幼児期前期の遊びへの親の向き合い方とは?臨床心理士が解説

2018.09.25公開 2019.05.16更新

乳児期を過ぎて、自分で動けるようになり、どこへでも行けるようになった幼児期前期(1歳半〜3,4歳頃)の子どもたちは、なんせよく動き回りますよね。

 

じっとしていることはほとんど無く、たえず活動をしている…という感じではないでしょうか。

 

今回のコラムでは、幼児期前期における自律への大切なステップ―「やってみる」という学習方法―から、子どもに対する親の向き合い方についてご紹介します。

 

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大人には意味不明な子どもの遊び

同じところをぐるぐる走り回る…

水遊びで、びちゃびちゃになる…

泥遊びで泥だらけになる…

高いところから飛び降りようとする…

家中のボタンを連打する…

同じおもちゃで延々と遊ぶ…

壁にクレヨンでぐるぐるやにょろにょろを描く…

 

これらのほとんどは、大人には意味がわからないものや、いたずらや迷惑な行動にしか見えません。

 

しかし、直接触ったり、実際にやってみることで、その物の性質や習性、危険性を学習しているのですね。

 

幼児期前期の子どもにとって、世界は初めて見るものや初めて触れるものであふれています。

 

それらに興味を持ち、自分で考え、判断し、行動し、学ぶという体験を一生懸命習得しているところなのです。

 

だから、何度も何度も同じことをくりかえすことに意味があるのです。

 

親や保育者に見守られて、安心できる環境の中で、自分のやることを自分で決めて、楽しみながらのびのびと「やってみる」という体験が必要なのです。

 

こういう体験がもとになって、その先に学校や社会の中で、

・自分で考える力

・判断する力

・行動する力

・相手を思いやる力

が育っていくのですね。

 

 

親がモデルを示して褒める時期

手が器用に動かせるようになり、おしゃべりも上達してくるので、親や周りの人のまねをし始めます。

 

まねをすることで、親に褒められたり、喜ばれたりする経験から、それをくりかえすことでどんどん自分のものにしていきます。

 

この時期に、親や周囲の大人がいろいろなモデルを示すことで、子どもたちは自分の興味に従って、できる範囲でどんどん取り入れていくことができます。

 

親が日頃意識せずに行っている些細なことも、子どもがまねしておどろいた、なんてこともあるかもしれません。

お料理をするまねをしてみたり、

タバコを吸うしぐさをしてみたり、

ケイタイをいじってみたり、

親の口ぐせをまねしたり…

幼児期の子どもはまだ、好ましいことと、そうでないことの区別がついていません。

 

ですので、親が喜んでいたり、褒めてくれたら、「これはやってもいいんだ」と学び、逆に親が悲しんだり、親に怒られたら、「これはダメなんだ」と、親の感情や反応を見て学びます。

 

多くの親は子どもに、

「人に優しくできる子であってほしい」

「たくさん本を読む子になってほしい」

「自分のことは自分でできる子になってほしい」

「思いやりのある子になってほしい」

とたくさんの願いを抱きますね。

 

思いやりのある子を育てたいと願うのならば、親が相手を思いやるモデルを示して、どんどん褒めてあげましょう。

 

人を大切にできる子であってほしいと願うのならば、親が自分や相手を大切にしている姿を示して、自分も相手も大切にするところをたくさん見せてあげましょう。

 

相手に求めることだけで、夫婦の争い・いざこざが絶えない家で育った子どもが、果たして自分や相手を大切にできる姿を充分に学ぶことができるでしょうか。

 

親の日頃の行いが、子どもにとっては大きな影響があるということを日頃から意識しておきましょう。

 

また、この時期の子どもたちは、「お友達と仲良く遊ぶ」というよりは、それぞれが自分勝手に遊びます。

 

「うちの子は他の子と仲良く遊べない」と心配して、無理に友達と遊ぶことを求める必要はありません。

 

自分の世界でまったく違う遊びをしているように見えても、同じ空間で他の子どもたちと一緒に遊んでいるだけで、お互いの存在に気が付き、「自分」と「他者」の存在がぼんやりと認識できるようになるので心配いりません。

 

 

子どものペースをいかに待てるか

2,3歳頃になると、親として少しずつ「しつけ」を始めていかなければなりません。

 

「しつけ」というとどういうものを想像しますか?

 

厳しくて、苦しく、一方的で、暗いものを想像する方もいるかもしれません。

 

しつけとは、「こうしてほしい、こうやるんだよ」と「望ましい行動や社会のルールを子どもに伝えること」だと思います。

 

乳児期までの「望んだことが全て満たされている」という依存体験を経て、親に対する基本的信頼感が持てていることが前提で、

 

親の希望や社会のルールを子どもに伝えるという次の育児スタイルに変更していかなければなりません。

 

何歳になったから突然しつけを始める…というのではなく、それまでの育児をみながらしつけを始めても大丈夫かを判断して、子どもたちのペースで進めて行くことが望ましいです。

 

本来、子どもたちは向上心を持っていて、親や家族からほめられたくてしょうがないので、自分で出来ることはなんでも頑張ろうとします。

 

そして、しっかり受け入れられていると実感できている子どもたちは、自分から意欲的に取り組むことができるので、厳しくしなくても、伝えるだけで十分なのです。

 

逆に、子どもが十分安心できていないと意欲がわきでてくるのが遅くなりますが、それを待てずに、早くからがんがん叱りながらしつけをしようとする育児はとても心配です。

 

子どものペースをいかに待てるか、ということが大切になります。

 

次回は、幼児期のしつけ最大のトピック、「トイレットトレーニング」についてです。

 

>>幼児期前期のトイレット・トレーニング…親の役割は?臨床心理士が解説

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佐藤文昭

臨床心理士

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年9月25日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。