【SPARXの活用事例】うつ病の方の復職・再就職支援を行うリヴァさん
今回は、SPARX(スパークス)特集Part2です。Part2では、SPARXの活用事例を株式会社リヴァの青木さんにお話を伺いました。
今回、お話しいただいた人
株式会社リヴァ 取締役 青木弘達さん
リヴァについて
「復職」「再就職」の観点から、うつ病など気分障がいの方の社会復帰支援サービスを展開する企業。
休職中の方を対象にした復職支援施設「オムソーリ」、離職中を対象にした再就職支援施設「ハビトゥス」を都内で運営されています。
SPARXを導入したきっかけ
もともと、「認知行動療法をやってみたい」というニーズがリヴァの利用者さんから多くあったのですが、SPARXの清水さんとお会いして、「認知行動療法をもっと気軽に」という考え方に非常に共感したことから始まりました。
私もカウンセラーをやってはきたんですけど、心理療法って少し特殊なイメージがあったり、取っつきにくくて、難しいそうと思われがちな面もあると思います。
それを清水さんは広く普及させるという想いをお持ちで、私たちとしても非常に良いなと思ったところが、まずはきっかけになりましたね。
ゲームという手法はどう思われました?
最初の段階から、ゲームという視点は面白いなと思っていました。
「認知行動療法」と聞いて、認知行動療法のことを知らない人には、何か特別な人が特別なことをやっていると捉えられがちになってしまうと思うんです。
もちろん、専門家のもとで取り組むことがより良いとは思いますが、認知行動療法って学べば学ぶほど特別なものではないと感じることも多いので、ゲームを通じて手軽にそのエッセンスを吸収できるのは非常に良い手段だなと感じました。
SPARX導入に対する社内の意見は?
SPARX自体が新しい取り組みなので、「これはすごく面白い」「楽しい」「良いんじゃないか」という全面的な賛成の声もある一方で、「まずは実際にやってみたい」「自分たちが試してみて、それから判断したい」という声が主流という感じでした。
ネガティブな声として、「あまりゲームをやらない人にとっては抵抗があるのでは」という声だったり、認知行動療法をしっかり学んできた支援員から「少し物足りない」といった声はありました。
ただ、リヴァとしても、利用者の皆さんが「自分の技術」として様々なスキルを身につけていくことを目指しているので、利用者さん自身で取り組めるSPARXの導入にあたっては、あまり抵抗なく進みました。
どのようにSPARXを導入しているんですか?
2016年12月から、希望者を募って順次導入をさせていただいています。
利用者さんは、うつ病の方、適応障害の方、双極性障害の方、不安障害の方などが中心です。
まず最初に、SPARXの説明会を開いて、プロジェクターに投影しながら、デモンストレーションをして使用感をお伝えしています。
ゲームの最初に、いきなりレゲェの音楽が流れてきて、みんな度肝を抜かれるんです(笑)
説明会に参加する人はみんな、「認知行動療法」の話を聞かされると思っているので、かしこまった感じで来るんですけど、いきなりレゲェから始まるので、笑いが取れて、緊張が一気にほぐれるんですよね。
説明会を受けてもらってからは、利用者さん個人個人でSPARXをやってもらうのですが、やれる時間を15時から17時の自習時間に限定しているんです。
この理由としては、9時から15時までの時間に来れる利用者の方は、通常のプログラムを受けてもらいながら、だんだんと生活リズムを整えていくところを優先にしたいという思いがあります。
ただ、昼夜逆転してしまって、日中のプログラムに参加するのが難しい方もいます。そして、そういった方の中にも、やはり「認知行動療法をやってみたい」というニーズが多いんですよね。
かといって、通常の認知行動療法のプログラムは午前中で、プログラムの内容的にも利用者さんに負荷がかかりすぎてしまう可能性もあります。
なので、無理なく来れる15時から、「まずはゲームで認知行動療法のエッセンスを体験してみませんか」というような導入の仕方をしています。
利用にあたっては、週1回を目安に、1回あたり15分~30分で終わるイメージです。
SPARXで得たことを、普段の生活で実践しないと意味がないので、「毎日続けてSPARXだけやってもしょうがないよね」ということは利用者さんにはお伝えしています。
SPARX利用中での工夫はありますか?
