子供のリストカットは病気?3つの理由と親の接し方を臨床心理士が解説
リストカットの3つの理由とは?
親世代の認識とは異なり、リストカットなどの自傷行為は必ずしも、
「自殺するつもりでやっている」
「周囲の気を引きたくてやっている」
とは限りません。
もちろん、中には命の危険を伴う深刻なケースもありますが、
「ちょっとやってみよう」
「友達もやってるから」
と軽い気持ちでやっている子供も少なくありません。
子供たちがリストカットをする主な理由は以下の3つです。
1.ストレスの解消
リストカットの理由で一番多いのは、「切るとなんだかスッキリする」というものです。
・学校での成績や進学
・親からの期待とプレシャー
・いじめ
・その他人間関係の悩み
など、現代の子供たちはたくさんのストレスを抱えています。
そのストレスを解消する方法の一つとして、リストカットをしていることがあるようです。
逆に言うと、自分の体を傷つけなければならないほど、ストレスを抱えている状態、またはストレスが発散できていない状態ということになります。
いろいろな事情で、ストレスを発散することが難しくなってる、もしくは、ストレスを解消できないでいる子供たちが増えていると言えるかもしれません。
2.感情のコントロール
リストカットをする子供たちの多くは思春期の年齢です。
この時期の子供たちはまだ精神面の成長過程にいて、「不安に耐える力」が大人ほどありません。
大きな心配・不安・イライラ・不快感
などに苛まれたときに、それらの感情に耐えることができず、
「何でもいいからこの気持ちから早く逃げたい」
と思い、手軽にできるリストカットをしてしまうことが考えられます。
リストカットをすることで、不快な感情を自分で何とかコントロールしようとしているのです。
本来ならば、誰かに気持ちを打ち明けたり相談してコントロールすることが望ましいのですが、
「親や友達に迷惑をかけたくない」
「気持ちを言っても分かってもらえない」
と諦めているとか、人を頼る力が育っていない子供が多いということかもしれません。
3.流行っているから、友達がやっているから
親からすると一番理解し難い理由が「学校で流行っているから」というものです。
学校の中には、目には見えない雰囲気や風潮、複雑な階級システム(スクールカースト)などが存在しています。
子供たちはその中で行き抜くためにいろんな努力をしています。
「イタイ」「ダサい」存在にならないように、自分の主張を消して、無理をしてでも人と同じでいようと頑張ります。
そこに、リストカットをやっていることが「かっこいい」「流行ってる」という情報が流れたら、
「私もリストカットをやろう(クラスの中で生き抜く為に)」
と思う子がいても何ら不思議はありません。
不良グループ、暴走族、援助交際など、思春期に自傷行為が流行るのは、個性よりもルールや統一性・協調性を重視してきた現代日本の教育システムの闇と言えるかもしれません。
リストカットする子供への接し方
子供たちがリストカットをする理由は様々ですが、共通して持っているのは「自己肯定感の低さ」です。
・自分を「そのままでいい」と思えないので必要のない努力をしたり、
・困っていても素直に人を頼れないので、極端な方法でストレス解消しようとする
のです。
だから、親が焦って自分の要求を前面に出し、一般論をかざして「ダメだ」、「やめろ」といくら言っても響きません。
子供たちの事情・気持ちを受け取って、「親としてどう接していけば、この子の気持ちがラクになるのか」を考えてあげることが大切です。
一番大切なのは、
「関心がある、興味がある」という姿勢・気持ち
が伝わることだと思います。
自己肯定感が下がっていても、
「誰かが自分のことを気にかけてくれている」
「興味を持ってくれている」
と思うことができれば、それだけで活力になります。
一方、一番やってはいけないのは、「お前なんてどうでもいい」という態度です。
もともと自己肯定感が低い上に、さらに、
「誰からも興味を持ってもらえない」
「自分なんてどうでもいい存在なんだ」
という気持ちを抱いてしまうと、子供たちは深い孤独から抜け出すことができなくなってしまいます。
さいごに
わざわざ自分で自分を傷つけるリストカットは、子供たちからのSOSのサインです。
腕に残るたくさんの傷跡は、心の傷です。
子供のリストカットを発見したときは、動揺してしまい、上手く対応できない場合もある思います。
まずはリストカットという行為そのものよりも、背景にある気持ちを見るように心掛けて対応してみてください。
そして、一番の対策は子供たちへの愛情・関心・興味をしっかりと示すことだと思います。
「あなたは、とても大切な存在だ」
「私たちは君のことをいつも見ているよ」
「いつも味方だよ」
「大好きだよ」
と日頃から声を掛け、耳を傾けることが一番の対策・予防策ではないでしょうか。
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- 本記事は2019年4月30日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。