怒られすぎた子どもたち…その背景にある親の「不安」とは?
学校や塾、友だちとの関係など、外の世界で上手く適応できていない子ども達は意外と少なくありません。
自分の意見が言えなかったり、
相手の立場に立てなかったり、
いつも騒いで人の注意を引こうとしたり、
相手を支配しようとしたり、
何かとトラブルに巻き込まれたり…。
今回は、こういった子達の背景にあるものや親としての心がけをご紹介します。
目次
問題視されにくい「不安」「自己否定感」
上記で挙げた子達は、発達に問題があるわけでもなく、目立って成績が悪いわけでもありません。
それなりの能力を持っているので、学校でも特に問題視されることはありません。
しかし、問題視されないことで、かえって彼らが抱えている「不安」「自己否定感」が明るみに出る事がないので、解決されないまま大人になっていくのです。
家庭で怒られすぎた子どもたち
外の世界で上手く適応できていない子どもの心理と、その背景にある親子関係を紐解いてみましょう。
彼らに共通していることの一つは、「家庭で厳しく育てられてきた」ということだと思います。
もっと言えば、小さいころから、両親、特に母親に怒られすぎた可能性が高いという点です。
本来、子ども達にとって家庭とは、安心を充電する場所でなければなりません。
家庭で受け入れられて安心感を得て、初めて学校や外の社会で頑張れるのです。
家庭は安心を充電する所だからこそ
安心できている子達は外の社会ではルールを守り、やりたくないことでも遂行し、自分を律することができる一面を見せます。
反面、家に帰ってくると、外のルールから解放されて、靴を脱ぎ散らかして、ソファーでだらだらしたり、ご飯をこぼしたり、大きな声ではしゃいだり、兄弟でケンカしたり、日々の出来事を話したり、気持ちを打ち明けたり出来ます。
そんな子ども達と一緒にいる時間が長いお母さんにとっては、うるさいし迷惑だし、お行儀が悪いし、「そんなんじゃ立派な大人になれない」と、不安に思い怒りたくなることもあるでしょう。
それは当然ですが、実は、これらの行動は安心から来ているので、子育てが上手く進んでいる証拠であるとも言えます。
家ではとてもいい子なのに…
しかし、何かにつけて家庭で叱られ、怒られ過ぎた子ども達は、家庭では安心というより「自分はなにをやってもダメなんだ」と不安や否定を蓄えてしまいがちです。
「怒られたくない」という思いから、家ではとてもいい子で、親の言うことをよくきいたりて、無理しています。
しかし、学校や塾、友人関係では、不安を払拭しようとして、授業中にはしゃぎすぎたり、宿題ができなかったり、友人とケンカしたり、ルールが守れなかったり、と本来家でやることをするようになります。
結果、生活面でも、学力面でも本人の良さや能力が充分に発揮できません。
家庭外に安心を求めすぎると…
友人関係では、「自分はダメだ」という不安を払拭しようとして、相手より上に立とうとして、相手を下に見たり、支配しようとしたりします。
「家では我慢して、外に安心を求める」、家と外の社会の役割が逆転しているというわけです。
彼らは、「誰かに見てもらいたい、受け入れてもらいたい」と必死なので、無理してまでも、わざわざ人と違うことをする必要があるのです。
もっと深刻になると、人に怒られることが愛されていることだと思い込み、怒られるように自分から仕向けて行きます。
この歪んだ認知がこの後の人生に大きく影響してくることは、言うまでもありません。
怒りすぎる親に共通すること
では、怒りすぎる親と怒っても怒りすぎない親はどう違うのでしょうか。
いろいろなケースがあるとは思いますが、怒りすぎる親の多くに共通しているのは、お母さんが子ども達に対して「不安」を持っていることが挙げられます。
さらに、その不安を子どもたちを「怒る」ことで処理しようとしていることです。
お母さんが不安を持っていること自体は何の問題もありません。むしろ、自然なことです。
問題なのは、お母さんが不安であることが受け入れられない、もしくは不安が解消できておらず、子どもを怒る事で処理しようとするケースです。
子どもの気持ちがそっちのけに
また、不安に気付いていても、誰にも相談できなかったり、否定されてきたお母さんは、自分の不安を子どもの不安に置き換えてしまいます。
子どもの不安を払拭するために、子どもの一つ一つが気になり、子どもの気持ちそっちのけで口を出し、子どもより先に手を出してしまいます。
子どもの不安を払拭するという名目で、実は自分の不安を取り去ろうとしているのです。
結果、子ども達は自分の意志を失い、自分で行動できなくなってしまいます。
これらの点で、子ども達はお母さんの不安の犠牲者でもあるわけです。
完璧主義や頑張り屋さんは要注意
お母さんの中には、「母親たるもの、強く正しくなくてはならない。不安だなんて、あってはならない」と信じる人もいると思います。
実際、子どもの前では頑張っている姿しか見せない人もいます。職業柄、責任のある立場の方や、完璧主義や頑張り屋さんのお母さんに多いです。
しかし、自分の不安が受け入れられないことで、子どもの不安もあってはならないと誤解しやすいのです。
そんな家庭では、子どもが不安を訴えても、「そんなこと言ってはいけない」「そんなことない!」と一蹴されてしまいます。
小さなミスでも「強い子に育ってほしい」と、ついつい怒りすぎてしまいます。
お母さんたちはそういって子どもを怒ることで、実は、自分に言い聞かせているわけです。
すると、子ども達はさらに不安を口に出来ずに、一人で抱えていく結果になります。
不安をどうやって受け入れる?
日頃から不安を受け入れて、弱音を吐いたり、愚痴を言って不安と柔軟に関わっているお母さんにはどんな特徴があるでしょうか?
まず、自分の不安と子どもの不安がきちんと区別できているので、子どもたちが自由に意思決定できます。
旦那さんや他の家族、お友だちなどに弱音を吐いて、不安を聞いてもらって「不安なのは私だけじゃないんだ」と不安の共有をすることで、「子どもの不安もあってもいい」と思えるのです。
すると、子ども達も「不安になってもいいんだ」、「不安を口にしてもいいんだ」、と思えるようになり、不安との共存ができるようになります。
「不安になってもいい」
お母さんの不安の処理の仕方が、子どもたちにとってとても大きいのです。
お母さんが不安を抱くのは、初めての子育てや複雑な人間関係の中では当然なことです。
お母さんと同じように、子ども達が成長と共にどんどん変わっていく環境の中で、不安を抱くこともまた必然なのです。
不安という感情は新しい世界へ飛び立つ上で、自分を守ってくれる、なくてはならない大事な感情なのです。
さいごに
誰しも、不安になってもいいんです。
一度、自分の不安と向き合って、不安の処理に対するパターンを把握して、不安と上手に付き合っていきましょう。
子どもたちが、学校では問題にならないレベルでも、
「友だちと上手く行かない事が多いな~」
「学校や塾で適応できてないな~」
「自分の気持ちを出さないな~」
と思い当たるようでしたら、家庭での「怒り方」を見直してみるいい機会かもしれません。
佐藤真由美 チャイルドカウンセラー
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2017年10月12日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。