障害者の「自分らしく働く未来」を。異業種から挑戦する二人の女性

2018.11.26公開 2020.04.22更新

manabyさん独自のeラーニング

リミー
ITスキルに力を入れているとのことですが、manabyさんのプログラムについて教えてください。
関さん
manabyは、独自でeラーニングを作っているんですよ。コストや時間もかかかるんですけど、既存のeラーニングにはない手厚さにこだわっています。

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リミー
すごい!例えばどんなこだわりがあるんですか?
関さん
「どんな方にも学んでいただける」を大事にしていて、「丁寧に、わかりやすく、繰り返し、スローペースで」という点が特長です。eラーニングって、1動画1時間程度でまとまっていることが多いですが、なかなか集中が続かないんですよね。
リミー
分かります…1時間の動画を観るのは結構気合が必要ですよね。
関さん
そうなんです。manabyの場合は、1動画3分〜10分と細切れになっています。なので、自分のペースで1動画を見終わったらひと休み、という形で進められるんです。
リミー
なるほど。それだとたしかに挫折しなさそうですね。
関さん
コンテンツとしては、Word・Excel・PowerPointというOfficeのソフトと、WordPress・HTML・CSS・PHP・JavaScriptだったり、webを作っていくようなコンテンツ、Adobe社のPhotoshopとかIllustratorなどもあります。

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リミー
え、それ全部、eラーニングあるんですか?!
関さん
もちろん、それぞれのeラーニングを自分たちで作っています。全部、3分〜10分程度の動画で、細かくチャプターに分かれています。
リミー
すごい。汗と涙の結晶ですね。
関さん
今は動画編集の需要が高いので、映像制作コンテンツはどんどんアップされていますね。
リミー
すごい…。そういったトレンドにも応じているんですね。
関さん
利用者さんの声がすぐに反映されるというのも、eラーニングを自分たちで作る良いところですよね。分かりにくかった部分なども利用者さんが言ってくれるので、それを私たちがコンテンツを作っているチームに伝えると、すぐアップデートしてもらえます。
リミー
個別にブースが分かれていたり、自分のペースで学べるのは良いなと思いました。

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関さん
ありがとうございます。職業訓練やパソコン教室だと、体調不良でお休みをしたらその日の内容は聞けなかった…となりますが、eラーニングだったら前回自分が止めたところから観れますよね。体調不良で休んでも、自分のペースで必ず学べるというのがすごく良いなと思っているんですよね。
リミー
もう、すごいが止まらない…。
関さん
ありがとうございます。笑

 

コミュニケーションのプログラムがない理由

リミー
他にもプログラムに特徴があるところがあれば……ん、なんか外から賑やかな音楽が流れてきましたね…
富田さん
お、ほんとですね!何かのお祭り?

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関さん
あ、そう言えばすぐ近くの馬車道でイベントやってるんですよ。

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賑やかな音楽の正体はこちらでした>>馬車道まつり

富田さん
そういえば、さっきマルシェで野菜とか売ってたよね。
関さん
そうそう。私も帰りに何か買っていこうかなぁ。
富田さん
いいね、いいね。あとで行こー!
リミー
あ…あの、インタビューに戻っていただいてもいいですか?
富田さん
失礼しました。笑

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リミー
何の質問をしたか忘れちゃいました。泣
関さん
IT以外のプログラムの特徴ですよね。他の就労移行支援事業所さんと異なるのは、コミュニケーショントレーニングをプログラムとしてはやらないというところですね。
リミー
本当にITスキルの部分に特化をしているんですね。
関さん
もちろん、コミュニケーションを取らなくていいとは考えていないので、上司や同僚との報連相をはじめ、最低限のコミュニケーションは取れるように、支援員と1対1の面談に力を入れています。

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リミー
たしかに、支援員さんとの1対1の面談だとより実践的な感じがします。
富田さん
あとは、主に土曜日にレクリエーションの機会を設けていますが、プログラムではないので強制参加ではないです。参加したいなと思うときは参加してもらって。コミュニケーションをとる・とらないから自由に選べるようになっています。
関さん
先ほどの馬車道まつりじゃないですけど、横浜は実はアイス発祥の地と言われていて、記念日には利用者さんと一緒にイベントに参加してアイスを貰いに行ったり、この前は野毛山動物園に行ったり、お花見したり…。
富田さん
どれもレクリエーションなので、参加自由ですし、「今日はソーシャルスキルトレーニングをやります!」みたいな固さも全然ないですよね。

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関さん
むしろ、そういったグループワークが無いからmanabyに来ているという方がほとんどですね。
リミー
苦手を克服するのではなく、自分ができることや得意なことを伸ばしていこうとするmanabyさんのスタンスを感じます。
関さん
「今まで、苦手なことをやらなければ生きていけないと思っていたけど、自分の好きなことで生きていけるんだ」という希望を持って来てくださる方が多いですね。

 

就労までの期間、就職先って?

