SPARXを通じて心理ケアを受けやすい社会に【清水あやこさん】

今回のインタビューでは、SPARXというロールプレイングゲームを通じて、楽しくうつ病の治療法やリラックス方法を学んでもらうことを目指す、HIKARI Lab代表の清水あやこさんにお話を伺いました。

>>SPARXのサイトはこちら

 

 

心理の世界を志した原体験

私自身、中高時代から不登校の友達などから相談を受ける機会が多くありました。

 

ただ、当時素人だった私にはどうしようも出来ないことも多くて。

 

カウンセラーなどの専門家に相談したほうが良いのにも関わらず、そういった文化が普及していないこともあって、行き場を見失っている人たちがいることに問題意識を持つようになりました。

 

実際、まだまだ日本では、

 

「カウンセリングって、よくわからないから行きづらい」

「話をするのに、お金払う?」

 

という方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

カウンセリングが当たり前の文化

これまで、アメリカなどへ留学をして、海外ではカウンセリングを受けることが日本よりも普及していることを目の当たりにしてきました。

 

そのたびに、「日本との差は何なんだろう」ということをずっと感じていました。

 

カウンセリングを学んでいる人たちは、適切な話しの聞き方や問題の解決方法についてのメソッドをしっかり学んでいるので、素人に話すのとでは全然違うんですよね。

 

そのことを、海外では気付いている人が多い一方、日本ではまだまだ知られていないように感じています。

 

それから、日本では「我慢が美徳」と考えている人が多いと思います。海外だと「不快感情は我慢しなくて良い」「できるだけ楽しく過ごすほうが健全」という意識が強いのかなと。

 

なので、不調になったり、メンタルのバランスを崩した時に、「すぐに専門家に会いにいこう」という発想になりやすいのだと思います。

 

あとは単純に、ドラマなどでもカウンセラーがよく登場するので、カウンセラーと話すことに抵抗を感じにくいというのもあるのかもしれないですね。

 

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「我慢が美徳」を肌で感じる

そのまま心理の道に進もうか悩んだこともありましたが、まずは一度、社会に出ようと思って、大学を卒業後に金融業界に入りました。

 

社会人になってからは、色々な業界の人の話を聞いたりして、みんなすごく頑張って仕事してるなぁと感じる一方で、いろんな嫌なことを我慢している方がすごく多いことに気が付きました。

 

また、1つの組織やコミュニティで過ごす時間が長くなると、そこのコミュニティでの価値観でしか考えられなくなってしまう怖さを感じることもありました。

 

我慢すべきだという思いが強すぎたり、会社というコミュニティに縛られすぎてしまうと、しっかりと休む時間を取ることに対して罪悪感を感じたり、無理をしてしまいやすくなってしまうと思います。

 

プライベートで、いくつかコミュニティを持って、多様な人たちと会っていけば、自分の思考も柔軟になっていくので、1つのコミュニティに没頭しないことというのは結構大事だなと。

 

 

大学院に進学。臨床心理学の世界へ

高校の頃から、オンラインカウンセリングをやりたいなという思いがずっとあったこともあり、金融業界で約2年ほど勤めた後、東京大学の大学院に進学し、臨床心理学の研究室に入りました。

 

大学院での2年間は、すごく勉強になりました。担当教員がずっと指導してくださって、自分のカウンセリングを客観的に見てアドバイスしてくれるので、自分が良いと思ってるやり方に固執することなく、より効果的な方法を身につけていける点がとてもありがたかったです。

 

そして、友人からSPARXの存在を教えてもらって、在学中の2015年7月に起業しました。

 

SPARXはもともとニュージーランドのオークランド大学で開発されたものですが、その存在を初めて知った時、「認知行動療法が学べるロールプレイングゲーム?すごい!」という感じでした。

 

SPARXが持つ「身近さ」「手頃さ」「楽しさ」は、早期に専門家にリーチできないことで、心の状態が悪化してしまうという問題を解決する上ですごく大事だと思っています。

 

実際に、英語版を使わせてもらったのですが、専門的な知識も盛り込まれていて、しっかりとした医療チームが作ったものなんだなということが納得できて、ますます興味を持つようになりました。

 

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SPARXを日本で広めたい

SPARXをぜひ日本で広めてたいと思い、SPARXを開発したオークランド大学に問合せ、やり取りを重ねていきながらライセンス契約の締結に至りました。

 

ライセンス契約を締結してからは、大学院生としての研究活動の傍ら、手探りで日本人向けにSPARXを作っていく作業が始まりました。

 

