「精神疾患を理解しない人はいる」うつ病を4度経験した精神科院長が伝えたいこと

2019.07.29公開 2019.08.01更新

うつ病を4回経験。精神科医に説教された過去

くまの
岡本先生は、ご自身もうつ病になったそうですね。しかも、4回も…?
岡本さん
そうです。最初にうつ病を発症したのは、中学1年生のときでした。

 

陸上部に入ったばかりの5月に、初めての試合に出たんです。それまでは、「走ること」はとても「楽しいこと」だと思っていました。

 

競技場に着いた瞬間に、今まで味わったことのない緊張や恐怖を感じたんです。

くまの
競技場に着いた瞬間、いきなりですか?
岡本さん
そうです。競技場に着くまでは、「入部していきなり試合に出られるなんて嬉しい」と思っていたんです。

なのに、いきなり吐き気や腹痛が止まらなくなって…。その状態でスタートして、気が付いたら、地面に倒れて吐いていました。

くまの
えぇ…!それは辛いですね…。

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「特に、前触れもなかったですね」

岡本さん
それから、走ろうと思うと吐いたときのイメージが浮かんできて…。だんだん食べられなくなって、眠れなくなって、最終的にはうつ病になりました。
くまの
本当に、唐突的に発症した感じなんですね。
岡本さん
もしかしたら、無意識にプレッシャーは感じていたのかもしれないです。陸上部に入って、いきなり先輩たちに勝って、試合に出させてもらって。

 

だけど、自分では「これから陸上選手として頑張ろう」と思っていました。自分の身になにが起きたのか、最初はよく分からなかったですね。

くまの
そのとき、まだ中学1年生ですもんね…。
岡本さん
病院にも行ったんですけど、まぁ、今から25年以上前なので。子どものうつ病にあまり理解がない時代だったんです。

 

体に聴診器を当てても、先生からしたら異常がないんですよね。「スポーツをやっているなら、これくらい乗りこえなくてどうするの!」と説教されて…。

くまの
説教!?精神科の先生にですか?
岡本さん
そうです。「乗りこえ方が分からないから、病院に来ているのに…」と思いました。

 

結局、病院に通っても治療らしいことをしてもらえなくて。中学3年生で「もう無理です」と陸上を離れてから、やっと症状が落ち着いていきました。

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岡本さん
2回目のうつ病は、高校3年生のときです。受験勉強で自分を追い込んでいたので、「眠れない」「食べれない」の症状がまた出てきて…。

 

3年生の終わりくらいには、「死にたい」と思う気持ちが強くなっていました。

くまの
受験勉強のプレッシャーに、とても苦しんでいたんですね。
岡本さん
親がとても厳しい人だったんです。テストでいい点数を取らないと、母は泣いて、トイレで吐くこともありました。
くまの
え…?お母様が、トイレで吐くんですか?
岡本さん
そうです。自分のせいで母親が泣きながら吐いている様子は、子どもにとっては辛いんですよね。

 

ただ、いきなり死ぬのも怖かったんです。だから「現役で受験が失敗したら死のう」と決めて、遺書も書いて、受験に臨みました。

くまの
遺書まで書いたんですね…。
岡本さん
受験当日は頭が働いていない状態だったんですが、なんとか合格しました。

 

それから、大学でまた陸上を始めたんです。最初は思うように体が動かなかったけど、少しずつ昔の勘を取り戻していきました。

くまの
わぁ、いいですね。
岡本さん
でも、「だんだんいい記録を出せるようになってきたな」と思っていたときに、大きな怪我をしてしまったんです。ももの裏の肉離れなんですけど、何回も繰り返して、走れなくなってしまって…。
くまの
(もう、辛すぎる…)
岡本さん
大学にも行けなくなって、3回目のうつ病を発症しました。

 

結局そのときも、しっかりとした治療はしなくて。復活はしていないけど、なんとなく動けるようになったかな?くらいで大学を卒業したんです。

くまの
4回目のうつ病は、いつだったんですか?
岡本さん
4回目は、社会人のときです。精神科医の仕事が忙しくなってきて、つい自分を追い込む悪い癖が出てしまって。月に1回は胃の調子が悪くなって、熱を出すのを繰り返しました。

 

やがて眠れなくなって…。運動していないのに、体重が1年で10キロ以上減りました。

くまの
食べることも、なかなかできなかった?
岡本さん
食べていないわけじゃないんですけど、どんどん痩せていきました。それだけ、体も心も弱っていたんだと思います。

 

周りの人の評価よりも、自分が「できた」と思うことが大切

くまの
どうやって、4回目のうつ病から回復していったんですか?
岡本さん
それまでは、なんとなく体調が良くなって、また悪くなってを繰り返していました。4回目のうつ病のときは自分も精神科医だったので、さすがにしっかり治さなくちゃと思って…。

 

