就労移行支援とは?期間・対象者・利用料を精神保健福祉士が解説

2018.06.22公開 2019.05.16更新

社会人生活は、約40年間続くと言われています。その中で、1度も体調を崩さない自信はありますか?

 

「もう働けないかもしれない…」と感じることがある人は少なくないのではないでしょうか。

 

もしくは、「働いても長続きしない」、「なぜかうまくいかない」と心が追いつめられることがあるかもしれません。

 

長い就労生活の中では、病気で休職することや退職することは十分にあり得ます。

 

そしてその先、どうしていいかわからなくなってしまうこともあるかと思います。

 

今回は、働くことに難しさを感じている方、思わぬ疾病でこれまでどおり働くことができなくなってしまった方が利用できる就労移行支援サービスについてご紹介します。

 

 

就労移行支援とは?

精神疾患を含む、障害を持つ人は「障害者総合支援法」のもとに定められた「障害福祉サービス」を受けることができます。

 

これは、障害者が地域で安心して暮らせる社会を目指し、国が策定した仕組みです。

 

障害福祉サービスには、障害者が働くために訓練をする「就労系サービス」があります。このなかの一つが就労移行支援です。

 

就労移行支援事業所では、障害者が働くために様々な訓練や支援を行っています。

 

対象は身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、難病患者であり、医師の診断のもとに区市町村へサービス利用申請をすることで利用することができます。

 

このとき、必ずしも障害者手帳は必要ではありません。

 

就労移行支援では、事業所における作業訓練や面接練習など就職に向けたサポートを行い、就職後も6カ月間は職場定着支援を受けられることが特徴です。

 

就労移行支援事業所の数は全国で3,256ヶ所あり、32,611人が企業への就職を目指してサービスを利用されています。(2017年4月現在)

 

 

就労移行支援のサービス内容

就労移行支援事業所では、サービスを利用するひとりひとりの目標・課題が異なるため、サービス利用にあたって個別支援計画という計画を支援員が立てます。

 

利用者と事業者の同意のもと、個別支援計画にもとづいてサービスが提供されます。

 

就労移行支援事業所では、以下のような支援を行っています。

 

 

作業訓練

就労移行支援事業所に通所し、軽作業やビジネスマナー、パソコンなどのプログラムを行います。作業に取り組みながら、仕事をするための能力を培います。

 

訓練内容は就労移行支援事業所によって特色があります。

 

パソコンの知識や技術を向上させるためのプログラムが充実しているところ、資格取得の講座が豊富なところ、軽作業訓練が実際の受注作業になっており工賃が発生するところなどがあります。

 

就労移行支援事業所ごとに強みが違うので、どんな仕事に就くために何を訓練したいのか、見学や体験を通して具体的に考えてみるとよいでしょう。

 

 

企業実習

多くの就労移行支援事業所では、作業訓練の後に様々な企業での実習を行うことができます。

 

区市町村の障害者就労支援センターやハローワークと連携して、実習場所を確保しているところもあれば、事業所独自に実習先を設けているところもあります。

 

就業時間や休憩の取り方を実践、通勤の体験といった意味があり、訓練してきたことを試す機会となります。

 

 

就職サポート

通所訓練を通して、就労への準備が整ったら実際に求人に応募して就職活動をスタートします。

 

就労移行支援事業所では、ハローワークや民間企業が実施している求人情報に基づいて、就職に向けた支援を行います。

 

履歴書の書き方や面接練習など、助言を行うだけでなく、実際に面接に同行して支援員から見た利用者の強みや弱みを企業に説明してくれます。

 

面接同行のいいところは、求職者にサポートがついていることを印象付けて企業に安心感を与えることができる点です。

 

もちろん、利用者にとっても自分を理解して職場へ送り出してくれる支援員の存在は大きな強みになります。

 

事業所によって新規の求人を開拓しているところもありますが、ハローワークを通して求人に応募することが多いでしょう。

 

一般求人では、ハローワークを利用しない方も多いですが、障害者求人は行政からのチェックが入りやすかったり助成金の申請がしやすくなったりするため、ハローワークを通した求人が多いです。

 

 

定着支援

就労移行支援事業所では、就職が決まってから6カ月間の定着支援期間があります。

 

就職が決まったら、あとは自力で・・・というわけではなく、働き続けられるように支援を行うのです。

 

業務の進め方や就職後の体調の変化について、企業訪問や面談を通して利用者にも企業にも助言を行います。

 

「事業所ではできたのに、実際の業務になるとどうもわからないところがある」

 

「環境の変化によって体調を崩してしまいそう」

 

というときに、これまでの支援経過を踏まえて的確なアドバイスを行うことができるため、職場に馴染んで働き続けることがしやすくなります。

 

6カ月が経過した後も、電話相談や面談などを受け付けている事業所が多いので、悩んだときはすぐに相談できる体制が整っています。

 

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菊池恵未

精神保健福祉士

精神保健福祉士として、都内NPOにて精神障害者の支援を行う。就労支援担当として面接同行や就職後の業務メニュー作成などをしてきた。障害年金や生活保護受給の相談にものっている。JCTA日本臨床化粧療法士協会認定のもと臨床化粧アドバイザーとしてメイクアッププログラムを実施。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年6月22日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。