葛藤の意味とは?対人葛藤の3つの例をわかりやすく精神保健福祉士が解説

2019.03.19公開 2019.05.16更新

対人葛藤の3つの例

次は、人間関係の中で起こる葛藤について、考えてみましょう。

 

利害による葛藤

「それボクのオモチャ!」「違う!わたしのオモチャ!」

 

…小さい頃、オモチャの取り合いを経験された方は多いのではないでしょうか?

「ここはオレの部屋だ、入ってくるな!」

「お兄ちゃんだけ、部屋を独り占めするなんてずるい!」

大きくなると、取り合う内容も少し変わってきますね。

「俺は長男だから、家を相続する権利がある!」

「私が介護をやってきたのに、お兄ちゃんだけ家を相続するのはズルい!」

大人になると、こんな争いも耳にします。

 

物の取り合いだけでなく、夫婦での家事の分担、職場での仕事の割り振り…。

 

親しい人間関係の中でも、利害が対立する場面はよくありますね。

 

「私はこんなに大変な仕事を抱えているのに、あの人はラクそうな仕事ばかりしていて、同じお給料なんて、ズルい!」

 

「私ばっかり、家事や子育ての負担がかかっている。あなたがゴミ捨てしかしないのは不公平!」

 

対人関係の中で、利害が対立すると、関係がぎくしゃくしてしまいますね。

 

価値観の違いによる葛藤

子育てをめぐって考え方はいろいろです。

 

たとえば、子どもの教育についての意見の食い違い。

「中学受験をさせた方がいいと思う」「いや、高校受験からで十分だ」

「周りの子はみんな塾に行かせている」「小学生を塾漬けにするのはかわいそうだ」

「親がきちんと良い教育環境に入れてあげないと」「自分の意思で決めさせないと」

…どちらも子どものためを思っての発言ですが、意見が合わないと夫婦で葛藤が生じますね。

 

考え方や価値観の違いは、利害の葛藤よりも折り合いが難しいかも知れません。

 

道徳観の違いによる葛藤

「年寄に座席は譲るべきだ。若者は立つべきだ」

「女は男をたてるべきだ」

「嫁は舅につかえるべきだ」

「家事や子育ては女がやるべきだ」

社会が急激に変化して、男性・女性に求められる役割、社会構造、価値観もどんどん変わっています。

 

でも、その人の生きてきた年代により、受けてきた教育、その時代で「良い」とされていたことが違います。

 

「自分が若い頃はこれが正しかった!」という道徳観が変えられない人はたくさんいます。

 

そのため、今、同じ社会で暮らしていても、道徳観は様々です。

「私たちの若い頃は、嫁が口答えするなんて許されなかった」

たしかに、そういう時代もあったことでしょう。世代により、道徳観が違うと葛藤が生じますね。

 

 

葛藤との3つの付き合い方

心の中の葛藤を書き出してみる

どっちも好きで選べない…

どっちもきらいだからやりたくない…

好きなことをした結果、イヤなことが起こるのは困る…

私たちの心は、日々、様々な欲望に苛まれ、大なり小なりの葛藤が続きます。

 

葛藤は悩ましいですが、悩みのない人生も、それはそれで退屈なもの。

 

葛藤が始まったら、心が疲れない程度にそれぞれのメリットデメリットを書き出してみましょう。

 

例えば、「葛藤ノート」を作って、Aを選んだ自分、Bを選んだ自分のイラストを描いたり、イメージ写真・シールを貼ってみてもよいかも知れません。

 

それらを俯瞰して見た時、今の自分ならどちらを選ぶでしょうか?

 

どちらも捨てがたいが、どちらかを選ばなければならない。

 

このような状況は「今の自分の本当の気持ち」を知る良いチャンスです。

 

自分でも気がつかなかった、自分の本当の願望に気づくかも知れません。

 

利害関係の葛藤は法的に解決

人間同士が、利害関係で争う時は、第三者に仲介してもらうのもよい方法です。

 

第三者をたてて、話し合いをしても解決できない場合は、法的に解決するという方法もあります。

 

どちらも一歩も譲らなければ、話し合いは進みませんので、譲歩しながら互いに歩み寄るしかありません。

 

妥協点を見つけられるとよいですね。

 

お互いの違いを受け入れる

価値観や道徳観の違いによる葛藤は、解決が難しい場合があります。

 

子どもの頃に、これが正しいと教えられてきた価値観を途中から変えるのは、人によってはとても難しいことだからです。

 

真面目な性格の人ほど、難しいかも知れません。

 

自分と違う価値観を受け入れるには、心の柔軟性が必要です。

 

お年寄りがなかなか価値観を変えられないと言われるのは、若者の方が新しい思想や価値観に対して、柔軟性、適応性が高いからだと考えられます。

 

価値観の違いは世代間ギャップだけでなく、立場の違い・文化の違い等によっても生じます。

 

外国に行くと日本とは全く違う価値観、ルールがあります。それを

「面白い!この部分は良いところなので、自分の生活にも取り入れてみよう」

と考えることができる人は、柔軟性の高い人です。

 

互いの違いを認め合い、尊重し合い、受け入れ合いながら、新しい価値観を生み出していければよいですね。

 

「多様性を認め合う」というのが、近年のキーワードです。

 

しかし、どうしても自分と違う価値観を受け入れられない場合もあるかもしれません。

 

そんなときも相手を否定するのではなく、互いに干渉しすぎないように適度な距離をとるというのも一つの方法です。

 

 

さいごに

今回は、心の中の葛藤や、対人関係の中でおこる葛藤について、考えてみました。

 

人間関係の中で起こる葛藤には利害・価値観・道徳観など色々な要素がありますが、このコラムを通じて葛藤との付き合い方、ご参考になれば幸いです。

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桜衣真里

精神保健福祉士

大学院修士課程修了後、専門学校、短大講師等を経て、公的機関の相談員として勤務。精神保健福祉士、保育士のダブルライセンスで、家庭問題、子どもの発達、保育・教育・療育関連の仕事に従事。東京都出身。二児の母。

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2019年3月19日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。