復職から仕事継続まで。「自分トリセツ」の活用術【稲葉政徳さん 番外編】

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私は前職・専門学校の教員時代に、初めての担任にて不適応を起こしたことがきっかけとなり、「発達障害」と二次障害である「うつ病エピソード」の診断がおりました。

 

前職では未診断ゆえ、「変わった普通の人・教員」として見られていました。

 

しかし、1対多数が苦手であるという特性が、自他ともに分からなかったこともあり、担任したクラスは早々に「学級崩壊」しました。

 

また、荒れたクラスゆえ、中学時代に不登校を繰り返してきた学生は、ゴールデンウイークを待たずに不登校になり、そのまま退学の道を選びました。

 

 

私の力不足、努力不足のみにクローズアップ

私のクラスが荒れていることに対して、

 

「担任はチームリーダーなんです。先生、しっかりしてください!」

「この学校の歴史上、前代未聞のことが起こっているんですよ!」

(火災報知器を鳴らしたり、トイレで暴れたり、頻繁な落書き、窃盗騒ぎなど)

 

と叱責されるなど、私の力不足、努力不足のみにクローズアップされ、もう地獄のような日々でした。

 

当時は副担任もいなかったのですから、現在の職場・人的環境から考えれば、私の担任采配、孤軍奮闘はもう無謀・無策としか言いようがないです。

 

 

医師の診断後、職場が動いた

担任をして8か月後である平成22年12月に診断され、主治医から付き添いの教務主任に対し、

 

「この人は一対多数の関わりは向いていません。即刻担任から外してください」と伝えられました。

 

医師の診断がおりたことで、職場は確実に動きました。

 

しかし、年明けに体が動かなくなり休職。

 

その半年後に決断を迫られ退職することになりました。

 

当時の不安がどれだけ大きいものだったか。

 

しかし、唯一の救いは家族や知人のほか、診断後に出会った発達障害者相談窓口の相談員など、身近に相談できる人たちがいたことです。

 

 

自宅療養期間で得た“生き抜く術”

私自身に「うつ病の運動療法」や「リハビリテーション栄養学」などの知識があったことも幸いして、実践しながら健康状態を回復させていくことができました。

 

自宅療養中ながらも、復学した大学院での修士論文の執筆や、指導教授から指導を受けるといった過剰なストレスを受ける時間はありましたが、

 

「とにかくしんどかったら、無理せずに瞑想する」

 

といったことなどで、セルフコントロールしながら何とか取り組んでいました。

 

 

「自分取扱説明書」との出会い

また、いろいろな研修会に参加したり調べたりしていく中で、「自分取扱説明書(以下、自分トリセツ)」と出会いました。

 

その時点では流してしまったのですが、修士論文審査が合格し、大学院卒業と学位授与が見えた時点で就活の際に「自分トリセツ」を作成し、活用しようと思うようになりました。

 

「前職と同じような『失敗』を繰り返したくない」

 

そう思った私は、自分で作成した「自分トリセツ」を面接官へ渡すという大胆な作戦を決行することに腹を決めました。

 

 

「自分トリセツ」を持って面接に臨む

面接官に対して、

 

「私は発達障害があります。」

 

「前職は不適応を起こし、そのストレスから二次障害であるうつ病になり休職、退職し、今まで自宅療養してまいりました。」

 

「こんな私をこちらでは雇っていただけますか?」

 

といった感じで、病院や訪問看護ステーションなどで面接へ臨みました。

 

それは私自身、面接官に「挑戦状」をたたきつけるような思いでした。

 

 

「不採用」の連続から専任講師として採用

 

病院、訪問看護ステーション数か所からことごとく「不採用」通知をいただき、本当に落胆しました。

 

しかし、妻のすすめにより、理学療法士を養成する大学や短期大学への面接試験に挑戦しました。

 

幸いにも、私の専門である小児疾患の理学療法を教えることができることなど、少ない「武器」を評価されて、専任講師として採用されました。

 

 

手作り感満載の「自分トリセツ」

・自分は、何が得意で、何が苦手か。

 

・苦手なものは、概ね(周囲の人たちから)どこまでのサポートが必要か。

 

私の場合は、「自分トリセツ」の“お手本”にしたものは特にないのです。

 

見聞きしたものをベースにパソコンにて無造作に羅列していき、バージョンアップを重ねる…という、手作り感満載の「自分トリセツ」を長い時間をかけて作りました。

 

ひらめいたらその都度、当時愛用していたモバイルパソコンを開き、打ち込んでいました。

 

このスキルは、修士論文の執筆の際に身につけたものかもしれません。

 

 

現職場での「自分トリセツ」活用事例

やはり、ある種の特性があり、苦手なことで何かしらのサポートを求める必要があるのなら、キーパーソン(上司や比較的理解ある同僚)に伝えることが不可欠になります。

 

私が現在の短期大学にて担任をするように命じられたのは、入職して3年目を迎えるころでした。

 

任命されてからはクラスの崩壊を懸念し、「学生は私のいうことを聞いてくれるのか?」と、不安が絶えませんでした。

 

そこで、さっそくバージョンアップした「自分トリセツ」を作成。

 

新入生が入学してくるまでの2か月間、副担任と他の専攻の担任との3人で、「自分トリセツ」をもとにミーティングで対話重ねることで、担任として学生ともしっかり向き合っています。

 

そして現在、岐阜保康短期大学にて勤続5年7か月を迎えることができました。

 

 

私自身の経験から、

 

・自宅療養から社会復帰に向けての就活

・入職してから後のこと

・新たな役割を任された際

 

などに、「自分トリセツ会議」をキーパーソンと行うことにより、仕事環境におけるサポートを得やすくなったと感じています。

 

「自分トリセツ会議」を通じて、他のスタッフへの伝達内容や伝えるタイミングなども同時に検討することで、仕事継続やその後のスキルアップに繋がるのではないでしょうか?

 

また、困り感や苦悩は変化するものなので、「自分トリセツ」のブラッシュアップや「自分トリセツ会議」は随時行うことが望ましいとも感じています。

 

 

「自分トリセツ」はキーパーソンのみに

私の場合、「自分トリセツ」は診断がおりた時に主治医から言われたように、キーパーソンのみに伝え、話し合うことを通してきました。

 

人によってとらえ方が異なります。「自分トリセツ」も例外ではありません。

 

不特定多数に発達障害特性に関する情報を回覧することは、理解と支援を拡大するどころか、疑問視する人たちを増やすことになるので慎重にしたいところです。

 

「自分トリセツ」はキーパーソンのみに伝えることで、上手く活用できるのではないでしょうか。

 

 

さいごに

「自分トリセツ」は、障害と向き合う本人と周囲の人たちを繋ぐコミュニケーションツールとして有効活用することが可能ですし、オススメです。

 

また、キーパーソンとの「自分トリセツ会議」によって、自己理解が育まれたり、職場における工夫や支援のイメージ化に繫がります。

 

より良い職場環境を作っていくために、ぜひ「自分トリセツ」を活用してみてくださいね。

 

 

稲葉政徳さん全インタビュー

【Part1】発達障害、うつ病、いじめ、パワハラ…短大の先生になるまで

【Part2】新聞奨学生として進学。35歳で理学療法士の資格を取る

【Part3】「発達障害は生まれつきだから仕方がない。俺は俺だ」

【番外編】復職から仕事継続まで。「自分トリセツ」の活用術

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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