【LGBT】職場のダイバーシティ、どう取り組んだらいい?当事者視点でクロストーク

2020.08.12公開 2020.08.19更新

2020年3月、厚生労働省が「多様な人材が活躍できる職場環境に関する企業の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~」を公表しました。

 

性的マイノリティ当事者も含め、誰もが働きやすい職場環境作りに企業の関心が高まりつつありますが、当事者の生きづらさや困難さは周囲には見えにくく、企業による取り組みがなかなか進んでいないのが現状です。

 

そこで今回、LGBT当事者という側面も持つお二人に、厚生労働省が公表した資料の中から、企業と労働者を対象にしたアンケート調査を踏まえてお話を伺いました。

 

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鈴木茂義さん(写真左):公立小学校非常勤講師。自治体の相談員。専門は特別支援教育、教育相談、教育カウンセリングなど。14年間の正規小学校教諭として勤務を経て現職|鈴木さんの詳しい情報、研修・講演のご依頼はこちら
荻野佳織さん(写真右):LGBT当事者であることをオープンにした上でパーソルチャレンジ株式会社で勤務する傍ら、社内のアライ活動にも参画している|パーソルグループのセクシャルマイノリティの取り組みはこちら

 

〈進行:近藤雄太郎(Reme)〉

 

職場でのカミングアウトとアウティング

近藤
性的マイノリティに関する調査レポートが2020年3月に厚生労働省から出ました。

 

その中の労働者アンケート調査結果をみると、性的マイノリティといっしょに働くことに「抵抗はない」「どちらかと言えば抵抗はない」と答えた人は半数以上。

 

性的マイノリティの知人がいない人の場合、「抵抗はない」と答える人の割合は低い傾向にありますが、お二人の職場では実際いかがでしょうか?

鈴木さん
私自身はカミングアウトして働いていますが、周りの人が抵抗感を持っていると感じることは少ないです。

 

実際は職場の中で「仕事を通して繋がっている」のであり、居心地の悪さを感じることは私は少ないですね。

近藤
たしかに、あくまでも「仕事」で繋がっていますもんね。

 

カミングアウトはどのようにしたんですか?

鈴木さん
先日、同僚の先生から世間話で「シゲ先生はお子さんはいるの?」と聞かれたんですね。

 

言わまいか言うか、数秒間思いを巡らせて「この人だったら大丈夫だな」と打ち明けました。

荻野さん
その感覚、すごくわかります…
鈴木さん
少しドキドキしましたが、自然な流れで「自分がゲイで、子供はいないんですよ」と伝えました。
近藤
相手はどんな反応を?
鈴木さん
「はぁ〜〜!ごめんね。なんか変な質問しちゃって」とびっくりしていましたね。
近藤
思いがけないカミングアウトでびっくりしますよね。笑
鈴木さん
びっくりだけだったらまだ良かったのですが、

 

「今まで出会ったこともなかったし、無知だったから、知らないうちに色んな人を傷つけてしまったのかもしれない」

 

と、自分責めを始めてしまって。

近藤
あらら…。
鈴木さん
「そんなふうに責めなくてもいいんですよ」とお声がけしましたが、私の話を聞いて感じたことや気付いたことを話してくれたことはとても嬉しかったです。

 

自分を理解してくれた人がまた一人増えて、私の職場の中での心理的安全性もまた一歩高まったと感じています。

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近藤
「心理的安全性」は重要なキーワードですね。
鈴木さん
一方で職場でカミングアウトしていても、なんとなく同僚からの嫌な視線を感じることもあるのが正直なところです。
近藤
なるほど…。

 

荻野さんの場合はいかがでしょうか?

荻野さん
特例子会社という環境もあってか、相手の特性に対して理解・共感を示してくださる方が非常に多く、嫌悪感を示されたり嫌な思いをすることはないです。

 

パートナーとの何気ない出来事など、気遣わずに周囲に話せています。

近藤
素晴らしいですね!
荻野さん
ただ、前職では会社にはカミングアウトせず、一緒に働いている一部の信頼できる人にしか話していませんでした。
近藤
カミングアウトは一部の人だけ?
荻野さん
前職で会社にカミングアウトできなかった理由は、上司との何気ない会話で、

 

「●●さんってそっち系の人って噂あるよね、知ってる?」

 

と聞かれたことがあったからです。

 

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近藤
なるほど…。
荻野さん
決して悪気のない雑談ではありましたが、

 

「あ、私もカミングアウトしたら、同じように噂されたり、勝手にアウティングもされるかもしれない」

 

と思いましたね。

近藤
自分の言葉ではなく、噂などで自分のいない所で意図せず広まってしまう恐怖がありますよね。
荻野さん
そうですね。なので、

 

「理解を示してくれそう」
「この人は信頼できると自分が決めた」

 

