【臨床心理士解説】大人の愛着障害って?10のセルフチェック項目とは?
(質問)「大人の愛着障害」という言葉を知り、もしかしたら自分かもと感じました。自分自身で気づく上で、チェックすべきポイントなどを教えてほしいです。
(回答)ここ数年で「大人の愛着障害」という言葉が広く一般に知られるようになりました。
ご自身で「自分って愛着障害かも?」と気になられた際には、以下の項目にどれくらい当てはまるか、ご参考までにチェックしてみてください。
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大人の愛着障害 10のセルフチェック項目
①養育者との関係が不良
愛着障害で重要な確認事項として、特に幼少期に養育者との愛着(アタッチメント)形成ができているか?が挙げられます。
ご自身の幼少期に、
【母親・父親との離別・死別があった】
【養育者の交代が頻繁にあった】
【養育者から虐待、ネグレクト、無視・無関心などがあった】
【しつけが厳しく、褒められることが極端に少なかった】
【親の度を超えた過干渉があった】
など、思い当たることはありますか?
幼少期にご自身の養育者と安心して信頼できる関係を築けていなかった際には、愛着の土台が揺らぎやすくなっている場合があります。
大人になってからも関係性に偏りがあり、ずっと親に反抗的な態度になる、あるいはいいなりになるような態度となる場合もあります。
②自己肯定感・自己評価の低さがある
私たちは大人になっていくにしたがって、自分で考え、選択・決定をし、行動をしていく機会が増えていきます。
アタッチメント形成がうまくいかなかった方の中には、「大丈夫」「できる」といった自己肯定感がうまく育まれておらず、自信が持てずに選択できなかったり決断を信じることが出来ずに苦労することがあります。
なかには自分の存在意義とはなにかについて悩み苦しんでしまわれる場合もあります。
③助けを求めることが苦手
幼少期の養育者とのかかわりの中で、不安や恐怖の際に助けを求めることがあります。
養育者が助けてくれることで子どもは安心し、「大丈夫」と信頼や安心感の経験を重ねていきます。
しかし、助けられなかった場合、助けを求めても応えてもらえない経験が重なっていくと、次第に助けを求めなくなります。
場合によっては、助けを求めることで怒られた経験があり、助けを求めること自体に不安や恐怖感が伴うこともあるでしょう。
どうせ助けてもらえないのではないか、助けを求めたら嫌がられるのではないか、断られたら、といった絶望や不安が生じている場合があります。
④他者と親密な関係を築きにくい
だれかと人間関係・交友を開始したり、それに応えたりすること自体に困難さを感じられる、あるいは見境なく誰とでも対人関係をつくる一方で、特定の他者に選択的にアタッチメントを形成することが困難になることがあります。
そのような特徴から、相手を拒絶してしまったり、広く付き合うけど深まることに不安や恐怖感が生じてしまったりすることがあります。
人とのほどよい距離感というものがわからずに悩んでしまうことがあるのです。
特に恋愛などにおいては、パートナーにべったりと依存してしまうこともあります。
⑤ひどく人の顔色を窺ってしまう
愛着障害の困難さを感じられている方の中には、幼少期に養育者から厳しいしつけを受けたり虐待をうけたりしたご経験のあることがあります。
なにかを言えば怒られる、褒められない、親の喧嘩や暴力が絶えないなど、常に不安や緊張の高い環境で過ごしてきた経緯をお持ちの場合には、相手の顔色を窺うことや自分の気持ちをぐっと我慢してしまうなどの行動が生じやすくなってきます。
言いたいことがなかなか言えない、意見を述べる際におどおどとしてしまう場合もあるでしょう。
⑥感情のコントロールが苦手、あるいは表現が少ない
人間の最初のコミュニティは養育者や家族などで、その関わりの中でアタッチメントを形成し、安心や信頼の中でコミュニケーションも学んでいきます。
しかし、そのコミュニケーションの練習がうまくいかなかった場合には、自分に興味関心を向けてもらうためにより感情的な表現をしたり、あるいは反対に感情表現をしづらくなることがあります。
相手からの言葉に傷つきやすいなど、感情のコントロールの苦手さや情緒の不安定さが生じる場合があります。
⑦白黒思考(0か100かの思考)になりやすい
考えたりなにかを実行に移すような際にも、「できるかできないか」「ありかなしか」「すきかきらいか」など、白黒思考になりやすいことがあります。
どちらでもない、その間、という曖昧さが苦手で、極端さや融通の利かなさとしてコミュニケーションに問題が生じてくることがあります。
⑧アイデンティティが確立されていない
私たちは思春期の頃から次第に「自分」とは何か、「自分」はこういう人間である、など、自分はいったい何者であるかということを考え始めます。
進路など様々な決定と行動を繰り返す時期に入り、その過程で「自分とはこういう存在なのだ」ということを発見していきます。これをアイデンティティの確立と表現します。
アイデンティティの確立のためにはアタッチメント形成がなされ、信頼や安心感の土台のもと、好奇心・積極性をもって探索することが必要になってきます。
しかし、アタッチメント形成がうまくなされていないと、その土台がぐらついてしまい、アイデンティティを確立することに困難さが生じてくる場合があります。
その結果、なかなか決断が出来なかったり、なにか決定をしても決断を信じきれないなど、自己肯定感や自尊心の低さも影響を及ぼしてくることがあります。
⑨親の期待に応えられないときに自分を責めてしまう
私たちは、人から認めてほしい、承認されたいという欲求(承認欲求)を持っています。
身近な人、特に幼少の頃には親や養育者などから褒められることを必要としたり望むことはとても自然で当たり前の要求でもあります。
しかし、
親からなかなか褒めてもらえた経験がない、
褒めてもらえるどころか「もっと」とさらに上を目指すように言われる、
「お前えはダメだ」などという言葉を浴びて育つ
といった場合、次第にできない自分を責めてしまうようになることがあります。
⑩養育者を恨む・あるいは言いなりになる
大人になってからも、親や養育者のことを深く恨み、憎しみが募ってどうしようもなく苦しいことや、過干渉で支配的、あるいは権威的な親や養育者のためにいいなりになって自分を抑え込んでいることがあります。
本当は怒りや悲しみが心の中に蓄積しているのに、それを抑え込んできて、親を恨んではいけないと考えてかばってしまう場合もあります。
※愛着障害では必ずしもこのうちすべてが生じる、あるいは一部当てはまるから愛着障害である、というわけではありません。各項目だけではなく、実際に生活がどのようであったかも深くかかわってきます。
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【参考】
米澤好史 愛着の視点からの発達支援 -愛着障害支援の立場から- 発達支援学研究第2巻第2号 2022
友田明美 アタッチメント(愛着)障害と脳科学 児童青年精神医学とその近接領域 2018
川本薫, 後藤和史 愛着スタイルと境界性パーソナリティが恋愛依存に与える影響 - 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第 77回大会
伊福麻希・徳田智代 2006 恋愛依存傾向尺度作成の試み-男女観における恋愛依存傾向の比較- 久留 米大学心理学研究
やさしくわかる!愛着障害 ―理解を深め、支援の基本を押さえる 米沢好史 2018 ほんの森出版
愛着と愛着障害: 理論と証拠にもとづいた理解・臨床・介入のためのガイドブック ビビアン・プライア , ダーニャ・グレイサー
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- 本記事は2023年7月3日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。