【臨床心理士解説】完璧主義をやめたい…子育てや家事に向き合うコツは?
家事や育児は日常から切っても切り離せず、日々とめどなく押し寄せてくるタスクですよね。
こうやってやりたい、これをやったら次にあれをやって…、あれをやっている間にそれをして…。とスケジュールを考えながら動いて大忙し。
そんなときに限って子どもが予想外の動きをすると、予定が狂ってしまって、大変なストレスに感じられることもあるでしょう。あるいは、
やらなければならない事柄に圧倒されて思うように体が動かず焦りや不安が膨れ上がる…
そういったこともおありの方もおられるかもしれませんね。
とりわけ、自分に対して完璧主義的な傾向がある場合には、思うようにいかないこと(今回で言えば家事や育児)に直面した際にはストレスの影響を受け、心理的な不適応状態を招きやすいという研究結果もあります。
そこで今回のコラムでは、完璧主義の自分を抱えつつ、より楽に子育てや家事に向き合うコツは、どのようなものがあるか見ていきましょう。
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「人を頼っていい」「一人で頑張らなくていい」
完璧主義があって悩んでおられる方の多くは、困ったときに人になかなか頼れなかったり、相談できなかったりされていることもよく見受けられます。
怒涛の毎日を過ごされていて、日々極限状態の中過ごされているように感じられることも少なくありません。
「さらに完璧に」
「もっと上手に」
と、より高みを目指されるお気持ちには感服させられる一方で、すでに頑張っているところにさらに鞭を打つように努められると、燃え尽きてしまったり、うまくできずに強いストレスにさらされてしまったりする恐れがあります。
「そんなに一人で頑張りすぎないで大丈夫」
「むしろ、よくここまで頑張ったね、自分偉い!」
と自分自身に、まずは優しく声をかけ労わってあげることも大切です。
そのうえでどんなことが大変か、どんなことを手伝ってほしいか、身近な誰かに相談し協力を仰いでみる、あるいは地域のサービスを利用して家事サポートをしてもらうなど検討してみるのもいいでしょう。
急に家族に協力を依頼するのが難しい場合には、SNS(ツイッター・ママリなど)で同じような悩みを抱える方の投稿を見てみたり、ときに相談を投げかけてみてもいいかもしれません。
同じ境遇の者同士だからこそ分かち合える感覚やアドバイス、気づきが得られることもありますよ。
とにかく、一人で抱え込んでしまわないことが大切です。
適切にSOSを出すこと、そしてうまくできなく感じることがあっても頑張っている自分を認めてほめてあげることはとても大切です。
「仕方ない」と割り切る
子どもが生まれると、子どもに費やす時間が増える分、これまでやっていたことに費やせる時間が圧迫されるようにもなります。
なので、これまでできていたことが、思うようにいかなくなったり、出来なくなってしまったりすることもあります。
家事でいうと、食事の準備、掃除、洗濯…それぞれにかけられる時間・費用・クオリティには変化が生じてきやすくなります。
ご自身の休息や寝る間も惜しんで家事をこなそうと努められることもおありかもしれませんね。
ですが、一時的に達成できても、それを継続するのは、体力もかなり要しますし、休息時間が減ることで疲れがたまってストレスとなってしまって健康を損ねてしまっては大変です。
子育てに関しては、
「栄養バランスを考えて作った食事を食べてくれない、好き嫌いがある」
「食べこぼしが多い、おもちゃをすぐに散らかす」
「支度に時間がかかって予定通りに行動できない」
などといったお悩みを抱えておられる方もおられることと思います。
とてもよくわかりますが、一方でどうにも子どもは親や保育者の期待通りにはなかなか動いてくれません。
上手に体を使いこなせなかったり、好奇心から注意があちらこちらに移ってしまったり、お遊びに夢中だったり…
何かに取り組んでいたり、集中して別のことを考えていたりと、その子なりのご事情があることもあります。
そのことは普遍的な前提と捉え「仕方ない」と割り切ってしまうことも必要になってきます。
新しいことが増える分、出来ていたことが出来なくなる、費やす時間の配分が変わることは自然なことです。
ですので、手が回らないときには「仕方ない」と思い切って諦めてしまうことも時には大切です。
