うつ病の復職のタイミングや復職後の注意点とは?臨床心理士が解説

2017.02.23公開 2017.03.29更新
 
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EAPコンサルタントの講師をしていた時、よく質問されたのは「どのようなタイミングでうつ病の復職を考えていけばよいのか?」ということでした。

 

休職が明けて、出社したのは良いものの再発してしまい、再び休職に入ってしまう社員が後を絶たないということでした。

 

予防医学の中では、リハビリテーションや再発防止を重要な位置付けにしています。

 

注意点をしっかりと押さえておくことで再び休職に入る社員が減ります。これは労働者にとっても経営者にとっても喜ばしい状態ですね。

 

このような観点も踏まえて、今回はうつ病における復職や再発防止に焦点を当てて解説していきたいと思います。

 

 

予防医学の考え方

病気になった時、その病をどう治すか考える医療を「治療医学」と言います。

 

一方で、そもそも病気にならないことを考える医療を「予防医学」と言います。

 

治療医学は、医師を始めとした専門家が中心となって行うことが多いのですが、予防医学は本人や会社が出来ることも多くあります。

 

メンタルヘルスにおいても予防医学の考え方は重要です。

 

冒頭で述べた「どのようなタイミングでうつ病の復職を考えていけばよいのか?」という質問もこの予防医学の観点から回答することが出来ます。

 

 

3つの予防

予防医学は、病にそもそもかからないようにする「一次予防」、早期発見・早期治療を目的とした「二次予防」、再発防止やリハビリテーションを目的とした「三次予防」から成ります。

 

復職のタイミングや、復職後の仕事の仕方を考えるのは三次予防に当たります。

 

逆を言えば、復職のタイミングや復職後の仕事の仕方を考えずに適当に復職させるのは、三次予防をしっかり考えていないということです。当然、再発率は高くなります。

 

そして、復職後の働き方や出社の仕方などは会社がイニシアチブをとることが多い領域でもあります。

 

専門家の助言を聞くことはもちろんですが、それ以外にも主体的に考えなければならないことは山積みです。

 

 

復職のタイミングについて

うつ病で休職したが、長引いてしまい、傷病手当金の期間が終わると同時に、退職してしまったという話はよく耳にします。

 

本人が就労希望している場合は、なるべくこのようなケースは避けたいですね。会社にとっても、熟練した技能を持った社員を失うのは、大きな財産を失うに等しいと考えられます。

 

最初に大原則を述べておきます。それは「基本的に復職のタイミングは主治医が決める」ということです。

 

まだ治りきっていないのに、会社や本人だけの判断で復職させるのは予防医学の観点からも危険だと言わざるを得ません。

 

復職のタイミングは主治医が決断しますが、決断には様々な意見が必要です。本人や家族、そして会社などの意見を加味して医師は復職のタイミングを決断します。

 

会社も本人の復職に向かって共に戦うチームメイトです。やるべきことはやり、必要なことは医師と話をしていかなくてはなりません。

 

 

復職における会社の役割

それでは、会社としてはどのような視点で医師と話をすればよいのでしょうか。

 

会社の人間ほど、会社に事情に精通している人はいません。難しいことは考えずに会社のことを伝えるのが役目だと思えばよいのです。

 

例えば、「今は繁忙期と被るので、十分なケアが難しいかもしれない」や「もうすぐ一年六か月たち傷病手当金も切れるので、その後の彼の生活が心配だ。今ならば負担の少ない業務を用意することが出来る」などです。

 

単純に、繁忙期と閑散期を伝えるだけでも大きな力になることもあると考えられます。本人に「主治医と話してみたい」と伝えてみて、本人が嫌がらないのであれば、積極的に主治医と面談するのが良いでしょう。

 

「あなたの不利益になることはしない、我々もあなたが元気に働けることを心から願っている」ということを本人にしっかり伝えることも重要です。

 

会社の人間が主治医に会うということで、「自分の昇進や人事に影響するのではないか」と不安に思う方も多いからです。

 

 

