居宅介護(ホームヘルプ)とは?対象・利用方法・事例を社会福祉士が解説
近年は高齢化の影響で、地域で暮らす精神疾患を持った方たちが、自宅での介護を必要とすることも多くなっています。
また、精神疾患を持っているがゆえに、家事や掃除などを行うことが苦痛な場合もあります。
だからこそ、身の回りのことを手伝ってくれるサービスがあれば、安心ですよね。
今回は、精神障害者の方に対しての「居宅介護(ホームヘルプ)」についてお話します。
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目次
居宅介護(ホームヘルプ)の対象
居宅介護サービスを利用できる方は、以下のとおりです。
・精神疾患を抱えていること
・上記に加え、日常生活を営むことが困難であり、身体面での介助や食事などのサービスを必要とする方
・精神障害者保健福祉手帳を持っている方
・障害年金を受給している方
対象者の状態によっては、上記のすべてに当てはまらなくても良い場合があります。
また、精神障害者保健福祉手帳と居宅介護のサービスの申請は、同時に行っても良いとされています。
居宅介護(ホームヘルプ)の支援内容
上記に該当する精神障害者の方に対して、身体面や日常生活を送る中で困難な事柄を対象に、ホームヘルパーを派遣して支援するサービスです。
内容としては、
・料理、買い物、洗濯などの家事
・身体の清潔の保持や通院などの外出への介助
を行います。
また、これらのサービスのみを提供するだけではなく、利用者の家事や介助における相談や、助言を受けることも可能です。
居宅介護(ホームヘルプ)の費用
費用は、基本的に利用者の1割負担となります。
しかし、世帯の所得によっては、負担の上限が異なるケースもあります。
居宅介護(ホームヘルプ)の申請方法、利用方法
居宅介護を利用したい方は、主治医がいる場合は、まずは相談した方が良いでしょう。
その後、最寄りの市町村の窓口へサービス申請を行います。
その後、市町村の担当者は、申請者の障害の状態や利用している福祉サービスなどを把握し、居宅介護を受けるにふさわしいかを判断します。
サービスを受けても良いとの決定がなされたら、申請者あてに「精神障害者居宅介護等利用書」が送付されます。
この証書を持ち、サービス提供を希望する事業所に提示したうえで、どのような居宅介護を受けたいのかを、両者で話し合いを行い、同意のもとで支援が開始されます。
居宅介護(ホームヘルプ)の事例
Aさん 50代女性、アスペルガー障害とうつ病
Aさんは、若い頃から販売などの仕事をしてきたものの、場の空気が読めずに、お客様に失礼なことを突然言い出すなどをして、上司からよく注意をされてきました。
しかし、Aさんはなぜ自分が注意を受けているかが分からず、悩みこんでしまい、うつ病になり退職をするということを繰り返していました。
40代前半頃まで数多くの職場で上手くいかず、落ち込んで病気になるというサイクルが続いていました。
Aさんの動向を見てきた主治医は、うつ病の裏に発達障害があるのではないかと考え、心理検査を実施したうえでアスペルガー障害が根底にあると診断しました。
その事実を知らされたとき、Aさんは少なからずショックを受けましたが、場が読めないことやコミュニケーションの欠如は、アスペルガー障害が原因だったと理解もできたため、自然なかたちで障害を受け入れることができました。
一生付き合っていかなくてはならない障害で、仕事を続けることが難しいことも考慮して、主治医は障害年金と精神保健福祉手帳の申請を進めました。
Aさんもこれに同意し、後ほど申請もおりたため、仕事は人と関わることの少ない、工場での短期間の仕分け作業などを選び、生活をしていくこととなりました。
家族と同居するAさんは、障害年金とアルバイトで自分のことはまかなえる生活を続けていました。
しかし、彼女の母親が足を骨折したことが原因で、自宅の家事を行うことが困難な状態になりました。
Aさんは自宅のことは母親にまかせっきりだったので、色々なことが上手くできず、料理を作ろうとしても、その手順が分からずパニック状態になることがありました。
それを見ていた母親は、何とかならないものかと主治医に相談。そういうことなら、自宅での支援が必要だと居宅介護サービスを紹介されました。
早速、母親は、市町村の窓口にサービス申請をし、担当職員がAさんの状態などを調べた後、居宅介護を受けるにふさわしいとの判断がなされました。
かかりつけ病院からの紹介で、居宅介護サービスを提供する事業所と話し合い、Aさん宅への食事の提供や掃除を行うために、ホームヘルパーが週に2回派遣されるようになりました。
このサービスを受けることで、母親も無理をして家事をこなさなくて済むようになり、Aさん自身も戸惑いを覚えなくなったことに安心しています。
居宅介護(ホームヘルプ)の注意事項
居宅介護は、精神障害者だけではなく、身体障害者や知的障害者向けのサービスもあります。
その場合は、精神障害者が利用できる対象の範囲とは異なってきますので、注意が必要です。
また、65歳を超えた精神障害者は、介護保険が優先して適応されることもありますので、市町村に尋ねてみることをおすすめします。
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- 本記事は2018年1月13日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。