「親の何気ない一言」が子供の心に傷を与える時…臨床心理士が事例で解説

2016.07.28公開 2017.07.04更新
 
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「親の何気ない一言」が子供に与える影響は決して小さくありません。

 

今回は、親が子どもにどんな影響を与えるのか、ある実例を挙げて、臨床心理士の先生に解説してもらいました。

 

 

テキパキ教師の母親に育てられたA子さん

これから紹介する実例は、多くのお母様にも共通する点が沢山あると思います。

 

是非、これから登場するA子という娘の立場に立ちながら、読み進めてみて下さい。

 

A子さんは、父親がサラリーマン、母親は教師という家庭で育ちました。父親はいわゆるお坊ちゃん育ちで、自分中心的なところがあり、また病弱で会社を休むこともしばしばでした。

 

一方、学校では有能な先生である母親は、テキパキした性格で、家のことをすべて取り仕切っていました。

 

A子さんには弟が一人いますが、喘息とアレルギー持ちなので、母親の注目はどうしても弟のほうに向かいがちです。

 

 

A子さんが母親に言われたこと

子どもの頃、A子さんは母親からこんなふうに言われたことがありました。

 

「弟は病気だから、やさしくしてあげないといけないけど、あなたは我慢するのよ!」

 

 

A子さんが「なぜか?」と聞くと、

 

「あんたはちょっとやさしくすると、すぐにつけあがるからよ!根性が悪いんだから!」

 

そう言われると、何も言い返せませんでした。

 

また、一人で何かをして嬉しがっていると、

 

「あんたはそうやって、いつも目立ちたがるんだから。少しは弟のことも考えなさい!弟は、そんなふうに騒ぎたくてもできないのよ」

 

と言われるような状況でした。

 

 

萎縮し始めるA子さん

母親からいつも、まるで「おまえも不幸でいなければならない」と言わんばかりの皮肉や嫌味を浴びせられているうちに、A子さんは子どもながらに、できるだけ目立たないように周囲に気を遣いながら生きるようになってしまいました。

 

A子さんが「ピアノを習いたい!」と言うと、母親は「バイオリンをやりなさい!」と、自分が子どもの頃にやりたかったことを強引に押し付けました。

 

しかも、A子さんがバイオリン教室に行こうとすると、聞こえよがしにボヤきます。

 

「おまえは金食い虫だ。」

「こんなぜいたくさせてやっているのに、ちっともありがたいと思わないんだから!」

「感謝の一つくらいしなさい!」

 

そのたびにA子さんは罪の意識にかられ、バイオリンを習っていても少しも楽しくありませんでした。ときには無意識のうちに拒否反応が起きて、教室に行く時間になると頭痛や腹痛がするようになりました。

 

そこで、「お稽古を休みたい」と言うと、

 

「あんたは、いつもそうやって仮病を使って怠けようとする!」

「いったい、いくらかかっていると思うの。つべこべ言わずに、早くいきなさい!」

 

と母親から言われしまっていました。

 

 

罪の意識と気分の落ち込み

当然、こんな精神状態で習い事をしても上達するはずはなく、自分がムダ金を使っているかと思うと、罪の意識はつのるばかりでした。

 

しかも、これまでかかった費用のことを考えると、自分から「もうやめたい!」と言い出すこともできず、どんどん落ち込んでいくばかりでした。

 

こうした家族関係の中で成長したA子さんは、大人になっても、気持ちが落ち込むことが多く、自分の子どもを育てるのが苦しくなったため、カウンセリングルームを訪れたのでした。

 

 

子どもの前で直接口にすることの意味

A子さんの母親の言葉を一つ一つ見ていくと、つい感情的になった時に、だれもが無意識のうちに口にしてしまいそうなものばかりです。

 

しかも、教師という指導力を要求される仕事をしているうえ、弱弱しい夫に代わって家庭も切り盛りしなければなりません。

 

おまけに、子どもが喘息の持病をもっているという、なかなか大変な環境を抱えていたわけですから、ついA子さんにきつい言葉を浴びせてしまう気持ちもわからなくはありません。

 

A子さんの母親に限らず、どんな母親でも一度は、「子どもなんて手のかかることばかり」だとか、「いなければいいのに」と思ったことがあるのではないでしょうか。

 

しかし、一時的にそう思ったり感じたりすることと、それを子どもの前で口にすることでは、もたらされる結果はまったく異なってくるのです。

 

このように、親のなにげない言葉や顔つきが、子どもの心にどれほど大きな傷を与えるのか、親としてもう一度振り返ってみて欲しいと思います。

 

 

【記事提供】

佐藤文昭 臨床心理士

おやこ心理相談室 室長

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