やる気満々でした。

 

ただ、クラスでは盗難があったり、ロッカーに「死ね」と書いてあったりと、大変な状態でした。

 

 

思いもよらず、自分の発達障害に気づく

その学校は割と大きな専門学校で、教職員の研修が頻繁にあり、私が受けた研修のテーマが『発達障害がある学生への対応』でした。

 

「学生をイメージしてこの発達障害のチェックシートにチェックしてください」

 

と言われて、クラスもうまくいっていないし、藁をもすがる思いでチェックをしようとしました。

 

ただ、チェックシートを見ているうちに、私自身がほとんどの項目で該当していることに気が付きました。

 

その時まで、色々な生きづらさがあったものの、自分が発達障害とは全く思っていませんでした。

 

それで、隣にいた教務主任の先生に「先生、私、全て該当するんですけど」と伝えると、

 

「え?それはちょっと大変だ」

「スクールカウンセラーの先生に会って、色々相談してみてください」

 

と言われ、結局、京都府立の精神科の病院に行きました。

 

そこで「広汎性発達障害」「うつ病エピソード」と診断されました。

 

発達障害と診断されたのが、12月の寒い時期でした。

 

当時、倦怠感や睡眠障害などがあり、睡眠障害が特にひどくて、しんどいのに寝れない、寝たけれど目が覚める。という状態でした。

 

それでもなんとか仕事を続け、クリスマスを過ぎた頃に学生は冬休みに入りました。

 

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「お仕事お休みしましょうか」に救われる

1月5日が新年最初の受診日だったのですが、起きようと思っても起きられませんでした。

 

奥さんを呼んで、抱えられて車に乗せてもらい、神戸から京都の宇治まで連れていってもらいました。

 

そこで精神科の主治医に言われたのが、

 

「しばらくお仕事お休みしましょうかね」でした。

 

それを言われた時に、救われました。

 

「このままじゃ仕事はできない」

「でも仕事は辞めたくない」

「でもこれでは心身ともにボロボロになってしまう」

 

と思っていた矢先のことだったので。

 

冬休みもいつも通り仕事に出るのですが、全身の倦怠感がひどく、他の教員からも心配されるほどで、そのまま仕事をしばらく休むことになりました。

 

 

半年間の休職。そして退職

休職は半年という期限がありましたが、私としては、担任を外してもらえたので、これなら続けられそうだと思っていました。

 

でも、治らないんですよね。

 

自分がかなりのダメージを受けていたということを自覚していなかったんです。

 

「うつ病ってそんなに大変なのか」という感じでした。

 

仕事への復帰はそんなに甘いものではなくて、結局、退職することになりました。

 

 

 約1年の自宅療養で復帰できたわけ

その後、1年3ヶ月の自宅療養を経て、社会復帰をして今、6年目です。

 

実はこれ、驚異的なんですよ。6年も続けられるって。

 

私は理学療法士ですが、うつ病の運動療法の効果というものを知っていました。

 

「セロトニンを増やすと良い」というので自宅療養中に、近くの大きな公園を20キロくらい歩いたりしました。

 

「あー気持ち良い」「緑が気持ち良い」と感じながらゆったりと歩いていたんです。

 

その知識が幸いして、自宅療養期間も1年3ヶ月で終えられました。

 

もちろん、みんながみんな復帰できるとは限りません。

 

そのまま引きこもってしまう人もいるし、仕事をしたくて就労移行支援事業所に行っても、働けなかったという人も多いです。

 

でも私はこうして働くことができています。

 

その理由の一つとして運動療法の知識があったことがあると思います。

 

運動以外にも、温泉に毎日行っていました。

 

これも運が良くて、自宅の近くに有馬温泉があったんです。

 

仕事もせず、温泉に行って、ゆったりした状態で「うわー、気持ち良い」って最高ですよね(笑)

 

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仕事を辞めたことでの焦りもあった

でも、いったん仕事を辞めたことで焦りも感じていました。

 

発達障害と診断を受けたのが大学院3年目の時でした。

 

長期履修をしていたので、3年目までは良かったのですが、修士課程で2年制なので、4年間で卒業できなかったらアウトなんです。

 

私は休職の間、休学もしていたので、リーチになっていました。

 

職場は6月まで休職できましたが、大学院は容赦なく「4月から来い」と。

 

でも、結局行けなくて、大学院は留年してしまいました。

 

