
精神疾患への偏見。精神疾患を経験した精神科医とリワーク支援員はどう向き合う?
目次
周囲が冷たい、肩身が狭いと感じたことはある?

岡本先生はうつ病、松浦さんは双極性障害と診断された過去をお持ちですが、実際に周囲や社会が冷たい、肩身が狭いと感じたことはありましたか?
周囲に相談したら、自分がさらに傷つくんだと思ってしまったんです。


全然、大丈夫じゃなかったんですけどね。


食事も喉を通らない状態で、吐き気が止まらずに夜中に泣いているときに、両親から「なに泣いてるんだ!」と責められたこともありました。




精神疾患と聞くと、「こわい」「くらい」「おかしい」というイメージがある方も、きっといると思うんです。私も、うつ病になるまでは自分とは関係ないものだと思っていましたから。

最初のうつ病を発症した中学生時代を振り返る岡本先生
周りが理解してくれるかどうかも大切ですが、自分自身が病気をどう受け止めるかのほうが、今の私にとっては重要なんです。


松浦さんは、ご自身が双極性障害と診断されてから、周囲が冷たいと感じたことはありますか?
人数も少ない会社だったので、自分が抜ける穴も大きいとわかってはいたんです。ただ、なにかあればすぐに休職する人間と見られているのかなと、複雑な気持ちはありました。




休職期間で寛解まではいけずに、結局再発してしまったんです。また休職したいと言える空気でもなくて、最終的にはその会社は退職しました。


休職もあまり前例がない会社だったんですよね。長く休みたいなら辞める、みたいな。じっくり病気を治していこうと思える環境ではなかったです。
僕も、休職させてもらった分、仕事で結果を出してアピールしていかないと!と焦ってしまって。悪循環でした。


お互いの意見のズレって、どうすればいいんでしょうか?
気持ちを話す時間を、自分で作るのって大変じゃないですか。「自分の話を聞いてもらえる時間がある」と思うだけで、肩の力が抜けることもありそうですよね。
ただ、僕は前の会社を退職してしまっているので、理解されなくて崖っぷちになるなら、その場から去っていいと思います。無理して潰れてしまう前に。

メディアでの精神疾患の報じ方に思うことはある?

メディアの報道について、なにか思うことはありますか?


ただ、事件を起こした容疑者が双極性障害だった、統合失調症だった、とそこだけ切り取られて報じられるのは、やっぱり複雑ですね。
自分が顔を出して双極性障害のことを発信しているのも、双極性障害になった人間の一例として、本当の姿を見せたいという気持ちもあるんです。


最近、ガンになっても働ける!こんな働き方ができる!ってニュースやインタビューが増えてきてないですか?ガン=死ではないと、報道も変わってきたんだと思います。


事件を起こす人もいるけど、しっかり働いて日常生活を送っている人もいる。片方だけではなくて、両側面を知ってほしいなと思います。


実は、ニュースの切り取り方を見て、おふたりは怒っているのかなとも思っていたんです。
ただ、たくさんの人の興味を惹くためには、過激な報道をせざるを得ない面もあるんでしょうね。見る側の興味関心が強いものを報じている場合もあるだろうし。

報道を受けて、見た人がどう話題を広げていくかのほうが、重要な気もします。


非難するだけなら、きっと同じことが繰り返されてしまうから。


不安をあおるだけではなくて、もう少し深掘りできたらいいなと思います。

報道の在り方について、議論が白熱しました


少しずつ、精神疾患を取り巻く環境も変わってきているのかなと思います。

“セルフスティグマ”で悩んだことはある?

引用:統合失調症患者のセルフスティグマが自尊感情に与える影響
信用されなくなることが怖くて、誰かに言うことも最初はできず…。もう、自分は社会に出ちゃいけない人間なんじゃないかと思いました。


夜間の当直を変わってくれたり、回復してきたときに「マラソンでこんなタイムを出したんです」となにげない会話ができたり。


もう少し早く言えていたら、大きく体調を崩すこともなかったのかも、と今なら思います。


松浦さんは、セルフスティグマで苦しんだ経験はありますか?
診断も受けていたけど、その診断に甘えて休んでいるだけで、本当はただの社会不適合者なんじゃないかって。

松浦さんの過去の葛藤に、耳を傾ける一同

ただ、自分が元気だと思っていた時期まで「それは躁状態で、病気です」と言われたときは、すごく悩みました。




気分の波がなだらかになるのを感じて、「あ、やっぱり病気なんだな」と受け入れることができたんだと思います。
あとは、自分以外の双極性障害の方に会ったのも大きいですね。


他の方の症状を客観的に見ることで、自分に当てはめて考えられたんだと思います。

社会的な偏見はなくなると思う?そもそもなくしたい?

今の自分ができることは、双極性障害の当事者の方と、会社との溝を埋めることだと思っています。企業側に双極性障害に対しての偏見があるなら、それを取り除く手伝いがしたい。


その考えもわかるんです。自分も、上がっているときに大きな提案をして、下がって投げ出したこともあるので…。会社が、双極性障害の方を扱いにくいと思うのも理解できるんですよね。
ただ、病気のことを知らないからこそ、距離が離れてしまう場合もあるのかなとも思うので。


働く上で本人側も対処が必要だけど、環境がまったく整っていない中で、自分だけが適応しようとするのはつらさがあるので…。


「双極性障害だから働けないだろう」という思い込みは、今後なくしていきたいですね。


名前や顔を出さなくてもいいから、会社勤めできている人がいると広がっていけば、偏見も少なくなる気がします。それに繋がるようなWebサイトの検討を現在社内でしています。

偏見を少なくしていきたい気持ちは、おふたりとも共通しているそうです

ただ、偏見を少なくするために行動はできると思います。私も、会社の代表の方とお話しする機会を作っているんです。精神疾患に対して、詳しく説明したり。


病気に対しての知識がないから、どう接していいかわからなかったり…。症状が出ているときに欠勤や遅刻をされて、「精神疾患と言えば許されるのか、そのフォローは自分がしているのに」と憤ってしまったり。


それを受けてどうするかは、会社が決めることですよね。私から、「だからすべてサポートしてあげてください」とは言いません。それが正しいことだとも言えないので。


できれば、こうやって会社側にアプローチする専門医が増えていけばいいなと思います。知識がある人間に説明されるだけで、ストンと理解してくれる方もいますから。


おふたりのお話、すごく参考になりました!写真撮影、しましょう!
(左から)岡本先生、松浦さん。おふたりとも終始納得感のあるお話をしていただき、聞いているだけでも勉強になる対談となりました。お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました!
“偏見”と言っても、そもそもなにが偏見なのか、それ自体が人によって異なるのだと、今回の座談会を聞いて感じました。きっとそれぞれの“普通”があり、それぞれの“異常”があるのでしょう。
価値観はひとつではないと知ることが、自分以外の人を理解する第一歩になるのかもしれません。「病気の人だから、きっとこうだろう」と決めつけずに、目の前の人としっかり向き合って、対話することを忘れたくないなぁと思います。
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- 本記事は2019年11月24日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。