メンタルヘルスの予防やセルフケアで臨床心理士が伝えたいこととは?【成田恵さん:後】
今回は、臨床心理士の成田恵さんのインタビュー後編をお届けいたします。
メンタル不調の予防やセルフケアにとって大切なこと、今後の展望などをお伺いしました。
予防のための「切替え術」
病気にならないためには、自分が「楽しい」と思えることや「癒やされるな」と思えることを生活の中に確保しておくということがとっても大切だと思います。
日々の生活の中で、時間に追われてしまったり、一つのことしか考えられなくなって、悩んでしまうことって、誰しもあると思うんですよね。
でも、その一日の中でも、5分だけ自分の好きなことに使おうとか、1時間だけ自分を癒やすために集中しようとか、そういった切替えがちゃんと出来るか出来ないかで、ストレスの状態は結構大きく変わっていきます。
日々の生活の中での切替えは、セルフケアにも繋がっていくと思うので、心にゆとりをもてる時間を一日の中で作るというのが大事ではないでしょうか。
私自身、切替えには意識的に取り組んでいます。私の場合は、カウンセリングをはじめ、結構人の話をよく聞くことが多くあります。
そういった日々の生活を切替えようとする場合、例えば、話を聞き終わった後には、すぐにその内容を考えないなどを意識的に行っています。
自分の生活は自分の生活守ることが必要になってくるので、職場から出た瞬間、違うことに意識を向けるというのもやっていたりします。
「自分でなんとかしよう」は逆効果
病気からの復帰を目指す場合にも似たようなことが必要ですね。
また、自分に必要な助けはどこに行ったらあるのかを知っておくことも、大切なことではないかと思います。
多くの人は、「自分でなんとかしよう」とセルフケアをしていく人も多いと思うのですが、そういった意識がかえって、「こんなに色々やっているのに、なんでよくならないんだ」となってしまうことも少なくありません。
悩みや問題を一人で抱え込んでしまうことは悪循環だと思うので、視野をちょっと広げてみると感じで、親や友人、専門家など、信頼できる人に相談してほしいなと思います。
そうして、行動を少しずつ変えてみると、自分だけでは気が付けなかったことに気が付けたり、必要なケアやサポートにも繋がっていく可能性も広がっていくことが多いと思います。
それで、自分はこれからどうしていけば良いのかといったことを、自発的に考えていくようになれば、とても良い循環になるのではないでしょうか。
自分がどこに行ったら、適切な助けを得られるのかということを自覚することから始めて、様々な人と接することで、自己理解を深めていくことが大切であるように感じています。
自分の症状・状態が、
どういったメカニズムで生じていくのか、
なぜ自分はこういう状態になっていくのか、
どうやって今までの人生を送ってきたのか
などについて、少し時間を取って考えて、自己理解を深めていくと、これまで気が付けなかった、より本質的な課題が見えてくると思います。
本当の課題が見えてきたら、次は「こういう工夫をしてみよう」と実際の行動も変わっていきます。
そして、その行動は症状・状態に良いことなのかといった確認を繰り返していくことが、自分の症状・状態に対する対処法を見つけられることに繋がっていきます。
自己理解を深めて、行動実験をしていく中で、対処法を見つけていくという繰り返しが、大切ではないでしょうか。
ただ、気をつけた方がいいのが、一人で考えると、ぐるぐる考えこんで、結構マイナス思考になってしまう人もいます。なので、出来れば、誰か気の合う友達や信頼できる人と一緒に取り組んでみるのが良いかと思います。
つながり続ける
病気やメンタル不調に悩んでいる人の周りの人には、「関わり続けて欲しいな」ということを思っています。
周りの人の中で、「話を聞いてあげなきゃならないのかな」「『頑張れ』とか言っちゃいけないのかな」などと、色々気をつけられる方も多いと思います。
しかし、そういった特別な対応するよりも、まずは日常会話をしたり、定期的に連絡をしてみるなど、「つながり続けること」が本人にとってありがたいことになります。
何かしら危険の時に助けを呼べる手段となったりとか、ということにも繋がるので、ぜひ関わり続けてほしいなと思います。
誰もが現状に希望を失うことのない社会
これから、様々な経験を積んでいく中で、誰もが現状に希望を失うことなく、ゆとりを持ち続けられる社会を実現していきたいです。
「こうでならなければならない」とか「自分はこういう人間だ」とか、どんどん自分で枠を決めていってしまうと、その通りにしか生きられないと思い込んでしまうところがあると思うんですよね。
心って、生きる上で全ての基盤になってくるものだと思っています。
たとえ、状況や環境がどうであれ、それらを受け取る自分の心にクッション性があるか、それとも、カチカチの板でしか無いのかというだけで、その人の感じ方だったり、生きやすさ・生きづらさというのは変わってくると思うんですよね。
そういった知識や情報を、世の中に広く伝えられるのが心理学の役割だと思っています。
ちょっと前までは、心のケアが広がれば良いなって思っていたのですが、最近では、心理学のノウハウを多くの人にとって、もっと身近にしていきたいという気持ちが強くなっています。
心理学のエッセンスを実際に自分で使える人が増えて、
「同じ環境でも、心の持ち方でこんなにも世界の見え方が変わるんだ」
「こうしたら、周囲と良い関係が築けて、少し生きやすくなりそう」
という、心の持ちようが当たり前になったら、どんな状況でも希望を見失わず、ゆとりのある社会に近づいていくのかなと思っています。
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編集後記
成田先生の明るさに、とても勇気づけられるインタビュー時間でした。
何か少しでも悩み事などがある皆さんも、一人で抱え込むばかりでなく、ちょっと勇気を出して周りに頼ってみるのも良いかもしれません。
私も早速トライしてみます!
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臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。
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- 本記事は2016年11月13日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。