就労移行支援とは?期間・対象者・利用料を精神保健福祉士が解説

2018.06.22公開 2019.05.16更新

就労移行支援と就労継続支援

ここまで、障害福祉サービスの就労移行支援についてご説明してきました。

 

では、就労に向けて2年以上の準備が必要なとき、または一般企業での就労はまだ想像できないというときには、どのような働き方やサービスがあるのでしょうか。

 

 

就労継続支援とは?

障害福祉サービスの中には「就労継続支援」というサービスがあります。

 

就労継続支援には2種類の事業所があり、通所して働きながら社会復帰を目指していくことができます。

 

 

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは、障害福祉サービスのひとつです。

 

一般の求人と同じように、利用者と雇用契約を結び、都道府県の最低賃金を守って給与を支払います。

 

ハローワークやその他求人情報誌に求人を出すことができますし、社会保険が整っているところもあります。

 

 

就労継続支援B型

こちらも障害福祉サービスのひとつです。

 

A型のとの違いは、利用者と雇用契約は結ばず「施設利用」の範囲で作業を提供します。

 

最低賃金に関係なく、事業所の規定に基づいた作業工賃が支払われます。

 

 

就労継続支援A型とB型の違い

単純に考えると、最低賃金が保障されて社会保険が整っているのであれば、A型を選んだほうが良いような気がしますよね。

 

しかし、A型事業所は給与の保証がある分、利用者が仕事に対して請け負う責任が大きいです。

 

利用時間や通所日数について、高い目標を掲げているところが多く、給与に見合った作業内容を求められます。

 

生活リズムをつけ、ゆっくり働くことに慣れていきたいと考えている人には、就労継続支援B型のほうが柔軟な対応ができます。

 

自分が障害福祉サービスをどのように利用していきたいのか、それによって通所する場所を選ぶことが必要です。

 

 

就労移行と就労継続は併用はできる?

就労移行支援と就労継続支援は併用することはできません。

 

国の方針としては、一般就労できる人は移行支援で就労に向けた訓練を、それが難しい人は就労継続支援で働く習慣作りをするようになっているためです。

 

ただし、併用できないのは障害福祉サービスの就労訓練だけで、医療機関であるデイケアでの就労プログラムに参加することはできます。

 

医療機関のプログラムと、障害福祉サービスのプログラムは併用することが可能です。

 

(ただし、各施設の入所判断で、どちらかに集中してくださいと言われることはあります。)

 

 

工賃は発生する?

就労移行支援と就労継続支援には利用期限以外にも大きな違いがあります。

 

それは、利用者の働きを「訓練」とみなすか「作業」とみなすかです。

 

就労移行支援では、軽作業やその他のプログラム参加は労働ではありません。就職するための訓練です。

 

そのため、プログラム参加に対して賃金は支払われません。(外部から作業を請け負って、工賃出ることもあります。)

 

就労継続支援では、施設で継続して働くことを目的としているため作業に参加した分は工賃という形で賃金が支払われます。

 

 

就労移行か就労継続か選ぶポイント

「一般就労したい気持ちはあるけど、どちらのサービスを選んだらいいの?」と迷うことがあるかもしれません。

 

そのときは「自分がいつごろ就職したいのか?」という時期をポイントとするといいと思います。

 

「今すぐにでも就職したい。」「1年後には・・・」と考えている方は、就労移行支援で訓練を受けるといいと思います。

 

「いつかはわからないけど、そのうち・・・」という気持ちの方は、就労継続支援でゆっくり働きながら就職する時期を考えるところから始めてみましょう。

 

なぜなら、就労移行支援には2年間の利用期限があり、それを超えてしまうとサポートが受けられなくなるからです。

 

自分の中で、いつ頃働きたいのか、そのためにどんな訓練が必要なのか、想像がつくかどうかが大きなポイントです。

 

 

就労移行支援の対象者

就労移行支援に限らず、障害福祉サービスの利用は18~65歳で、医師にサービス利用が必要だと判断された方です。

 

近年では、障害は種別によらず、身体障害(肢体不自由、難聴、盲など)、知的障害、精神障害(統合失調症、気分障害、パニック障害、てんかんなど)、発達障害(ADHD、自閉症スペクトラムなど)、難病(障害者総合支援法の対象疾患)の方がサービスの対象になります。

 

先ほども述べたように、移行支援では一般就労を希望されている方へ向けたサービスとなっているため、自分がどんなサービスを受けたいのかよく検討することが必要です。

 

 

就労移行支援の利用者の年代

就労移行支援サービス利用者は、30代未満の方が5割、30代、40代がそれぞれ2割、50代が1割程度です。

 

若い方が多いように感じますが、実際に支援する中では40代、50代の利用者は珍しくないように見えます。

 

また、実際に就労されるときも年齢がネックになると感じるほどではありません。

 

 

就労移行支援の利用者の就労経験

一般就労したことがある方も、そうでない方も、

 

「学校を卒業して、新卒で入った企業で経験を積む。」

 

「未経験、職歴なしでは雇ってもらえない。」

 

というイメージが強いのではないでしょうか。

 

わたしが障害者の就労支援をしていて感じることは、大切なのは就労経験の有無ではないということです。

 

もちろん、就労経験があることは強みです。前職の知識や社会常識など、働き続けるうえで大切な要素はたくさんあります。

 

しかし、障害者雇用で求められているのは、

・社会生活を送るうえで必要なビジネスマナー

・報連相のタイミング

・指示を理解してこなしていく

などのようなことだと思います。

 

 

就労移行支援利用者の障害者手帳の有無

障害福祉サービスを利用するにあたっては、医師の診療情報と市区町村から出る障害福祉サービスの受給者証が必要です。

 

医師がサービス利用の必要性があると判断すれば、必ずしも障害者手帳が必要ではありません。

 

ただ、障害者求人に応募する際には障害者手帳の提出が必要になるため、就職活動をするまでには手帳を取得しておいたほうがいいと思います。

 

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菊池恵未

精神保健福祉士

精神保健福祉士として、都内NPOにて精神障害者の支援を行う。就労支援担当として面接同行や就職後の業務メニュー作成などをしてきた。障害年金や生活保護受給の相談にものっている。JCTA日本臨床化粧療法士協会認定のもと臨床化粧アドバイザーとしてメイクアッププログラムを実施。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年6月22日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。