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「スポーツを一生懸命できる才能があることは忘れないで」スポーツ精神科医の想い
2019.11.01公開 2019.11.27更新
選手にとって”なにがベスト”なのか探っていく

くまの
ちなみに、岡本先生の北本心ノ診療所を受診したい場合は、まずは電話すればいいんですか?WEB予約もありますか?
岡本さん
当院のスポーツ精神外来は、通常の精神外来とは独立させているんです。スポーツ精神外来はWEB予約で、そこから申し込みをしていただくと、こちらから日程についてご連絡が届くようになっています。
通常の精神外来と分けているのは、スポーツ精神外来の患者さんは別枠で、診療時間を確保しておきたいからなんです。


くまの
通常の精神外来の診療時間より、スポーツ精神外来の診療時間の方が長いんですか?
岡本さん
大きく差を付けているわけではありません。どちらの外来も、特に初診の場合は時間をかけてお話をお聞きするので。
ただ、スポーツ精神外来を受診する方は、病名が付かない方が多いんです。そうすると、病気やお薬の説明よりも、その方がなにが原因でスポーツに関して悩んでいて、周りの環境はどうなっていて…など、診療を進める流れが通常とは異なるんですよね。
なので、スポーツ精神外来の独自の診療時間として、しっかり残しておきたいんです。


くまの
診療の流れも、通常の精神外来とは違うんですか?
岡本さん
そうですね。通常の精神外来の患者さんには、やっぱり休んでもらうように促すことが多いです。体も心も、休息が必要な方がほとんどですからね。
でも、スポーツ精神外来の場合は、安易に「つらいなら休んでください」とは言えないんです。スポーツの世界で休むことは、練習をしないことに繋がるので…。
選手にとって、なにがベストの対処法なのか、探っていく必要があるんです。


くまの
スポーツの世界って、例えば1ヵ月練習を休んだら、その分を取り戻すのに倍以上の時間がかかるって聞いたことがあります…。休むって、選手にとってはすごく怖いことなんですか?
岡本さん
1ヵ月は、選手にとってはものすごく長く感じるでしょうね…。怖いと思いますよ。練習に復帰したとき、体力の低下に愕然とする選手もいるはずです。


くまの
岡本先生も、マラソン選手を志していたときにうつ病を発症して、マラソンから離れた時期がありましたよね。また練習に戻った際に、身体の変化は大きかったですか?
岡本さん
そうですね、こんなに走れないものなのかと呆然としました。体力もすごく落ちていて、昔みたいに全然走れなかったので…。その事実がショックでした。
そもそも、練習を休もうと思えるかどうかも、なかなか難しいと思います。


くまの
「休もうと思えない」のは、例えばどんな理由がありますか?
岡本さん
少しくらい体が痛くても、
「これくらいの痛みは当たり前だ」と思ってしまったり。
活躍している選手は、その地位を守るプレッシャーから休めないこともあるでしょうね。逆に、レギュラーになっていない選手は、「今休んだらまた差を付けられる」と自分を追い込んでしまうこともあると思います。


くまの
“選手は休みたいと思っているのに、休めない環境”もあると思いますか?
岡本さん
あると思いますよ。私も、マラソン選手を志していたとき、メンタルも体調も苦しくなってしまったときがあって。そのとき、家族に相談したこともあったんです。
ただ、精神的なことに詳しくないと、相談されてもどう対処していいかわからない人もいるんですよね。家族もそうで、厳しいことを言われてしまったこともありました。

岡本さん
「走らへんのなら陸上部なんかやめてしまえ!」「そこら辺の子ども達は普通に走ってるで?あんたは普通のことも出来へんの?情けない」などですね。


「家族も、なんて言っていいかわからなかったんだと思いますが…」
岡本さん
そういう状況だと、選手自身が、周りに相談しようと思えなくなってしまうんです。「休みたい」なんて、言えない精神状態になってしまう。


くまの
そういえば、学生時代に精神科を受診して、怒られた経験があるともおっしゃってましたよね…。
岡本さん
そうですね。「これくらい乗り越えられなくてどうするの?」とお説教をされました。
家族にも、病院の先生にもそう言われてしまうと、もう他の人に相談しようとは思えなかったですね。

押さえつけてばかりでは、いつか潰れてしまう

くまの
選手のメンタルが不調になってしまう理由として、もちろん色々な要素があるとは思うんですけど、例えばなにが挙げられますか?
岡本さん
やっぱり、結果で判断されるプレッシャーは大きいと思います。あとは、単純に肉体的に負荷をかけるので、そのストレスもありますよね。


