自己開示できない原因は?効果・方法・メリットを臨床心理士が解説

2018.11.26公開 2019.05.16更新

自己開示ができない原因は?

相手に対する不信感がある

もし、初対面の相手が、急に自分の秘密を打ち明けてきたらどう感じますか?

 

「そんなに大事なことを見知らぬ相手に話してしまって、大丈夫なのかな?」

 

と心配になってしまいますよね。

 

そして、「どんな人にでも、なんでも話してしまう人なのかもしれない」という不信感にも繋がります。

 

つまり、「相手に対する不信感」があるとき、自己開示はされづらくなるのです。

 

自己開示へのプレッシャーを感じている

人間は、自由が奪われそうになると本能的にそれを拒絶します。これは「心理的リアクタンス」と呼ばれています。

 

例えば、「あなたってこういうタイプじゃない?」と言われると、「そんなことないよ!こういう面もあるよ!」とついつい抵抗したくなるのが、心理的リアクタンスです。

 

相手から自己開示を受けると、自己開示を受けた人は、

「お返しをしないといけない=自分も相手にプライベートなことを話さないといけない」

といったプレッシャーを感じ取ります。

 

つまり、「何も話さなくて良い」という自由が奪われてしまうため、それに本能的に抵抗した結果、自己開示ができなくなることがあります。

 

自分の方が相手より地位が高いと思っている

高い地位の人は自分のプライベートを隠し、逆に地位が低い人はプライベートを明かすことで、相手との関係性をインフォーマルにしようとする傾向があることがわかっています。

 

確かに、会社の社長が自ら率先して内面を明かす、というシーンは想像しづらいですよね。

 

もし、自己開示が苦手である、と感じているようでしたら、

「相手の方と自分の地位関係をどう自分が捉えているか」

を振り返ってみると良いかもしれません。

 

自己開示の方法

自己開示をする際は、プライベートな情報を、嘘なく、誠実に相手に伝えましょう。

 

具体的には、

・失敗したこと、恥ずかしかったことなどのネガティブな要素を含む情報

・恋愛や家族にまつわる話など、仕事と関係のない話

といった、いわゆる「女子会」で話されそうなテーマをイメージされるとわかりやすいかもしれません。

 

もちろん、話したくないことまで話す必要はありませんが、こういった内容について誠実に話すことで、後述する「自己開示によるメリット」を期待することができます。

 

コミュニケーション例

入社して3ヶ月経過したAさんと、ちょっと強面で近づき辛いB先輩の会話から、コミュニケーション例を紹介します。

A「今日もいろいろとミスをしてしまいすみませんでした。でも先輩のおかげで大事にならず、ホッとしています」

 

B「次は気をつけてね」

 

A「はい、気をつけます。そういえば、次のアポで伺うC会社の件なのですけど、実は少し気になることがありまして…」

 

B「どんなことが気になっているの?」

 

A「同期に聞いたところ、結構厳しい方が多い会社のようで…。」

 

「実は私、以前の会社で○○○というミスをしてしまったことがあり、それ以来少し苦手意識があるんです。同じミスを繰り返したくないので、なにか対策など教えていただけませんか?」

Aさんは、まだまだ親密度が高くないB先輩に対して、「自分の過去のミス」というプライベートな情報を今の仕事と絡めて告白しています。

 

恋愛やお金などのあまりにもプライベートな話を突然すると、相手の方も驚いてしまうので、

・相手との関係性

・これまでの自己開示の回数やレベル

を意識した上で話題を検討すると良いですね。

 

自己開示の効果、メリットは?

相手との関係性が深まる

自己開示をすることによって、相手は「信頼感」や「好意」を感じます。

 

誰も知らない情報を手に入れられる

自己開示を受けた場合、「自分も相手に開示しなくては」というプレッシャーを本能的に感じ取ります。

 

つまり、同じくらいの「プライベートな情報」を交換し合うことになります。

 

もしあなたが上手に自己開示をし、自分のかなり深い部分まで相手に不審がられずに話すことができたならば、相手からも同じだけの深い「自己開示」を期待できます。

 

自分の評価を上げることができる

あなたと誰かが会話をしていて、相手の方が自己開示をしたとします。

 

その場合、相手の方は「自分はこの人を信頼していて、好意を抱いているから自分のプライベートな情報を話したんだ」というふうにあなたに対して好意的に評価をします。

 

これは、「認知的不協和」を減らすために起こる現象です。

 

人間は、自分の行動や認識に矛盾が生じることを嫌がる傾向があります。

 

「嫌いな人に自分の秘密を話してしまった」と思ったら、嫌な気持ちになりますよね?

 

そういった気持を軽減するために、

「自分が自己開示をするくらい、相手を信頼しているし、好意を感じているんだ」

というように自分の気持ちを無意識に操作するのです。

 

この性質を利用し、上手に自己開示を利用することで、相手からの自分への評価を高めることが期待できます。

 

 

さいごに

対人関係においてメリットの多い自己開示をご紹介いたしました。

 

もともとコミュニケーションが苦手な方にとっては少しハードルが高いかもしれません。

 

自己開示を成功させる鍵は、

「相手に対して、本当に好意を感じる」

ことです。

 

嘘や不誠実な自己開示は、コミュニケーションを促進しません。

 

まずは相手の素敵な部分を意識し、好意を常に持つことから始めてみましょう。

 

ストレスの原因第1位である「人間関係」に少しでもご活用いただけますと幸いです。

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広瀬絵美

臨床心理士

心理学の大学を卒業後、広告会社にて勤務。退職後、心理系大学院修士課程を修了し臨床心理士資格を取得。精神科病院にて従業員のメンタルヘルスケア業務に従事する。また、国立研究所にて職場組織や妊婦さんのメンタルヘルスに関する研究にも携わっている。理想的な「ワークライフバランス」を目指し、研究と実践の両面から支援を行っている。一児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年11月26日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。