精神疾患への偏見。精神疾患を経験した精神科医とリワーク支援員はどう向き合う?
精神疾患はときに、「やる気がないだけ」「なまけ」「甘え」など「精神的な弱さ」とも見られ、病気だと認識されにくいことがあります。
さらには、自分自身の症状に対して「情けない」「生きる価値がない」と思い込んでしまうことも。
それらを“偏見”というのかは、定義するのが難しいけれど…。精神疾患に対して、様々な偏見があるのは事実なのではないでしょうか。
今回は、世間の偏見・自分への偏見・メディアによる偏見について、精神科医の岡本先生と就労移行支援サービスの支援員の松浦さんに、たっぷりお話しいただきました。
岡本浩之さん
精神科医。埼玉県「北本心ノ診療所」の院長。中学、高校、大学、社会人時代に、ご自身も4回のうつ病を経験。@running_doctor
以前のインタビュー>>「精神疾患を理解しない人はいる」うつ病を4度経験した精神科院長が伝えたいこと
松浦秀俊さん
公認心理師・精神保健福祉士・産業カウンセラー。うつ病などの方の復職・再就職支援「リヴァトレ」の支援員・広報。双極性障害II型の当事者。現在の職場では勤続8年目(休職0回)。@bipolar_peer
以前のインタビュー>>双極性障害で仕事が続かなかった自分が人を頼れるようになって得たチカラ
<進行:Reme運営 近藤雄太郎>
<執筆:くまのなな>
目次
「精神障害・精神疾患」って異常ですか?普通ですか?
「精神疾患なんて甘えだ」と理解のない偏見、「寝ていれば治るんじゃないの?」と軽く見ているような偏見、「病気になるなんて自分は弱いやつなんだ」という自分への偏見など、幅広いとは思うんですが…。
おふたりは、精神障害、精神疾患を異常だと思いますか?普通だと思いますか?
座談会開始早々、ティーブレイクです
前職で満員電車に揺られていたときは、この流れに従って生きることが正解なのか、わからなくなったこともありました。
ここからはじかれたら終わりで、失敗なのかって。
流れの中に残った側を普通と呼ぶことが多いけど、どちらが普通で、どちらが異常なのかは、その人の価値観によって違うと思います。
「パワハラの上司と家に帰れないくらいの残業で体調を崩して、休職した」と聞くと、それは無理ないよね、そうなるのが普通だよねって思いますもんね。
今働いている会社の理念が、『自分らしく生きるためのインフラをつくる』なんです。もし世間の波にはじかれたとしても、はじかれた先で自分らしく生きていけるなら、それでいいと思います。いつか、自分の中での普通が見つかるから。
例えば、とても仲のいい友達が亡くなって、1週間落ち込んで食事もできないとする。その状態でも、診断名は付くんです。
診断名が付くことが異常となるなら、そうやって落ち込むことも異常になるわけですが…。でも、それって自然な反応ですよね。
ただ、もし自分が異常であるなら、それはそれでいいとも思います。
そんな自分に納得もしているので、異常と言われたとしても、「そうだろうな」としか思わないです。普通じゃないから、こうして生きていられるんだよと。
精神疾患への偏見、どんなものがある?
患者さんのご家族が、病気を理解してくれないことも珍しくありません。
お互いが「自分のほうを理解しろ!」と言い合っても、それは歩み寄りにはならないですよね。
対話をしないで、上から押さえつけるような伝え方は、どちらにとっても意味がないと思います。
「寝ていないで早く働いてよ」と言われて、焦って、さらに苦しんでしまったりとか。
また、精神疾患であるとオープンにするかどうかも、ご本人は悩むところですね。就労支援の現場では、周囲に出さずに自分だけが知っている状態を「クローズ」、周囲に知ってもらいながら働くことを「オープン」と呼んでいます。
「偏見ではなく、休む必要があると理解できていないのではないか」
オープンにすることをご本人が躊躇する理由としては、なにが挙げられますか?
今までうつや双極性障害など精神疾患の診断はあるけどクローズの一般枠で働いてきた人にとっては、”障害者”という言葉に対し、気持ち的にハードルを感じる方は多いと感じます。
「手帳を取ったら、障害者としてしか、自分が見られなくなるんじゃないか」、「障害者雇用を受けたら、一般雇用には一生戻れないんじゃないか」とか…。
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- 本記事は2019年11月24日に公開されました。現在の状況とは異なる可能性があることをご了承ください。