くまの
確かに、そもそもが体を痛めつけるというか、筋肉を駆使してますもんね。
岡本さん
そうですね、スポーツをする環境がプロに近づくほど、相当な練習を求められるので…。結果が出たら出たで、周りからの目が気になることもあるでしょうし。
悪口ではなくても、「このまえ上位に入っていたやつだ」と意識される世界ですからね。


くまの
そうですよね、みんなライバルですもんね…。岡本先生も、マラソン選手を志していたときに、自分の苦しみを周りの選手やコーチに相談しようとは思わなかったですか?
岡本さん
きっと、相談したら聞いてくれたと思います。自分が言わなかっただけなんですよ。
周りは普通に走っているのに、どうして自分は走れないんだと、嫉妬心もあったんだと思います。
コーチにも、相談しようとは思わなかったですね。すごく厳しい人だったので、「言ったらいけない」と思い込んでいたんです。
両親に言って、病院の先生に言って、それでも受け入れてもらえなかったことで、自分の心をシャットアウトしてしまったんです。


くまの
そのときの自分や、今苦しんでいる選手の方にとって、どんなサポートが必要だと思いますか?
岡本さん
自分のことを話せる人の存在はとても大きいと思います。信頼できる人がひとりいれば、心が押しつぶされることも少なくなるのではないでしょうか。


くまの
あの、これは私の勝手なイメージなんですけど、スポーツの世界って精神論もあるのかなぁと思っていて…。「根性で乗り越えろ!」「甘えてんじゃねぇ!」など。実際はどうなんですか?
岡本さん
まぁ、あります、ねぇ…。
今は、コーチや監督を担う方が、メンタルの勉強をすることも増えたので、とてもいいことだと思います。ただ、昔はあまりそういった勉強をしている方もいなかったので…。いわゆる、昔ながらの“体育会系”のイメージに近い環境もあったのではないかと思います。
今も、その環境がなくなったとは言えないかなと。怒鳴って・叩いての世界ですよね。押さえつけるように指導して、伸びることを期待する。


くまの
それは、どうなんですか…?人間って押さえつけられて伸びるものですか?
岡本さん
まぁ、
ある程度のストレスをかけることは間違っていないんです。負荷があることで、人間は強くなるものなので。まったくストレスがないと、退化してしまうんでよね。
ただ、ストレスをかけた後に、回復する時間が必要なんです。例えば、「雑草は踏まれて強くなる」と言いますよね。でも、ずっと踏まれ続けていたら、伸びる時間なんてないじゃないですか。
人間も同じで、ストレスを受けた分、心身の回復をさせてあげないと。押さえつけてばかりでは、いつか潰れてしまうだけです。


くまの
めちゃくちゃわかりやすいです…!踏まれ続けていたら、伸びることなんてできないですよね。
岡本さん
ただ、選手自身が休むことを選択するのは勇気がいるんです。できれば、
周囲が休むように促してあげることが理想だと思います。
「休め」だけではなく、どうして休みが必要なのか、理由を説明してあげると安心するかと思いますよ。


くまの
これ、聞いていいのか心配なんですけど…。選手のメンタルを壊してしまう、指導者の特徴ってありますか?
岡本さん
あぁ、そうですねぇ…。
選手のモチベーションを下げてしまう声かけとしては、選手がいい結果を出したときでも、「こんなもんで調子に乗るなよ」と言ってしまったりとか。


くまの
えっ!!それ、言う指導者の方がいるってことですか?
岡本さん
いますね。もちろん、選手を潰すための声かけではないと思いますよ。そう言うことで、もっと上を目指してほしいと願う気持ちがあるんでしょうね。
ただ、選手本人としては、自己ベストを出したことを否定されるのは、苦しいですよね。結果はちゃんと評価して、そこからもっと上を目指す方向に促してあげてほしいと思います。


くまの
もし、合わない指導者の下でスポーツをしなくてはいけないときに、自分の心をどうやって守ればいいんでしょう…?
岡本さん
指導者に認められなかったとしても、
自分で自分を認めてあげることが大切だと思います。それは結果でもいいし、そこまでの過程でもいい。
ただ、指導する方に否定され続けている中で、自分を認めるのはとてもパワーがいることだと思います。その手助けとして、メンタルに携わる人間をうまく使ってほしいですね。手助けする立場の人間がいると、気がついてほしい。


くまの
自分を認めるための手助けとして、精神科を使う…。なんだか、敷居が下がって受診しやすくなるようで、すごくいいですね。
岡本さん
スポーツで病んでしまって、その後スポーツから離れてしまうのが、個人的にも寂しいんです。


岡本さん
精神的にも、スポーツはとてもいい影響があるんですよ。関わり方を間違えなければ、心身ともに健康になるのになと。その手助けを自分ができればと思って、スポーツ精神科をやっているところもありますね。

スポーツを一生懸命できる才能があることは、忘れないで

くまの
すっごく今さらなんですけど、「スポーツ精神科」って岡本先生が作った言葉なんですか?

