【臨床心理士解説】愛着障害の原因とは?背景にある4つの親の態度とは?

2023.06.07公開 2023.06.08更新

(質問)愛着障害の原因ってなんですか?親との関わりから強く影響を受けると思いますが、具体的にどのような関わり方が愛着障害の原因に繋がりやすいでしょうか?

 

(回答)結論からお伝えしますと、愛着障害の原因は幼少期の養育者(特に心理的な母親役)との関わり方の影響が大きいといわれています。

 

幼少期の中でも、特に生後半年から一歳半くらいまでは愛着に対して敏感な時期とされ、子どもの今後の愛着スタイルに影響を及ぼす時期とされています。

 

この時期を中心に子ども(赤ちゃん)にとって一番身近な存在である養育者からの関わり方が不適切だと、将来的に愛着障害になってしまう可能性が高くなります。

 

愛着障害の原因となる親の態度をご説明する前に、本来の、安定した愛着はどのように育まれるのかを以下よりご説明します。

 

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愛着障害の原因となる4つの親の態度

生まれたばかりの赤ちゃんにとって、この世界は未知のことだらけ。1人では決して生きていけないとても弱い存在です。

 

そのため生まれてすぐから赤ちゃんは自分を守ってくれる存在を求め、泣きます。そうすると母親は泣いている赤ちゃんを優しく抱っこしたり、優しく声をかけます。

 

そうすると赤ちゃんは抱っこされる柔らいぬくもりや優しい声に安心して、母親に健全な愛着を抱き、その愛着が育っていきます。

 

そのまま母親を中心とした養育者から温かいスキンシップと声かけを受けて育った子供は、見守ってくれる存在を感じながら自ら世界を広げ、大きくなってもこの世界に対して(他の人に対しても)基本的に安心感を抱いた、安定したかかわりをすることができます。

 

それでは、上記のような安定した愛着をはぐくむことができない、愛着障害の原因となる子どもに対する親の態度を大きく4つに分けてご説明します。

 

子どもに対して冷淡

先ほどご説明したように、安定した愛着をはぐくむには主に母親(心理的な母親役)からのスキンシップや優しい声かけが必要です。

 

しかし、子どもに対して冷淡な母親は、どこか子どもに対してよそよそしく、泣いている子どもを放置したり、優しく声をかけることもほとんどありません。

 

授乳のときでさえ、スマホをいじったり、授乳を不快に感じる場合もあります。

 

我が子をどうしても可愛いと思えず愛情もわかず、「自分は母親失格なんじゃ」と母親自身も戸惑っていたり、生んだこと自体を後悔していることも。

 

子どもの方もそんな母親の気持ちを敏感に察して甘えて来なかったり母親に笑いかけることがなく、そのことで母親が「この子は私に懐いていない」と余計に子どもに冷たい態度をとってしまうこともあります。

 

子どもに対して過保護

子どもに対して冷淡な親の対極にあるのがこの過保護な親です。

 

子どもに関心が強く、一見すると子供のことを大事にしている良い親に見えることもありますが、実は違います。

 

過保護ということは、見方を変えれば、

「子どもが自ら考え行動するチャンスを奪っている態度」

ともいえます。

 

本来、子どもは自分のことが全くできなかった赤ちゃんの時期から、少しずつ色々なことができるようになっていき、自分で考え行動することの楽しさを覚えていきます。

 

過保護な親は、子どもが失敗しないようにあれこれと世話を焼くことで子どもを「一人では何もできない」まま大人にしてしまいます

 

虐待する(心でも体でも)

本来、安心や安全を子どもに与えるはずの親でありながら、

子どもに暴力を振ったり、

 

「産むんじゃなかった」などの言葉の暴力で傷つけたり、

 

無視をする・世話をしない

といった態度をとる親も、愛着障害の原因となります。

 

このような親は自分が虐待しているという自覚がないこともあり、

「しつけのために必要なこと」

「この子の態度が悪いから仕方ない」

などと、ある意味開き直った態度をとることもあります。

 

親が大人になりきれていない

精神的に大人になりきれていない親は、親としての健全な態度で子どもに接することができません。

 

例えば、

男の子に対して「女の子が欲しかったから」と着せ替え人形のように女の子の服を着せて楽しんだり、

 

少し子どもが大きくなると「しっかりした子で助かった」と言いながら家事を押し付ける

といったこともあります。

 

場合によっては、

夫(子どもにとっては父親)の悪口を言って、子どもに慰めや自分の味方になることを求めたり、悩みを聞いてもらうようなカウンセラーの役割を押し付ける

こともあります。

 

さいごに

簡単ではありますが上記が、子どもを愛着障害にする可能性のある親たちの4つの特徴の一例です。

 

そして、このような態度を子どもにとってしまう親自身も、子どものころに親から上記のような態度をとられていることが多々みられます。

 

親自身も愛着に問題があるため、自分の子どもと接するときに、

どういう態度で接することが子どもにとって良いことなのかわからず、結局自分がされたことと同じことをしてしまう(場合によってはその態度こそが正しい子育てだと思っている)

という連鎖が起こってしまうのです。

 

この悲しい連鎖を次世代につなげないためにも、「自分は愛着障害かもしれない」と気づくことはとても重要です。

 

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【参考文献】

〇岡田尊司(2011):愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2013):回避性愛着障害 光文社

〇岡田尊司(2016):愛着障害の克服 光文社

〇愛甲修子(2016):愛着障害は治りますか? 花風社

〇中野日出美(2019):それは、“愛着障害”のせいかもしれません。 大和出版

〇米澤好史(2022):愛着障害は何歳からでも必ず修復できる 合同出版

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福丸みお

臨床心理士/公認心理師

臨床心理士・公認心理師。大学院修了後、精神科やメンタルクリニックにてカウンセリング業務やデイケア、生活相談等に従事。心の病から日常生活での悩みまで幅広く対応し、多くの相談者の心に寄り添う。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2023年6月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。