就労移行支援とは?期間・対象者・利用料を精神保健福祉士が解説

2018.06.22公開 2019.05.16更新

就労移行支援の利用期限

企業で働きたいと思ったとき、とても心強い就労移行支援ですが、そのサービスには利用期限があります。

 

利用期限は2年間です。

 

個別支援計画に基づいて、訓練や実習を積むことになりますが、最長2年で訓練終了・就職を目指すサービスになります。

 

長期入院から退院したばかりだったり、住環境が変わってとても2年間で就職を目指せる気がしなかったり、自分で無理があると感じたときは他のサービス利用も検討しましょう。

 

 

就労移行支援の2年間で就職できる?

上記でもお伝えしてきた通り、就労移行支援の標準利用期間(利用期限は)2年間です。

 

「期限内に就職できなかったらどうなるのだろう」と思われるかもしれませんね。

 

いろんな方の支援を通して感じることは、2年間で就職を決めることは十分に可能だということです。

 

大切なのは、2年間でどこかの企業に内定を得ることではなく、自分がどうして働きたいのか、働いていく中で何をポイントとするのか、自己理解をきちんと深めておくことです。

 

働いていくうえで、辞めてしまいたいと感じることはたくさんあります。それは障害の有無には関係ありません。

 

辞めたいと感じたときに「それでも働き続ける理由」がはっきりしていないと、就労生活を長く続けていくことは難しいと感じます。

 

就職活動も長引くことが多いです。

 

しかし、就職しないまま利用期間が過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか?

 

 

就労移行支援の再利用時、期間はリセットされる?

一度、就労移行支援を利用し、途中で辞めてまた入り直した場合には利用期間はリセットされません。

 

例えば、6カ月利用して、一度サービスの利用を辞めたときは、残り1年6カ月の利用期限が残ることになります。

 

 

就労移行支援の期間延長は可能?

利用期間が2年経ってしまっても、もう少しで就職できそうだと市区町村が判断したときは、最長1年利用期間が延長されます。

 

しかし、支給決定の厳しさは自治体による差が大きく、2年間のサービス利用を前提としておいたほうがいいと思います。

 

 

就労移行支援の利用が2年過ぎたら?

就職が決まらないまま、利用期限が終了してしまっても、その後の見通しなく施設を放り出されることはまずありません。

 

利用終了の数カ月前から、就労継続支援の施設を検討したり、地域活動支援センターという地域の活動場所を見学したりして、利用終了後の相談先を確保していきます。

 

 

就労移行支援の利用料

就労移行支援に限らず、障害福祉サービスの利用には原則として1割の自己負担が発生します。

 

具体的には、昨年の課税額によって負担量が変わります。

 

長期に渡って入院していたり、学生であったため税金を免除されていたりすると、障害福祉サービスの利用に対して自己負担は発生しません。

 

前の年に働いていた、自営業の役員になっていたなど、ご自身の収入と課税があるときには、最大9300円の利用料がかかります。

 

(前年の収入が600万円を超えるときには、37,200円かかります。)

 

ただし、移行支援事業所に通うための交通費や昼食費はこれに含まれません。

 

 

交通費助成について

移行支援事業所へ通う交通費は基本的には自己負担です。

 

しかし、自治体によっては通所のための交通費助成を行っていることもあります。お住いの市区町村役場に確認してみることをおすすめします。

 

 

就労移行支援事業所を利用するまでの流れ

医療機関の受診

サービスの利用には医師の診療情報が必要です。定期的な通院と治療はサービス利用の前提になります。

 

問い合わせ・見学

主治医に相談し、サービス利用の許可が出たらどこに通うか探し始めます。

 

市区町村の障碍者福祉課やハローワークの専門援助第二部門(障害者求人を取り扱っている窓口)などで、近隣の事業所を探してみましょう。

 

通いやすさや市区町村の交通費助成の上限などがあるので、お住いの市区町村で探したほうが通うところを見つけやすいかと思います。

 

事業所ごとにプログラム内容に特色があるため、見学時に相談しながらどんなことを身に着けて、どんな仕事をしたいのか考えていけるといいでしょう。

 

例えば、対人関係を重視したいときはSSTトレーニングのプログラムがあるところを選ぶなど、目的に沿った事業所を選ぶとサービスの利用がスムーズになります。

 

通所先の決定

見学や体験後、利用する事業所へ申し込みをして通所先を決定します。

 

利用計画の作成

障害福祉サービスの利用には「サービス等利用計画」の作成が必要です。

 

就労移行支援だけでなく、ヘルパーや医療機関を受診する頻度などを計画書として市区町村に提出します。

 

自分で利用計画を提出できることもありますが、多くの場合は、指定特定計画相談事業所で専門の相談員に計画の作成を依頼します。

 

通所事業所が決定した後、市区町村の窓口で計画相談事業所の紹介を受けることができるので、まずは通所先が決定したことを市区町村の窓口に伝えましょう。

 

サービス等利用計画の提出、受給者証申請・発行

市区町村の窓口に「サービス等利用計画」を提出し、障害福祉サービスの利用申請をします。ここで、担当者から「認定調査」が入ります。

 

医師の診断とは別に、本人にサービス利用が必要なのかどうかいくつか質問があります。

 

これに基づき、支給決定のための会議が開かれ、サービス支給の決定がおります。

 

障害福祉サービスの支給が決まると、障害福祉サービス利用受給者証が発行されます。

 

これには、支給決定期間が記載されており、どのサービスを何年間利用できるかがわかるようになっています。

 

※手順がとても多いように感じますが、通うところを決めたら市区町村に申請をして、サービス利用許可を待つという流れです。

 

※受給者証は約1年で更新する必要があります。更新の際、前年度の収入に応じた自己負担の金額が変わることがあります。収入がないのに、自己負担が増えることはありません。家族が経営する会社の役員になっている場合や、遺産相続があった場合は自己負担が増えることがあります。

 

利用契約・サービス利用開始

受給者証を受け取ったら、それを持って就労移行支援事業所に行きます。

 

事業所とサービス利用の契約があるので双方で同意の上、契約を進めます。

 

そして、最初の通所日を決めて利用スタートです。

 

 

さいごに

健康な時は、働くためにサポートが必要と考えることは少ないかもしれません。

 

ただ、思わぬ疾病で休職が続いたとき、仕事を辞めなければならなくなったとき、自分の状況に戸惑うことはあると思います。

 

誰もが働くことに成功するわけではありません。

 

自分の知らない制度や働き方について専門機関で知ること、自分に合った働き方を探す期間が必要です。

 

障害福祉サービスについてあらかじめ知ることができると、より選択肢が増えると思います。

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菊池恵未

精神保健福祉士

精神保健福祉士として、都内NPOにて精神障害者の支援を行う。就労支援担当として面接同行や就職後の業務メニュー作成などをしてきた。障害年金や生活保護受給の相談にものっている。JCTA日本臨床化粧療法士協会認定のもと臨床化粧アドバイザーとしてメイクアッププログラムを実施。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2018年6月22日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。