くまの
あっ、そうなんですね…!ごめんなさい、知らなかったです…。
岡本さん
いやいや、残念ながら、まだまだマイナーなので…(笑)
スポーツ選手を見ている精神科の先生も、私以外にもたくさんいらっしゃるんですよ。ただ、「スポーツ精神科」がスポーツ業界にあまり浸透していないために、苦しんでいる選手と繋がれないことも多いんです。
スポーツ精神科の認知度がないせいで、通常の精神科を受診して、薬を飲みすぎてしまったり、「つらいなら引退すればいい」と言われてしまったり…。そんな状況を変えたい気持ちも強いんです。


くまの
苦しんでいる選手がどこにも頼れない状況は、変えていきたいですよね…。もし、近しい選手が苦しんでいたとき、周りはどんな接し方をすればいいんでしょうか?
岡本さん
選手本人は、結果を出したくても出せない焦りがすごく大きいので…。その焦りは否定せずに、それでも
回復するために休憩する選択肢もあると提示してあげるのが、ひとつの方法かと思います。
選手自身が「回復するために休もう」と思うのは、やっぱりハードルが高いので。


くまの
押し付けるのではなくて、選択肢のひとつとして、選手に提案するんですね。
選手が属しているチームやコミュニティで、いい環境だなと感じたところはありましたか?
岡本さん
コーチからの声かけがマメで、選手をしっかり見ているなと感じたところはありました。深く話すわけではないんですけど、ちょっとした変化に気がついて、
「いつもと違うけど大丈夫か?」と言ってあげていたんです。
選手にとっても、自分を見てくれている安心感がありますよね。なにかあったとき、相談もしやすいのではないかと思います。


くまの
自分だけで悩みを抱えると、どんどん苦しくなってしまいますもんね…。周りと比べて、「どうして自分はだめなんだろう」と悩んでしまう人も多そうです。
岡本さん
私も、自分のことをだめなやつだと思っていた時期がありましたよ。周りからも、
「ここまでメンタルが弱い人間は見たことがない」と言われていました。
でも、この前「こんなにメンタルが強い人は見たことがない」と言われたんです。真逆ですよね。


くまの
真逆ですね!メンタルが強い、弱いなんて、見え方によって変わるものなんでしょうか。
岡本さん
周りの見え方によっても変わるし、自分のその時期の状況によっても変わると思います。表裏一体ですよね。一概に、「この人はメンタルが弱い!」なんて、誰にも決められないのではないかと思います。
まぁ、私から見ると、自分が潰れてしまうまでがんばれた、自分を追い込むことができた時点で、すごく強い人だなと感じます。もちろん、潰れてしまう前にご相談いただきたいですけどね。


くまの
最後に、この記事を読んだ方に伝えたいことはありますか?
岡本さん
スポーツに取り組める、がんばれるだけで、すごく才能があると思います。心が疲れてしまっていても、
スポーツを一生懸命できる才能があることは、忘れないでいただきたいなと思います。
それでも、目標を見失って進めなくなっているなら、私のような人間がいることを思い出していただきたいです。支えになりたいと思っている人間がいますから。


岡本さん
私の診療所でも、陸上選手の方に来ていただいて、ラン講座を実施していただくことがあるんです。患者さんにスポーツのことを教えていただくんですけど、選手の方が当たり前にやっていることって、
とてもレベルが高いんですよ。
患者さんも、選手の方と接しているとき、すごくいい表情をするんです。そんな顔、診察室では見たことないぞ!?と思ってしまうこともあります(笑)
それくらい、スポーツにはパワーがあるんです。もし、スポーツをやっていて、迷われている方がいたら、ぜひ講師をしていただきたいです。ご自身がやっていたことは決して無駄ではなかったことを、患者さんの反応からも分かっていただけると思います。


ご自身がスポーツで苦しみ、またスポーツに支えられた経験がある岡本先生。形だけの診察ではなく、選手の気持ちに寄り添い真摯に対応している姿が、言葉の端々から伝わってきました。
「誰にも相談できない、苦しい、スポーツなんてやるんじゃなかった」
そう思ってしまう前に、ぜひ“スポーツ精神外来”の存在を思い出してみてください。スポーツを楽しんでいたときの気持ちを、また、思い出せるかもしれません。

くまのなな
ライター
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年11月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。
- 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
- 本記事は2019年11月1日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。