幸い、周りは精神科医だらけだったので。専門家に相談して治療を進めていくうちに、症状も落ち着いていきました。

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岡本さん
あとは、「自己肯定感」がとても低かったので、「自分は“だめ”な人間なのか?“だめ”なところがあるとしても、本当にそれだけなのか?」と考えるようにしたんです。
くまの
自分のだめなところだけではなく、いいところを探すということですか?
岡本さん
そうですね。どんな小さなことでもいいから、自分の“できているところ”を認めてあげることが大切だと思います。

 

自己評価が低い人は、「自分の“できていない”ところ」人の“できている”ところ」を比べるんです。当然、勝てるわけがないんですよね。

 

かつ、自分の“できている”ところは、「できてあたりまえ」だと思ってしまう。だから、前にできたことを失敗してしまうと、「前はできたのに…」と落ち込んでしまうんです。

くまの
その考え方は、自分をどんどん追い込んでしまいそうです…。
岡本さん
私も、最初は「こんな小さなことができたって意味がない」と思うこともありました。そんなときは、同時に「できていることには変わりない」と考えるようにしたんです。

 

そうやって考えていくうちに、「今日は〇〇が駄目だった。でも、〇〇はできた」と思えるようになりました。気持ちが落ちるだけで終わらなくなったのは、自分でもいい方向に変わったなと思います。

くまの
「できた」と思うことは、自分にとって小さなことでもいいんですか?
岡本さん
もちろんです。周りの人に評価されることが大切ではなくて、自分で「できた」と思うことが大切ですから。
くまの
うつ病のときに、岡本先生が救われた言葉はありますか?
岡本さん
うつ病の症状が辛くて、薬を何回変えてもまったく眠れないとき、自分では「もう回復なんて無理だ…」と諦めていたんです。

 

そんなとき、担当医の人に「私はまだ諦めていないから」と言っていただけたことは、希望を感じましたね。

くまの
とってもいい先生に巡り合えたんですね。
岡本さん
そうですね。回復してから思い返しても、先生の言葉は自分にとって大きかったなと思います。

 

あとは、友達の言葉も支えになりました。

 

うつ病の症状が少しずつ良くなって、走ることも再開したんです。でも、発症前のようにはまったく走れなくて…。それでも、「今日は5分走れたよ」と友達に報告はしていました。

くまの
走ることを再開しただけでも、すごいなぁと思いますが…。岡本先生にとっては、悔しい記録だったんですね。
岡本さん
うつ病になるまでは、フルマラソンを走っていたので…。そのときの自分と比べて、「今の自分はこれだけしか走れないのか」とがっかりしていました。

 

そんな中、友達が「この前は5分だったのに、今日は10分走れたんだ!」「走れる距離も伸びてきたね!」と言ってくれたんです。その言葉に、「そういえば、そうだな」とストンと納得することができたんです。

くまの
客観的に、“できるようになった”事実を教えてくれたんですね。
岡本さん
そうです。新しい視点から意見をもらうことで、自分では気が付けなかったことを知ることができました。

 

外来で「自分のすべてを伝えよう」と意気込まなくても大丈夫

くまの
心が疲れている人が病院に行きたいときに、ぐったりした状態で病院を探すのって、とても大変だと思うんです。自分に合う病院を探すために、なにかいい方法ってないですか?
岡本さん
そこは、本当に難しいところだと思います。ホームページには、どの病院にもいいことが書いてありますし。口コミも自分に当てはまるものばかりではないから、参考意見程度に留めたほうがいいかと思います。
くまの
じゃあ、やっぱり実際に病院に行くしかない…?
岡本さん
そうですね。行かないと分からないことがあるのは事実なので、病院に行く前に、いろいろな情報に振り回されないほうがいいかなと思います。

 

初診で先生のことがよく分からなくても、診察を重ねていくうちに、先生との信頼関係を深めていける場合もありますし。

 

まずは病院に行ってみて、何回か診察を繰り返す中で、病院や先生との相性を見てみるのがいいと思いますよ。

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岡本先生のクリニックは、木が好きな先生の希望でウッド素材がメイン。木のいい香りが安心します。

くまの
「病院に行く程か分からないけど、お話を聞いてほしい」と思った人も、診察に行っていいんですか?
岡本さん
当院では、病気の診断がつかない場合でも、ご相談に来ていただいて大丈夫ですよ。
くまの
「その程度で病院に来るなよ!」って、冷たくされたりしないですか…?
岡本さん
うーん…(笑)
くまの
ごめんなさい、先生によりますよね!
岡本さん
まぁ、ひとつの見分け方というか、参考程度なんですが…。

 

1日に数百人の患者さんを見ているような大きい病院だと、「じっくり話を聞いてほしい」と思っている人には合わないかもしれないですね。

 

予約を受けている患者さんを、時間通りに診察しなくてはいけないでしょうから。

くまの
時間に追われて、ゆっくりお話ができない場合もあるんですね。
岡本さん
医師によっては、「こんな軽い症状で来るんじゃないよ!」という態度を見せるかもしれません。その医師が忙しくて余裕がないのか、診断が付かない人は受け付けたくないのか、それぞれ理由はあるでしょうけど…。

