臨床心理士の仕事や印象的だったカウンセリングとは?【成田恵さん:前】

今回は、RemeでQ&Aやコラムも担当していただいている、臨床心理士の成田恵さんにお話を伺ってきました。

 

前編では、成田さんが臨床心理士を志すに至った原体験や、印象的だったカウンセリングについて話していただいています。

 

 

中学時代の親友が不登校に

私が通っていた中学校は、当時出来たばかりで、私達の代が一期生でした。進学校だったのですが、「新しい学校だから、色々なことができるかも」と、可能性を感じて入学してきた子がたくさんいました。

 

でも、結構勉強づくしの毎日になってしまって、学校に来られなくなる子や、窮屈さを感じる子だとかが多くなっていました。

 

そんな中、私の親友が、学校の環境にうまく適応できない状態になってしまって、ほとんど学校に来なくなってしまったんですね。

 

「その子の力になってあげたい」とは思いつつも、話を聞いてあげることしかできませんでした。

 

この経験から、自分の中で、もっと力になれることがあれば、という思いが強くなったことがきっかけで、こころの専門家を志すようになりました。

 

大学を目指す時に、色々な進路を考えてはいたのですが、元々、志望していた大学の心理学部に合格になったので、「これは臨床心理士になれってことだな」と思って、進路を決心したという感じです。

 

そこからはもう、まっすぐ心理学の勉強をしてきました。

 

 

カウンセリングルームが閉鎖

臨床心理士としてのキャリアは、心療内科に併設したカウンセリングルームから始まりました。

 

その中で、カウンセリングの経験を積ませてもらったのですが、そこのカウンセリングルームが突然、閉じることになってしまったんです。本当に急な話だったので、びっくりしました。

 

カウンセリングルームを閉じてしまうことで、私がカウンセリングしている人たちの行き場所がなくなってしまうことが一番の心配でした。

 

他に適切な場所があれば、紹介することもありましたが、なかなか丁度いい所が見つからない人も実際にいました。

 

また、カウンセリングを受けている人にしてみれば、これまでずっと話を聞いてもらったカウンセラーに聞いてもらったほうが楽だと思う部分もあるようで、他の場所に行きたがらない人も少なくありませんでした。

 

次のカウンセリングの場所を見つけられずに、路頭に迷わせてしまうような状況は何とか避けたいという思いがありました。

 

それと同時に、将来的な開業を志していたこともあり、様々な方たちに後押しをしてもらいながら、結果的に独立という形になりました。これが現在、運営している「心理相談室QueSera(ケセラ)」を開設した経緯になります。

 

 

リワーク施設での活動

ケセラでのカウンセリング活動とは別の活動として、リワーク施設での活動があります。

 

私の勤務している、ビューズというリワークの施設は、うつ病で休職・離職されている方々の社会復帰するための事業所です。

 

ビューズの利用者さんは、毎日、朝起きたらビューズに行って、色んなプログラムなどを受けながら一日を過ごして、生活リズムを整えるために来てもらっています。

 

ビューズでの私は、カウンセラーという立場ではなく、支援スタッフという立場で、複数の利用者さんを担当しつつ、全体の利用者さんに対する集団でのレクチャーや研修を行っています。

 

また、個別での相談に乗るなどして、利用者さん一人ひとりに寄り添うことも大切にしています。

 

 

休職・離職中の生活リズムを整える

ビューズでの仕事を始めたのは、ケセラでのカウンセリングを始めた時期と同じくらいでした。

 

ビューズのスタッフさんが、「リワークの取り組みがあるんだけれど、一緒にやってみないか」ということで話に来てくれたのが、最初のきっかけでした。

 

休職や離職されている方って、自分なりに生活リズムを整えることがすごく難しいので、話を聞いて、すごく良いサービスだなと思ったんです。

 

その後、すぐにビューズの見学に行きました。実際に行ってみたら、専門性の高いスタッフさんが揃っていて、思ったよりちゃんとしているなと(笑)。

 

さらに、利用者さんに提供しているプログラムも、最先端の治療的要素がきちんと反映されているというのが魅力だなと思って、支援員として参加させていただくことになりました。

 

 

ある男性との出会い

これまでのカウンセリングの中で印象的だったのは、30代前半ぐらいの男性とのカウンセリングです。

 

精密な作業が必要なお仕事を毎日行う、ストレスの多い職場にお勤めでした。自分の1つのミスが、大きなミスになっていくという職場に常にいたということもあり、自分の決定に対する不安がすごく高まってきてしまう状況でした。

 

そういった状況の中で、その男性は、「確認強迫」というものになってしまったんです。確認強迫というのは、強迫性障害の一つの症状なんですけど、確認を長いことしてしまうので作業が滞ってしまいがちになります。

 

確認強迫に関するお困りごとで、カウンセリングルームに来られたのですが、その方は、10回くらいのカウンセリングで状況がだんたんと良くなっていきました。期間でいうと、2ヶ月くらいでしょうか。

 

ご本人の悩みごとが、ある程度明確だったので、確認強迫の問題が改善された時点で解決という形でした。実際のカウンセリングでは、つい確認をしてしまう時の状態をすごく細かく一緒に共有していきました。

 

カウンセリングで、共有作業をしていく中で、

 

「何がトリガーになって、不安が喚起されるのか」

「どういう不安が湧き上がってくるのか」

「その不安は現実的なものなのかどうか」

 

などということを吟味し、その上で、不安が高まった時の対処や工夫を見つけていくといった流れですすめていきました。

 

そして、対処や工夫を日常に戻った時にも実践して、またカウンセリングに来てもらい…というのを繰り返していったところ、確認する時間もすごく短くなってきて、仕事や生活への支障が減り、カウンセリングの終結に至りました。

 

「一人でも大丈夫な気がする」

その男性が、最後のカウンセリングの時に、すごく何かを言いづらそうにしていたんです。

 

特に、今日で終わりですという話はしていなかったんですけれど、カウンセリングに来た時から、何かモジモジしていたんです。多分、「もうカウンセリングに来るのは終わろう」と思っていたのでしょうね。

 

それで、モジモジしながら、これまでのことを振り返るように話し始めて、ボソッとこう言ったんです。

 

「あの…、これまで、先生と一緒に考えてやってこれて、もう一人でも大丈夫な気がするんですよね。」

 

この言葉を聞いた時、カウンセラー冥利に尽きると言いますか、とても嬉しくなったことを覚えています。

 

クライアントさんとカウンセラーは、一緒になって考えることが出会いのスタートになるわけですが、最終的に、クライアントさんが一人でも上手くやって行けることを目指しているので、すごく嬉しく感じた経験となりました。

 

 

・・・・・・・・・・・・

編集後記

 

カウンセラー冥利に尽きるお話を伺って、私自身も復帰に向けて頑張ろうと想えたインタビューでした。

 

明日は、後編をお届けします。メンタル不調の予防やセルフケア、将来の展望などなどお話しいただきました。ぜひお楽しみに!

後編はこちら

 

 

インタビューを受けてくださる方、募集中です

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【専門家の方へ】

臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、

Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

ご興味をお持ちいただけましたら、下記フォームよりお問い合わせください。24時間以内にご連絡いたします。

 

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2016年11月12日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。