期待しないけど希望は持つ。療養中の人やその家族に伝えたいこと【池上枝里子さん:後】
前編に引き続き、看護師を経て心理カウンセラーとして活動している池上枝里子さんにお話を伺ってきました。
後編では、心の健康に関する予防で大切なこと、療養中の人やその家族に伝えたいことなどについて話していただいています。
予防で大切なことを
心の健康づくりや精神疾患の予防という観点でいえば、日頃の自分の気持ちや感情を感じられることがすごく大事なことだと思っています。
「いま私、○○な感じだな。」とこれだけでいいんです。
「なんとなく落ち込んでる」
「もやもやしている」
「嬉しい」
「悲しい」
とか、よく辞書にあるような感情の言葉でなかったとしても良いんです。
「自分のことなんだから分かってるよ」って思う人もいるかもしれませんが、「今日はこんな気持ちだったな」と自分の気持ちに向き合うことが、心の健康や予防の第一歩になっていくように感じています。
規則正しい生活がすごく大事
精神疾患などで療養中の人にとって、すごく大事かなと思うのは、規則正しい生活を送ることです。
体が整っていくと、自然に心が整っていく筋道ができてくるので、なんだか当たり前のような話ですけれど、バランスの良い食事を取って、夜は熟睡するといった規則正しい生活を習慣化できると良いと思います。
私のクライアントさんの中には、引きこもりになりかけている人もいるのですが、睡眠がおろそかになっていたり、睡眠がとれないという状況が当たり前になっているケースもあります。
そこで、睡眠時間について意識付けをしてもらい、規則正しい睡眠が続けられるようになると、「最近、体がほぐれてきている」とか「気持ち的にも余裕が出てきて、行動の範囲が広がった」なんて言ってくださることは多いですね。
「期待をしない」「希望を持つ」
病気になってしまった人の家族や友人ができることは、「必ず良くなる」と期待をしない。それでいて、「いつかは良くなって欲しい」と、希望を持ち続けることだと思っています。
家族なら尚更、ちょっとでも治ってもらいたいし、元気になってもらいたいし、すごく生き生きして欲しい。
そんな思いを、「必ず」と期待せず、「いつかは」と希望を持ち続けていくことが大切ではないでしょうか。
よく言われる、「励まさない」といったスキル的なこともあるのですが、まず気持ちのところで、希望は持っていても、期待に変えないようにしたいなっていうことは伝えたいです。
私も家族に精神疾患持っている人がいます。
良い時も悪い時もありますけど、期待せずにできるだけ無理強いをしないで、でも希望を持って、寄り添いながら生きたいなと思っています。
カウンセラーとしての自分らしさ
カウンセラーとして活動する中での自分らしさ…。上手く表現出来ないのですが、カウンセラーという仕事が、すごく好きというところにあるかもしれません。
クライアントさんがしんどい時は、共感していろんな気持ちを経験しますが、そういうことをひっくるめても、話を聞かせていただいたり、一緒に過ごさせていただくことが好きだなぁと思えることが、自分らしさの一つかなという気がします。
カウンセラーとして出来ること
カウンセリングの時間は、話したいことを話してスッキリしたり癒されることも多いのですが、癒されるばかりではない時もあるのです。
自分と向かい合うのは辛いことでもある。カウンセリングで、すぐに答えをもらえるわけではないし、パァッと全部の悩みがなくなるわけでもないですし。
でも、クライアントさん自身の問題だからこそ、クライアントさんが自ら何かを見つけるまで、粘り強く寄り添うことが、カウンセラーとして出来ることでしょうか。
また、私の出来ることは、日常生活の中で、心のゆとりや豊かさだったりを見失ってしまっている人に関わり続けることです。
そして、今より一歩でも変わっていくことで、気持ちが晴れたり、新しい自分や世界に出会える人を増やすお手伝いできたらなぁと思っています。
自分のカウンセラーを持つことが当たり前に
これからもカウンセラーとして活動していく上で、自分のカウンセラーを持つことが当たり前になるような社会が来れば良いなと思っています。
ふと悩んだりした時に、すぐ相談できる人がいるっていいんじゃないかなって。
生活していれば、悩むことって誰だってあるじゃないですか。体の病気もあるし、心の病気もあるし、家族の病気もあるし、絶好調の時もある。
どんな時でも、「マイカウンセラー」みたいな存在が当たり前になって、悩んでいることを我慢しないで伝えられたら、きっとストレスが溜まらずに、豊かな生活になると思います。
それが、ゆくゆくは、うつなどの予防にもつながるのでは?と思っています。大きな夢ではありますが、そんな世の中になるといいなって思いますね。
(池上枝里子さんインタビュー完)
PHOTO by 齋藤郁絵
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- 本記事は2016年11月20日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。