 

そういう態度をされるようなところは、「こちらから願い下げだ!」という気持ちでいるようにしましょう。診察を重ねても、その医師とは噛み合わない可能性が高いですからね。

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「北本心ノ診療所」の診察室には、患者さんが作った猫の羊毛フェルトが並べられていました。

くまの
初めて精神科を受診する人が、行く前に準備しておいたほうが安心なことってありますか?
岡本さん
慣れていないと緊張するでしょうから、「自分のすべてを伝えよう」と意気込まなくても大丈夫です。

 

何回か病院に通う中で、「少しずつ伝えていこう」と思っていただければいいと思いますよ。

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待合室には、精神疾患の本や、ファッション雑誌、レシピ本などがたくさん。

岡本さん
ただ、「大事な症状を伝え漏らしたくない」という気持ちもあると思うので、伝えたいことを紙に書いておくのもいいと思います。携帯のメモに残しておいたり。

 

メモを先生に見せるのもいいし、見ながらお話しするのもいいですね。

くまの
先生に伝えたいことを忘れてしまったり、話すことが苦手な人にもぴったりの方法ですね!
岡本さん
もちろん、長文すぎると先生に読んでもらえない場合もあるので…。「この3つは伝えたい」と思うことをピックアップするとか。

 

文字として残しておくと、「前回これを伝えたから、今回これを伝えよう」と考えやすくもなるんです。紙に書いた場合は、コピーを取ったり、写真を撮っておくといいかと思います。

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コミックもずらり。岡本先生は「こち亀」ファンだそうです。

くまの
岡本先生から、診察に来る人にお願いしたいことや、伝えたいことはありますか?
岡本さん
「生活に運動を取り入れましょう」とは、診察の中で伝えています。月に1回ほど、病院でもランニング講座を開催しているんですよ。
くまの
そうなんですね!先生も走るんですか?
岡本さん
もちろんです。一方的にこちらが教えるというより、「一緒に走りましょう」というイメージですね。

 

重いうつ状態のときは、私も動くどころではありませんでした。誰でも、どんな状態でも運動すればいいいというわけではない。

 

ただ、動くことがプラスに働く人が多いのも確かです。無理のない範囲で、運動に触れていただきたいなと考えています。

くまの
先生が運動をおすすめするのは、運動後の達成感を味わってほしいとか、すっきりするとか、そういうことが理由で?
岡本さん
もちろん気持ちの面もあるんですが、運動することで脳の神経回路を強くするなど、理屈の面でも運動はとてもメリットがあるんです。

 

体の健康だけではなく、心の健康にも運動は大切なんですよ。

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過去に実施したラン教室の様子。親しみやすい文章で、見ていると参加したくなります。

くまの
しっかりとした根拠があると聞くと、運動へのやる気も出てきますね。
岡本さん
当院の患者さんでも、電車にも乗れないほどのパニック障害の方が、ホットヨガを始めたことで症状が和らいだことがあります。もちろん、適切な治療は並行して行っていましたよ。

 

でも、治療の力だけではないと思います。

 

自主的にホットヨガを始めてからは、「電車にも乗れるようになったんです」と嬉しそうに報告をしていただきました。

くまの
ホットヨガの効果がすごい!
岡本さん
私自身も、運動を取り入れることで8年ほど安定した状態を保っています。できる範囲で、体を動かしてほしいなと思います。
くまの
最後に、この記事を読んだ方に伝えたいことはありますか?
岡本さん
「生きづらさ」を感じていることは、なかなか人に言えない場合も多いと思います。ただ、もちろん当院のようなクリニックでも、それ以外でも、自分の気持ちを共有できる場所と繋がってほしいです。

 

今はSNSもありますから、ネットの中でもいいですよね。私でよければ、Twitterのアカウントもありますので。どうか、自分ひとりだけで抱えることがないように。

 

もちろん、人と繋がることですべてが解決するわけではありません。でも、その繋がりがどこかで活きると思います。そのときは分からなくても、後から思い返して「あの言葉に支えられた」と気がつくことがあるかもしれません。

 

そんな繋がりを、どこかに作っていただけたらなと思います。

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「精神疾患って甘えでしょ?」

 

そんな人には、自分の症状を、まずは知ってもらうこと。精神疾患を否定する、相手の気持ちを知ろうとすること。自分ができるラインを、相手にしっかり伝えること。そして、どれだけ対話しても、理解してもらえない人はいると割り切ること。

 

その4つが大切だと、今回のインタビューで岡本先生に教えていただきました。症状が重いときは、このすべてを実践することはとても難しいかもしれません。

 

少しずつ回復していく中で、「これならできる」と思うものから、ぜひ試していただけたらなと思います。

岡本先生のTwitterはこちら>>@running_doctor

くまのなな

ライター

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年7月29日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。

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