手を抜いてもいい
②で仕方ないと諦めることも大切とお伝えをしましたが、家事も育児も毎日生じることですから、全てをあきらめ放棄することもできないことも少なくないでしょう。
ですので、限られた時間の中で、譲れない部分、手を抜いてもいい部分を分けてみると良いですよ。
例えば、家事で言えば
「ご飯は炊くようにするけど、スーパーなどのお惣菜も活用してみよう」
「洗濯は毎日できなくても2~3日に1回に頻度を落とそう」
「洗濯をしなくてもいいように、少し衣類を増やそう」
などもありますね。
子育てに関しては離乳食を作るのが大変なときには、市販のレトルトに頼ってみるのも良いでしょうし、たくさん作って製氷機を使って小分けにしておくこともいいでしょう。
今抱えている悩みは、ある意味、今しか味わえない・今だからこそ味わえる苦悩でもあって、翌日には急に上手に出来るようになって拍子抜けしてしまう、なんて話もよくあります。
もちろん、今が苦しいわけなので「いつかは笑い話になる」というのは今苦しんでいない人だからこそ言える言葉かもしれません。
なので苦しいときにはひとりで悩みすぎず、相談できる人に話をしたり助けてもらったりしながら日々取り組んでいけるといいですね。
身近に協力者が見当たらない場合には、子育ての悩みに関する無料の電話相談窓口などもありますから、ご検討されてみるのもひとつです。
お住まいの地域の児童家庭相談窓口や児童相談所でも、子育てに関わる悩み相談や、子育てが辛いときの相談も出来ますよ。
基準を下げる
完璧主義の傾向があると、どうしてもちゃんとできている、完璧にこなすことを目指し、そこがゴールであり基準となってしまっているところがあるかもしれません。
ですが、先にもお伝えしましたように、生活スタイルが変化すると、限られた時間の中でこなす物の数や質にも影響が出てきます。
ですので、これまでの感覚からしたら、80%、70%、60%の達成率となってしまったとしても、
「最低これが出来たら良しとしよう」
と基準を見直し、少し下げてみると、負担感の軽減にもつながってきますよ。
例えば、③でお伝えしたように、お惣菜を利用したり、市販のベビーフードを用いるのもいいでしょう。
他にも、
掃除の頻度を落としたり、可能であれば自動のお掃除ロボットを用いたり、洗濯も乾燥機を使う
買い物は頻度を落としてまとめ買いをしたりネットスーパーも利用する
…など、いろんな方法がありそうです。
さらに、
子育てに関しては毎回おもちゃを片づけるのは難しいから夜寝る前に行う、
綺麗におもちゃを片づけるのは難しいからお片付けゾーンを作ってとにかくそこに入れる、
など。
本当はやりたい理想の形がある一方で、それを毎回行うのは難しいときには「最低ここまでできれば良しとする」ラインを決めておくのも良いですよ。
そのラインはご家族やお子様と相談の上決めてもいいですね。
特に子どもに関しては、大きくなるにつれて人に言われてやらされるよりも「自分で決めたこと」の方が積極的に行ってくれやすくなりますよ。
子育てや家事は、予想外のことも起こりやすく思ったようにいかない、そういうものです。
あなたができていないわけでは決してありません。
出来ていないことよりも、ぜひ出来たところに注目し、出来た自分をほめてあげてくださいね。
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【参考】
自己に求める完全主義” と抑うつ傾向および絶望感との関係 桜井茂男, 大谷佳子 – 心理学研究, 1997
完全主義傾向をもつ母親の子育て場面における原因帰属・感情・対応 三重野 祥子, 濱口 佳和,2008
完全主義が抑うつに及ぼす影響の二面性: 構造方程式モデルを用いて 小堀修, 丹野義彦 – 性格心理学研究, 2002
「こころの力」の育て方(きずな出版): レジリエンスを引き出す考え方のコツ 大野裕
こころが晴れるノート:うつと不安の認知療法自習帳 大野 裕
ほか、臨床の中での経験と研修による知識によって作成されています
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- 本記事は2023年2月15日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。