精神疾患の予防やケアについて、臨床心理士が伝えたいこととは?【大賀一樹さん:後】

2016.10.20公開 2016.11.10更新
 
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前編に引き続き、LGBTの当事者で、臨床心理士としても活躍されている大賀さんのインタビュー後編をお届けいたします。

 

大賀さんがなぜ臨床心理士を目指そうと思ったのか、その原点となるエピソードも伺ってきました。

前編はこちら

 

臨床心理士になると決めた大学時代

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臨床心理士になろうと決めたのは、21歳の時です。ちょうど私の就職の時期がリーマンショックの時期で、就職率も下がっているという中で、自分が本当にやりたいことって何なんだろうということを考えたんです。

 

そこから、自分と同じようなLGBTの当事者の方に会いたいと思って、あるサークルに入ったのですが、そこで色々な方に出会いました。

 

それまで私は少しうつ気味で、あまり将来も描けていなかったのですが、そのサークルで同じような当事者の人がいっぱいいて、すごく勇気をもらって、ちょっと自分が救われた感覚がありました。

 

それをきっかけに、自分よりもっと下の世代の方が、これから生きていく中で、もし同じように悩みを抱えて生きていったら、それは本当に悲しいことだなと考えるようになって。

 

将来、大人になっていく世代の人々が、少しでも不安を抱えずに、ストレスを人に話せるような風潮になってほしいなと思って、臨床心理士になろうと決意しました。

 

 

臨床心理士になって良かったこと

まず、臨床心理学に出会えたのが良かったと言えます。そもそも、臨床心理学に魅力を感じたのは、個人っていうものをすごく大切にしているように感じたからです。

 

「個」のかけがえの無さをいかに読み解くかという点で、個が尊重されているっていうのが、自分にとっても嬉しい感覚でした。

 

また、臨床心理士の現場で活動していて、この職業じゃなかったらきっと分からなかった色んな人の背景を知ることが出来たり、一見普通そうに見えても、そんなことを抱えているんだ、という方と本当にたくさん出会って、現状を知ることができました。

 

自分自身がそういうことを知ることができて良かったなと思いますし、クライアントさんにも伝えることで、少しでも体調の回復を手助けできたり、その人なりの人生というのを見つけてくれている人もいるので、それが一番大きな嬉しさですね。

 

 

日常の心がけで大切なこと

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自分が精神疾患になるということを想定していない方も多いと思います。「まさか、うつ病になるわけがない」「まさか、ハラスメントを受けるわけがない」など、「なるわけがない」って思いがちです。

 

ですので、LGBTもそうですけど、まずは精神疾患や生きづらさを抱えている人を、身近な存在として認めるが第一歩ではないでしょうか。それが、自分自身も精神疾患にかかる可能性を認識しやすくする一面もあると思います。

 

また、精神疾患の予防としてできることはもちろんあると思いますが、原因は遺伝や環境など複層的ですし、どの予防策も決して万能ではないと思います。

 

どんなに予防しても、すごく神経質に病的にやってしまえば逆効果となることもあります。

 

そういったことからも、「精神疾患にかかった時にどうしたら良いか」といった視点で、きちんとケアできる場所やコミュニティがどんな所にあるのかを知っておくことが大切ではないかなと感じています。

 

あとは、保健センターとか行政の機関がありますが、そこに抵抗があるなら、まず電話やウェブで相談するなどして、まずは孤立しないって言うことが大前提です。

 

専門家ではなく、友達目線の方が言いやすいって人であれば、当事者同士が集まる自助グループでの相互支援的なコミュニティも活用できると思います。

 

 

周囲の人へのケアが置き去りに

精神疾患を抱えた方へのケアというのは以前よりも増えてきた一方で、ご家族の方だったり、ご友人の方のケアって、結構置き去りになっているんです。

 

そういった方のケアというのが、まだまだ理解されてない、普及してないのかなと思います。ご家族や近しい人が相談できる場所というのも必要だなと感じることが多いです。

 

例えば、お子さんが精神疾患や発達障害を持っていたり、不登校になってしまったりといった時に、つい隠したり、検査に行かないという親御さんもいらっしゃいます。

 

それでは母子共に孤立してしまうので、そういった方が繋がれる場所があるといいですね。

 

 

病気ではないと思いたい気持ち

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様々な支援機関があっても、行きたくなかったり、孤立してしまう背景として、恐らく、そのご本人自身の障害に対する偏見があるのではないかと思います。

 

障害への理解というのがやはりなかなか根付いていないんですね。メンタルヘルスの疾患って、当の本人でないと分からない部分も大きいと思いますし、「病気ではない」と思いたいっていう気持ちもあると思うんです。

 

それ自体は、健康でありたいということの裏返しかもしれません。

 

しかし、本当に健康な方というのは、ただ単に、病気が全くないという状態ではなく、病気になった時に色んな場所や色んな方と繋がったり、柔軟に考えられたりする方だと思うんです。

 

その辺りは、これからメンタルヘルスへの理解啓発をもっとやっていく必要があるのかなって思います。

 

 

あなたと同じような人はいる

子供も大人もそうですが、まず社会があって、その社会に合わせて生きなければいけないという規範意識が、特に日本人には強いように思います。自分がその社会に当てはまらないとダメなんだ、と思ってしまいがちです。

 

本当は、そこから一歩離れて、自分がダメなのではなくて、自分はたまたま人と違う発想だったり、生き方だったり、価値観を持っているだけなんだ、って思えるようになるのが良いと思います。

 

また、あなたと同じような考えや似たような悩みを抱えている人はいるはずなので、自分一人だと思わずに、そういう仲間を見つける視野を広げてほしいですね。

 

 

多様性のある社会を

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最後になりますが、私は「多様性のある社会」を理想としていています。現実として、そもそも人は多様な生き物ですし。

 

文化的なことや仕組みなどで、TPOに合わせてこうしなきゃいけない、というルールが人にはたくさんあります。

 

しかし、「そのルールって本当に意味があるものなのかな?」とか、「その枠組みで人を縛ってしまうことで、かえって生きづらくなる人が出てきて、むしろ非効率なんじゃないのかな?」と言うことを少しずつ冷静に見ていく必要があると思います。

 

そうして、できるだけ人が柔軟に多様な形で自分らしさを発揮して、むしろ社会に貢献をできる人が増えていけば良いなと思います。

 

生きづらくなる方が、孤立してダメになってしまう社会ではなく、その人らしさを尊重して、のびのびと暮らしながら、色々なことにクリエイティブになれる社会になってほしいなと思っています。

 

 

・・・・・・・・・・・

編集後記

難しいことではあると思いますが、自分自身の価値観や生き方を大切にして生きていくことは大切だと実感させられるお話でした。

 

そして、一人一人がそれを大切にできるようになったら、大賀さんの目指す「多様性のある社会」が実現できるのではないか、そんな風に感じました。

 

このインタビューの読者のみなさんも、一人一人何かしら悩みや秘密などを抱えていると思いますが、一人ではないんだと、ぜひ強く自信を持ってくださいね!

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

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【専門家の方へ】

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、

Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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