リヴァの場合、「振り返りシート」を用意して、利用者さんにSPARXやってもらった後に、「やってみてどうだったのか」「分からなかった点」「どんなことを今後活用しようとしているか」などを書いてもらっています。
ゲームで学んだことをゲームの中だけで終わらせてしまうともったいないので、SPARXで学んだことを振り返りシートに書いてもらって、私たちもサポートを入るという形にしています。
もし、ゲームの中での不明点があれば、振り返りシートを通してクリアにできますし、なにより大切なのは、普段の生活の中で、どんなところに意識を向けていくのか、何をどう活用するのかをちゃんと具体化するところにあると思っています。
基本的には、楽しくリラックスした状態で、うまく続けられるようにやってもらいたいなと思っています。
SPARXを導入してみての青木さんの率直な感想は?
これはですね、非常に良いほうに転びまして、想定していたよりもかなり良いフィードバックを利用者さんからもらえました。
SPARX自体は認知行動療法がベースになっていますけど、アンガーマネジメントの要素もあり、幅広くカバーしているので、「知識として知ることができて良かった」という声も多いですね。
SPARXのことを僕が熱心に勧めていたということもあるので、最初はリップサービスかなと思ったくらいです。ゲームを普段やらない人も含めて、あんまりネガティブな意見はないですね。
あと、SPARXをやっていただくことで、通常の認知行動療法のプログラムの理解度が高くなる実感があります。
SPARXから入って、そのステップアップとして通常の認知行動療法のプログラムを受けてもらう方が、認知行動療法へのアレルギー反応が少なくなる印象です。
人事と休職者のコミュニケーションツールにも
私自身、人事部での経験もあるのですが、休職中の方にSPARXをやってもらうというのもアリかもしれません。
主治医から「◯◯さんの日常生活がある程度、整ってきましたよ」といったサインが出たら、「じゃあ、SPARXやってみたらどう?」みたいな感じで。
人事部の人って、1人1人の休職者の方に対応する際に、症状についてダイレクトに触れることに慎重になったりと、コミュニケーションで苦労されていると思うんです。
一方で、休職している側としては、人事って半ば敵みたいな一面もあるので、人事から症状について聞かれると、「俺のだめなところを探して、クビにしようとしてるんじゃないか」みたいな関係になることもゼロではないと思います。
そこで、休職中の方にSPARXをやってもらって、「今レベルいくつなの?」みたいなフランクな会話ができて、その中で人事の方も案外、休職中の方の状態像が掴めるのではないかと思います。
さいごに
SPARXをフル活用するポイントは、SPARXをSPARXだけで終わらせないということでしょうか。
やはり、振り返りシートを通じて、いかに普段の生活を整えていくかという点まで、きちんとフォローをすることは大事かなと思っています。
SPARXは認知行動療法のエッセンスをしっかりと提供してくれているので、それをいかに活用するかというところは、支援スタッフがしっかりフォローする必要があると思います。
あとは、支援機関でSPARXをやるのであれば、SPARXを利用している方同士での情報交換の場があると良いかもしれませんね。
「SPARXで教わったことをこんなふうに試してるよ」と共有し合える機会があると、よりモチベーションが上がるので生活を整えていく上でも、好循環が生まれるのではないでしょうか。
SPARX関連インタビュー
【Part1】【SPARXってどう?】日本語版開発者・ユーザー・医師の声をご紹介!
【Part2】【SPARXの活用事例】うつ病の方の復職・再就職支援を行うリヴァさん
【Part3】SPARXを通じて心理ケアを受けやすい社会に【清水あやこさん】
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- 本記事は2017年6月7日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。