リミー
利用者さんはだいたいどれくらいの期間で卒業されていくんですか?
富田さん
事務系の場合、早く就職したいという方が多いこともありますが、eラーニングのコンテンツ自体が2〜3か月あれば終了できるので、半年あれば卒業、就労が見えてくるのかなという感じです。
関さん
Web系の職種となると、期間はケースバイケースですね。ITスキルだけじゃなくて、生活リズムを整えるために半年ほど使う方もいらっしゃいます。

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リミー
生活リズムの部分もケアしてくれるのは安心ですね。Web・デザイン系のプログラムは半年くらいで終わる感じですか?
関さん
そうですね。ITの基礎的な知識を持っていれば、manabyで用意しているeラーニングは半年くらいで終わります。ただ、「ここをもう少し深く勉強したい」とご自身で学んでいく方も多いですね。
リミー
manabyさんで用意しているプログラム以外で、自分で学びたいものを自由に勉強できるってことですか?
関さん
はい。manabyのプログラムは、IT未経験の方でも抵抗なく使っていただけるように、仕事に必要な基礎知識を身につけるレベルを目指すので、それぞれの仕事に必要なスキルについては、必要に応じてご自身で学ばれたり、実際に仕事を始めてから覚えていく方が多いです。
リミー
たしかに、会社に入ってから学ぶことの方が多いですよね。
関さん
これは障害者雇用の良くない点でもあるんですが、企業側は障害のある方にそこまで高いスキルを期待をしていないような状態なんですね。基礎知識があればという。

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リミー
法的雇用率をクリアすることが第一という面もあるんですかね。
関さん
もちろん、法定雇用率を達成することも大切なことなんですが、それだけだと悔しい話なので。manabyに通うことで「ゼロからスタートしてこんなにできるようになった。会社に入ってからもスキルアップができている」という状態になっていくことが一番かな思います。
リミー
ところで、就職先はやっぱりIT系が多いんですか?
関さん
数でいうと、事務系のお仕事が一番多いです。あとはライティングのお仕事をされている方も多いです。
リミー
ライティングのお仕事は在宅でやっていらっしゃるんですか?
関さん
そうですね。在宅だと、ライティングの他にデータ入力やリサーチ業務が多いです。manabyの東北エリアの事業所の卒業生では、4割が在宅でお仕事をしているみたいです。
リミー
4割は結構多いように感じました。在宅の場合、フリーランスとして働く感じなんですか?
関さん
在宅で働いている方もフリーランスというより、企業に属しながら働くケースが多いですね。

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リミー
在宅で企業に雇用されながら、在宅で働くというのは障害を持つ方にとって働くハードルがグッと低くなりますね。
関さん
在宅なので通勤がないことはもちろん、収入面で安定すると、気持ちの安定にもつながりますし良いですよね。

 

企業実習にも活きる1対1面談

リミー
プログラムを終えた後はどんなことをするんですか?
富田さん
一通りのプログラムを終えて、就職に向けて準備を進める段階で、数週間〜1ヶ月程度の企業実習があります。実習報告という形で日々の記録も残しています。

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リミー
1ヶ月の実習って長く感じる人もいると思いますが
富田さん
利用者さんによりますが、訓練期間中に体調の波があった方でも、実際に企業実習へ行ってみると意外と安定していている方が多いんですよ。
リミー
それってなんでなんですか?慣れないお仕事や人間関係にストレスもありそうですが…
富田さん
ストレスはもちろんありますが、半年なり1年程度、manabyに通う中でストレスへの対処法も身に付けてもらっていますし、やっぱり「仕事に行く」という目的があると、訓練とは違うんですよね。お給料が発生すると、意欲が湧きますし。
リミー
なるほど…。それでも体調に波が出てきてしまったら、どうします?笑
富田さん
面談ですね。1対1でとにかく話を聴きます。
リミー
利用者さんは嫌がらないんですか? 「また面談ですか? 」みたいな。(いじわるな質問ですいません!)
富田さん
そんなことないですよ。笑 むしろ面談してくださいという方が多いです。話すことで整理されていく感じですね。

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リミー
そういう関係性が利用者さんと出来ているのは頼もしいですね。
関さん
働くことに、不安や焦りを抱えてる利用者さんはやっぱり多いです。でも、不安や焦りで、本来自分が就きたい仕事、なりたい自分を見失ってほしくないんです。だから面談の中で、本当の希望やなりたい自分を一緒に確認することが必要なんです。

 

在宅ワークの定着支援

リミー
在宅ワークの場合、定着支援ってどんな感じでやるんですか?
関さん
在宅ワークといっても、月に1回程度は会社に行って社内で仕事のすり合わせなどをするので、そのタイミングで会社の方を含めて三者面談をすることもあります。
リミー
対面でのコミュニケーションもしっかりあるんですね。
関さん
そうですね。とはいえ、面談は月に1回程度なので、事業所によっては、ご本人・企業の担当者・支援員が1つのチャットツールの中でやりとりをすることもあるみたいです。

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リミー
対面で言いづらかったり、言い忘れることもあると思うので、チャットはいいですね。
関さん
はい。企業側もご本人に言いづらいというケースもあるんですよね。失礼にあたるんじゃないかとか、すごく迷われるそうなんです。そこで私たちの出番なんです。
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近藤雄太郎

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  • 本記事は2018年11月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。