まず、SPARXを日本語に翻訳したのですが、専門性を保ちながらも不自然ではない表現を心がけました。

 

また、細かい部分で言うと、キャラクターの口の動きも日本語に合うような微調整が必要で、開発会社さんの方でとても時間がかかったと聞いています。

 

あとは、ニュージーランド版のガイド役は民族衣装を着た男性だったのですが、もっと柔らかいキャラクターのほうが日本人には合うのかなと思い、女性に変えたりしました。

 

ちょうどその時、修士論文の仕上げの時期とも重なっていて、体力的にしんどかったですが、いろんな方に元気づけてもらっていたというのと、やっていること自体は楽しかったので、無事に完成できました。

 

もちろん、まだまだ改善の余地があります。

 

ですので、今後はどういったものが一番求められてるのかをリサーチしながらバージョンアップを行い、

 

「このキャラクターの話を聞きたいから使いたい」

「この世界観を楽しみたいから使いたい」

 

と言って、SPARXを使ってくれる人を増やしていければと思っています。

 

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SPARXの詳しい内容についてはこちらの記事をご覧ください

>>【SPARXってどう?】日本語版開発者・ユーザー・医師の声をご紹介!

>>【SPARXの活用事例】うつ病の方の復職・再就職支援を行うリヴァさん

>>SPARXのサイトはこちら

 

 

SPARXの先に見据えるビジョン

「今までにない心理ケアを提供し、簡単に心理ケアを受けられる社会を実現する」

 

これが一番やりたいことでもありビジョンです。

 

そのためにも、心理ケアと気づかれずに心理ケアを行うようなエンターテイメント性の高いものを世に出していきたいと思っています。

 

また、長期的な話をすると、オーグメンティッド・リアリティ(拡張現実)やホログラフィなどを使用し、視覚的な心理ケアも提供していきたいと考えています。

 

スマートフォンはこれからどんどん形を変えていくと思いますし、今のスマートフォンに合わせたアプリケーションを作っていても追いつかなくなっていくと思うので。

 

実は、ヒカリラボの「ヒカリ」は当事者に希望を持ってもらうというのと、「ヒカリ」を利用したケアを提供していきたい、という思いが込められています。

 

「考え方」はその人の気分に大きな影響を与えます。なので、よい気分を維持する考え方を身に着け、行動に移していくとはとても大切です。

 

でも、その人の考え方というのは対話やゲームだけでなく、視覚効果によっても変えることができると思います。

 

今まで見たことのない世界を「見る」ことでも、考え方を変えるきっかけがてくると思うんですよね。

 

でも、バーチャルの世界を見せるだけはいけない。心理ケアというのは、あくまで現実世界で活きるものでないといけないので。

 

なので、バーチャルとリアルを融合したオーグメンティッド・リアリティやホログラフィを使い、実世界でしっかりと役に立つケアを提供していきたいと思っています。

 

 

読者へのメッセージ

楽しく過ごすことに罪悪感を持ってしまったり、楽をすることをよしとせず、結果的に自分自身が苦しい思いをしてしまうケースがすごく多いと感じています。

 

けれど、どうせ同じ時間を過ごすなら、楽しくて心地良いほうが良いですよね。

 

だからこそ、「自分を許す」と言いますか、「楽しむことや楽することって悪いことじゃない」という認識を持つ人が増えたらと思います。

 

その第一歩として、「自分を責めずに、自分に優しくする」

 

そんな心がけを持ってみてはいかがでしょうか。

 

(清水あやこさんインタビュー完)

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PHOTO  by 齋藤郁絵

 

 

SPARX関連インタビュー

【Part1】【SPARXってどう?】日本語版開発者・ユーザー・医師の声をご紹介!

【Part2】【SPARXの活用事例】うつ病の方の復職・再就職支援を行うリヴァさん

【Part3】SPARXを通じて心理ケアを受けやすい社会に【清水あやこさん】

>>SPARXのサイトはこちら

 

 

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臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、保健師、産業カウンセラー、支援機関の職員など、すでに多くの方にインタビューを行っています。ご自身が、有名かどうか、権威かどうかは関係ありません。

 

また、精神疾患などの当事者の方、メンタルヘルスや人間関係でお悩みの方などのインタビューも行っております。

 

これまでの経験・取り組みや、ご自身の想いを読者に届けていただき、Remeのミッションである「こころの専門家へのアクセスの向上」「こころの健康に関するリテラシーの向上」の実現のために、お力をお貸しいただけますと幸いです。

 

 

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  • 本記事は2017年6月14日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。