リハビリテーションの観点からの「復職」

主治医が復職の決断を下すと、会社は本人をどのように受け入れるのかを考えなくてはなりません。

 

まず大切なことは「復職=以前と同じように働ける」ということでありません短距離のアスリートが骨折して、退院翌日から100mを走るでしょうか。

 

三次予防は「リハビリテーション」及び「再発防止」です。ここを忘れないでください。

 

まず、「リハビリテーション」という観点から復職を考えます。目標を決め、そこまでの道順を細かく区切ることを「スモールステップに分ける」といいます。

 

復職においても「フルタイムで働く」という目標をスモールステップに分けて考えることが重要になります。

 

「週3回の時短勤務」や「週1回の通常勤務」など色々な形態が考えられますが、基本的には「本人が出来そうだと言い、主治医が許可した方法」で復職を始めるようにしてください。

 

本人から「こういう形態で働きたい」という案が出てきた場合も注意が必要です。うつ病にかかる方というのは真面目で実直な方が多いです。

 

長く休んでしまったという焦りが募り、一刻も早く復職したいという気持ちから、無理な提案をしてくることがあるからです。

 

その場合は、「焦らずゆっくりやっていこう」ということを伝えてあげてください。この言葉は経験上、会社の人が言うのが一番効果があります。

 

 

スモールステップが基本

うつ病になるほど働いてしまうというのは、ある意味、仕事に対するコントロールを失ってしまった状態とも言えます。

 

ある程度、働き方に対するペースを会社側でつかんでおくことが大切です。また必要であれば、業務として休んでもらうということも考えたほうが良いでしょう。

 

リハビリテーションは「スモールステップ」です。なるべく簡単なものから徐々に慣らしていきましょう。

 

私が相談を受けた時に言っているのは「最初は簡単であれば簡単であるほど良い」です。

 

 

再発防止の観点から「復職」

復職し、晴れてフルタイムで働けるようになったとします。しかし、復職はこれで終わりではありません。

 

働けるようになったとしても再発、再び休職ということになればこれほど残念なことはありません。

 

フルタイムで働けるようになったその時から「再発防止」という新しい予防の始まりなのです。

 

久しぶりにフルタイムで働けるようになって嬉しいのは、会社だけではありません。責任感の強い方ならば、一番うれしいのは本人に他なりません。

 

今までずっと休んでいたのですから、その遅れを取り戻したい気持ちがあるはずです。

 

その気持ちを抑え働き方にブレーキがかけられる方ならばよいのですが、中にはアクセル全開で働き続けてしまう方もいます。

 

先ほども述べましたが、仕事に対するコントロールを失いやすい方々です。再発防止を考えるうえで、しばらくは働き方のペースは会社が握っても良いでしょう。

 

といっても、生産性を上げるために酷使するという意味ではありません。繁忙期であっても、必要であれば定時に返したり、休日を取るようにしたりすることも考慮すべきでしょう。

 

フルタイムで働けるようになってから、少なくとも6か月は定時上がりできるような環境作りが理想です。逆に言うならばそのくらい余裕のある部署で復職させるのが良いでしょう。

 

慢性的に残業が発生する職場であれば、本人が定時で帰ることによって、摩擦が起きることも考えなければなりません。

 

また、周りは良くても、本人が「みんな忙しいのに申し訳ない」と自責の念を強める可能性もあります。

 

人間関係の摩擦や自責の念は再発につながります。そのあたりも考慮して復職を考えていく必要があります。

 

 

さいごに

今回は、予防医学の観点からうつ病になってしまった社員の復職を考えました。

 

これまで、色々な企業人のお話を聞いてきましたが、復職がうまい会社は社員の定着率も良いですし、事業が円滑に進んでいるように思います。

 

「復職=以前と同様に働ける」ではなく、復職に関して慎重に考え、丁寧に接することが出来る会社は、長期的にみて非常に魅力のある会社になるのではないでしょうか。

 

 

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【第10回】メンタルヘルスラインケアに必要な管理職の能力とは?

 

 

 

icon_4【執筆】

林田 一

臨床心理士

 

 

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