 

留年を経て、なんとか論文を仕上げる

留年したのでどうしたらいいか、精神科の主治医と大学院の指導教授と話をしました。

 

私は本当にラッキーで、修士論文で使う実験データはすでに取っていたんです。

 

それがなければ多分辞めていたと思いますが、土日を潰して実験データを取っていたので、あとは論文を書くだけという状態でした。

 

数学学習障害がある私にとってはデータ処理は難敵でしたが、なんとか文献をあさったりしながら論文を仕上げ、学会発表もした上で論文を提出しまた。

 

大変ではありましたが、自宅療養をしていたので、論文を書く時間があったこともラッキーでした。

 

 

「しんどい時は頑張らずに寝る」

論文を仕上げる過程で、「しんどい時は頑張らずに寝る」ということを身につけました。

 

ビルのように積まれた文献の中で、疲れたらとりあえず寝て、瞑想してスッキリしたら、パッと起きて論文を書く、ということをしていました。

 

那覇と筑波大学の2ヶ所の学会でも発表して、修士号を取得しました。

 

そして、46歳の3月に大学院を卒業して、47歳になって今の短大に採用されました。

 

さらに、47歳の年が明けた1月、結婚16年目にして娘が生まれました。

 

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今の人生に潤いを与えてくれるもの

正直、子どもを授かるという自信はありませんでした。

 

奥さんもバリバリ働いていたので、子どもを授かるタイミングも失っていましたし。

 

それが、16年目でなぜか生まれたんです。その頃は色々な良いことが続きましたね。

 

「昔のほうが良かった」とか「今は全然楽しくない」と言う人が少なくないと思いますが、私は、今が一番楽しいと思っています。

 

たまに、「今が楽しいと思う源って何だろう」と考えてみるんです。

 

娘の成長も楽しみですし、両親も健在。

 

親がうざいと思うこともありますが、親が80歳を過ぎても健在でいることは幸せなことだと思います。

 

今が楽しいと思えるもう1つの理由は、趣味が人生に潤いを与えている、ということです。

 

私は楽器を持っているので、学園祭で学生や教員と一緒に、2つのバンドで演奏しました。

 

 

70歳を過ぎても仕事は続けたい

50代になると見えてくるのが、定年という問題です。

 

僕としては70歳過ぎても、足腰が丈夫であれば、仕事は続けたいと思っています。

 

今の仕事を続けていくという方法もありますが、結構マルチタスクで大変なのと、通勤時間も長い…(笑)

 

カイロプラクティックの学校にも行っていたので、今の仕事に限らず、例えばボディケアといったこともできます。

 

あるいは、発達障害者として講演活動もしているので、フリーランスという生き方もあるな、とビジョンを描いています。

 

 

「普通にならなくても良いんだ」と気づけた

私が大切にしているのはやはり「独自性」じゃないかなと思います。

 

私はオンリーワンという言葉が好きで、この世界で特別な存在になりたいと思っています。

 

子どもの頃からずっと「お前は変だ」とか「変わり者だ」と言われ続けてきました。

 

いじめられ続けてきて、後輩からも馬鹿にされて、自分のプライドがぐっしゃり潰れた状態でした。

 

その状態で、45歳まで自分の風貌や不器用さの原因が分からないまま生きてきたんです。

 

アイデンティティのベースが盤石ではなく、ぐにゃぐにゃだった。

 

それが45歳で、発達障害・うつ病と診断された時に、「あっ、そうだったのか」と。

 

「今まで普通になろうとしていたけど、普通にならなくて良いんだ」と思えるようになりました。

 

40歳過ぎまでは本当に、普通になりたいと思っていました。

 

でも診断を受けたことで、

 

「発達障害は生まれつきだから仕方がない。俺は俺だ」

 

という気持ちになれました。

 

「オンリーワン=自分らしく生きていこう」という風に前向きになれたんです。

 

だからこそ、「今が一番楽しい」。

 

【稲葉政徳さん インタビュー完】

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稲葉政徳さん全インタビュー

【Part1】発達障害、うつ病、いじめ、パワハラ…短大の先生になるまで

【Part2】新聞奨学生として進学。35歳で理学療法士の資格を取る

【Part3】「発達障害は生まれつきだから仕方がない。俺は俺だ」

【番外編】復職から仕事継続まで。「自分トリセツ」の活用術

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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