子供の問題行動は親が原因?メカニズムを臨床心理士が解説

「最近、子供が嘘をついたり、暴言を吐くようになった」「問題を起こすことが増える一方、親子の会話が減った」

 

などなど、子供の思いもよらない変化に戸惑っていませんか?

 

良かれと思って、子供の問題行動を注意したり、叱っても、かえって状況は悪化してしまうこともあります。

 

そこで今回は、子供の問題行動と親子関係のメカニズムについて、臨床心理士に解説してもらいました。

 

 

問題行動と親離れ

そもそも「問題行動」というのは、引きこもりや非行、自傷行為や摂食障害、家庭内暴力など、心理的要因が少なからず影響していることを言います。

 

子どもたちはある時期(多くの場合、思春期)が来れば、必死になって「親離れ」しようと、もがき始めます。

 

これは、子どもが家や家族や親に守られた世界から離れて自立した大人になるために必要なステップであり、心の発達においてとても自然なことです。

 

 

子供の成長に大事な親の役割

親も、子どもが「親離れ」を通して成長していくためには、「子別れ」という“協力”をしていく必要があり、これも親の大事な仕事の一つです。

 

発達心理学では「分離・固体化」と呼ばれていますが、このステップを通過することによって、子どもは情緒的・精神的に「成長」していきます。

 

 

成長できない子供の特徴

ところが、この固体化という「成長」ができない子どもたちがいます。「成長」ができない子どもたちの多くは、親子の密着が強く(特に母親との密着)、しかもその密着した関係が長く続きやすいという特徴があります。

 

こういった親子では、親がいつまでも子どもにしがみつき、子どもを離そうとしません。

 

親は気づかないのですが、親自身の固体化=成長が十分になされていない場合もあります。それが子どもの心の成長を阻んでいくのです。

 

 

子供にしがみつく親

親は誰しも子どもに期待するものですが、子どもの人生が、まさに親の人生や生きがいと思いこんでしまい、過度な期待とプレッシャーをかけてしまうと、結果的に子どもにしがみついていくことになります。

 

「子どもなしでは生きていけない!」という発想です。

 

こういった親の特徴としては、夫婦関係に機能不全を起こしていて、本来母親の不安や不満は夫との関係の中で処理されるものが、子どもとの関係で処理されていきます。

 

 

子供が親のカウンセラー役に?

先ほどの状態では、子どもが親の専属カウンセラー役になっていることも珍しくありません。

 

こうなってくると、子ども側はどう感じるかというと、親のことを「かわいそう」という存在で見ていきます。

 

かわいそうな存在から一心に期待されれば、子どもとしては答えるしか選択肢は残されていません。こういった形で、しがみつかれ、親の手を振りほどけなくなった子どもたちは、成長に挫折してしまいます。

 

 

私が出会ったある親子は、長年引きこもっていた子ども(娘)が自立しようとする度に、決まって母親が病になったり、大ケガをしていました。

 

そして病気や大けがの度に、娘は自立を阻まれ、いつの間にか母親の面倒を見なくてはいけなくなってしまったのです。

 

 

子供が成長に挫折してしまうと…

成長に挫折した子ども達がどうなるかというと、親や家族との「融合」=「子ども返り」(退行)をはかり始めるのです。赤ちゃんと母親との関係に見られるような、母子未分化状態に逆戻りしようとするのです。

 

例えるならば、ふたつのお餅がぺったりとくっついてしまった状態に似ています。いったんこうなってしまうと、別けるのがとても難しくなってしまいます。

 

なんとかして別れようというところから、家庭内暴力や摂食障害など様々な問題行動が起こってくるのです。

 

こういった問題に発展してしまう前に、親子関係でも適度な距離とバランスをとり、時期が来たらスムーズにふたつのお餅に分けられるように準備しておくことが、子どもの成長となり、親自身の成長にもつながってくるのです。

 

 

さいごに

今回は、子どもの問題行動について臨床心理士の先生に解説してもらいました。

 

家庭内暴力や摂食障害といった子供の問題行動の背景には、親子の関係性が密接に関わっているようです。この機会に、普段の生活を振り返ってみて、ご自身の親や子供との距離感を見つめてみてくださいね。

 

 

【記事提供】

佐藤文昭 臨床心理士

おやこ心理相談室 室長

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2016年9月20日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。