と思える人にしか職場ではカミングアウトしないようにしていました。

鈴木さん
私も「この人に言ったら大丈夫だな」という人にだけ伝えていました。

 

LGBTQに限らず、何か大事なことを「誰まで言うか」「どこまで言うか」のゾーンを自分で決めていたんですが…

近藤
ですが…?
鈴木さん
「他の人がいきなり知ってしまったらびっくりするから、私が代わりに言っといた」

 

とアウティングされたこともありました。

近藤
えぇ?!
鈴木さん
大事なことは自分の言葉、自分のタイミングで伝えたいものですし、他人が別の他の人に伝えてしまうと、そのゾーニングができなくなってしまう怖さがありましたね。
近藤
それは仰るとおりですよね。
鈴木さん
私自身、「ゲイである自分」「先生である自分」を切り離すのではなく、統合した状態のほうが働きやすいという考えです。

 

でも、中には「自分のプライベートのことを職場で言っちゃいけない」と考える人もいて。

 

そういう人から見ると、「ずるい」と。

近藤
「私はこんなに我慢してるのに…」と?
鈴木さん
そう感じる人も、中にはいるみたいですね。

 

「理解してください」と言ったことは一度もないんですが…。

荻野さん
とは言え、それとアウティングするのは全く別の問題ですよね。
近藤
本当は言いたいけど言えない、という人がまだまだ多いんでしょうね。
鈴木さん
ゲイの仲間からも、カミングアウトしたことで、

 

「しげちゃんは、イチ抜けたんだよね」

 

と言われることもありますし、カミングアウトする人はまだまだ少数派だと実感します。

 

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1回では終わらないカミングアウト

近藤
荻野さんは、今の会社では性的マイノリティをいつからオープンに?
荻野さん
今の会社の採用面接でカミングアウトしました。

 

自身のセクシャリティのことはかなりオープンにして働いていると思います。

近藤
採用面接で!?

 

どのように伝えたんですか?

荻野さん
「この場で話すことではないのかもしれないんですが…」と切り出しました。

 

すると、その場で社内制度を教えてくれたり、「面接の結果には影響はないので安心してください」と言ってもらえて安心しました。

鈴木さん
これは確実に上手くいったケースですね!
近藤
面接官からの返しもめっちゃスマートで素晴らしいです!

 

そもそも、面接で伝えて落とされるケースってあるものでしょうか?

荻野さん
ゼロではないと思います。

 

例えば、トランスジェンダーの場合、トイレなどのハード面での入社後対応が難しくて断られるケースもあります。

鈴木さん
採用面接で自分の性自認や性的指向について話すかどうか、ある意味「賭け」なのが今の世の中のつらいところではないでしょうか。
荻野さん
今思えば、たしかに賭けでした。

 

実際、パートナーにも怒られたくらい。

 

パートナーがカミングアウトすると言った時、自分は止めたくせに…。笑

近藤
パートナーのカミングアウトは、逆に止めてたんですね。
荻野さん
やっぱり、「カミングアウトに失敗したらどうしよう…」と心配が先にくるんですよね。
鈴木さん
伝える人や環境が複数あれば、カミングアウトは1回で終わらないので、その度に上書き保存していかなきゃいけない大変さもあります。
近藤
「1回言って、はい終わり」ではないんですよね。
荻野さん
前職時代、パートナーが手術をすることになって会社に休みをもらう時も、

 

「結婚はしていないけど婚約者が…」

 

と、嘘にならない程度に隠すのも地味に精神的に疲れますし。

鈴木さん
「あるある」ですよね。

 

「なんで結婚しないの?」と聞かれて、「同棲も長いし、今のままでもいいかなぁ」と切り返したりとか。笑

 

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荻野さん
嘘ではないですもんね。笑
近藤
でも、そういうコミュニケーションばかりが続くのは大変そう…
荻野さん
それで「このままで良いんだろうか」と疑問を持つようになって転職を決意したのもあります。

 

今では、軽いトーンで職場での日常会話でも違和感なく話せています。

近藤
しげ先生も職場では違和感なく?
鈴木さん
そうですね。

 

「パートナーさんと、週末は何して過ごしていたの?」と、普通の会話の中で聞かれることも増えてきました。

 

ただ、そういう自然な会話を望んでいたはずなのに、いざ聞かれると、まごまごドギマギしている自分もいます。

近藤
聞かれ慣れてないのもありますよね。
鈴木さん
それもありますし、

 

「知らず知らずのうちに、自分の中に内面化された差別が思っている以上にあるんだな」

 

とも感じました。

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近藤雄太郎

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  • 本コンテンツは、特定の治療法や投稿者の見解を推奨したり、完全性、正確性、有効性、合目的性等について保証するものではなく、その内容から発生するあらゆる問題についても責任を負うものではありません。
  • 本記事は2020年8月12日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。

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