【臨床心理士解説】機能不全家族で育った大人が抱える対人関係の3つの悩みと対処法

2022.09.18公開 2022.09.21更新

機能不全家族で育った方にとって悩みの種となるのが、大人になってからの家族との関わり方や家族以外の人との関係の築き方です。

 

家族であれ他人であれ、関わり方の難しさには共通のポイントがあります。

 

そこで今回は、機能不全家族で育ち、大人になってからの家族との関係性、対人関係の難しさや生きづらさに対してどう対処したらいい、臨床心理士に具体例を挙げてもらいながら解説いただきました。

 

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機能不全家族で育ち大人になってからの悩みの種①

相手を信用できない

機能不全家族の中で育つと、大人になってからも人を信じられなくなることがあります。

 

それは、本来ならば一番信用したい相手である親との間に安心できる信頼関係をもてず、それどころか親に心を傷つけられる経験を重ねることで、どうしたら人を信じられるのかが分からなくなってしまうからです。

 

人を信用できないことで、例えば、

・抱えている悩みを誰にも心から相談することができず一人で抱え込んでしまう

・本当に信用していい人なのか、相手を試すようなことをしてしまう

・言葉の裏の意味をとろうとしたり、相手の言動を疑うことで良好だった関係を自分から壊してしまう

といった生きづらさがでてきます。

 

人を信用していけるようになるためには以下の対処法があります。

 

相手を信用できない自分の背景に目を向ける

相手を信用できない、と悩む背景には何があるのかを少し考えてみます。

 

業務上嘘をつかれて仕事に問題が発生することや、金銭が絡む場合といった実際に自分に具体的な不利益が生じる場合を除いて、嘘をつかれたりごまかされたりすることに対して、極端に過敏になっているということはありませんか?

 

その場合は、信用した結果として自分が傷つくことを恐れている、という可能性があります。

 

人と話をしているときに、相手がよく話を聞いてくれているにも関わらず、

「うんうん、って聞いてくれてるけど本当は心の中では私の話を下らないと思っているかも」

と感じてしまってうまく話せなくなってしまうことや、遊びに誘いたくても「あんなのに誘われた、気持ち悪い」って他の子に悪口言われるかも、と怖くなってしまうこともあるかもしれません。

 

そのような時は相手のことばかり考えていては身動きが取れなくなってしまい息苦しくなってしまいます。

 

ですので、一旦自分に目を向けてみて、自分が何を不安になっているのかに気づき、その気持ちに寄り添ってみます。

 

そして、

「うまくいかなくても私は大丈夫。何かが変わるわけじゃない」

と自分の心に優しく伝えてみるといいかもしれません。

 

機能不全家族で育ち大人になってからの悩みの種②

自分の気持ちより相手の要求に応えようとする

幼いころから自分の気持ちを無視されたり抑えつけられたりして、親の要求が優先されることが当たり前の環境で育っていると、大人になってからも自分の気持ちを二の次にして相手を喜ばせようとするのが普通のことのようになってしまうことがあります。

 

そうすると、

・自分の気持ちを抑え込む癖がついて憂鬱な気分になりやすくなる

・自分の本当の気持ちが分からなくなってくる

・相手を喜ばせようと自分の時間・お金・労力などを犠牲にして要求に応えようとする

といったことなどが起こります。

 

その結果、自己嫌悪に陥ったり自分の生活や健康がおろそかになってしまうことにも繋がります。対処法として以下を挙げてみました。

 

「嫌われても大丈夫」と考える

子どものころは親がいなくては生活ができず、親の要求に応えることが身を守るために必要なことだったということもあると思います。

 

そしてそのまま大人になってもそのパターンを維持したまま、特に意識せずに気づけば相手が喜びそうな言動をとっている、ということも。

 

まずはそういったパターンに気が付くことが大切です。

 

本当に自分が言いたい事・したいことは何かを意識していくと、自然とそうではない自分の言動に気が付くことができます。

 

その上で、「相手の機嫌を取らずに嫌われたとしても大丈夫」という姿勢をもつのです。

 

相手の機嫌が悪くなることも、仮に嫌われたとしても、それは相手の問題です。

 

こちらがわざと怒らせようとしたり、嫌われようとしているわけではないので、「勝手に」怒っている・嫌いになっているだけなのです。

 

そういった相手の都合に対してお構いなしのスタンスを身に着けると、気持ちが楽になります。

 

機能不全家族で育ち大人になってからの悩みの種③

自分を大事にできない

子どものころから親に大事にされた経験や実感が少なく、ないがしろにされたり傷つけられるのが当たり前の生日々を過ごしていると、自分のことを大事にできなくなってしまいます。

 

結果として、セルフネグレクトと呼ばれるような、自分の食事を疎かにして体を壊してしまったり、乱れた生活を送ったりすることや、自分を傷つける人だとわかっているのにあえて自分から近づいてしまう、といったことが起こります。

 

自分を大事にできない人の考え方の特徴として

・金銭面で困窮しているわけではないのに、栄養価の高い食材や栄養バランスの取れた食事を「自分にはもったいない」と思って極端に安く偏った食事を選択してしまう

 

・自分の部屋に対して「私しか住んでないから片付けなくていい」「汚いくらいが私にはちょうどいい」と思ってしまう

 

・馬鹿にされたり傷つけるような言葉を言われても、「どうせ私なんて」と思い、反論する気にならない

といったことが挙げられます。

 

自分自身を大事にできないと健康を損ねるだけでなく、心を病んでしまったり、不健全な対人関係から抜け出せなくなってしまったりと、自分らしく満ち足りた生活とは反対の方向へ進んでいってしまいます。

 

では、自分を大切にするにはどうしたらいいのか。まず第一歩として以下をご提案します。

 

自分へ優しい言葉をかける

例えば仕事で失敗してしまった時に、つい自分自身に「私は本当にダメな奴だ」などと思ってしまうこともあるかと思いますが、そんな時こそ自分に優しい言葉をかけます。

 

コツとしては、大切な友達が同じ目に遭っていたらなんと声をかけるか、を想像してみることです。

 

仲のいい大切な友達が失敗したときに「あなたは本当にダメな奴だ」と声をかけたりはしませんよね。

 

例えば、

「大丈夫。次は気を付けよう」

とか

「気にしなくていいよ」

といった言葉などが出てくるのではないでしょうか。

 

その言葉を、自分自身に向けてかけてあげてください。

 

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【参考・引用文献リスト】

〇西尾和美(1999):機能不全家族 「親」になり切れない親たち、講談社

〇岸見一郎、古賀史健(2013):嫌われる勇気、ダイヤモンド社

【参考ホームページ】

〇子供虐待防止オレンジリボン運動(2022)
子ども虐待とは
https://www.orangeribbon.jp/about/child/abuse.php
(2022年8月10日閲覧)

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福丸みお

臨床心理士/公認心理師

  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2022年9月18日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。